book(2012)



 あの日、パナマホテルで
(ジェイミー・フォード)

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山田洋次が『こういう作品が映画になるべき』と言っています。”幸せの黄色いハンカチ”マディソン郡の橋”ジュリエットからの手紙”ロミオとジュリエット”などを読みながら思い浮かべました。僑の息子ヘンリー・リーと同じ年の日系二世のケイコ・オカベの切ない恋。日米関係の緊張度合いが高まるなか、アメリカの日系人に対する当局の監視や住民の嫌がらせも激しさを増す・・、これを44年後に思い出す形で話は進む」シアトルに今でもこのホテルは実在するそうです。やっぱり泣いてしまいました。
赤猫異聞
(浅田次郎)

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図書館52
(73)

浅田次郎得意とする幕末から明治初年にかけての話です。「火事と解き放ちは江戸の華! 江戸から明治へ、混乱の世を襲った大火事。火の手が迫る小伝馬町牢屋敷から、曰くつきの三人の囚人が解放された。千載一遇の自由を得て、命がけの意趣返しに向かった先で目にしたものは・・・」 事件から8年後、当時の関係者から事情聴取する形で話は進んでいきます。浅田ファンなら途中で何となく察しはつきますが、意外な結末と、時代の奔流に抗い生きる人々の生き様が何ともいえず心地よいです。今の世の中も同じ、激変の時代をいかに生きるか?こんな生き方ができたらいいなぁ~!
往復書簡
(湊かなえ)

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図書館51
(72)
中学、あるいは高校時代に起きた「事件」の真相が、当事者たちの手紙のやりとりで明かされるというちょっと変わった形式の連作ミステリーで、全部で三編ありますがその中の一つが『北のカナリアたち』の原作です(映画を先に観ました)。映画は原作とは違う展開で話が進んでいくのですが、こちらの方もなかなかのものです。後の二編も生徒達の10年後と、15年後を描いていますがその時に何が起こったのか・・。それを手紙のやりとりの中で明かしていくという面白い手法です、いつもこの人の本は語り手が変わるところが一つのポイントか?三冊目の湊かなえでしたがやっぱり面白かったです。
密室殺人ゲーム
(歌野晶午)

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図書館50
(71)
2004年に紹介した『葉桜の季節に君を想うということ』に続いて2010年『本格ミステリー大賞』をとっています。ちょいとえぐいところや、殺人をゲームとしてとらえるところなど生理的に受け付けない部分がありますが、純粋に謎解きと思えば面白いです。「5人のメンバーがチャットで行っているのは『殺人推理ゲーム』ゲームといっても、各々が考えた机上のミステリーを披露し合うだけのお遊びではない。彼らは、メンバーの一人が実際に殺人を実行し起きた殺人について残りのメンバーが推理をするというリアル殺人ゲームを行っているのだ」。何ともビックリする設定ですが、今の世の中こんなことが実際起こるかも?
ねじまき鳥クロニクル
(村上春樹)

61
図書館49
(70)
1991年から3年をかけて1部・2部を完成(この時は3部の予定はなかった)、その後1年をかけて3部を書き原稿用紙1800枚くらいの長編(著者も普通の本3冊分のボリュームがあると言っています)です。湾岸戦争が始まった時から4年間アメリカに住んでいた頃に書かれたものです。これまでのものと趣が違います、著者が『ミステリー小説を書いているわけではないから、あらゆる謎が明快に解き明かされることを求めているわけではない世界は解けない謎を包含して成立している』と言っているが今回は謎をより強く追求したかったとのこと。不思議な話で奥が深いです。妻を捜す話ですが一言では言えません、読んでください。
ビブリア古書堂の事件手帖2
(三上延)

60
図書館48
(69)
後味の悪い本を読んだ後にこの本は最高です。前作が面白かったのでつられて読みましたが期待を裏切りません。今回は三つの話と栞子さんの秘密と語り手の俺の過去が少しかいま見える話が出てきます。ここまで来たら第三巻を読まないわけにはいかないという作者の術中にはまってしまう。スタンリー・キューブリックの映画で有名になった『時計仕掛けのオレンジ』 福田定一(司馬遼太郎の本名)が書いた随筆 足塚不二雄(藤子不二雄の売れる前の名)の『UTOPIA 最後の世界大戦』 など・・。よくもまあ古書にまつわる興味深い話がいっぱいです。やはり本好きにはたまらない。
残穢
(小野不由美)

