book(2002)



海猫

(谷村志穂)
函館、南茅部、札幌・・・と北の大地を舞台に描かれる大河恋愛小説です。
物語は昭和32年から52年と20年以上にわたっています。義弟との愛にすべてをかけた母その痛みを胸にそれぞれの愛に目ざめていく娘二人。
『女は男を愛しすぎてはいけない。男にすべてを見せては一生負けだ・・・』
『・・・中途半端な弱さを抱えて愛にだけ深くては、人は生きてはいけないのだから』
作者は、北
大農学部出身でノンフィクション「結婚しないかも症候群」を書いた人(美人)です。3年8ヶ月かかって執筆された長編です。女性の心理描写がすごくいい。
不撓不屈

(高杉良)
”ふとうふくつ”と読みます。『金融腐食列島』『呪縛』を書いた高杉良の経済小説です。
昭和38年から数年間にわたって起こった実際の事件を実名で書いたものです。「税理士・飯塚毅は、国税当局の誤った法解釈に対して訴訟を起こす。しかし、メンツを潰された当局は、顧客に嫌がらせの税務調査を開始し飯塚を兵糧攻めにする一方、マスコミへの情報操作で揺さぶりをかける。そして脱税事件をでって上げて事務所員を逮捕・・・」
国家権力に真っ向から立ち向かった男の物語です。なかなか面白いですよ。
中に『職員の思考省略』という言葉がでてきますが、現在の私達のまわりでも同じことです。
向田邦子の恋文

(向田和子)
没後二十年経って明かされる”秘め事”を一番下の妹が書きました。脚本家として独立して二年、家族を見守りながらも女として妻子ある人を愛した一途な想いがありました。やさしさ、勇気、甘え、一人の女性としての生き方が胸を打ちます。『ミカンがとてもおいしい。一日に、五つから七つは食べています。そのうちに美人になるでしょう。・・・日曜日に、お刺身でビールを飲むのを楽しみに』と書いたり『人間、オギャーと生まれた時から苦を背負っているのよ。口に出して言うか言わぬかの違いはあっても、誰にも苦労はある。そこを、どうしていくかが、知恵のつかいどころ。あまりクヨクヨしないで、時が経てば笑い話になる』と言ったり・・。
恋愛中毒

(山本文緒)
99年吉川英治文学新人賞受賞作です。この賞は浅田次郎の「地下鉄に乗って」ももらってますが私の好きな賞の一つです。
恋にとりつかれたひとりの女の切ない切ない物語ですがちょっと怖いです。角川書店のコピーに”恋愛小説の最高傑作”とありました。『いつしか私は祈っていた。どうか、神様。いや、神様なんかにお願いするのはやめよう。どうか、どうか、私。これから先の人生、他人を愛しすぎないように。愛しすぎて・・・』と誓うのに、また恋に溺れ込んでいきます。
読み終わって気が付きましたが、以前薬師丸ひろ子主演でTVドラマ化されていたのですね。
13階段

(高野和明)
第47回江戸川乱歩賞受賞作品(昨年)です。山崎勉主演で映画化されます。
『喧嘩で人を殺した仮釈放中の青年と、犯罪者の矯正に絶望した刑務官。彼らに持ちかけられた仕事は、記憶を失った死刑囚の冤罪をはらすことだった』ここから物語は始まりますが、後半三分の一くらいになったら物語の展開がすごく面白くなります。
それと興味を引くのは。死刑判決から死刑執行にいたるまでの検察、法務省内部
の動き、拘置所における死刑執行の瞬間・・。中でも、死刑執行に携わる刑務官の苦悩はいろんなことを考えさせられます。ぜひ、一読を!
椿山課長の七日間

