book(2006)



赤い指

(東野圭吾)
今年3冊目の東野圭吾です。やはり、切なくてすごいです。
「七歳の女の子を中学生の息子が殺し、自宅の庭に捨てて、その後始末を親がする」というだけの物語です。読むものには犯人はわかっているし死体の始末も幼稚なもの、これがミステリーなの?です。『刑事というものは、真相を解明すればいいというものではない。いつ解明するか、どのようにして解明するか、ということも大切なんだ』と。犯罪を超えたその先に何があるのか・・・。”事実以上に大切なもの”とありましたが、読み応えがあります。

『老人だからこそ消えない心の傷があったりする・・。理解できなくても尊重することだ』
風の盆恋歌

(高橋治)
文章の行間から滲み出る情感、そこから想い起こされるされるシーンと、奏でられるような胡弓と水の音が聞こえてくる、美しい小説です。『ぼんぼりに灯りがともり、胡弓の音が流れるとき、風の盆の夜がふける。越中おわらの祭りの夜に、忍び逢う一組の男女。互いに心を通わせながら離ればなれに生きた20年の歳月・・』の解説に惹かれました。渡辺淳一はギラギラして好きではありませんがこれは違います。加藤登紀子も書いています『不倫物語はあまり得意ではないけど・・、この本に漂うある種のかぐわしさに引き込まれてしまう』と。喇叭を吹き鳴らして馬鹿騒ぎするどこかの祭りとは違います。哀しさ、切なさを感じる風の盆に行ってみたい!
まほろ駅前多田便利軒(三浦しをん) 第135回直木賞受賞作品で作者は1976年生まれの女性で早稲田大学文学部卒です。この人の作品は初めてでしたが、読みはじめは何となく???という感じでしたが読むほどに面白くなっていきます。『便利屋』という仕事を知っていますか?【ペットの世話・塾の送り迎え・倉庫の整理・恋人のふり・・・】でも、それだけでなかったというのがこの物語です。
「愛情というのは与えるものではなく、愛したいと感じる気持ちを、相手からもらうことをいうのだ」 「ひとは言葉や態度でいくらでも自分を装う生き物だからね」など、何となく実感します。
痛快で、やがて熱く胸に迫りくる便利屋物語です。
あやし うらめし あなかなし
(浅田次郎)
「読むほどに、じんわり、ほろりと心が満たされ、忘れかけていた懐かしい記憶がはらりと蘇る。文学の極意は怪談にあり、という言葉を、これほど見事に体現した本を私は知らない」と書評にありました。七つの話が収められています。いゃ〜、妖し美しの世界です。
一日に一遍ずつ楽しんで読みました。 以下、気に入ったセリフです。
「どんな不幸でも、感情がなければ苦労ではない」「人間には誰しも生まれついて、本人の希う幸福とは無縁の使命と責任があると思う」「何でもかんでも神様に頼ろうとしてはいけない。人のできぬことは神様にだってできはしないのだ」ぜひ、読んでください。
出口のない海

(横山秀夫)
私はこのような状況にはとても耐えられません。神風特攻隊と同じ人間魚雷です。人間魚雷”回天”は発射されるとそれが死を意味します。
『半落ち』の横山秀夫原作(山田洋次シナリオで映画化されます)です。「甲子園優勝投手・並木は学徒動員で海軍へ・・・。家族、恋人も捨てて何故回天への登場を決意したのか?」
『この特殊兵器は、挺身肉薄一撃必殺を期するののであり・・・』この命令で人間魚雷とわかりますか?何もわからずに死んでいった若者たち。『人間が生きていくためには夢が必要だ。俺は死ぬことを夢に生きることができなかった』当たり前ですよね。
海神丸

(野上弥生子)
『1916年12月25日早朝、大分県の下の江港から男4人を乗せた一隻の船が出航した。日向よりの島々に向かった海神丸は突風にさらされて遭難。漂流すること数十日、飢えた乗組員は仲間を殺して肉を食らおうと企てる・・』野上弥生子の最初の代表作と言われるこの本は実話に基づいて書かれたものです。極限状態の人間を描き凄惨な物語になっています。
1922年発表のこの本を今読んだのは西日本新聞の「九州の100冊」を読んだからですが、恥ずかしながら野上弥生子が臼杵出身と知りませんでした。『大切なのは、美しいのは、貴重なのは知性のみである』と弥生子は日記に書いているそうです。時には名作にふれましょう。
一応の推定

