book(2009)



用心棒日月抄
(藤沢周平)


42
昭和53年に発刊された本ですが、何年か前に買って本棚に眠っていました。
「用心棒シリーズ」第一弾です。彼の作品は、権力や非情さの中で、わずかな真実を求めようとする人物を描いて、どちらかというと暗い作品が多いのですが、これだけに止まっていたくないという気持ちからこのシリーズが出たようです。連作の形を取りながら10編の話しが語られます。「青江又八郎は二十六歳、訳あって許嫁の親を切り脱藩、国元の刺客に追われながらの用心棒家業。ちまたを騒がす赤穂浪士との関わりもちらほら・・」。やっぱり藤沢周平はいいなぁ〜!と唸ってしまう面白さです。時代小説は何年経っても色あせませんね。
孤宿の人
上下
(宮部みゆき)


41
久しぶりにこの人のものを読みました。解説で児玉清が『この本を読み終えた人は、素敵な友と出会えた喜びに似た不思議な心の高揚を身内に感じていることと思う』と書いていますが、まさにその通りです。じわーっと感動が身にしみてきます。「運命に翻弄される讃岐国・丸海藩のお家騒動を背景に、江戸から金比羅代参に連れ出された九歳の無垢な少女ほうの魂の成長を軸に、魅力ある人物を絡ませながら・・・」話は進んでいきます。『雨は誰の頭の上にも同じように降りかかる。しかし、降り止まぬ雨はない』『世の中を直すなどという荒技はな、誰にもできることでは無いのだ。時と天運がそろって初めてなし得る』
ラッシュライフ

(伊坂幸太郎)


40
今年この人の本は5冊目です、 読んで「これはいったい何?」という感想ですが『無理』と同じ群像劇です。五つの話しが併走して進みます、いろんな話しが交錯しながら最後はちゃんと結びつくところがさすが・・。読み終えて何となく騙されたような気がします。
「泥棒を生業とする男、父に自殺された青年は新興宗教の神に憧れる、女性カウンセラーは不倫相手の妻を殺そうと計画する、リストラされた男は野良犬と拳銃を手に入れる、それにバラバラ死体登場・・」。先の読めない展開にワクワクしながらあっという間に読んでしまいます。ホントに騙し絵的な寓話です。今、熱い作家の一人でしょう。
いいかげんがいい

(鎌田實)

39
NHKラジオ「いのちの対話」でお馴染みの鎌田先生の新しい本です。『がんばらない』等多数の著書がありますが、ラジオを聞いて読んでみたくなりました。納得することばかりです。一家に一冊心の常備薬としてお備えください、くじけそうになったら開いてみるといいです。
『”がんばる”というメンタリティは、ストレスやうつと背中合わせにある。うつ病と診断されなくても、うつうつとしている人、物事をネガティブに考えてしまう人が日本人の8人に1人はいる』というデータがあるそうです。『いいかげん』とはほどほどに生きようと言うことです。仕事や健康や人間関係に悩んでいる人、そうでない人も読んで下さい。気持ちが楽になります。
無理

(奥田英朗)


38
『最悪』から10年、『邪悪』(2002年book)から8年、経って今度は『無理』です。『空中ブランコ』の作者がこんな物語を書くのですからすごいです。「・弱者を主張する身勝手な市民に嫌気がさしているケースワーカー(市役所職員)、・東京の大学に進学し、この町を出ようとしている高二の女子高生、・暴走族上がりで詐欺まがいの商品を売りつけるセールスマン、・スーパーの保安員をしながら新興宗教にすがる、孤独な48歳の女、・もっと大きな仕事がしたいと、県議会に打って出るつもりの市議会議員二世」この5人、合併でできた地方都市に暮らしているが、全てに出口のない生活をしている。彼らに明日はあるのか?
こんな女房に・・
(きみまろ)

37
綾小路きみまろの人生劇場「こんな女房に誰がした」です。最後(7章)に「爆笑ライブ」が掲載されていますが第6章まではきみまろの人生観が出ています。
『諦めずに同じことを続けていけばいいこともある』 『50歳を過ぎて、残った人生だけは、もう隠しごとをしないで正直に生きていたい』 『今日生まれた赤ん坊だって、150年後には確実に死んでいる』 『世の中、豊さばっかり求めて生きているけども何が豊かさなのかわからなくなっている』 『この坂を越えたら幸せが待っている』 『今日という日はやってこないけれど、明日がやってくるんだ』など、苦労人の本音が伺えます。
のぼうの城
(和田竜)