(浅田次郎)
このコーナーに二回目の登場です、そうです朝日新聞連載のものが単行本になりました。
連載と違って単行本の方が感情移入ができるので面白さが違います。笑って泣けます。
突然死した冴えない中年課長が、美女の肉体を借りて七日間だけ現世に舞い戻る話です。
『この世に百の恋愛があるとする。でも、そのうちの九十九は偽物よ。なぜかって、自分のための恋愛だから。私は、百のうちにひとつしかない本物の恋をしていた』『希むものは、愛する人々の幸せ。死者にできることなどたかが知れているけれど人の世に残した思いのすべてをこめ、このか弱い仮の肉体の力をすべてをふりしぼってできるかぎりの幸せを置いていこう』 
働く女


(群ようこ)
初めて何となく『群ようこ』を読んでみました。なぜかいつでも損してる女性達が主人公。
さまざまな働く女性達が登場する十の物語。百貨店の外商、一般事務職、コンビニのパート、元一般企業総合職、フリーライター、エステティシャン、呉服店の店主、元銀行員、女優、ラブホテルの店長などいろいろな場で、自分の仕事と向き合う女性達の物語。
男女雇用機会均等法がどうのこうのと言ったって、男性社会!男性の皆さん、それとちょっぴり女性も反省してください。一つの話にこんなセリフがでてきます『今度の部長はだらだら三十分以上話す。ところが話が終わると一体に何を聞いたのやら・・・』 ウ〜ン!
滅びのモノクローム

(三浦明博)
第48回江戸川乱歩賞受賞。選評の中で宮部みゆきが「日本という国が懐深く隠し持ち、表には存在しないふりをしている”過去の傷”について、誠実に描いた小説だと思います」と言っています。「CM制作者が骨董市で買った一個のリール、そこに隠されていた古いフイルム。それには日本という国がひた隠しにしていた過去が映っていた」というもの。
『ある国で、一人の人物が立ち上がった、歯切れのよい言説と果断な実行力で・・国家元首までに登り詰めた。支持率と勢いは驚異とも呼ぶべき数字にまで上昇し、さてその国は・・』薄気味悪いほどどこかの国にそっくりだと思いませんか?(ドイツ・ヒトラー)
 面白かった!
生きる

(乙川優三郎)
直木賞受賞作品です、藤沢周平を思います。市井の人々を描いているところがとっても良い。
「生きる」 「安穏河原」 「早梅記」の中編三編です。どれをとっても儚いのにまっすぐに生きる人間を描いているのに圧倒されます。
『いつでしたか奥さまがこう申されたことがございます。何を幸せに思うかは人それぞれだと、たとえ病で寝たきりでも日差しが濃くなると心も明るくなるし、風が花の香を運んでくればもうそういう季節かと思う、起きあがりその花を見ることができたら、それだけでも病人は幸せです』と・・。
 「あかね空」もそうでしたがこんな小説が好きになりました。
監禁淫楽

七北数人<編>
30年以上前に「コレクター」という映画がありました。この本は監禁をテーマにした短編(谷崎潤一郎、皆川博子、連城三紀彦、宇野浩一郎、赤江瀑、小池真理子、篠田節子、式貴士)を集めたものです。八編ともいずれ劣らぬ傑作です。編者は『純文学』と表現しています。
「あなたには監禁したいほど恋しい人がいますか?監禁したいと思ってことはありませんか?耽美幻想と恐怖、異端の快楽と陶酔・・監禁サイコホラー」と帯封にありましたが、このように猟奇人間を一つの寓話として描くのは洋の東西、今昔を問わずありましたが、これを新潟で起こった事件のように現実として捉える人間がいることは怖いことです。
愛の領分

(藤田宜永)
第125回直木賞受賞作品です(今年の受賞ではありません)。奥さんの小池真理子は114回直木賞を受賞(「恋」)受賞しています。私としては「恋」の方が好きでした。
物語は「男は妻に先立たれていた。女は不倫相手の自殺を経験していた。そんな中、孤独な日々を送る男と女が出会って・・・」で始まります。
「愛には領分がある」いくら立派なものでも、着物に似合わない帯がある。帯に似合わない着物がある・・・。男性の方は丁寧に描いていますが、女性心理はイマイチという感じです。
女の情念が怖くなる小説でした。正直言って小池真理子の方がうまい!
サヨナライツカ