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図書館47
(68)
”ざんえ”と読みます。『怨みを伴う死は穢れとなる。穢れとは怪異なり。戦慄の500枚書き下ろし長編ホラー』とありましたが全然面白くなく怖くもありません。何でこの本を借りたのか自分でもわかりません。「畳を擦る音が聞こえる、いるはずのない赤ん坊の泣き声がする、何かが床下を這い廻る気配がする。だからあの家には人が居着かない、何の変哲もないマンションで起きる怪奇現象を調べるうち、浮き上がってきたある土地を巡る意外な真実」 ドキュメンタリー風の展開ですが盛り上がりも何もありません。でもホラーファンにはたまらないのでしょう、怖すぎて面白いのだそうです(訳わからん)作者は中津出身です。
ビブリア古書堂の事件手帖
(三上延)


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数々の賞で話題をさらっている本です、現在罪第三巻まで出ています(300万部突破)がこれは第一巻目です。古書に関して並外れた知識を持つが、極度の人見知りである古本屋の店主・栞子・(しおりこ:すごい美人)が、客が持ち込む古書にまつわる謎を解いていくと言う話で。作中で扱っている古書は実在のものだそうです。四つの話が出てきますが何ともまぁ魅力ある話で思わず引き込まれてしまいます。古書には読んだ人達のいろんな生き様が見えて来るという栞子・・・。軽いタッチで読めます、出てくる本も読みたくなります。秋の夜長にお楽しみあれ!。
同期
(今野敏)

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図書館46
(67)

『隠蔽捜査シリーズ』ではありません、『予測不能、怒濤の展開が続く、警察小説の大傑作』とありました。「“願いはただ、同期を救うことだけ。” ウチコミの最中に逃走した暴力団員から発砲された警視庁捜査一課の宇田川を間一髪で救ったのは、同期の公安刑事だった。直後、その男は懲戒免職になり姿を消す。しかも連続殺人の容疑者に。刑事達の前に立ちはだかるものは―組織の論理だった」 組織に立ち向かう刑事達がいい、面白い!
『安保マフィア:日米安保を巡る防衛企業の周辺には”日米平和・文化交流会”など特殊法人がありそれらが巨大な利権の温床だと言われている・・』 闇はどこまでも広がります。
回廊封鎖
(佐々木譲)

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図書館45
(66)
『魂が震える犯罪小説の最高峰』という帯封に惹かれ読みました。佐々木譲はさすがに面白い!でも、いつもの刑事物とはかなり違っていて、完全に犯行グループの物語です。ラストがあまりにも切なく読み終わってしばらくは呆然となります。消費者金融の怖さ、サラ金の取立て騒ぎなど豊田商事の事件も底流に流れています。「巨大ビルの中で、悲劇の幕があがる!3つの殺人事件には共通点があった。被害者はみな大手消費者金融の元社員であること、処刑のような殺害方法…。刑事は捜査する中で、意外な犯人像に迫る。事件の連鎖は止められるのか」 信念を貫く人間の物語です。
ブラスデイズ
(中山智幸)


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熊本北高をモデルに吹奏楽部の高校生達を描いた青春群像劇です。最初のページの『人物紹介』にびっくり、最後まであまり覚えきれなかった。辛口に言わせてもらうと三浦しをんの『風が強く吹いている』風にさりげなく人物が描かれているといいのになぁ~と思いました。音楽音痴なので特に感じなかったのかも知れないが、事件・盛り上がりがちょいと欲しかった。一番気に入ったセリフ『半音ずれた世界が無数にあったとしても、そのどこにも幸せ一音だけということはない。後悔の一音だけとい言うことも・・、メロディは続く。続いてこそメロディで、長くなればどこかで転調する。鼓動が続いている限り』 新たな挑戦に乾杯!
ふくわらい
(西加奈子)

