book(2010)



羊をめぐる冒険
上・下

村上春樹


40
三作目の長編小説で1982年に出た本です、野間文芸新人賞を受賞しています。前二作と違ってかなり村上ワールドが広がって『らしく』なっていると思います。また、三部作完結編と言われていますが、続編「ダンス・ダンス・ダンス」が1988年に発表さされています。
「あなたのことは今でも好きよ、という言葉を残して妻が出て行った。その後広告コピーの
仕事を通して、耳専門のモデルをしている21歳の女性が新しいガール・フレンドとなった
。北海道に渡ったらしい〈鼠〉の手紙から、羊をめぐる冒険が始まる」といったもので、まか不思議な話に引き込まれてしまいます。面白いです。
1973年のピンボール

(村上春樹)


39
『風邪の歌を聴け』から9ヶ月後に発表され第83回芥川賞候補になった作品で「僕と鼠もの」シリーズの第二作目です。しかし、まだ私にはピンときません。
第1章から第25章まで、「僕」の物語の章と「鼠(と呼ばれる男」の物語の章に分かれ、二つの物語が平行に進行していきます。「大学を卒業して翻訳の仕事をしている僕は双子の姉妹と生活している。一方、鼠は1970年に大学を辞めて以来ジェイズ・バーに通ってバーテン相手に現実感のない日を送っている」というものですが、この二冊目を書いた後に、このままではいけないと次の作品(羊をめぐる冒険)を書くことになります。
ルームメイト

(今邑彩)

38
『ミステリー好きはぜひ!ミエミエな展開だなあと思っていたら、意外な方向に話は進んで、まんまと騙されました』という感想に惹かれて読んでしまいました。この作家のものは初めてでした、確かに意表をつく展開ではありますがミステリーベテランの私にはある程度想像のつく世界でした。と言っても結構面白いです。「大学へ通うために上京してきた春海は京都からきた麗子とルームメイトとして一緒に住むことになるが、その彼女が死体となって・・・」最終章の前に文庫版あとがきと言うのがあり『ラストは後味がチョー悪いです。そういうラストが嫌いな方はここで読むのをやめてください』とあります。どうします?
風の歌を聴け

(村上春樹)

37
神宮球場で野球を観戦中に思い立ち、真夜中に1時間ずつ4ヶ月かけて書いたという村上春樹のデビュー作で『群像新人文学賞』を受賞した1973年の作品です。「20代最後の年を迎えた『僕』は、アメリカの作家デレク・ハートフィールドについて考え、文章を書くことはひどく苦痛であると感じながら、1970年の夏休みの物語を語りはじめる」と言ったところから始まります。ハッキリ言って新人の書いたものという感じはしますが、その後の作家のものに同じようなスタイルの話を読んだことがあります。結構後輩作家に影響を与えているのでしょう。1981年に映画化されているとは知りませんでした。
永遠の0

(百田尚樹)


36
児玉清が解説で『この本に出逢えたときの喜びは筆舌に尽くしがたい』と書いています。
600ページ近い長編ですが、読み終えた時心を洗われるような感動が涌いてきます。人間とは、戦争とは、を痛切に考えさせられます。こう書いたらありきたりの感じがしますが、全ての責任を他人に押しつけようとする今の日本、若い人から私達の年代も含めてみんなに読んでもらいたい本です。「『娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために』そう言い続けた零戦の優秀パイロットだった男が何故特攻隊員となり自らの命を落としたのか?終戦から60年の夏、真実が明らかに」 涙涙涙!十死零生の世界てわかりますか?
白銀ジャック

(東野圭吾)


35
久しぶりに東野圭吾を読みました。最近は年金生活者のため文庫本が多いのですがこれはいきなり文庫になった本ということで期待しましたが・・・。
「スキー場のゲレンデの下に爆弾を埋めたという脅迫状がスキー場に届き、警察に通報できない状況に犯人の要求はエスカレートしていく。金目当てか、復讐か、犯人の狙いがわからぬままに・・・」。スキーとスノーボード、スピード感あふれる中に話は進んでいきます。しかし、はっきり言って期待はずれでした、ちょっと軽すぎる気がします。初期の頃の作品じゃないかと思えましたが2008年から2010年9月まで書かれたものです。
岳物語