(辻仁成)
『永遠の幸福なんてないように 永遠の不幸もない いつかサヨナラがやってきて、いつかコンニチワがやってくる 人間は死ぬとき、愛されたことを思い出すヒトと 愛したことを思い出すヒトとにわかれる 私はきっと愛したことを思い出す 』という詩で始まる、せつなく、はかない愛の物語です。最初の入りは特に何ということはないのですが、一部(二部構成)の終わり頃から胸が痛くなるような展開になります。
1975年8月、舞台はタイのバンコク
。30歳を目前にした豊の婚約報告会で自由奔放な年上の女性沓子が現れる、その後30年にわたり彼の人生に・・・。
マディソン郡の橋・終楽章
(R・J・ウォラー)
1981年秋、あの夏『永遠の四日間』から16年の歳月が流れています。ロバート・キンケイド68歳、フランテェスカ60歳。 「68年の人生をほとんど孤独に生きてきた男にとって、あの四日間はいったい何だったんのだろう。人生の終わりが予感される今、自分にとってそれが何だったかを確かめるために、もう一度マディソン郡の橋を見に行こう、フランチェスカが吸っている空気を味わってこよう、と彼は思い立つ」 話はそんなふうに始まります。
前作はフランチェスカのほうを中心に描かれていましたが本書はロバートに光を当てて、彼の人生がそんなに天涯孤独ではなかったことが描かれています。が、切なさは変わりません。
沙樓綺譚

(浅田次郎)
久しぶりの浅田次郎の新刊です。と言っても1996年から2001年にかけて「問題小説」に掲載された五つの短編を集めたものです。これがどうしてどうして・・・。
タイトルは『さこうろうきたん』と読みます。南青山の秘密サロン「
沙樓」、功なり名を遂げた人々の口から語られる秘めやかな信実!「沙樓にようこそ。今宵もみなさまが、けっして口になさることのできなかった貴重なご経験を、心ゆくまでお話しくださいまし。・・・お話しになられる方は、誇張や飾りを申されますな。お聞きになった方は、夢にも他言なさいますな・・・」
五つの物語がそれぞれに味わいを持ってなかなか読ませてくれます。
あかんべえ

(宮部みゆき)
やっぱり宮部みゆきは面白い!「怖くて、面白くて、可愛くて・・・涙が込み上げてしまう感動のクライマックス!」と帯封にありましたが500ページも一気に読んでしまいました。
いろんなお化け(亡者)が出てきますが、これがなかなか素敵です。人間の、業、欲愛・・・成仏できない亡者たちとのふれあいの中で一人の少女が頑張ります。
『大人ってね、どんなに身を持ち崩しても博打をしたり悪所で遊んだり盗みとかしたりしても、働いてさえいれば本当に悪いところまでは落ちていかないものなんだって。逆に言えばホントに悪くなる人は、みんな怠け者だっていうの』 
最高の時代劇サスペンス・ファンタジーです。
水曜の朝、午前三時