36
小説は本作がデビュー作となる和田竜の本で、2009年本屋大賞第二位の本です。
『でくの坊→のぼう様』と呼ばれた男が石田三成二万の軍勢にたった二千で立ち向かう話しです。江戸時代とは違う戦国時代の武士の豪快な活躍に胸がスカッとします。
「浮き城と呼ばれる忍城(おしじょうといい、現在の埼玉県行田市)を豊臣の軍勢(石田三成)が攻めるが一度ならず、水攻めによる二度の攻めにも屈しない。何故・・・、そこにはのぼう様と呼ばれる成田長親の存在があった」。でくのぼうと呼ばれながら民百姓の側にたった総大将がいたと言うことです。心が弾みます。
神去・・・
(三浦しをん)


35
『神去なあなあ日常』というタイトルの本です。『風が強く吹いている』の三浦しをんです、面白いですよ。宮崎駿監督もお薦めの本です、やはり映画にすると面白いだろうなと言う感じがします。前作の『風が・・・』もそうですが作家というのはすごいと思います。
舞台は三重県山奥(熊野古道からも見えた山々です)「高校卒業と同時に主人公が放り込まれたのは三重県にある神去(かむさり)村、林業に従事し、自然を相手に生きてきた人々に出会う」のですが、それは都会から来た人間にはハチャメチャな世界、でも美人も多い・・。だから村を逃げることができない?青春小説です。
院長の恋
(佐藤愛子)

34
大正12年生まれ85歳の佐藤愛子の作品です。表題作ほか四つの短編を集めたものです、どの作品を一味、二味も違う味が出ています。
どうしようもない人間の『性』を描いていますが、思わず”フフフ”と笑ってしまう中に哀切を感じます。作者が『人間へのつきせぬ興味からこの本ができたのですね』と言っています。
「人間は馴れる、諦める、忘れるの三つの能力を神様から与えられていて、だから生きて行けるのだと思っていたがね、忘れないから諦めないから生きつづけるということもあるんだな」と、納得!『恋は一種の病気』という「院長の恋」は絶品です。
白馬山荘殺人事件
(東野圭吾)

33
昭和61年、東野圭吾の書き下ろし三作目に当たる作品です。ミステリーが探偵小説と呼ばれていた時代を思い出します。マザーグースの歌に秘められた謎、密室殺人など懐かしさがてんこ盛りです。探偵役はピチピチの女子大生二人「一年前の冬、謎の言葉を残して自殺した兄、その死に疑問を抱いた妹の女子大生ナオコと親友のマコトが白馬のペンション『まざあぐうす』を訪れ真相を追求する」というものです。
最近、この手のミステリーはあまり見なくなりました。気晴らしにはいいです。
海辺のカフカ・上下
(村上春樹)

32
平成14年に発表されたのものです。やっぱり面白いです。「1Q84」以来村上作品の過去のものを読んでいますがこれも不思議な物語です。面白いけど「何だったんだろう?」と思える本でもう一回じっくり読んでみたくなります。
「少年カフカが15歳の時『世界で一番タフな少年になる』と言って家出をする』ところから物語は始まります。いろんな人や物事に出合いながら・・。一方別の物語が同時並行で進んで最後には結びついていきます。『想像力の足りない人をいちいち真剣に相手にしていたら体がいくつあっても足りない』と・・。魅力的な人間がいっぱい出てきます。
悪人・上下

(吉田修一)


31
この人の本は初めて読みました。2007年大佛次郎賞、毎日出版文化賞を受賞しています。また、2010年映画化されます。出会い系サイトから起こる殺人事件を軸に話は進みますが、出会い系サイトの怖さが身にしみます。「土木作業員の清水は出会い系サイトで知り合った女性を殺害してしまう。母親に捨てられ、祖父母に引き取られ手伝いに追われる生活をおくっている。その彼が何故、殺人にはしったのか?本当の悪人とは?」読みながら孤独の中にいる若者、何も考えることのない若者など、に対して腹が立ってきます。
作者が長崎出身ということもあり、長崎・佐賀・福岡が舞台で風景や道が目に浮かびます。
ブルータスの心臓
(東野圭吾)