(椎名誠)


34
『両親ともに山登りが好きだったので、山岳の岳というのを名前にしたんだよ』というところから始まります、息子がまだ父を見捨てていない頃の父と息子の話です。
保育園時代から小学5年くらいまでを、愛情たっぷりの目で見つめていて「うふふふ!」と思わず笑いたくなるような話がいっぱい詰まっています。「釣りの世界に心を奪われた岳を見てお母さんが『いいわよ、釣りだもの。身もココロも国語とか算数に奪われたなんて事になったら気持ち悪いけど・・・」だって。25年前に書かれた本ですが、主人公岳はプロボクサーを経て現在は写真家、当時保育士だったお母さんはエッセイストだそうです。
死ぬときに後悔すること25
(大津秀一)

33
1000人の死を見届けた終末期医療のお医者さんが書いた本です。人間死に臨んで自分の人生を振り返ってた時に「何を後悔するか」を実際に患者さんとふれ合った中から25にまとめて書いてあります。『感情に振り回され、特に否定的感情にとらわれたまま生涯を過ごせば、残るのは後悔ばかりである・・冷静な心の先に、笑いを見出す・・』 『耳順の難しさ』 『愛する人に”ありがとう”と伝えなかったこと』などなど。私自身(いつか、あとで、もうちょっとしてから)と先延ばしにしていること、山ほどあります。まだまだ、人生間に合います。この本を読んで充実した人生がおくれるように努力しましょう。
その日のまえに

(重松清)


32
2008年に大林宣彦監督で映画化されたものの原作本です(cinemaを見てください)。
映画は観ていたのですがうっかりしていました、表題作の「その日のまえに」を読みながら『この場面は記憶がある』と思ったら観た映画だったのです。本の方がグッときます。
『その日』とは昨日までの、そして明日からも続くはずの毎日を断ち切る家族の死を迎える日。消えゆく命を前にして、いったい人間はどうするのだろう・・・。「その日の訪れがいつ来ようとも、ちゃんと自分の生きてきた意味や死んでいく意味に答えを出すことが出来るだろうか」日常の中にある幸せを見つめる連作短編集です。涙涙です!
くじけないで

(柴田トヨ)


31
98歳のおばあちゃんが書いた詩集で、NHK、新聞などメディアで反響を呼んでいます。
42の詩が収録されていて全て読むのに30分もかかりません。お気に入りを紹介します。
『あなたに: 出来ないからって いじけていてはダメ 私だって96年間 出来なかった事は 山ほどある 父母への孝行 子供の教育 数々の習いごと でも努力はしたのよ 精いっぱい ねぇ それが 大事じゃないかしら  さあ 立ちあがって 何かをつかむのよ 悔いを 残さないために』 いつも『朝は必ずやってくる』という気持ちを持ち続けいまだに一人で生活しているそうです。人生万歳!
走ることについて 語るときに 僕の語ること
(村上春樹)

30
専業作家を目指した時から走り始めたという村上春樹が初めて自分自身を語った本です。『何故走るか?』私も走りますのでよくわかります。ただ、この本は走ることだけではなく走ることをを通じて、生き方や、小説に対する考え方を書いています。読み応えがあります。「33歳、イエスキリストが死んだ年だ。人生の一つの分岐点、その時からランナーとしての生活を開始し小説家としての本格的な出発点にたった」「ぼんやりと生きる10年よりはしっかりと目的を持って生き生きと生きる10年が遥かに好ましい」。また、年をとっていくということにもしっかりと目を向けています。ぜひ読んでもらいたい本です。
マンチュリアン・リポート

(浅田次郎)


29
浅田次郎14年ぶりの書き下ろしです。『蒼穹の昴』から『珍妃の井戸』『中原の虹』と続きそして、今度日本の側から張作霖爆殺事件を描いたシリーズ最新刊です。
「マンチュリアン・リポート」とは日本語では「満州報告書」となります、「昭和3年6月未明。張作霖を乗せた列車が日本の関東軍によって爆破された。一国の事実上の元首を独断で暗殺する暴挙に昭和天皇は激怒、真実を知りたいと願い密使を満州に派遣する」
何故、日本が関東軍が満州を欲しがったのか?著作林は何故殺されたのか?昭和史の闇に迫るミステリーです。内容も、構成も面白くあっという間に読み終えます。
カラマーゾフの兄弟
中・下
(ドストエフスキー)