(蓮見圭一)
「もし、あの人との人生を選んでいたら・・・1970年、万博の夏」作者は,この作品がデビュー作になる新人です。物語は四十五歳の若さで逝った女性翻訳家が、娘のために残した四巻のテープ。そこに語られる恋、許されぬ過去、そして死・・・。切ない切ない恋の物語です。
『迷ったときは急がず立ち止まりなさい。慌てたって、いいことは何一つもないのです。・・・でも、これだけは忘れないように。何にもまして重要なのは内心の訴えなのです。あなたは何をしたいのか。何になりたいのか。どういう人間として、どんな人生を送りたいのか。それは一時的な気の迷いなのか。それともやむにやまれぬ本能の訴えなのか。耳を澄まして、・・・』
指輪物語・第三部・王の帰還 私の2ヶ月にわたる旅も終わりました(第一部〜第三部・9冊)。
世界を破壊し悪の支配する場に変えてしまう一つの指輪。この魔力を滅ばすためにフロドは8人の仲間と共に、命をかけて指輪を捨てる旅に出る決意をした。頼れるのは仲間の信頼と友情。世界を滅亡から救うために9人の仲間たちの長く壮大な旅が始まる・・・。
『ハリーポッター』などに代表される現代のファンタジー、それにコンピュターゲームの『ドラゴン・クエスト』『ファイナル・ファンタジー』など「指輪物語」が原点にあることは想像できます。また、読んでいるといろん場面が、ろんな映画のシーンを思い起こします。
指輪物語・第二部・二つの塔
(トールキン)
第二部(5〜7)「二つの塔」です。第一部「旅の仲間」のラストで離散した一行のそれぞれの活躍を描いていて、思いがけない方向に物語は展開していきます。(第3部は8・9巻です)
第一部ではまだまだ物語の行方がつまめませんでしたが、第二部にはいると一転して物語が進行していきます(映画でも、最近第一部の終わりに二部の予告編を入れているそうです)。あらすじは膨大すぎて一言で表すのは難しいです・・・。
何十年も前に書かれたという、この物語に圧倒されてしまいます。スケールの大きさ、人間の力・欲、自然の力、人の目に見えないもの・・。大長編でないならもう一回読んでみたいです。
椿山課長の七日間

(浅田次郎
朝日新聞(夕刊)に1年近く連載された、浅田次郎の新聞小説です。笑いと涙の感動巨編?
「デパート勤務の椿山課長が突然死します。しかし仕事、家、家族のことなどいろいろ心残りがあり往生できず、死後の世界から3日間(死んでから7日間)だけ現世に甦ることになる。中陰役所で知り合ったやくざの親分と7歳の男の子も同時に現世に・・・。それぞれキャリアウーマン、大学教授、可愛い女の子に姿を変えて帰っていくのだが、この間に現世で抱えていた問題を解決できるのか?しかも中陰役所の規則を守りながら・・・」 この発想のすごさ!
(連載第一回からブラインドタッチの教材として利用しました)
指輪物語・第一部・旅の仲間
(トールキン)
THE LORD OF THE LINGSの第一部(1〜4)「旅の仲間」です(あと第三部まで5巻あります)。英の言語学者トールキンの書いた(大人の)ファンタジーです。LORDとは道ではなく支配するという意味。映画も第三部まであるとのことで今回は第一部のみの映画化になります。
第一、二部がは1954年、第三部が1955年に刊行されたものですが、1936年から書き出し20年近くかかって完成したとのことです。ネタは北欧神話に行き当たるそうです。
物語は「闇の王サウロンの作り出した破滅的魔力を持つ指輪が
話の中心となり、第一部では指輪の由来を知ったフロド一行が旅に出る」ところから始まります。
天切り松闇がたり

(浅田次郎)
1999.12に紹介した「天切り松・・・」の第三巻(完結)です。
裏家業の世界に生きる人間たちが、意地と見栄とに命をかける大正ピカレスクロマン!
「天下の職人なら、横着な仕事はするな。男だったら筋のとおらん嘘はつくんじゃあねえ。たとえ空っ穴だろうが酔いどれのろくでなしだろが、通さずばならねえ筋さえ通して生きれァ」
「努力の分だけ尊敬されなかったら、世の中に偉いやつなんて、ひとりもいやしない・・」
「恋愛とは、成就させることが最善の道ではない、歓喜し、かつ苦悩することが恋愛の本道」

などなど、こんなに格好良く生きたいと思う六つの闇がたりがあります。
神の子どもたちはみな踊る
(村上春樹)
久しぶりに村上春樹を読みました。文庫で「連作『地震のあとで』その1〜6まで」の六編の短編が集めてあります。それなりの重さを持っています。
1995年1月、阪神大震災。六つの短編は直接間接を問わず人の心に落とした共振!
小箱の中に自分の中身を入れた?。流木の焚き火の中で何が見える。母に邪念を抱いていた息子。身体の中に白い堅い石が入っていることを確認した女医。かえるくんが地底のみみずくんと闘って東京を守る。愛する者を箱に入れてはならない。」など・・・。