(広川純)
第13回松本清張賞を受賞した本です。浅田次郎始め選考委員の全会一致で決まったとか・・。表現の仕方に何となく松本清張を感じさせる部分がありますが面白いです。
『”一応の推定”というのは、保険の契約者が遺書を残さないで自殺したとき、典型的な自殺の状況が説明されれば裁判官に認定される理論』です。物語はこの推定のあり方を中心に「轢死した老人は事故死だったのか、それとも愛しい孫娘のために自殺したのか?ベテラン保険調査員の執念の調査が、二転三転しながら真実にたどり着く・・」
地味ですがなかなか読み応えがあります、推理ファンにはお奨めです。
ウルトラ・ダラー

(手嶋龍一)

作者はNHK前ワシントン局長です。北朝鮮による拉致・偽百ドル札・ミサイルそれに米国、中国、ロシア、ウクライナ、フランス、そして日本と一本の線で繋がります。何故コイズミがキム・ジョンウイルと会談できたのか?など・・。スパイ小説です、読むほどに北朝鮮という国そして背後には大国のしたたかな外交戦略がかいま見えてきます。物語は「昭和43年暮れ、若い彫刻職人が拉致された。それから35年の月日が流れ・・。ダブリンに精巧な偽百ドル札があらわれる」ところから始まります。面白いです。それと、ファッション、食事、ワイン、高級車、篠笛や浮世絵などめくるばかりの世界も堪能できます。http://www.ryuichiteshima.com/

お腹召しませ

(浅田次郎)
今回の新刊も武士の物語でした。幕末から維新への激動の時代に自分を失わなかった男たちの話で浅田節満開です。『昔のおさむれえてのは、それほどいさぎよいもんじゃあなかった』と帯封にありましたが、どうしてどうしてホンモノの男を描いています。
六つの短編が集めてありますがその中から傑作な一文を「今日ばかりは明るく朗らかな妻の気性が癪に障った。呑気な母と陽気な妻と、もし自分が討死んだとしたら、この女どもはどんな顔をするのであろうと、次郎左は思った。しかしどう考えても、二人の嘆く顔が思いうかばぬ』
フフフ!たくましく健気なおなご連中もたくさん出てきます。やっぱり浅田次郎はいいです。
町長選挙

(奥田英朗)
伊良部先生第3弾です。今度は4人の患者が出てきます、一人目がナベツネ、二人目がホリエモン、三人目が黒木瞳と有名人ばかりです。最後は東京都のある離島へ看護婦のマユミちゃんと二人で赴任、そこで町長選挙に巻き込まれるというものです。
ただ、今回は実在の有名人をモデルにしたせいか最後の詰めが甘いような気がします。あと一歩辛辣にいって欲しかったという感じです。ラストの町長選挙は伊良部先生が引きこもったり見せ場一杯です。それと今回は我がマユミちゃんが大活躍です。
『人間がルールを守るのは、自分に害が及ばないときだけだ』妙に納得しました。   
灰色の北壁

(真保裕一)
『ホワイトアウト』の作者です。剣岳、標高七千bの北壁、山で死んだ息子を思い自分の人生を問う登山と三編が載っています。山岳ミステリーとありましたが、山登りそのもを面白く書いてあります。三編とも女性が絡んでいるところが普通の山岳小説と違いロマンを感じます。
表題作、灰色の北壁は「世界のクライマーからホワイトタワーと呼ばれ、恐れられた山がある。死と背中合わせのその北壁を一人で登攀した天災クライマー。その業績に疑惑が・・。それを晴らすために再び山に向かった」山こそが、その真相を知っている。というものです。
こんな本を読むといつも自分が登っている気になります。面白いで〜す!
包帯クラブ

(天童荒太)
『永遠の仔』の天童荒太の6年ぶりの長編です。過去に受けた小さな傷を埋めるために、その場所に包帯を巻くことで気持ちを軽くしようという話です。主人公「ワラ」達が作った『包帯クラブ』をネットに公開し、依頼のあった傷(場所)に包帯を巻いていくんですが、軌道に乗ったときに、あることによって頓挫してしまいます。大きな傷を受けていたのは誰?・・(ちょっとネタバレです)。「世界の片隅の誰かが知っていてくれる、私の痛み、私の傷を知っていてくれている、だったら、私は少なくとも明日生きていけるだけの力はもらえるんじゃないかと‥』。
今の若者に読んでもらいたいです。優しさにラストはちょっぴり泣けました。
あなたに不利な証拠として
(ローリー・リン・ドラモンド)