30
1989年に発表されたのものです。何の財産も持たない天涯孤独の青年が一気に太陽の当たる地位まで駆け上がるには・・。大阪〜名古屋〜東京を結ぶ完全犯罪ルートがスタートする。このアリバイ作りはなかなかのものです。
「人工知能のロボット開発を手がけ、将来を嘱望される拓也、オーナーの末娘の婿養子候補になるが・・、その時利用していた女から妊娠を告げられ動揺する。そこにある殺人計画が・・・」しかし、話しは思わぬ方向へ展開していきます。
今から20年前の作品ですが結構面白く読めます。気分晴らしにどうぞ!。
ひまわりの祝祭
(藤原伊織)


29
「テロリストのパラソル」「名残り日(2008年book紹介)」の藤原伊織の本で「テロ・パラ」のあとに書かれたものです。2作品と同様読後感がすごく良いです。ラストはやはり泣けます。「妻が妊娠を隠したまま自殺した。ショックで隠遁生活を送る主人公に、元上司から一晩で500万円、カジノで負けてくれとの依頼がくる。その日から妻に似た謎の美女、闇社会の大物、やくざなどに付け回され生活は一変する。謎を解く鍵は、ゴッホの名画「ひまわり」だった」ハードボイル的な中に何とも言えぬ哀愁を感じます。ある評論家が『ああ、なんと美しい小説だろう、特に終盤の場面が・・』と書いていますが、まさにそんな感じです。
アトランティスのこころ.
上・下
(S.King)
28
数年前に買って本棚に眠っていました。S.Kingのものは20本以上映画化(「シャイニング」「スタンド・バイ・ミー」「グリーンマイル」「ショーシャンクの空に」etc.)されています。もちろんこれも映画化されていますが残念ながら観ていません。1100ページを超える長編ですが読み終えるとスタンド・バイ・ミーを思わせ懐かしさが胸を締め付けます。人生の終幕で過ぎ去った子供時代を振り返ることになります、人は多くのものを失いながら大人になるということを実感させられます。それに現実の厳しさ、特にベトナム戦争で人間が狂気に走るすさまじさ、この本はいろんなことを読む人に教えてくれます。さすがに読み応えがあります。
悩んだ時は・・・
(鈴木みき)


27
タイトルは『女子のための登山入門悩んだときは山に行け!』です、にゃんこちゃんお薦めの本(登山コミックエッセイ)です。山登りの喜びと、すぐに使える登山のノウハウを笑えて使えるコミックで紹介しています。全部がイラストと漫画なのであっという間に読み終えますが専門家ではない人が書いただけあって面白いです。
何も女子でなくても、登山に興味を持っている人にはタメになります。登山道具のこと、装備のこと、服装(女子編)のこと、地図のこと、日帰りから縦走登山まで、温泉とお酒のこと、等などそれに『何故山に登るか』という気持ちもよくわかる本です。一読ください。
世界の終わりと・・
上・下
(村上春樹)

26
タイトルは『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』です。村上ファンにしては”今ごろ”と思われるかもしれません(1Q84的な物語の進み方で文に勧められました)。
1985年の作品で谷崎潤一郎賞を受賞しています。話しは「「世界の終り」と「ハードボイルド・ワンダーランド」の章に分かれており、それぞれ一人称(「僕」と 「私」)で語られます。 「ハードボイルド・ワンダーランド」は、近未来と思われる世界で暗号を取り扱う「計算士」として活躍する「私」と、「世界の終り」は、一角獣が生息し「壁」に囲まれた街、「世界の終り」に入ることとなった「僕」の話し。不思議な物語です。村上春樹のメッセージが届くでしょうか?
ストロベリーナイト
(誉田哲也)

25
『こんな警察小説を待っていた!このスピード感、このハイテンション!こいつは面白すぎる!』という宣伝コピーに思わず引き込まれ買ってしまいました。
この人ののは初めてでした、面白いのは面白いのですが殺しの場面ではちょいと引いてしまいそうな残虐描写が出てきます。この手に弱い人にはお勧めできません。「溜め池近くの植え込みから、ビニールシートに包まれた残虐死体が発見された。警視庁捜査一課の警部補姫川玲子が事件の連続性に気付く・・・」とくせ者揃いの刑事達も魅力ですが、一方ネットの裏世界ではホントにこんなことがとが起きているのかもしれません。怖い話しです。
赤い指

(東野圭吾)