私の頭では?もあったが、若いと受けるのか?読んで判断してください。
邪魔


(奥田英朗)
2002年版「このミステリーがすごい」の第2位です。かなり面白かった。
「高校を中退した二人の友人とつるんで、不良ぶっている十七歳の高校生。妻子を交通事故で亡くした三十六歳の刑事。サラリーマンの夫と二人の子供を持つ三十四歳の主婦。・・手に入れたささやかな幸せを守るため”どんなことだってやる?”発端は小さな放火事件から、小市民のエゴの大暴走へ!」一気に読ませます。
”しあわせを怖がるのはよそうと思った。人はしあわせになりたくて生きている。そんな当たり前のことに・・・は、やっと気付いた”
「ソニックにちりん」
殺人事件
西村京太郎
博多発大分行きL特急「ソニックにちりん」に初めて載りました。そこで久ぶりに西村京太郎を駅で買って列車の中で読みました。
昔は赤川次郎などと一緒に、それなりに面白くて読んでいたのですが今回読んだらまさにTVの「ミステリー劇場」といったところでまったく冴えませんでした。宮部みゆきを読んだあととなると、なおのこといけません。
十津川警部・亀井刑事のコンビは案外好きなんですが・・。「政界進出を噂される元官僚が謎の写真を残して失踪。舞台は”ソニックにちりん”から阿蘇内牧温泉へ・・・」
レベル7

(宮部みゆき)
平成2年の作品で読んだ人も多いと思います。前から読みたかったのですがようやく実行できました。やっぱり宮部みゆきはいいですね。
この前紹介した「堪忍箱」もそうでしたが内容も文章も、それに何といっても発想がすごい。
「レベル7まで行ったら戻れない・・・謎の言葉を残して失踪した女子高生。記憶を全て失って目覚めた若い男女、その腕には「Level7」の文字が。何かを暗示しているプロローグがから緊迫の4日間が始まります」

文庫で650ページですが一気に読ませます。逆に一気に読まないと面白くありません。
肩ごしの恋人

(唯川恵)
第126回直木賞受賞。そう、下に紹介の「あかね空」と一緒に直木賞を受賞した小説です。
作者は
1955年金沢市生まれ、OL生活を10年おくったあと作家になった人です。私と10歳しか違わないのにすごい小説を書く人です。最初はとてもこんな話にはついていけないと思いましたがラストは何となくもの悲しい。(個人的には「あかね空」が好きでした)
「主人公は27歳の二人の女。”女は、綺麗で、男に大切にされて、美味しいものを食べてブランド製品で身を飾る。それが最高の幸せ”と女の武器を100%使って生きるるり子と彼女と5歳の頃から付き合っている萌」二人が体験する疑似家庭。どうなることやら・・・。
あかね空

(山元一力)
第126回直木賞受賞。作者は1948年生まれ、都立世田谷工業高校電子科卒、会社員を経て97年オール讀物新人賞受賞という人です。
「希望と不安を胸に、上方から江戸へ下った豆腐職人の永吉は、恋女房のおふみに助けられ表通りに店を構えることになる。だが、両親の死をきっかけに、おふみは永吉や子供たちとの関係に歪みが生じていき、やがて永吉夫婦の死後、子供たちに試練が待ち受けていた・・。」豆腐屋二代にわたる物語を通して家族の絆を改めて問い直す、人情時代小説です。ラストは泣けて泣けて仕方ありませんでした。
地下鉄(メトロ)に乗って