ルイジアナ州バトンルージュ市警に勤める5人の女性警官が主人公です。一人ずつにスポットを当てた短編が10編収まっています。犯人殺しの警官、夫の殉職、父への殺意、家庭崩壊、無惨な交通事故死など、警官という仕事がいかに過酷で精神的に追い込まれてくか(生身の警官)を描き、あまりの重量感に一気に読めるというものではありません(12年を費やして完成した本です)。時には涙を流し、時には吐き気をもよおしながら・・。素晴らしく読み応えのある本です。ある評に「読みながら何度も心が震えた。興奮・感動・感涙・暖かな余韻、衝撃を受けることはあっても心が震えることは滅多にない」と、まさにその通りです。お薦めです!

超バカの壁

(養老孟司)
2004年に「バカの壁」を読んだので読むつもりはなかったのですが次に出た「死の壁」(読んでいない)からの続編らしいです。いろんな相談や質問を編集部の人がまとめて作ったのが本書とのこと。いろんなものの考え方見方があるということに納得します。
『税金はガンで死にそうな人でも収入さえあれば取られています。だから血税というのです』 『なぜイライラする人が増えているのか・・。脳の特性と関係なくイライラしている場合は、自分の脳に戻さないで、完全に人のせいにしているのが原因です』
『自然が消された・・・都市化した社会では「子供らしさ」ということに価値を見いださないようになってきました』などなど・・。
空中ブランコ

(奥田英朗)
前作以上にブレイクです。5人の患者が伊良部先生の神経科を訪れます。人間不信のサーカス団員、尖端恐怖症のやくざ、ノーコン病のプロ野球選手、強迫症の女流作家など悩み多き人たちが立ち直っていきます。そうです人間生きていたらいろんなことにぶつかります『・・・負けそうになることは、この先何度もあるだろう。でも、その都度いろんな人やものから勇気をもらえばいい。みんな、そうやって頑張っている。自分の小ささを恥ずかしく思った。・・・世界のあちこちで起きている激しい出来事に比べれば自分の仕事など砂粒のようなものだ・・』と。
悩み事のある人は是非、伊良部総合病院神経科のドアをたたいてください。
イン・ザ・プール

(奥田英朗)
2002年に「邪魔」で大藪治彦賞受賞(2002年版bookで紹介)した奥田英朗の本です、この作品の続編(?)「空中ブランコ」が131回直木賞を受賞しました。
あっと、いう間に読みました。とにかく面白いです。作家って凄いです、よくこんなことを考えつくものだと思います。絶対のお薦めです。物語の舞台は伊良部総合病院神経科『神経科を訪ねた患者達は甲高い声で迎えられる、そこには色白で太った精神科医と色気満点のクールな看護婦マユミちゃんが迎えてくれます』訪れる人はもちろん変だが治療する医者はもっと変?
読んで気持ちがスッとします、もちろん「空中ブランコ」も買いました。楽しみぃ〜い!
信長の棺

(加藤廣)
自分を信長になぞらえる小泉の愛読書と聞いて、ぅ〜んと思ったが読みました。
主人公は信長の唯一の伝記「信長記」の作者太田牛一。信長の側近であり信奉者でもあった彼が信長の遺骸を探す物語です。信長の棺は、改革と殺戮の果てにそれなりの場所に・・・。
当時でも信長の評価は分かれており、牛一は改革者として尊敬していたが、殺戮者として否定的にとらえる者もたくさんいた。最後には牛一も信長の性急さ、焦りを認めざるを得ない。「足元が見えなかっただけでなく、足元の物を見境なく蹴散らし、排除した。無辜の民となるとなおのこと」。弱者を蹴散らしている誰かと同じです。信長も、秀吉も、家康も好きではありません。
推理小説