24
TSUTAYA書店の文庫本でベスト1の売れ行きだったので買いました。読み始めて2〜3ページすると???、読んだような話だなと思い調べてみると2006年に読んだ本でした。でも、結論を思い出せないのと面白いのでまた読んでしまいました。二回読んでも面白いです。『人は事件の裏側にある別のものを隠し、苦しんでいる。刑事加賀恭一郎は、その苦しみから救済し、人の心を解きほぐす』内容は2006年のbookをご覧ください。
前にも書きましたが東野圭吾の本はどんなテーマであれ面白いと思います。今度『さまよう刃』(2008年book)が映画化されますが楽しみです。
愛という言葉・・・
(沢木耕太郎)

23
タイトルは『愛という言葉を口にできなかった二人のために』というもので、映画エッセイです。私もこんな風に映画を鑑賞できたらいいなと思います。沢木耕太郎の本は『棟』を初め何冊か紹介しましたが映画に関してもなかなか鋭い目を持った人です。30本の映画評ですが、その中で私が観たのは7本だけでした。でも、『硫黄島からの手紙』とか『父と暮らせば』など、目から鱗です。。また、観ていなくても『日の当たる教室』の中で「直面する現実のために夢への挑戦を先延ばしにする。そういう日を過ごすうちに“いつか”という時を見失う。迫りくる老いの中で、ついにその“いつか”がこなかったことを知る」と、観たくなります。
一瞬の風になれ
1.2.3
(佐藤多佳子)
22
2007年に吉川英治文学新人賞、本屋大賞をもらった、陸上競技に青春をかける高校生を描いた物語です。「風が強く吹いている」と違ってこちらは短距離走者が主人公ですが思わず自分も走りたくなるくらい面白いです。(TVドラマにもなっているそうです)
ある評に『春野台高校陸上部。とくに強豪でもないこの部に入部した2人のスプリンター。ひたすらに走る、そのことが次第に2人を変え、そして、部を変える。「おまえらがマジで競うようになったら、ウチはすげえチームになるよ」思わず胸が熱くなる、とびきりの陸上青春小説、誕生』とありました。熱き想いを感じたい人は是非読んで下さい。
1Q84
BOOK1.2

(村上春樹)

21
ついに読みました。読み始めたらやめられません、冒頭からぐいぐい物語の中に入ってしまいます。私としては今まで読んだ村上春樹の中では一番しっくりきました。幻想小説というかキーワードとして「必殺仕事人、異界⇔現実世界、DV、児童虐待、宗教的狂信」など、とてもどのような物語かは一言では表せません。『1Q84を読み解く』という本が何冊もででいるくらいです。ある、批評家が『これは村上春樹のライフワークではないか』と書いていましたが、衝撃的なラストからして、もしかしたら続きがあるのかな?とも思います、というのも上下でなく1.2となっています。『何故これほど面白いのか』とありました、ぜひ、読んでください。
夜想曲集
(カズオ・イシグロ)

S
5年に一冊くらいしか書かないこの作者の初めての短編書き下ろしです。五つの短編の物語ですが舞台はベネチア、ロンドン、モールバン、ハリウッド、アドリア海岸のイタリアの都市とさまざまですがテーマ、雰囲気などに共通性があります。ただ、浅田次郎のようなドラマとしての落ちはなく、どの物語も人生の一瞬を切り取って見せたような話しにになっています。
『音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』とありますが全てから音楽が聞こえてくるような雰囲気があります。”人生の黄昏”という言葉がびったりくるような切ない物語で、人生に対して決して期待してはいけないが落胆することもないといった妙な気分になります。
くたばれ竹中平蔵

R
作者は藤沢昌一(早稲田大学大学院卒、西の風新聞社代表取締役)、発行は駒草出版(1575円)という本です。(大手では出版しないのかも・・・)
読んでみると、目から鱗です。今まで私達が思っていたことがズバリ書いてあります。
『・郵政民営化の実現に国民は目を見張った。しかし、小泉に政治哲学はなかった。・竹中平蔵は小泉の短絡的な「丸投げ」政治を手助けしてしまった。・国民に対する配慮はなく、竹中が見つめていたのは世界、日本の金融資本だった。」等など、何故小泉が郵政民営化を推し進めたか?どういう風に?そしてどんなになったか?それにマスコミの責任は?必読です。
そっと耳を澄ませば