28-2
世界文学の中で最高傑作の一つといわれる本著、1878年から書き始められ2年後に完成しています。しかし、実際は二部構成であったが一部が完成した3ヶ月後にドストエフスキーは他界しています。にもかかわらず『続編が考えられないくらい完璧な作品』と小林秀雄が言っているように、これだけでも十分すぎるくらいです。この本は「神はあるか、罪とは、魂の救済とは何か、など様々な問題」を含んでいます。最初はちょっと取っつきにくく上巻は手間取りましたが中・下巻は20日で読破できました。今回読んで、100年以上も前に書かれているのに私達の今も、又未来も予言しているのではと感じさせられます。このテーマの深さに圧倒されました。(フリーメイソンの話が出てきたのもビックリでした)
中・下巻では「三男アリョーシャの師ゾシマ長老の死。遺産相続と、共通の愛人をめぐり父と長男ドミートリィとの醜い争いのうちに父の殺害事件が発生。ドミートリィは父親殺しの嫌疑をかけられ逮捕、裁判が始まる。裁判の進む中でロシア社会の考え方が明らかにされ、又、事件は意外な方向へと発展していく・・・」検事と弁護士のかけ合い、思わずのめり込んでしまいます。上巻にこの小説の魂と言われる『大審問官』という章があります、「神の作ったこの世界だけは絶対に容認することはできない」と二男イワンが言います。
カラマーゾフの兄弟・上
(ドストエフスキー)


28-1
30年以上も前に一回読んでいましたが、そのころはほとんど理解できなかったような気がします。今回改めて読み直すと(上巻だけで一ヶ月近くかかりましたが)すごい本です。
「俗物で女にだらしなく常識はずれの父フョードル・カラマーゾフの血をひく三人の兄弟。放蕩無頼な長男ドミトリィ、冷徹な知識人の二男イワン、そして修道僧で主人公の三男アレクセイ。それにフョードルの私生児と噂されるスメルジャコフ」。これらの人物が織りなす愛憎のすさまじい物語です。テーマは「人間と神」にあると思いますが、これが19世紀に書かれた本ですから・・・。ドストエフスキーが『現代の予言者』とよばれた理由がわかります。
風の盆恋歌
(高橋治)



27
2006年に読んだのの再読でしたが、哀しさ、切なさは前に読んだ時より増したような気がします、ラストはやはり涙涙でした。この本が出て以来『おわら風の盆』が一段と有名になったのもうなずけます。もちろん私もこれを読んで『おわら』を見たくなったのですが、今では一晩に10万人以上の人が集まってくるとか・・、今はこんな情緒は味わえないでしょうけどやはり見たいです。「30年近くも待ったのよ。・・こんな日が来るなんて・・。まさか、こんなとしになるまで待たされて・・」 「姦通の姦という字は悲しいわね。女が二つに割れてしまって、もう一人のさめた女は、上から割れた様を見ているだけで、行き場書がないの」
マイマイ新子
(高樹のぶ子)


26
2009年にアニメーション映画化されたとは知りませんでした。入院中に聞いたラジオで私の好きな高樹のぶ子の原作で面白そうだから読んでみました。私と同年代の作者が昭和30年を舞台に自伝的に書いた本ですが『この時代を背景に日本版赤毛のアンを書いてみたい』と思ったことからできたそうです。
「新子は9歳、気持ちがざわざわすると、額の真上のつむじ(マイマイ)が立ち上がる。昭和30年、空想好きでお転婆の新子は・・・。成長期に感じる幸福と不安・・」鮮度100%!
『10引く3の答えは7だ、というのはわかるが引いた3はどこに行くんですか?』
風の盆幻想
(内田康夫)


