book(2004)



白蓮れんれん

(林真理子)
”筑紫の女王” ”真珠夫人”とよばれた柳原白蓮の恋を白蓮と宮崎龍介のラブレター700通余りをもとに描いたものです。(柴田連三郎賞を受賞しています)
白蓮は華族に生まれ筑豊の炭坑王伊藤伝右衛門に再嫁したが7才年下の龍介と不倫の仲になり、自分から夫への離婚宣言を新聞に出し夫の家を出奔してしまうのです。
夫に多くのことを期待するから不幸になるのですよ。妻は妻で別の世界をつくればよいのです」「貧乏子だくさんとこに生まれて、親に売られるみたいに色町行かされるのも運命やろなあ、そう思って生きてきましたから人を恨んだり羨ましがったりはしまへん」  いい小説です。
ダ・ヴィンチ
コード
上下

(ダン・ブラウン)
『こんな面白い本はない』という感じです。キリスト教史の秘密を知る唯一の人物であったルーブル美術館館長が殺され、死に際に残したメッセージの意味を解き明かしていく・・・ところから始まります。名画「最後の晩餐」にあのような秘密が隠されているとは・・。キリスト教やダ・ヴィンチについて全く知らない人でも楽しめます。(ジャンルはミステリーです)
「イエスに恋人がいて、子供がいた?」「世界中のすべての信仰は虚構に基づいている・・」。

2003年出版されてから750万部突破、版権40カ国以上に売れているそうです。パリではこの本の足跡をたどる観光客が多いとか・・・。とにかく面白い、是非お読みください。
純白の証明
(森村誠一)
久しぶりに森村誠一を読みました。この作品はインターネット上(森村誠一公式サイト)に連載された『アルピニストの心』を単行本化したものです。タイトルからもわかるように山を舞台とした推理小説です、と言っても山に登る者の気持ちもしっかり描いていますので山男(女)の心境もよくわかります。官僚の生き方と山とを対比してなかなか読ませます。
『最近は山も様変わりしましてね、百名山だけを忙しく追いかける人が多くなりました』『死と隣り合わせの登攀を果たし終えても、報酬は心の充実感だけである。だが、そこに青春のエネルギーを燃やし尽くした爽快感があった』穂高が舞台です、また登りたくなりました。
殺人の追憶
(ポン・ジュノほか)
韓国で実際に起きた未解決連続殺人事件を映画化した、このシナリオをもとに書き下ろされた小説です。1986〜91年・・・6年間で10人の女性が殺された。3000人の容疑者が取り調べを受け、30万人の警官が動員されたとのこと、物語は『1986年10月23日、ソウルから50kmほど南に位置する華城(ファソン)の農村で若い女性の変死体が発見された。手足を拘束され頭部にガードルを被せられたまま用水路に放置されるという猟奇犯罪』から始まります。事件に翻弄され徐々に理性を失っていく二人の刑事の執念、そして後に残されたやり場のない無念さなど・・。読み応えがあります。映画は560万人を動員、興行収入No.1を記録しています。
輪違屋糸里・上下
(浅田次郎)
”わちがいやいとさと”と読みます。京都島原の太夫の名前です。人殺し集団『新撰組』は、元々そんなに好きではありませんが、これを読むとますます・・・になります(特に土方歳三)。物語は壬生浪士組と呼ばれた頃から新撰組となり芹沢鴨暗殺までを運命で結ばれた女達を絡ませながら進みます。下巻になると理不尽に対する男と女の哀しさが胸を打ちます、浅田節全開です。『恨みつらみはすべて忘れた。糸里は一つの恩ばかりを胸に刻んでいた』『男に残す情が女を不幸にすることを知っていた。好いた惚れたは仏の心だが、情けは魔物である』『世間のせいでおのれが人生をねじ曲げられていく理不尽を、身にしみて知っていた』死の匂い・。
蹴りたい背中

(綿矢リサ)
17歳の時の作品「インストール」を読んでから2年あまり今度は芥川賞受賞です。同年代の女の子の心情を見事に描いています。上手すぎる気がします。
『愛しいよりも、いじめたいよりも、もっと乱暴なこの気持ち』

「自分の内側ばっかり見ているから、何も覚えていない。学校にいる間は、頭の中でずっと一人でしゃべっているから、外の世界が遠いんだ」 「人にしてほしいことばっかりなんだ。人にやってあげたいことなんか、何一つ思い浮かばないくせに」
私には、『光抱く友よ』の方がしっくり来ました(年でしょうか?)両方読んでみてください。
光抱く友よ

(高樹のぶ子)
以前(1999年版)「透光の樹」を紹介しましたが、これは1984年の芥川賞受賞作品です。今頃?というのは今回史上最年少で芥川賞をもらった「蹴りたい背中」(綿矢りさ)を読む前にこちらを先に・・。物語は「大学教授を父親に持つ引っ込み思案の優等生涼子とアル中の母親をかかえて早熟な不良少女勝美。17才の女子高校生の出会いと別れ」をやさし目で描いています。『あんたにはわかってもらおうと思わんけど、人間には辛抱できる辛さと、できん辛さがあるんよ』『冬だって春だって見ようとしなければ空には何も見えやしない。友だちの気持ちだってその通り、人の親切を見ようとしなければまるきり盲目と同じで・・・』
ジェシカが駆け抜けた・・
(歌野晶午)
前作と同じでタイトルが長く”ジェシカが駆け抜けた七年間について”と言います。それにしてもまた見事にだまされました。前作『葉桜・・・』もこの『ジェシカ・・』もタイトルの持つ意味が非常に大です。過酷な女子マラソンの世界で一人のランナーが挫折して命を絶った。それから・・・不思議な物語は展開していきます。「カントクに選手生命を台無しにされたと、失意のうちに自殺したアユミ。ジェシカは自分のことのように胸を痛め、カントクを憎んだ。・・・それから七年。死んだ彼女のためにしてやれることといえば、もうこれしかないのだ・・・。」あまり内容は書けませんが読んでみてください、コロリとだまされると思います。面白いですよ。
闇の歯車