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図書館44
(65)
図書館に予約した経緯が記憶にありませんでした。ちょいと不思議な本です、「主人公は編集者の“鳴木戸定(なるきどさだ、マルキ・ド・サドのもじり)、彼女が幼い頃に母とふくわらいをして遊んだことが、その後の彼女の人間性に強い影響を与えることになる。さらに・・・」 読んで、苦手…と感じました。あけすけなエログロ?反面、不思議な魅力がある定がどうなるか気になるから読むうちにはまりますが。結果、残念ながら私には著者の意図を読み取る力がなかったようです。ラストにはびっくり!しかし、不思議な感動を与えてくれる、異色の作品でした。作者はテヘラン生まれの35歳です。
第三の時効
(横山秀夫)

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図書館43
(64)

2003年に出版され、『山本周五郎賞』の候補作にもなっています。六編が収められていますが全編ともテレビドラマ化されています(観ていませんけど・・)。表題になっている『第三の時効』は「殺人事件の時効成立目前。現場の刑事にも知らされず、巧妙に仕組まれていた”第三の時効”とはいったい何か?刑事たちの生々しい葛藤と、逮捕への執念を鋭くえぐる」とありますが、これに限らず全てが読み応えがあります。F県警捜査第一課強行犯捜査係(一班~三班)の優秀だが癖のある者ばかりの集まり、その刑事達の熾烈な闘いを描いています。一筋縄ではいかない話ばかりです。
続・氷点上・下
(三浦綾子)

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前作から4年半後に新聞連載が始まりました、話は前作の四日後からです。『氷点』は人間の原罪がテーマでしたが『続』は罪の許しがテーマになります。単純に感動したという言葉では言い表せません。解説にありますが「作者が訴えずにはいられないモチーフを描いた作品である。問題はそのメッセージを読者がどのように受けとめるかである。面白い小説を読んだだけですませるのか、陽子が求める課題を自分自身のものとするかである」と、4冊で1500ページを超えますが息もつかずに読んでしまいます。人の罪深さに何とも言いようがありません。読まれている人が多いと思いますが是非再読ください。
氷点 上・下
(三浦綾子)


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まさに『名作』です。原作は(私が高校3年生の)昭和39年12月から40年11月まで朝日新聞に連載されものです。連載終了後、TV化、映画化され映画では若尾文子、山本圭、安田道代が出演しています(山本圭のファンでした)。当時、本も映画にもすごい感動を受けたことを覚えています。今回札幌から旭川に旅したので40数年ぶりに読み返しましたが、若い頃より遙かに心に響くものがありました。北海道旭川市を舞台に人間の「原罪」をテーマに描いたもので「妻への復讐心から自分の娘を殺した犯人の娘を養子に迎えたことから始まる愛と罪と許しをテーマに・・・」 原罪とは?人の心とは?
犯罪
(フェルディナント
・フォン・シーラッハ)
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図書館42
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弁護士の「私」が遭遇した11の異様な“犯罪”。実際に起こった事件を元に、胸を打つ悲喜劇を描いた連作犯罪文学。クライスト賞はじめ数々の文学賞を獲得しベストセラーとなった傑作短編集です。「一生愛しつづけると誓った妻を殺めた老医師。兄を救うため法廷中を騙そうとする犯罪者一家の息子。羊の目を恐れ、眼球をくり抜き続ける伯爵家の御曹司、エチオピアの寒村を豊かにした、心やさしき銀行強盗など・・・」 異様な罪を犯した人間たちの哀しさ、愛おしさが鮮 やかに描かれています。ドイツでの発行部数四十五万部、世界三十二か国で翻訳されているそうです。
二流小説家
(デイヴィッド・ゴードン)

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図書館41
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『このミス』海外部門ランキング第1位、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞候補作といった作品です。「主人公は冴えない中年作家。シリーズ物のミステリ、SF、ヴァンパイア小説の執筆で何とか食いつないできたが、ガールフレンドには愛想を尽かされ、家庭教師をしている女子高生からも小馬鹿にされる始末。だがそこに大逆転のチャンスが。かつてニューヨークを震撼させた連続殺人鬼より告白本の執筆を依頼される・・・」200ページを過ぎてからはじめて事件らしい事件が起こります、ここまでは、結構退屈しますがあとは一気に駆けます。アメリカらしく倒錯・異常・変態・サド・マゾの色情狂たちもいっぱい。
ジェノサイド
(高野和明)