25
2006年に『風の盆恋歌』を読んで越中八尾に行きたくなりましたが、この本も『おわら』をめぐる話でご存じ浅見光彦が活躍するミステリーです。やはり哀切な調べの中に哀しい恋の物語があります。「八尾の老舗旅館の若旦那が謎の死を遂げる、自殺で終わらせようとする警察に疑問を感じた浅見光彦と内田センセは、胡弓の音色響く風の盆祭りの中調査に乗り出します」謎解きも面白いのですが『おわら風の盆』を知るのにも最適な本です。
作者は平成13年から四回にわたる取材をし刊行されたのは平成17年です。
(西村京太郎も「おわら」を舞台に書いていますが一回も現地に行っていないそうです)。
しゃばけ
(畠中恵)



24
2001年の「日本ファンタジーノベル大賞」の優秀賞を受賞しています。かおやんの紹介で読みました、何ともまぁ〜ほのぼのとしたファンタジー。「時は江戸時代、廻船問屋の若旦那・一太郎は体が弱く外出もままならない。ところがある夜、人殺しを目撃、以後奇妙な殺人事件が起きる。一太郎は周りにいる妖怪達と事件解決に乗り出すことに・・・」
『娑婆気』とは、俗世間における、名誉・利得などのさまざまな欲望にとらわれる心を言うのだそうです。物語の中にはいろんな妖(あやかし)が出てきますが、それぞれ個性があり可愛いものです。時にはこんな世界もいいかも・・・。
終わらざる夏
上・下
(浅田次郎)


23
久々の浅田次郎の感動の長編(ハードカバーで900頁を超えます)です。国家というのは果たしてなんなのか?1945年戦争が終わった時から戦争が始まります。当時日本の最北端カムチャッカ半島の目と鼻の先、占守島(シュムシュ島)、この美しい島で一体何が起きたのか?この時代に何を信じ、何を守る。人間とは・・・。それでも人々は必死に生きて闘った。『人間には生まれついて力の優劣があります。力のある人を羨まないで、力のない人に気を配りなさい』。 ソ連は1945年8月8日に不可侵条約を破棄して宣戦布告、また、無条件降伏した日本に8月18日武力行使・・。読んでいて胸が痛くなります。涙・涙!
1Q84
BOOK3

(村上春樹)

22
ついに完結?と言うか一応の結末がつきました。「10歳で出会って離れ離れになった30歳の男女が、互いを探し求める話」とBOOK1.2で作者は言っていますが本作では青豆と天吾の他に、カルト集団「さきがけ」の使い走りである醜い中年男、牛河が重要な役回りとして出てきます。やはり不思議さは消えません、どれだけ読み込んだら・・・と思いますが、面白いです。青豆と天吾は1Q84年の世界から1984年の世界へ果たして戻ってこれるのか?読んでのお楽しみです。
内容について、もっと書きたいのですが『ネタバレ』になるのでここらでやめます。
砂漠

(伊坂幸太郎)

21
久しぶりに伊坂幸太郎です、『青春小説です』。「仙台にある某国立大学(東北大学)を舞台に大学で出会った男女5人、ボウリング、合コン、麻雀、空き巣犯との戦い、それにもちろん恋愛と・・・」そんな中で若者の成長を描いていますが、一筋縄ではいかないところがこの人の本です。軽いタッチで読ませてくれます。
『自分たちさえよければいいや、そこそこの人生を、なんてね。そんな生き方が良いわけないでしょう。俺たちがその気になれば、砂漠に雪を降らすことだって、余裕でできるんですよ』 この若者達が大学を出て「砂漠」という社会に出て行くことになるのです。
私の男

(桜庭一樹)


S
第138回直木賞受賞、2007年に刊行された本です。選考委員の浅田次郎が『文句なしに推挽させていただいた』と絶賛しています。
15年間の物語を六つの時代に分けて現代から過去へと遡っていきます。。従って、初めの章で『何で?』と思うことが段々と謎解きのように描かれてグーッと引き込まれていきます。「40歳になろうという惨めな男、彼は25歳の時震災にあった親戚の10歳の少女を引き取る。そして、やがて、愛に飢えた親子がたどる禁じられた愛と性の日々・・・』衝撃的な物語ですが、すごい小説です。(因みに作者は女性です)。
ほんまにオレはアホやろか
(水木しげる)