Q
2008年3月、別府で開かれた「平和の日の集い」で話を聞いた三宮麻由子さんのエッセイです。三宮さんのことは「つれづれ日記」をご覧ください。このエッセイは第49回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞しています。著者は失った光の代わりに、音を聞き、情報を手に入れるが音自体が世界を作り出したいることに気付いていきます。「優しさには二つの顔があるように思う。一つは人を傷つけないために『身をひく優しさ』 もう一つは、相手の痛みも喜びも我が事として感じ、時にはぶつかり合いながらも相手と充実感を共有する、『関わる優しさ』だ」私達晴眼者が日頃見逃していることをすごい感性で捉えています。
陽気なギャングが(伊坂幸太郎)
P
文のお薦めで読みましたが「陽気なギャングが地球を回す」という又も伊坂ものです。梅雨空の気分がスッキリしない時には痛快なお話です。2003年に発表されたものです。「嘘を見破ることができる男、体内時計を持つ女、演説好きの男、スリの天才少年の4人が爆発事件で知り合い、意気投合してそのまま銀行強盗チームを結成し、百発百中の銀行強盗だったはずだが、思わぬ誤算が・・・せっかくの売り上げを横取りされることに」佐藤浩市、鈴木京香で映画にもなりました。そんなにどうのって話しでもありませんが肩は懲りません。最近、あまり読書していない方は読みやすいのでお薦めです。
マンボウ恐妻記
(北杜夫)

O
平成13年に発表された「マンボウ愛妻記」を改題したものです。この人の本はずいぶん前に「白きたおやかな峰」等を読んだものです、久しぶりに本屋で手にしました。「文学を志し、家庭は顧みず、わがまま放題。そんな夫にも優しく尽くす、十歳年下の妻。圧倒的な亭主関白で始まった新婚生活。しかし、躁鬱病をきっかけにエスカレートした夫の蛮行に妻もぶち切れて、ついに逆襲に」壮絶なる40年間の夫婦の話です。娘の斉藤由香さんが『夫婦が年をとり、体力も衰え、仲良く向き合うのは本当に大変だと思う。いつも笑顔があるような家庭は奇跡だろう。どんな悩みがある方もこれを読んで「ウチの方がまだマシだわ」と、気分転換になれば』と書いています。
わたしを離さないで

N
作者は長崎生まれのイギリス人、カズオ・イシグロという人です。「日の名残り」で英国最高の文学賞であるブッカー賞を受賞しています。ノーベル賞に近いとも言われているそうです。こんなに衝撃を受けた本は久しぶりでした。それにこの本は絶対に予備知識なしに読んだ方がいい小説です。物語は『キャシー・Hは31歳。もう11年も務めているというベテランの介護人。仕事は「提供者」と呼ばれる人々を世話すること・・』といったところから始まりますが、キャシーを語り手として彼女の語る物語は終始押さえ気味。決して興奮したり激昂したりしません。しかし淡々とした語り口が逆に哀しく、そして予想しながらも見えてくる光景がとても怖いです。
翳りゆく時間
(浅田次郎選)

M
『日本ペンクラブ篇 浅田次郎選』で7人の作家の短編を集めたものです。名手と呼ばれる七人:江國香織、北方謙三、吉田修一、阿刀田高、浅田次郎、山田詠美、三島由紀夫の甘くほろ苦い大人のための物語です。時にはこんな文学の香りもいいものです。「先の見えない愛に苦しむ女、姉の夫に恋する女はパラダイスを夢見る、旧友との再会に臨む男、伝説のマダムが残したものは、etc.」 選者の浅田次郎が『小説でしか実感できない作品を抜き出した・・・。読者は映画やテレビでは体験できぬ小説ならではの世界を五感で味わうことができるはずである』と じっくりと小説を楽しむにはもってこいの本です。
重力ピエロ
(伊坂幸太郎)


L
伊坂幸太郎が三作続きました。そんなにはまったというわけでもないのですが、今回映画にもなったので映画を観る前に読もうと思ったのです(映画は読み終える前に終わってしまいました)。この人のものは何作も映画になっていますが、「フィッシュストーリー」同様最後になって全てが意味のあったことだなとわかります。村上春樹で育った代には受けるような気がします。『語り手は兄、二つ年下の弟、癌を患っている父、亡くなった美しい母の4人家族。しかし、過去に悲しい出来事があり。その記憶の中、放火事件、グラフィティーアートの落書き、遺伝子の三つの要素が絡まり合って物語は展開します』この人の本は登場人部の語る台詞がいいです。
死神の精度
(伊坂幸太郎)