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図書館40
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『ジェノサイド』とは、大量虐殺(集団殺害)を意味します。この人の本は『13階段』(2002年紹介)以来ですが、ショッキングな内容と人間の愚かさや、人類の進化など、すごく興味を持って読みました。文句なしに面白いです。「急死したはずの父親から送られてきた一通のメール。創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人は、その不可解な遺書を手掛かりに、隠されていた私設実験室に辿り着く。同じ頃、特殊部隊出身の傭兵、ジョナサン・イエーガーは、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、ある極秘の依頼を引き受けた。暗殺任務と思しき不明の作戦とは」舞台は日本、アメリカ、アフリカと想像を絶する展開に・・。
英雄の書
(宮部みゆき)

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図書館39
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宮部みゆきにしては異色作です。陰湿ないじめや殺人や戦争などの現代社会が抱える病理もまた、人間の紡ぎだす「物語」なんだというくだりで、これは冒険もののファンタジーの形を借りた、メッセージ性の強い作品だと思えてきます。「小学5年生の友理子は中学生の兄が同級生をナイフで刺して行方不明に、途方に暮れる彼女に本が語りかけてくる・・。そこから兄を救うべく壮大な冒険が始まる・・・」しかし『愛や夢を探し求める夢物語ではありません』と作者も言っています。「指輪物語」などの本や、冒険物の映画を想像させますが結構理解しにくいところをもあります。 『物語を紡ぐとは?』
プラチナデータ
(東野圭吾)

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『"DNA捜査"によって検挙率100%、冤罪率0%になった近未来の日本が舞台となっている。ここで言う"DNA捜査"とは、単にDNAの型の一致により犯人を特定するものではなく、遺伝子の特性解析により、性別などはもとより、体格や性格・気性、遺伝的な疾患の有無など、犯人特定の手がかりとなるプロファイリングまでを行えるというものである』。何という恐ろしい世界でしょう。「このDNA捜査システムの開発者が殺された、その開発者の一人神楽はシステムを使って犯人を突き止めようとするが、コンピュータが示した犯人は自分だった・・・」裏に隠された陰謀、多重人格と話は複雑にからみます。
マスカレード・ホテル
(東野圭吾)

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図書館38
(59)
今年三冊目の東野圭吾。著者の小説家生活25年記念作品第3作として書かれたものです。題「マスカレード」は英語で『仮面舞踏会』を意味します。「東京都内である3件の連続殺人事件が発生した。警察の捜査により、第4の殺人事件が都内の高級ホテル『コルテシア東京』で起きる事が判明する。しかし、犯人もターゲットも不明。捜査員がスタッフに成りすまし、潜入捜査をすることになるが・・・」刑事の教育係として、優秀なフロントクラークである山岸尚美が選ばれるが、この彼女がなかなか魅力的です。ホテルマンのお客様を守る姿勢と人を疑うことから始まる刑事との対比がいいです。東野圭吾は面白い!
母の遺産ー新聞小説
(水村美苗)
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図書館37
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500ページを超える長さですが一気に読みました。「主人公の美津紀は、50代の大学講師。姉と共に入院中の母親の介護をしている。夫は若い女と浮気をしているようだ。疲れ果てた美津紀はある時、こう叫ぶ。<ママ、いったいいつになったら死んでくれるの?> 元芸者の娘に生まれた母は、身体が不自由になった死の間際までわがままを通した・・」モデルは作者のさんの実母、2008年に亡くなった節子さんとのこと。明治の新聞小説『金色夜叉』を下敷きに、女を描きます。『女達が年ごとにあたかも妖怪のように長生きするようになった日本。姑はもちろん自分の母親の死をねがう娘が増えても不思議はない』

境遇
(湊かなえ)

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図書館36
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『告白』以来二冊目です。人気があり図書館に申し込んでいましたがようやく順番が回ってきました。語り手が交代するところなど同じです。話は「デビュー作の絵本がベストセラーとなった陽子と、新聞記者の晴美は親友同士。共に幼いころ親に捨てられた過去を持つ。ある日、『真実を公表しなければ、息子の命はない』という脅迫状とともに、陽子の息子が誘拐された。”真実”とは何か…」 少しさっぱりしすぎた感じはしますが面白かったです。テレビドラマにもなっているのですね。
熱帯夜の寝苦しい夜の読書にはもってこいです、一気に読んでしまいます。
夜の国のクーパー
(伊坂幸太郎)