R

水木しげるの元気になる自叙伝で、1978年に刊行された本です。この人の生き様が勇気を与えてくれます。子供の頃はガキ大将で妖怪に夢中、入試は失敗、学校は落第、就職してもすぐにクビ。戦争では最前線のラバウルに送られ片腕を失う。それでも『我が道』をしっかりと突き進んでいきます。また、南方で出会った土人とのふれ合いや彼らの生き方に感動させられます。最後に「自分の好きなことをやるにしても、やはり、なまけていてはダメで、やるからには、なんでも、ねばり強く、努力することが必要であろう」と書いています。だから、40歳を過ぎてからでもパーッと花が咲いたんだなぁ〜。と思います。

東京島
(桐野夏生)

Q
『孤島には31人の男とたった一人の女』となるとポルノグラフィックな想像をしがちですが桐野夏生はそうはいきません。主人公は40も半ばを超えた中年女性です。この人の書いたOUTもそうでしたが、女性の怖さ・異常さがすごいです。想像もしないラストにうーんと唸っていまいます。「一組の夫婦がクルーズの最中嵐に遭い孤島に流れ着く。その後日本の若者や中国人達が漂着する。救出の見込みのない島でただ一人の女清子。夫が亡くなったあとに・・」最初は純文学雑誌『新潮』に発表されたもので、第44回谷崎潤一郎賞を受賞しています。この夏、木村多江で映画化されます。
レディ・ジョーカー
上・中・下
(村薫)


P
村薫は文庫化に際して全面的に書き直すので直木賞を受賞した「マークスの山」ですら文庫化に10年を費やしているとのことです。このLJも最初に出たのは1997年です。
毎日出版文化賞など受賞の名作です。帯に書いてありますが読む人の魂を揺さぶります、「空虚な毎日、目を凝らせど見えぬ将来・・、そんな5人の男が未曾有の犯罪・巨大ビール会社を標的とした犯罪を計画・・」何と怖くて哀しい話でしょう。人としての生き方、一方闇の世界(政界、金融、新聞、総会屋など)を描き、『この国は悪の数々以上に、その蔓延を育んでいる大衆の無知こそ』問題なのでは?と、長いですが読み応えがあります。
ロスト・シンボル
上・下
(ダン・ブラウン)


O
上下2巻で700頁を超えますが一気に読めます。『天使と悪魔』『ダ・ヴィンチ・コード』に続くラングドン・シリーズ第三弾。今度の謎は世界最大の秘密結社『フリーメイソン』fです、しかし読み終えても謎は深まるばかり・・・。「大学教授ラングドンは、フリーメイソンの最高位階である恩師ピーター・ソロモンから急遽講演依頼を受けワシントンDCへ赴く。ところがそこにはソロモンの切断された手首と、”古の神秘”に至る門を解き放てと命じる謎の男からの脅迫が待っていた・・」それにCIAが絡みワシントンDCを舞台に緊迫した12時間の話です。
映画化されますが、まるで映画を観ているようです。「フリー・メイソン」については下記を参照。
フリーメイソンの正体
ロスト・シンボルの謎
(中見利男)

N
「フリーメイソンとは、表向きは自由、博愛、兄弟愛、人類同胞主義などを標榜する世界で最も古い秘密結社である。しかし、その最終目的は世界統一政府と世界統一宗教にあるといわれている」本書はダン・ブラウン(ダ・ヴィンチ・コードの作者)の『ロスト・シンボル』の解読本です。
『ワンワールド』を目指すフリーメイソンは『イエス人間説』を唱え、バチカンと対立。しかし、その思想には人類の破局が横たわっています。ニュートンによると『最後の審判』(EU、アメリカ、バチカン対イスラム世界)が下るのは2060年とのこと。日本においては明治維新、終戦後に最もフリーメイソンの力が及んでいます。フリーメイソンンの源流はテンプル騎士団、鳩山一郎は会員、魔方陣、1ドル紙幣、1000円札に見えるフリーメイソンの影響など、興味ある方はお読み下さい。
龍馬がゆく(七・八)
(司馬遼太郎)