(藤沢周平)
NHK教育の読書番組で紹介されたものですがひと味違う藤沢周平の世界でした。
手抜きですみませんが『屈託ありげに黙々と飲む常連。浪人に遊び人、老隠居と商家の若旦那。そしてこの四人ににつきまとう謎の男・・・。誰が操るのか、皮肉なさだめに人を引き込む闇の歯車が回る。押し込み強盗をはかった男たちと、それぞれに関わる女たちの数奇な人生を描いたサスペンス時代長編』との解説が気に入りました。やっぱり藤沢周平はいいです。読み終えてじーんと来ます。何でも飛びつくkochanですが大好きな作家の一人藤沢周平です。この秋 「たそがれ清兵衛」に続き・山田洋次監督で「隠し剣鬼の爪」が映画化されます。
バカの壁

(養老孟司)
「話せばわかる」なんて大嘘だ!から始まります。本文から紹介します。『「バカの壁」を築いて知りたくないことに耳を貸そうとしない、その結果戦争やテロや紛争がやまない』『「個性の重視」が教育のテーマになっている。だが人間の意識は個性ではなく、共通了解を求めて進歩した。脳が支配する社会はその矛盾を見ない。これが「バカの壁」だ。』『自分は正しくて、相手は正しくない。そんな主張がでるのは、現実があやふやで、人間は確かなものを求めるからだ。そして、人間には分からない現実をすべて把握している者がいるというフィクションを考え出した。それが神だ。キリスト教,ユダヤ教,イスラム教。みんな、そんなフィクションを信じている』
世界の中心で愛を叫ぶ
(片山恭一)
どうしようかな・・と思いながらあまりに評判になっているものですから買ってしまいました。
珍しい純愛ものです。映画「ある愛の詩」や三島由紀夫の「潮騒」を何となく思ってしまいました。中学二年生の時に出逢った恋人が高校三年生で・・・。それから10年』 自分だったらどうだろう?やはり物語の中の世界?そうは思いたくはないですね。
(女)「一緒にいるとその人の嫌なところも目にするんじゃない・・・。最初はどんなにその人のことが好きでも何十年か後かには何も感じなくなってしまう」 (男)「最初は嫌だったところまで好きになる。そして百年後には、髪の毛の一本一本まで好きになっている」
 あなたはどちら?
幻夜

(東野圭吾)
2000.2.6に同じ作家の「白夜行」を紹介していますが、今度も昼の見えない切ない物語です。
話は『95年1月17日、阪神淡路地方を襲った大地震。そんな混乱の地で運命の出会いを果たした、美しい女と彼女に心ひかれる男。しかしその裏には、ある事件が隠されていた』というところから始まります。ラストはあまりにも・・・。
「なぜ俺の魂を殺した。自分たちには昼なんかないとおまえはいった。いつだって夜だといった。夜を生きていこうといった・・。彼女は一体誰なのだ。」というところがキーポイントです。
魔性の女の物語(?)、男はいつだってこうなのかも・・・。 面白いです。
葉桜の季節・
(歌野晶午)
タイトルは”葉桜の季節に君を想うということ”と言います。2004年版『このミステリーがすごい』と『本格ミステリーベスト10』の第一位になった作品です。
最後にものすごい一撃を食らいました。こんなにすごい仕掛けの本にあったのは初めてです。私の勘が鈍ったのかもしれませんが・・・。ちょっと軽い感じで始まります「主人公は”なんでもやってろう屋”を看板に掲げた元私立探偵」霊感商法会社の調査から始まり、ある老人から依頼された別れた妻子探し、暴力団組織への潜入捜査など複数のエピソードが並行して進んでいきます。しかしある一点に達したときにそれまでの世界ががらりと反転します。
影踏み

(横山秀夫)
昨年の最後もこの作者(クライマーズ・ハイ)でしたが[半落ち]の感動が忘れられずに読みました。
今回は”ノビ師”と呼ばれる泥棒が主人公です。『服役を終え出所した主人公が真っ先に足を向けたのが警察署だった。二年前、自分が捕まった謎を解くためと、あの日忍び込んだ家の女は夫を焼き殺そうとしていた。それは十五年前に双子の弟を道連れに母が家に火を放った事件と重なっていく・・・』物語は複数の話を絡めながらの展開になっています。(面白い書き方です)前半は、ぐいぐいと引き込まれますが話の展開が変わってから少し間延びするような感じです。もちろんラストはちゃんと辻褄が合います。(この作家は警察ものはピカイチですね)
誰か

(宮部みゆき)
久しぶりの書き下ろしです、早速読みましたが期待した割には少し物足りない気がしました。
もちろん期待度が大きいのでしょうが、淡々としすぎている感じです。
『財閥会長の運転手が自転車に轢き逃げされて命を落とした。広報室で働く杉村三郎は、義父である会長から遺された娘二人の相談相手に指名される。妹が父親の思い出を本にして、犯人を見つけるきっかけにしたいというのだ。しかし姉は出版に反対している・・』と出だしはいいのですがラストまで盛り上がりがありません。でも面白い!(優柔不断な感想でスミマセン)。
「人は一人では生きていけない。どうしようもないほどに、自分以外の誰かが必要なのだ」・・・