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伊坂幸太郎最新作です。誠に不思議な話(「指輪物語」や「不思議な国のアリス」など思い出します)で賛否両論あるかも知れませんが面白いです、こんな本も書くのですね。また、大江健三郎の『同時代ゲーム』に影響されているのもびっくりでした。『僕』という猫、『私』という男、『ぼく』という兵士、この3人が、それぞれに語る形で、話は進んでいきます。「その国には、昔から言い伝えがあった。クーパーという樹のことだ。その樹は、一年に一度、まるで虫のように、サナギから成虫になる。そして、暴れ出すのだと。だから、そのクーパーを退治するために、毎年、クーパーの兵士が選ばれる・・」。???
氷壁
(井上靖)


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昭和31年に書かれた、山岳小説の傑作です。何回読んでも面白い、今回上高地・槍ヶ岳・穂高温泉と回るので3回目になりますが読みました。実際に起きたナイロンザイル切断事件がモデルです。友情と恋愛の確執を、「山」という自然と都会とを照らし合わせて描いています、『点と線』と同じようなロマンを感じます。「友と挑んだ厳冬期の岩壁で、魚津恭太は友を失った。切れるはずのないザイルが切れてしまったのだ。魚津が意図的に切ったとすれば、それは自分だけが助かりたいために友を見殺しにしたことになり、友が意図的に切ったとすれば、友は自殺 を図ったことになる・・・」是非ご一読を!
震える牛
(相場英雄)

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図書館34
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『消費者を欺く企業、安全より経済効率を優先する社会、命を軽視する風土が悲劇を生んだ』という帯封に惹かれて読みました。「2年前に発生し、迷宮入りした事件の再捜査から浮かび上がってきた大手SCとBSE感染牛の関係を追う話。 警視庁捜査一課継続捜査班に属する田川信一は捜査一課長から、2年前に発生した『中野駅前居酒屋強盗殺人事件』の継続捜査を命じられる。不良外国人による強盗殺人事件と推定された事件だったが、犯人は捕まらなかったのだ。捜査を始めると背後には大きな陰謀が・・・」読んだらSCの加工肉は食べたくありません。この人の本は初めてでしたが面白かったぁ~。
疑心
(今野敏)

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図書館33
(54)
『隠蔽捜査』1.2.4と読んだものですからどうしても3に返ってしまいました。。ご存じキャリアでありながら大森署の署長に左遷させられた竜崎が主人公です。今回女房から『唐変木』と呼ばれる竜崎が美しい女性キャリアに恋心を抱いてしまうのです。「異例の任命で、米大統領訪日の方面警備本部長になった竜崎のもとに飛び込んできたのは、大統領機の到着する羽田空港でのテロ情報だった。警視庁から派遣されてきた美貌の女性キャリア、空港封鎖を主張するシークレットサービス…竜崎の心は揺れっぱなしです」 さあ、どうなるのでしょう? 階級の上下やメンツにこだわらない竜崎はやはり頼もしい。
傷痕
(桜庭一樹)

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図書館32
(53)
この人の本は3冊目です。なんの予備知識もなかったので読み進めてからようやくマイケルジャクソンを題材にした話だと気付きました。「突然この世を去ったスーパースターがとつぜん死んだ夜、報道が世界中を飛びまわった。彼は51歳で、娘らしき、11歳の子どもが一人残された。彼女がどうやって、誰から生を受けたのか、誰も知らなかった。娘の名前は、傷痕。多くの人が彼について語り、その真相に迫ろうとする。偉大すぎるスターの真の姿とは? そして彼が世界に遺したものとは?」 周辺の人を語り手に据えて書いてあります。不思議な本ですが面白いです。
地層捜査
(佐々木譲)
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図書館31
(52)
「15年前に東京・荒木町で起きたものの未解決となっていた老女殺人事件が時効撤廃で再捜査となった殺人事件」を管理官に暴言を吐いて謹慎中だった捜査一課の刑事が以前この事件を担当していた元刑事と一緒に再調査を始める。「当時の捜査本部が着目した土地トラブルを追いながら、かつては芸妓、後に置屋の女将として生きた老女とこの街の記憶に目を向けていく。そう、事件の『地層』を掘り起こす」とうもので佐々木譲の新シリーズです。この人の本は刑事、犯人を含めた人間模様まで、とにかく読み応え十分と思います。やはり一気に読んでしまいました。
下山の思想
(五木寛之)