Mー4
海援隊の設立から大政奉還と龍馬は駆けていくが維新を見とどけることもなく扉を開けたまま、逝ってしまいます。「大政奉還」とラストでは思わず涙が出ました。昭和37年から41年まで新聞に連載されたものですが、この小説によって坂本龍馬という人物が広く愛されるようになった気がします。『おれは日本を生まれかわらせたかっただけで、生まれかわった日本で栄達するつもりはない』と又『仕事というのは全部やってはいけない。八部まででいい。八部までが困難の道である。あとの二部は誰でもできる。その二部は人にやらせて完成の功を譲ってしまう。それでなければ大事業というものはできない』と、・・・。
龍馬がゆく(五・六)
(司馬遼太郎)

Mー3
この五・六巻では長州藩の動き・池田屋騒動から薩長同盟・寺田屋〜霧島(高千穂の峰)までのまさに正念場を描いています。司馬遼太郎が龍馬を書こうと思い立ったのは「それまで仇敵だった薩摩と長州をどうして連合できるか?薩長が手を握れば幕府は倒れる。という時代のかなで龍馬の働きは・・・」すごい男だったのですね。
この秘密同盟の後、寺田屋騒動でおりょう達の機転もあり逃げ延びた龍馬は一時薩摩におりょうと湯治に出かける(これが日本で最初の新婚旅行)、そして二人で塩浸温泉(牧園町)から高千穂の峰に登ります。いよいよクライマックス、維新への道は開かれました。
龍馬がゆく(三・四)
(司馬遼太郎)

Mー2
三・四巻では土佐藩を脱藩し、追跡者に追われ、寺田屋騒動から勝海舟に出合い、軍艦を手に入れるところまでを描いています。また、第三巻目にしてようやくおりょうさんが出てきます。武市半平太ら他の志士たちと違い別の道を歩く龍馬、少しずつこの人物のすごさがわかってきます。「およそ我意我執というものがなかった、天然自然に、まるで生まれたままの明るさで生きているような男だった。何を入れるにしても、器が途方もなく大きくできているのである」と・・。そんな中「徳川時代の階級制、身分制、封建的兼主義ほど日本人を悪くしたものはない」と。時代、人を見る目がするどいです。
龍馬がゆく(一・二)
(司馬遼太郎)

Mー1
NHKで「龍馬伝」が始まったので40年以上前に書かれた本を今ごろ読んでいます。もちろんTVの方とは原作者が違いますので話の筋や登場人物等かなり変わっています。文庫本で全八冊ですので二冊ずつ紹介していきます。「龍馬19歳、江戸の千葉道場へ出発するところから始まり黒船出現、勤王・攘夷の勢力と幕府との抗争・・・。そんな中、武市半平太のやり方に限界を感じた龍馬が脱藩する」ところまでで第二巻の終わりです。
同じ歴史上の人物(物語)を描いても、どこに視点を置くかで、面白い見方ができます。
八冊の長丁場頑張ります。(それにしても、有名人がいっぱい出てきます)
風化水脈
(大沢在昌)


L
「新宿鮫シリーズ第8弾」、700頁近いですが、これも瞬く間に読んでしまいます。2000年に刊行され、シリーズでは新しいものです。第一作、四作の登場人物が絡んできますが、読んでいたので感情移入がスッといきました。「第一作で登場したやくざ真壁が出所した。対立するする中国人グループ。一方高級車窃盗団を追う鮫島は元警官の老人と知り合い、そこに秘密の匂いかを嗅ぎ、潜入した古い家である死体を発見することに・・・」
過去に葬られた様々な思い(事件)が新宿という街や人々の心の中に交錯します。何故か、最後はグッと来ます。面白いですね!
月のしずく

(浅田次郎)


K
1996年から67年に書かれた表題作「月のしずく」を初め「銀色の雨」など7編の短編が収められています。直木賞をもらった『鉄道員』と前後して書かれたもののようです。cinemaにも書いたとおり見逃していましたが、今読んでみると『鉄道員』の頃の雰囲気が良く出ていてすご〜くいいです。「銀色の雨」は映画より原作の方がかなりいい感じがしました、やくざが映画ではボクサーとして登場しますが哀しさは、やはり原作が勝っています。
他に「聖夜の肖像、瑠璃想、花や今宵、ふくちゃんのジャック・ナイフ、ピエタ」など、どれも味があります。解説の三浦哲郎は「銀色の雨」を推薦していました。
こうすれば病気は治る
(安保徹)

