book(2003)



クライマーズ・ハイ
(横山秀夫)
「半落ち」の横山秀夫の新境地です。作者の記者生活の経験を元に書かれた本です。
1985年8月12日御巣鷹山の日航機事故で運命を翻弄される地元新聞記者たちの一週間、それと人は何故山に登るのか?
日航機事故から17年後谷川岳一ノ倉衝立岩を登りながら今までの人生を振り返る形で物語は進んでいきます。
『クライマーズ・ハイ=興奮状態が極限にまで達して、恐怖感とかがマヒしてしまうこと』
『何で山に登るんだ?=下りるために登るんさ』 この意味がわかりますか?
ん?・・・でも、面白いです。ちなみに今年の8月12日は私にとっても最悪の日でした。
点と線

(松本清張)
40年ぶりに読み返しましたが、やはり面白かったです。高校生の時に読んだのに「東京駅4分間の目撃、国鉄香椎駅と西鉄香椎駅の情景・・・」など三分の一くらいは覚えていました。
『香椎海岸で発生した心中事件の裏にひそむ汚職事件、殺害事件の時刻に容疑者は北海道にいたというアリバイに挑む警視庁と福岡署の老刑事の地道な捜査・・・』 心をときめかして読んだ青春時代にタイムスリップしました。
松本清張の推理小説としてはこれが処女長編です。この後に「目の壁」「ゼロの焦点」などを発表し”社会派推理小説”と呼ばれるジャンルとなります。その出発点がこの「点と線」です。
グロテスク

(桐野夏生)
“・・・やがて哀しき○○”ではないけど哀しい哀しい女の物語です。「東電OL殺人事件」がモデルになっていますが、ここまで・・・という感じがします。女性だから書けるのかもしれません。
『堕落ではなく、解放。敗北ではなく、上昇。昼の鎧が夜風にひらめくコートに変わる時、誰よりも自由になる。一流企業に勤めるOLが、夜の街に立つようになった理由は何だったんだろう』
2000年bookの「東電OL殺人事件(ルポルタージュ)」よりこちらの方がはるかにいいです。
4人の女性のすさまじい生き方が、だんだん哀しくなってきます。登場人物それぞれの語り口の中に『何故・・・』という答えがあるように思えます。2003年泉鏡花文学賞を受賞しました。
パーフェクト・ブルー
(宮部みゆき)
1989年発表、宮部みゆきのデビュー長編です。今、大活躍の宮部みゆきですが原点に返ってみてもさすがに面白いです。
「高校野球界のスーパースターが全身にガソリンをかけられ、焼き殺されるという事件が起こる・・・」元警察犬を語り手として登場させています。探偵事務所に飼われ調査員加代子の手足となって大活躍。製薬会社の人体実験等をバックに・・・、なかなか読ませます。
この警察犬マサを登場させた話はこの後数編の短編が出ています。肩の凝らない爽快な読後感を味わいたいならOKです。
カッシーノ!

(浅田次郎)
久しぶりの浅田次郎ですが、世界のカジノを巡る紀行文(ヨーロッパ編)です。なかなです!
『世界最高水準の労働時間を課せられた私たち日本人オヤジが、つかのま職場を離れ、家族の縛から放たれて野に遊ぶことは果たして罪悪であろうか勤勉も勤労もむろんわれらが誇るべき美徳ではあるが、その対価として享受した幸福をまったく確認せずに過ごす人生はあまりにも虚しい』とか『日本では、働くことが美徳で、遊ぶことは罪悪なんだ。だからカジノは法律が禁じている・・・この日本人気質について、ドイツでは正否の意見が対立してしまった』

海外に出かける前には是非この本を読んでください。下手な案内書より遙かに面白いです。
本格小説
上・下

(水村美苗)
『本格小説』とは私小説、純文学とは違い社会的現実を描いたものとか言われていますがこの小説は「”嵐が丘”の燃え上がる愛が現代に蘇る」とあるように超恋愛小説です。
舞台設定、筋の組み立て、時代設定などホントに”嵐が丘”を彷彿とさせる小説です。
『ある夜、水村美苗は奇蹟の物語を聞く。米国での少女時代に出逢った実在する男の、まるで小説のような人生の話。それが「本格小説」の始まり。軽井沢で芽生え、階級と国境に一度は阻まれたこの世ではならぬ恋が目を覚ます。脈々と流れる血族史が戦後から現代まで・・・』
久しぶりに本物の恋愛小説を読んだ気持ちです。最高の雰囲気で読めます。
マークスの山
上・下

(高村薫)

’93直木賞受賞作品で今回全面改稿されたものです。映画は観ていましたが何としてでも原作を読みたかった本でした。舞台はかつて登ったことのある南アルプス北岳ということもありかなりの興味を持って読みました。すごく面白いです(読むのは文庫本にしてください)。
『16年前南アルプスで播かれた犯罪の種子は、東京で連続殺人として開花していく・・』解説は「警察小説」というより「本格小説(人間とは、社会とは・・)」と言っています。
「山とは何だろう・・・。山に登ると、日常の雑多の思いは面白いほど薄れていき、代わりに仕事や生活や言葉の覆いをはぎ取られた自分の、生命だけの姿が現れ出る。・・・」
誘拐の果実