K
続けて伊坂幸太郎です、これで第57回日本推理作家協会賞短編部門を受賞しています。表題作を含めて六つの短編からなっていますが、そのどれもが主人公の死神が出会うことになる六つの人生を描いています。「死神社会が決めた人間に死神が一週間調査に来て、その者達の死に対して死の可否を決定するものです」が、何ともクールで愛嬌ある死神、果たして・・・。『生きていると何かが起きる・・、一喜一憂してても仕方がない。棺桶の釘を打たれるまで、何が起きるかわからないよ』 『人間というのは実に疑り深い。自分だけ馬鹿を見ることを非常に恐れていて、そのくせ騙されやすく、ほとほと救いようがない』グッときますよ!
アヒルと鴨の・
(伊坂幸太郎)
J
タイトルは「アヒルと鴨のコインロッカー」です。今、映画でも話題の「重力ピエロ」の伊坂幸太郎を初めて読みました。第25回吉川英治文学新人賞を受賞しています、この賞は浅田次郎の「地下鉄に乗って」ももらっていますが私の好きな賞です。「東京から大学にはいるために仙台に引っ越してきた気の弱い若者が同じアパートに住む悪魔めいた長身の男に『本屋を襲わないか』と誘われる、それも広辞苑を盗む目的で」といったところから始まりますが、終わりは何とも切ない物語です。『楽しく生きるには二つのことだけ守ればいいんだから、車のクラクションを鳴らさないことと、細かいことを気にしないこと。それだけ』
ルパンの消息
(横山秀夫)

I
作者は、1998年「陰の季節」で松本清張賞を受賞して小説家としてデビューしたのですが、この本はデビュー前の1991年サントリーミステリー大賞に応募し佳作を受賞したものです。しかし、単行本として陽の目を見たのは2005年という”幻の傑作”です。これを読むと横山秀夫の原点に触れる気がします。物語は「15年前、自殺とされた女性教師の墜落死は実は殺人・・。警視庁に入った一本のたれ込みで事件が息を吹き返す。しかし、時効まで24時間・・・」三億円事件まで絡んで、24時間の間にいくつもの秘密が暴露されていく、次を読みたくてたまらない、途中ではやめられません。昭和を感じさせる名作です。
告白
(湊かなえ)


H
作者は36歳の主婦で淡路島に住んでいます、この本がデビュー作です『第6回本屋大賞、文春’08ミステリーベストテン第1位』ほか数々のミステリーの賞にランクインしています。『寝る前に読まないでください、読了まで眠れなくなります』といった評がありましたが、まさにそのとりでした。とにかく面白いです。物語は『ある殺人事件をめぐり、担任教師、同級生、母親などが、すれ違う心の中を明かす」といったものです、綿密に仕掛けられた複線、ラストでのどんでん返しなど、先を読みたくて仕方ないといった本です。この作者は朝日新聞の『ひと』に「思い立ったら即行動の人だ』とありました。すごい人です。
向日葵の・・・(道尾秀介)G タイトルは『向日葵の咲かない夏』です。「このミス2009年版」で作家別投票で一位になった人です、初めてこの人ものを読みましたが、最後まで「エッ!」の連続で結局何だったの?という読後感です。巧妙な仕掛けに参ってしまいます。「夏休みを迎える終業式の日に、先生に頼まれて欠席した級友の家を訪れるがが、そこには首を吊った友が・・。だがそれもつかの間、彼の死体が忽然と消えてしまう。一週間後その友はあるものに姿を変えて現れる・・・」何とも奇妙な話しでダマされないようにしっかりと読まないといけません。誰か読んだら感想を話し合ってみたいです。
探偵ガリレオ
(東野圭吾)