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図書館30
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『坂の上の雲』から『下山の思想』へ、山に登る私たちにとって下山は重要な言葉です。『登山にたとえれば、21世紀のこの時代は従来の登山重視の時代から下山重視の時代へと大転換を遂げつつある。だから「登頂」後の下山の時代をどう認識し、どう生きるか』がテーマとして書かれています。「未曾有の大災害のあと、私たちの再生の目標は、どこにあるのか・・・それは山頂ではない、私たちは再び世界の経済大国という頂上を目指すのではなく、実り多い成熟した下山こそを思い描くべきではないのか」 『民』という字には「目に釘を打って見えなくする」という意味があるそうな・・・何となくわかりますね。
マジメとフマジメの間
(岡本喜八)

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図書館29
(50)
映画監督岡本喜八(平成17年81歳没)のエッセイを集めた本ですが、なかなか面白いです。古い映画ファン(?)は覚えていると思いますが『独立愚連隊』『日本のいちばん長い日』『大菩薩峠』など生涯に39本の映画を作っています。戦争映画から時代劇、現代劇など、裏話も楽しいです。「戦争まっただ中、青春時代を過ごした監督の生き様」が素晴らしいです。上京した17歳の春に見た「駅馬車」にひかれて映画監督になった・・。
『野心は持つがユメは持たない事にしている。・・・ヒトの褌(ふんどし)で角力(すもう)をとっていても、ヨコヅナを破ろうという野心は持ちつづけたい」 。
日本中枢の崩壊
(古賀茂明)

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図書館28
(49)
著者は経産省の現役幹部です。は2011年5月発行、東日本大震災直後。以前から希有していたことが起きた。「日本の官僚は個人としては優秀で仕事熱心な人が多いが、組織の利益を侵害される問題になると、人が変わったように組織防衛に狂奔する」「経済成長を促す施策や産業政策が滞れば、税収の不足から政府を動かす資金すらなくなる。そうして危機感を煽って大増税が実施され、日本経済は奈落の底へと落ちていくだろう」経産省が握りつぶした「東電処理策」を巻末に全掲載してあります。政治に関心があってもなくても選挙で投票した人、政治家、それに官僚にも是非読んでもらいたい本です。
幸福な生活
(百田尚樹)

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図書館27
(48)
18編の話を集めた短篇集です。すべて、『最後の一行』にこだわった話で、最後の一行で物語をひっくり返すというような形になっています。本の構成も凝っていて、最後の一行はすべて、ページをめくった一行目に配置されているので、最後の一行が読んでいる途中で視界に入ることはありません。一作品15ページ平均の物語集ですが、最後の一行に怖さを感じる話ばかりです。『人間、(愛する)人の秘密をのぞいてはいけない・・・』のです。とっても面白くて(怖い?)。 
この作家は、よくもまぁ、いろいろとこんな話を考えつくものと思います。
最後の証人
(柚月裕子)
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図書館26
(47)
『検事の本懐』からこの人の本は3冊目になりました。『・・本懐』より1年半くらい前に出た本ですがこちらを後に読んだ方がいいです。主人公の佐方貞人が検事をやめて弁護士になってからの話で、検事時代の主人公を理解しているとわかりやすい。それにしても、『臨床心理』よりかなり進化した感じです。 今回は二つの事件が絡む法廷サスペンスです、 数時間程度で読んでしまいます。200ページを過ぎるまでは誰が殺され、誰が弁護を頼んだのか明かされません、自分で推理しながら読むのです。 『人は誰でも過ちは犯す、しかし、一度なら過ちだが、二度は違う。二度目に犯した過ちはそ人間の生き方だ』
臨床心理
(柚月裕子)

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図書館25
(46)
柚月裕子が新人の時(2008年)「このミス」で大賞をもらっています。障害者の性的虐待と福祉利権がテーマです。「臨床心理士の女性が、担当することとなった患者は神から与えられたとも言われる『共感覚』を持ち、声の色で感情を読み取ることができると言う。その青年と、警察官である同級生の協力を得て、青年と一緒に福祉施設で暮らしていた少女の自殺の真相を解明していく」 というもので少し先が読めますが結構面白いです。
先に紹介した、検事物とは違う雰囲気ですが、この作家は元々フリーライターで、雑誌やテレビ局のインタビュー記事のとりまとめなどもしているそうです。
舟を編む
(三浦しをん)