J
『心と体の免疫学』健康になるために、何をどうすればいいかが分かる!本です。
「生物が本来持っている生きる力を最大限に活用するために、知っておきたい体の仕組み、病気の治し方と、その予防法」などを解説しています。ほとんどの病気の原因は、精神的なストレス、悩んだり怯えたりすることが一番良くない。仕事や人間関係など、特に頑張りすぎによるストレスには気をつけること。ガンを治すための四箇条『1.生活パターンを見直す、2.ガンの恐怖から逃れる、3.消耗する治療を続けない(抗ガン剤、放射線、大手術)、4.副交感神経優位にして免疫能力を高める(針灸、食事、運動、笑い、入浴)』
無間人形
(大沢在昌)


I
直木賞受賞の「新宿鮫シリーズ第4弾」です。『無間』とは無間地獄(五逆と謗法(ほうぼう)の大悪を犯した者が落ちる所)の略です。とにかく面白いです、15年以上も前に書かれた本なのにこのシリーズにはまってしまいます。
「新宿の若者達の間で舐めるだけで効く新型覚醒剤が流行だした。シャブを憎む鮫島は執拗に密売ルートを追う。財閥、やくざがからみ、麻薬取締官の妨害、恋人・晶が人質に・・・。」息つく暇もないくらいに物語は展開していきます。超人気シリーズになったのがよくわかります。次はシリーズ最後に近いものを読んでみたいと思います。
つばさよつばさ
(浅田次郎)


H
JAL機内誌「SKYWARD」に連載されたエッセイをまとめたものですが、すごく面白い!
旅先作家を目指していた著者が最近一年に、海外6〜7回で延べ60日間、国内約30回で60日間の旅をするようになったとのこと、旅の思い出、失敗談、世界観など非日常の体験談が目一杯で笑ったりグッと来たり、珠玉のエッセイ集です。『かつてはヨーロッパを範とし第二次世界大戦後はアメリカに急接近した我々日本人の生活が、正しい文化の形であるのか、と。朝食抜きで仕事をし、学問に励むことが、果たして分明なのか、と』中国の人からみると日本人は朝食を食べないと見られているようです。あなたはどうですか?
新宿鮫
(大沢在昌)


G
1990年に刊行されて本で、今ごろと思われるかもしれません。嘗てNHKでドラマ化されたのを覚えていますが原作を読んでみたい本の一つでした。この本で、日本推理作家協会賞、吉川英治文学新事象を受賞しています。冒頭からラストまで目一杯に緊迫感がみなぎる警察小説です。あっという間に読み終えました。主人公の鮫島はキャリア警官くずれで、ある理由から孤立無援の警部という設定になっています「拳銃密売を追う防犯課の鮫島の捜査活動と警察官殺害事件を追う捜査本部との活動を同時進行に描いている」。すごく面白いです。シリーズ第4作『無間人形』が直木賞を受賞しています。
十頁だけ・・

(遠藤周作)


F
遠藤周作没後10年の時点で(46年間埋もれていた)原稿が発見された初期の作品です。タイトルは『十頁だけ読んでごらんなさい。十頁たって飽いたらこの本を捨てて下さって宜しい』というものです。内容は、手紙の書き方、それも男性が女性にデートの申し込みをする手紙と、病人への見舞いの手紙が中心になっています。手紙の書き方を指南するというスタンスをとりながら、「相手を思いやること」や「文章はどう書くべきか」や「(男女関係だけでなく)人と人が付き合うことはどうあるべきか」を教えてくれる本になっています。200ページたらずの本なので、肩肘はらずに簡単に読めます。昭和の香りが強い本です。
強奪箱根駅伝
(安東能明)