(真保裕一)
「連鎖」で江戸川乱歩賞、「ホワイトアウト」で吉川英治文学新人賞、「奪取」で日本推理作家協会賞、山本周五郎賞などを受賞した真保裕一の本です。
映画「ホワイトアウト」は観ましたが本は初めてでした。かなり面白かったです。
「病院長の娘が誘拐され、身代金は入院患者の命。標的は病院に身を隠していた被告人・・そして、もう一つの誘拐が起きる。深まる謎と疑惑、そして翻弄される家族と刑事達・・」
よく練られたストーリーです。サスペンスでありながら人間ドラマでもあります。「『家の中にいて自分一人だけが家族から取り残されるほど辛いことはないと思う』妻の言葉が胸に響いた」
仄暗い水の底から

(鈴木光司)
久しぶりに怖いのを読みました。朝日新聞に怖〜い本として紹介してあったもですから・・・。
東京湾(海)をテーマとする七つの短編集です。その中の一つ「浮遊する水」は映画にもなりま
したが湾岸にあるマンションで起きた事故(事件)が目に見えない形で迫る恐怖。「穴ぐら」は
漁師が主人公、親から虐待を受けて育った主人公が家庭を持ったとき、父親とそっくりなことを
している、『自分がここで死ななければ子が自分と同じ運命をたどる』と・・。

それから「孤島」は新興宗教の女性信者の不気味な物語など、どのエピソードをとっても決し
てホラー小説ではないと思うのですが・・・。読んでみてください。
四日間の奇蹟

(朝倉卓弥)
久しぶりに早くラストが知りたいという本を読みました。「第一回”このミステリーがすごい”の大賞金賞」を受賞した作品です。「このミス」といっても推理とかサスペンスではありません。
「挫折した音楽家の青年と脳に障害を負ったピアニストの少女との運命的な出会い。そして山奥の診療所で遭遇する奇蹟」読み進むうちに心が癒されると共に人の優しさが身にしみます。
『天は自ら助くる者を助く、ってフレーズ・・・・。天に神様がいて、というふうじゃなくて、周囲でも環境でもいいんだと思うんですけどね、つまり、自分でなんとかしようとしない限り、人は決して救われない、そういうことを言っているんだと・・』 作者は東大文学部卒の新人です。
ハリー・
ポッター
と炎のゴブレット上下
一年に一回のハリー・ポッター第四巻です。今回は上下二巻の長さになりました。
四年生になったハリーの物語です。『初々しい恋、痛々しい死、そして恐ろしいヴォルデモートの復活』となかなか話題豊富ですがちょっと長すぎて三巻までの面白さと比べると冗長過ぎる気がします。下巻の半分くらいからは面白くて一気に読めます・・・。
ファンタジーが年のせいか退屈するようになったのかとも思いますが『指輪物語』は面白く読めたので原因は一年に一回ということがNHKの大河ドラマみたいに間延びするせいかもしれません。しかし、読み終わったら次が読みたいとは思います。http://www.harrypotterfan.net   
五郎冶殿御始末

(浅田次郎)
武士という職業が消えた・・・。明治維新の大失業の時代にみずからの誇り(生き方を)通した侍達の物語が六つ収めてあります。「壬生義士伝」にも似た不器用な男の生き様です。
電車の中で不覚にも涙を流した『柘榴坂の仇討ち』等、いつも浅田次郎には泣かされます。
「たとえ血を分けた子や孫にも身の上話など語るべきではない。人にはそれぞれの苦労があり、誰に語ったところでわかってもらえるものでもないからの」
「もし私が敬愛する明治という時代に、歴史上の大きな謬りを見出すとするなら、それは和洋の精神、新旧の理念を、ことごとく対立するものとして捉えた点であろう」。なかなかでしょう!
愛と永遠の青い空

(辻仁成)
気恥ずかしいようなタイトルですが、実に感動の物語でした。
『パールハーバー』の生き残り!終わらない青春と見果てぬ夢を抱いて生きる一人の男。その男を生涯愛しぬいた一人の女の死。人生の輝かしい一瞬を求めて、今、永遠の青空へ向けて男は・・・。というものです、このような純粋なものに涙します。
日に日に壊れていく妻「・・心が溶けていくのよ。毎日少しずつ心が溶けていくのがわかるの」
やさしさが人を傷つけることも「あなたは誰に対しても優しすぎるのよ。そんなに優しくするからみんなあなたを誤解してしまう。その人達が悪いんじゃない。あなたが悪いの」
半落ち

(横山秀夫)
「人間五十年」・・・請われて病苦の妻を殺した警察官は死を覚悟していた。全面的に容疑を認めているが、犯行後の二日間については口を割らない「半落ち」状態。
この空白の二日間を追って、捜査官、検察官、新聞記者、弁護士、裁判官、刑務官の六人がそれぞれの立場で事件を追うが・・・真相は(?)。

「このミステリーがすごい」などいくつかの賞をもらっています。キーワード「あの男にとって人生とは何だろう。生きるとは、死ぬとは、どういう意味を持っているのだろう?」
みんないろんなことを背負って生きています。『感涙の犯罪ミステリー』とにかく面白い!