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『本屋大賞2012受賞』です。「風が強く吹いている」の三浦しをんですから面白くないはずがありません。「国語辞典の編集者が主人公のお話、個性的な面々の中で辞書作りの世界に没頭。中型の(つまり『広辞苑』『大辞林』の規模の)辞書を15年かけて完成させるまでの話」ですが、一冊の辞書を作るのにこんなに労力と熱意がいるのかとびっくりです。笑いと感動の中にあっという間に読んでしまいます。「言葉は、親から子へ姿を変えながら手渡していくことで伝わる。社会や人間の経験、感情をバトンタッチする象徴が辞書なんだと思う」と、 辞書を手にとって読んでみたくなります。
検事の本懐
(柚月裕子)

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図書館24
(45)
『骨太の人間ドラマと巧緻ミステリー的興趣が、見事に融合した極上の連作集』とありました。まさにその通り五つの短編、「樹を見る」「罪を押す」「恩を返す」「拳を握る」そして、横領弁護士の汚名をきてまで恩義を守り抜いて死んだ男の真情を描いた「本懐を知る」、すべての話が唸ってしまうような面白さを持っています。『警察は縦社会だ、上に嫌われれば冷や飯を食らうこともあるが、気に入られれば実力以上のポストに就く可能性もある』『人間の持つ懐の深さは、生きてきた時間の長さではなく、その中で培われた価値観や倫理観による物だと思う』 今後この人の本にはまりそうです。
降霊会の夜
(浅田次郎)

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図書館23
(44)
浅田次郎最新刊です。ラストの孤独と寂寥感がなんともいえません。「軽井沢の別荘に一人住む初老の男は、自分を詰(なじ)る見知らぬ女の夢をしばしば見ていた。雷雨の夜に迷い込んだ梓と名乗る若い女性は夢の女にうり二つであった。梓に導かれるままに、男は降霊の儀式に臨むこととなるが…。多くの悔悟を抱える男が会いたいと願った人々は、はたして何を語るのか? そして生者と死者が語り合う禁忌に触れた男の身に何が起こるのか?」 話は幻想的・怪異的な世界へ入っていきます。戦争文学・恋愛小説・怪異譚の3つの要素が融合した作品です。現代怪異譚をお楽しみあれ!
麒麟の翼
(東野圭吾)

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図書館22
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予約して1年経ってようやく読むことができました(人気のほどが知れます)。作者も『加賀シリーズ最高傑作』と謳っていることを認めています(「赤い指」に登場)。「寒い夜、日本橋にある翼を持った麒麟像の下で、青柳武明という男性が息絶えた。彼はナイフで刺された状態で8分間も歩き、わざわざその像の下までやって来て倒れたのだ。日本橋署の刑事・加賀恭一郎は、青柳のそんな行動に疑問を持つ・・・」 面白いです、被害者はもちろん容疑者と思われる男も死亡。事件を早期に収束させたい本部に恭一郎の感は反対に働く・・・。東京に行ったらこの本片手に文学散歩を楽しみたくなります。
モンスター
(百田尚樹)


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最近は百田尚樹と聞いただだけで読みたくなります。それにしてもすごい、美に対する女性の執念と男の馬鹿らしさというか、古今東西人間は何と愚か(?)なんだろう言うことを考えさられます。ただ、あまりにも冗舌な部分もありますのでそこら当たりはとばし読みでいいと思います。「和子は畸形的なまでに醜く、学生時代を通じて周囲からバケモノと呼ばれる悲惨な日々を送っていた。ある事件をきっかけに追われるように東京に出る。そこで整形手術に目覚め、手術を繰り返し完璧な美人に変身を遂げる。名前や年齢を偽り、生まれ故郷に帰った彼女の真の目的は・・・」 狂おしいまでの情念、ちょいと怖いです。
蜩ノ記
(葉室麟)