E
箱根駅伝をテーマにしたサスペンスです。『風が強く吹いている』と違うお話です『犯罪のスリルと駅伝の興奮』が一度に味わえます。「12月30日の夜、神奈川大学駅伝チームの女子マネージャーが誘拐され監禁中の彼女の映像がTV局に届く。駅伝中継のジャックを仄めかし次々と要求を突きつけてくる。その中で駅伝はスタート・・・」誘拐犯、警察、TV局、そして駅伝チーム、ハイテクを駆使した犯罪、結末は・・・果たして選手はゴールできるのか?正月の国民的行事になった『箱根駅伝』を人質にしたサスペンス、最後まで一気に読ませます。平成15年に発表された本です(実在の団体が登場するのも面白いです)。
警官の血
上・下

(佐々木譲)

D
2008年版「このミス」で第1位になった本です。「エトロフ発・・・」に続いてこの著者のものを読みたくなりました。戦後から現在まで約60年間、警察官三代の人生を追っています。
上下2巻で900ページを超えますが一気に読ませます。「昭和23年、警察官として歩み始めた清二はやがて駐在となるが五重塔が火事にあった夜、謎の死を遂げる。その長男民雄も警察官となり過酷な任務に就くが駐在警官となった後殉職する。三代目和也も同じ道を選び捜査四課に配属になる・・・」といったもので、最初は淡々と進みますが段々とのめり込んでしまいます。この人の本がこんなに面白いとは思いませんでした。
たった一人の老い支度
(岡田のぶ子)


C
『中高年になると若い頃の五倍速で年をとる』という著者の言葉。そう感じる人にも若い人にも、是非読んでもらいたい本です。必ずくる老いにどのように立ち向かっていくかを丁寧に面白く教えてくれます。『老いに対する発想の仕方、お金、住まい、食、体、おしゃれ、まさかの時の心得など』分野別に体験談などを交えて書いてありユニークな知恵と工夫に驚かされます。約10年前に書かれていますが、今から老後を迎える人、既にその域にある人も必読の書です。著者はアメリカでの結婚に敗れ、家族も財産も手放し50歳からの再出発をした人で壮絶な生き様に共感させられます。一家に一冊(新潮文庫、500円)
エトロフ発緊急電
(佐々木譲)

B
とにかく面白いです、600ページを超える長編ですが寝る間も惜しいくらいです。「笑う警官」などの佐々木譲の平成元年の作品です、『山本周五郎賞』『日本推理作家協会賞』『日本冒険小説協会大賞』をもらっています。この賞からもわかるとおりいろんな要素を含んでいます。「1941年12月8日、日本海軍機動部隊は真珠湾を攻撃。海軍機動部隊が極秘裏に集結する択捉島に潜入したアメリカの日系人スパイ、南京虐殺で恋人を殺されたアメリカ人宣教師、ロシア人と日本人との混血の薄幸の女、被差別の朝鮮人など・・・」緊迫した展開の中に、哀しく切ない物語が見えてきます。胸にじんとしみます。
神様

(川上弘美)


A
ひょんなことから川上弘美のデビュー作を読むことになりました。この『神様』はパスカル新人文学賞、紫式部文学賞、ドゥゴマ文学賞などをもらっています。話しは「熊にさそわれて散歩に出る、といって・・・川原に行く」ところから始まります。九つの物語がありますが、不思議な動物(人間も含めて)達とのふれあいの中にホンワカしたものを感じます。自分が見たいと思っているような夢の話し(将来何になりたいとか言う夢ではなく、こんなことがあったら楽しいだろうなぁと言う夢)がいっぱい、心がポカポカと温まるのです。この作者はこの後芥川賞や谷崎潤一郎賞などめざましい活躍をしますがデビューからいいですね。
ハッピイー・リタイアメント
(浅田次郎)


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今年の始まりはやはり浅田次郎です。「定年を4年後に控えたしがない財務官僚(ノンキャリ)と愚直なだけが取り柄の自衛官。この二人が再就職先として斡旋された”全国中小企業振興会”が実態のない天下り組織、その体質になじめない二人が秘書の女性からある仕事を言い渡される。この三人が人生逆転の満塁さよならホームランをものにできるか?」笑わせます、『最高の人生とはたいそうな給料をもらい、テキトーに仕事をすることである』 『どれだけ視力に自信があり、どれだけ注意力に優れていても、決して自分の目に見えぬ人間が世界にただ一人いる。他でもない自分自身である』結末はクライム小説みたい。