(秦建日子)
ミーハー的に読みました。TVドラマ「アンフェア」の原作です(観てはいません)。作者はハタタテヒコと言います、男で脚本家です。ヒロイン、雪平夏美は30代、警視庁捜査一課刑事バツイチ、子持ち、大酒飲み、部屋乱雑、検挙率NO.1、無駄に美人。とあります。物語は「会社員、女子高生、編集者・・全く面識のない人が相次いで惨殺され、事件をつなぐのは『アンフェアなのは誰か』と書かれた本の栞』のみ・・」といったふうに始まります。中で『推理小説は結果が分かっているから退屈だ。常に伏線は思わせぶりで怪しい人物はミス・リードで、読者はフェアに驚かせてもらうことを作者に望む』と・・、どうでしょう?一気に読めます、気分転換にどうぞ!
王さま消えたその後で
(中山智幸)
作者が「文学界新人賞」をとった次の作品です。20代半ばの女性の迷い・揺れ動く心を非現実的に描いています。ストーリーのない話によく理解できませんでした。
自分がずいぶんと若かった頃半分も理解できないのに安部公房、大江健三郎に凝っていたのを思い出しながら読みました。『(いろんな)迷いを赤い糸に助けられ生きてきた二十数年、もちろん今もまだその赤い糸から離れられずにいるわたし・・王様消えたあとでどうなるだろう?』
歳をとったせいか、このような感性についていけない気がしますが惹かれるものはあります。次の作品を期待してしまいます。(身贔屓と思われるかもしれませんが凄いです)
文学界4月号掲載
レイクサイド

(東野圭吾)
重い本を読んだ後に軽いミステリーをと思って読みましたが、映画にもなったとかでなかなか面白いでした(映画は観ていませんが)。もちろん東野圭吾ですから・・面白いはずです。
「妻は言った『私が殺したのよ』・・・湖畔の別荘には、夫の愛人の死体が横たわっていた。四組の親子が参加する中学受験の勉強合宿で起きた事件・・。真相は思わぬところに」

一日で読み終えるようにすっと入っていきます、お受験が謎を解く鍵です。映画は役所広司 、薬師丸ひろ子 、柄本明など芸達者で固めていたようで観たかったです。
外国の推理小説を読んでいるような完全な謎解きの物語です、お楽しみください。
疾走(上・下)

(重松清)
「流星ワゴン」で気をよくして重松清ものを読みました。参りました!聖書(読んだことはないが)を読んでいるような気分になりました。これが映画化されています(残念ながら観ていません)がどんな映画になったのだろうと思います。物語は「中学生のシュウジは兄の犯罪をきっかけにクラスで孤立、一家離散・・想像を絶するような孤独の中『人とのつながり』を求めて駈けぬけた15歳の壮絶な生きざま」です。う〜ん、ラストは救われたのだろうか?
『仲間がほしいのに誰もいない一人が”孤立”、一人でいるのが寂しい一人が”孤独”、誇りのある一人が”孤高”』 『運命より宿命が恐い・・運命はどうにかなる、宿命はどうにも出来ない』
国家の品格

(藤原正彦)
ベストセラー1位の本、やはり読みました。作者は新田次郎、藤原ていの次男です。
溜飲が下がりました。いろいろ書くより本編の中から『なかなか克服できない不況に狼狽した日本人は、正気を失い、改革イコール改善と勘違いしたまま・・』『ヒトラーは独走したというより、国民をうまく煽動し、その圧倒的支持のもとに行動した』『市場経済は少数の勝ち組と大多数の負け組にはっきり分ける仕組み』などなど・・。そんな中で『もののあわれ(人間の儚さや、悠久の自然の中で移ろいゆくものに美を発見する感性)』や『情緒(野に咲く一輪のスミレを美しいと思う心)』の大切さを説きます。あ〜あ!三馬鹿大将(コイズミ、タケナカ、タケベ)に読ませたい。
銀齢の果て

(筒井康隆)
『銀嶺』ではありません『銀齢」です。国が老齢人口の減少を図って、地区指定で七十歳以上の老人たちに殺し合いをさせる。かといって『バトル・ロワイヤル』老人版でもありません。
「この制度は言うまでもなく、今や爆発的に増大した老人人口を調節し、ひとりが平均七人の老人を養わなければならぬという若者の負担を軽減し、それによって破綻寸前の国民年金制度を維持し、同時に、少子化を相対的解消に至らしめるため」という大義名分で老人を殺します。

まさに今の世の中、老人いじめの『年金改悪』『医療費の負担』など国の無策を弱い者に押しつけ『痛みをわかれ』と言う小泉政治への痛烈な批判?でも、殺し合いには参った!
流星ワゴン