(浅田次郎)
2年半くらい前に読んだのをもう一回読み直しました。浅田次郎はこの小説を書いて初めて「小説家になった」という実感を持ったそうです。1995年吉川英治文学新人賞を受賞。
「永田町の地下鉄の階段を上がると、そこは三十年前の風景。そこで、家族の過去と向き合うことになる。自殺した兄、反目していた父、そしてデザイナーとして会社で共に働くみち子。地下鉄に乗るたび、過去へとつながる。やがて思いもしない結末へ・・」胸をかきむしりたくなるくらい切ない小説です。(私の浅田ワールドNo.1のお薦めです)
「親っていうのは自分の幸せを子どもに望んだりはしないものよ好きな人を幸せにしてやりな」
堪忍箱

(宮部みゆき)
人生の苦さが沁みる時代小説、「堪忍袋」他七篇が収められています。
お話しは、いずれも平凡な日常の中で生きる名もない人たちの一瞬の心の闇、輝き、悲しみ、やるせなさ、いじらしさが切々と描かれています。”物言わぬ箱が、しだいに人々の心をとりこにし、呑み込んでいく”表題作等いずれも秀作です。
宮部みゆきはホントにすごいストーリーテラーだと思いますが、表現力もすごいです。「踏みしめる足元の枯落ち葉が、これから交わそうとしている内緒話を先取りするように、かさこそと音をたてる。」なんてすごいと思いませんか?
おめでとう

(川上弘美)
またまた川上弘美です。”きのう大きな入り日を見ました。ぽっかりあかるく深々せつない恋の十二景”浅田次郎と違った恋の風景が切なく描かれています。
男と女のせつない物語でも浅田次郎と川上弘美の描く世界は違います。
”きんめ鯛を手みやげに恋しいタマヨさんを訪ねる「あたし」の旅”
”終電の去った線路で、男を思いつつ口ずさむでたらめな歌”
”家庭をもつ身の二人が、鴨鍋をはさんでさしむかう冬の一日”
などなど。
あっという間に読み終える本ですが、読んだあとジーンときます。何かいですね〜。
待つ女

=浅田次郎読本=
特別書き下ろし小説「待つ女」、三十年前に別れた女の面影を京都祇園で見る。夢か幻か、三十年間待ち続けた?・・・切ない愛の物語。
ー浅田次郎読本ー「浅田文学の原点」を探るロングインタビュー、デビュー以来の「自作を語る」詳細な「読める年譜」などなど、浅田次郎ファンには絶対の完全保存版です。
「人を泣かせるのは才能などではない。どんな辛い思いをしたのか。どんな涙を流したかを記憶していれば泣かせるのは簡単。でも人を笑わせるのは神様からもらった天性。そして、涙を知れば知るほど笑いは深い。…浅田次郎」
隣人


(永井するみ)
永井するみを初めて読みました。彼女は1961年生まれ、東京芸術大学音楽学部中退、北海道大学農学部卒業。コンピュター会社勤務を経て作家になったという人です。
表題作「隣人」は小説推理新人賞を受賞した作品です。何もなさそうな日常の中に忍び寄る殺意!帯封に”優しい夫に白い猫・・・満ち足りた女の生活に殺意の予感。ありふれた日常を狂わすものは、嫉妬か憎悪か?”とありました。
96年から01年までの六つの短編が収めてありますが、いずれも
予測のつかない男と女の中に生ずる殺意を描いています。!怖いですよ。
ゆっくりさよならをとなえる
(川上弘美)
”道草したい日もあるさ。”「今までで一番足を踏み入れた店は本屋、次がスーパー、三番目は居酒屋だと思う。なんだか彩りにかける人生ではある」という。川上弘美の日常をおおらかに綴る59編のエッセイです。
「センセイの鞄」を読んで大ファンになりました。
1958年4月東京生まれ・お茶の水大理学部生物学科卒という経歴、それに美人です。
「眠る前にはちゃんとお手洗いに行くのよ、と私が言うと、友人は「うん」と素直に答えた。記憶力も悪くなったし、おしっこも近くなったしねぇ。・・二人で笑いあった」」