F
直木賞受賞の「容疑者Xの献身」の天才物理学者・湯川が主人公の第一弾目の物語です。TVドラマにもなっています。連作のミステリーで五つの話しからできています。一つ一つの話しは面白いのですがやはり、この手のものは短編より長編がいいですね。「突然燃え上がった若者の頭、心臓だけ腐った男の死体、池に浮かんだデスマスク、幽体離脱(?)した少年など物理学を駆使して謎を解いていきます」作者が大阪府立大電気工学科卒だから書ける話でしょう。このあと、ガリレオシリーズは続くのですが、どんなことを題材にしてもこの人の本は面白いですね。
資本主義は何故自壊・・
中谷巌
E
タイトルは「資本主義は何故自壊したのか」です。今、評判になっているようですが「構造改革の急先鋒であった著者が記す懺悔の書」とあります。小泉、竹中に痛めつけられた郵政職員の方は必読の書です。『リーマン・ショック、格差社会、無差別殺人、医療の崩壊、食品偽装、環境破壊。すべての元凶は市場原理だった』と説いています。@アメリカ政府は日本が閉鎖的であり、もっと市場を開放するために構造改革が必要だとして改革の早急な実施を要求した。A中身もろくに吟味しないで「民営化」「規制撤廃」を貫徹する改革は非常に危険・・。など私たちが今、理不尽だと思っていることがわかりやすく述べてあります。
チーム・バチスタの栄光海棠尊D TVや映画化で何かと話題になっている本ですが文庫本(上下二巻です)になっていたので読みました。これはこの著者(海棠尊)のデビュー作とのことだがかなり面白いです。「東城大学付属病院の”チーム・バチスタ”とは心臓移植の代替手術であるバチスタ手術専門の天才外科チーム。ところが27例目から原因不明の術中死が起きる。医療過誤か殺人か?」というところから物語は進んでいきます。現職の医者が書いただけあってなかなか鋭いです。探偵役は同病院の万年講師で神経内科の医師と厚生労働省の役人で食わせ物のコンビです。肩のこらないミステリーです。すでに第4弾まで出ています。
悼む人

(天童荒太)

C
コピーから『”悼む人”彼を巡る人々が織りなす生と死、善と悪、愛と憎しみ、罪と許しの物語』です。第140回(H21.1)直木賞受賞ですが、この賞をもらう前に読みたいと思った本でした。話しは「全国を放浪し、死者を悼む旅を続ける坂築静人(さかつき・しずと)。彼を巡り、夫を殺した女、人間不信の雑誌記者、末期癌の母らのドラマが繰り広げられる」といったものでこの著者独特の傑作長編です。以前大ベストセラーになった『永遠の仔』を思い出します。読みはじめは、なかなか感情移入ができませんが読み進むにつれてやめられなくなります。2001年秋にこの物語の芽が出たとのこと、8年かかって世に出た本です。必読です。
風が強く吹いている
(三浦しをん)

B
かおやんから勧められて読みました。作者は2006年bookで紹介した「まほろ駅前多田便利軒」(直木賞受賞)の三浦しをんです。ところがこれがすごく面白かった。興奮して涙します、駅伝や、マラソンなど自分で走る人はもちろん、応援することが好きな人も絶対に読んで下さい。「弱小陸上部が箱根駅伝を目指す」といったものです。箱根駅伝は10区、つまり10人でたすきをつなぎますが、このチームはランナーと呼べるものは2人、それ以外は無謀にも陸上とは無縁だった8人、この10人だけで「箱根」に挑みます。走ることの意味と真の“強さ”を求めて……。ページをめくるのがもどかしいほどです。秋には映画公開されます。
夕映え天使
(浅田次郎)

A
浅田次郎、久々の短編集です。6編の短編が集録してありますがどれもこれも浅田ワールド満載です。帯封より『さびれた商店街の、父と息子二人だけの小さな中華料理店。味気ない日々を過ごす俺たちの前に現れた天使のような女・純子。あいつは線香花火のように儚い思い出を俺たちに残し、突然消えてしまった』他に、「切符」「特別な一日」「琥珀」「丘の上の白い家」「樹海の人」などどれも日常の生活の中で起こる不思議な出来事を描き、ぐいぐいと引き込まれます。特に「特別な一日」にはしっかりダマされてしまい、思わず二回読みました。一日、一話ずつ読んで余韻に浸りながら寝ました。
無痛

(久坂部羊)

@
「神戸の閑静な住宅街で、これ以上あり得ないほどの凄惨な一家四人残虐殺害事件が発生」したこところから物語は始まります。作者は現役の医者です。『何故この病院の救命率が100%かわかりますか?それは助かる金持ちだけ診て、あとはよその病院へ回すからですよ』と『刑法第39条:心神喪失者の行為は、罰しない。心神耗弱者の行為は、その刑を軽減する』とこの二つをキーワードに物語は進みます。驚異の診断力を持った医師が主人公です、600ページを超える長さですが一気に読ませます。『科学が宗教に取って代わった現代、しかし科学でも証明できないことはいくらでも・。科学なんて宗教と同じ、ただ信じていたいだけだと・』面白いです。