(重松清)
『死んじゃってもいいかな、もう・・・。38歳・秋。その夜僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。そして、自分と同い年の父親に出逢う・・』荒唐無稽なファンタジーです。ところがどうして、いろんな意味で身につまされます。子供の頃は父親は大きくて恐いもの、しかし自分がその年になったらどうだろう?一方自分が子供の年と同じ頃には何を感じていたのだろう?父親としての今までの生き方を真剣に考えさせられました。ファンタジーの中にも父子の関係がしっかりと描かれた素敵な物語です。
女性より男性(父親)が感動する本では?”本の雑誌”年間ベスト1に輝いた傑作です。
報復ふたたび
(ジリアン・ホフマン)
続けて読みました。『報復』から3年後です。前作で一応解決したと思われた事件がとんでもない方向に発展します。これでもかというくらいヒロインの検察官が窮地に落ちていきます。
「3年前の事件も忘れかけようとした頃、警官の連続殺人事件が起こる。被害者は3年前の事件に関わったものだけ・・・。まだあの悪夢は終わっていなかった」
作者自身が重罪担当検察官としてのキャリアを持っているだけあって事件の現場、法廷でのやりとりなど真に迫るものがあり一気に読ませます。

『法が求める正義と”人として正しいこと”とは必ずしも同じではない』
報復

(ジリアン・ホフマン)
『法廷もので、サスペンス・スリラーで警察小説で、しかも女性心理を描いた小説』と訳者が書いていました。『羊たちの沈黙』系です、かなり興奮して読みました。コーンウェルより読みやすかったです。でも女性の方がこんな凄い本が書けるのですね。
「若い金髪美人ばかりを狙い、何人もの被害者をいたぶったあげく生きたまま心臓をえぐり出して殺す殺人鬼・・・。その犯人は12年前に自分をレイプした男だった。検察官になった彼女は偶然にその事件の担当に・・彼女は報復を?」イヤ〜面白かったです。読み終えて、何となく続きが・・と思いました。やはり出ました続編『報復ふたたび』また、寝不足に・・。
博士の愛した数式
(小川洋子)
本屋さんが選ぶ第一回本屋大賞、第五十五回読売文学賞を受賞した本です。
『自然数、完全数、素数、友愛数・・』など覚えていますか?数学がこんな愛しいものとは・・・。数学をもう一回勉強したくなります。といっても数学のお話ではありません、素敵な小説です。

80分しか記憶がもたない天才数学者と家政婦とその10歳の息子との愛の物語です。
「交通事故で、博士は記憶がたった80分しかもたない。言葉の代わりに数字を持ち出す、それが、他人と話すために博士が編み出した方法だった」人を慈しむ、無償で尽くす、敬いの心を忘れずに、常に数字のそばから離れようとしなかった博士・・。私は一生博士を忘れない!
東京タワー
(リリー・フランキー)
恥ずかしながら、リリー・フランキーという人(TVにはよく出ているらしい)を知らずにかおやんの推薦で買った本でしたがこれがなかなか素晴らしい小説でした。
『オカンとボクと、時々、オトン』という副題が付いています。ということはお母さんと自分、お父さんと自分それから友情、青春を綴ったものです。読んでいて何か心の中に自分の故郷、人生を思い浮かべてしまいます。また、懐かしい(?)筑豊弁で溢れているところも物語を身近に感じさせます。やはり泣けましたが読後感最高です
作者は、美大卒で、文章家、小説家、コラムニスト、絵本作家、イラストレーター作詞・作曲家など・・・。
容疑者Xの献身
(東野圭吾)
2006年版「このミス」「週刊文春ミステリーベスト」「本格的ミステリ」など3件でベスト1になった本です。
「天才学者でありながらさえない高校の数学教師に甘んじる石神は愛した女を守るために完全犯罪を目論む、友人の物理学者湯川は果たして真実に迫れるか・・」と言ったものです。でも今回、謎解きファンの私にとってはある程度解くことができました。『崇高なるものには関われるだけでも幸せなのだ。名声を得ようとすることは、尊厳を傷つけることになる。〜〜人は時に、健気に生きているだけで誰かを救っていることがある』と、純愛がキーポイントです。

この人の本は「白夜行」もそうですが、何となく切ないものがあります。