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図書館21
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2012年1月の第146回直木賞です。話は「羽根藩の奥祐筆・庄三郎は、城内で刃傷沙汰に及んだ末、からくも切腹を免れ、家老により向山村に幽閉中の元郡奉行・戸田秋谷の元へ遣わされる。秋谷は七年前、前藩主の側室と不義密通を犯した罪で、家譜編纂と十年後の切腹を命じられていた。庄三郎には監視と、七年前の事件の真相探求の命が課されるが・・・」。今も昔も組織の中で生きる時、名利、打算、保身に走り、なすべき時、なすべきことを見誤る人は少なくありません、『命を区切られた時、人は何を思い、いかに生きるのか?あまりにも静謐な生き方に涙します。心が洗われます。
任侠病院
(今野敏)

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図書館20
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今野敏に「隠蔽捜査シリーズと任侠シリーズ」があると知りませんでした。隠蔽シリーズとは全く違う筋立てですが、スカッとして勇気のわく話です。「 東京の下町に小さな事務所を構える阿岐本組。堅気には迷惑をかけない正統派ヤクザだが、新規の地元民からは追放運動を起こされ、組長が引き受けてしまった潰れかけた病院再建には関西のヤクザの影が見える・・・」。暴力団とは違う(素人衆には手を出さない)任侠・昔気質なヤクザ、市民からは嫌われながらも弱きを挫く姿に喝采です。それと、24時間修羅場の中にいる医者・看護師など医療関係者の生き様にもグッとくるものがあります。
銀婚式
(篠田節子)

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図書館19
(40)
この人の本二冊目です。作者は『バブル崩壊後から十数年の話を、一度書いてみたいと思っていた』とのことで、証券マンとして順調な人生を歩んでいたエリートサラリーマンが、バブル崩壊後の破綻で転職を余儀なくされ、流転していく姿を描いた話です「主人公は、妻の由貴子と一人息子で六歳の翔を連れて三十六歳で渡米した。だが、由貴子は現地の生活になじめず、二人は離婚することになる…」 うまく立ち回る器用さや表面的な愛想のよさはなく、女心や人情の機微に疎く、座持ちも悪い男が主人公ですが、女性だからでしょうか?よく書けています。(作者は1955年生、東京学芸大卒です)
転迷
隠蔽捜査4
(今野敏)

22
図書館18
(39)
2008年に『隠蔽捜査1.2』を続けて紹介しています。3を飛ばして4ですが相変わらずスカッとする面白さです。ほとんどの警察ものが刑事を主人公としていますがこのシリーズはキャリアでありながら警察庁官房総務課長から大森署の署長に左遷させられた竜崎が主人公です。「相次いで変死した外務官僚・捜査を巡り外務省、厚労省と縄張り争いとメンツの勝負、それに娘を襲ったアクシデント、困難にもめげず正しく生きようとする姿」に思わず拍手しています。こんな風に生きられたらいいなと思います。大森署、普通は「所轄」として軽く見られているが竜崎という署長のお陰でちょいと違うところが面白い。
所轄魂
(笹本稜平)

21
図書館17
(38)
前作の『不正侵入』より面白いです。所轄VS警視庁の他にも、父と子、上司と部下と興味深い関係が話を面白くしています、物語の半分くらいまではかったるいのですが後半が俄然面白くなります。「城東署の強行犯係長・葛木が加わる殺人事件の捜査本部に警視庁捜査一課からキャリア管理官の息子が着任した。同時に壊し屋で知られる捜査十三係の鬼係長も派遣されてくる。戦場と化した本部・・・」 『若者が無差別殺人のような凶悪犯罪に走る。穿った見方をすれば悪に対する免役がない世代ともいえる。だから心の中の鬱屈したものが線を超えた時一気に極端な犯罪に走る・・・』 と、わかる気もします。
第五番
(久坂部羊)


図書館16
(37)
『無痛』(2009年book)の続きものと知らずに読みました、前作を読んでいなくても楽しめますが・・(読んだがいいかな?)。話は感染経路も不明な『新型カポジ肉腫』が日本で発生、人々を恐怖に陥れていく。そこには巨大な陰謀が・・・。過去に起きた疫病『マーブル熱、エイズ、ヤコブ病、SARS』など、これらに絡むWHOの動き・・(パンデミック宣言は人為的?)健康オタクの日本、世界から見て不思議な人間ドック、メタボ検診=日本人は病気を作り出している(守健奴)。「インフルエンザは医療マフィア(製薬会社、ワクチン製造業者、医療機器メーカー)のドル箱であり、驚異は高いほど望ましく、撲滅は彼らの利益に反する』 だから、何年に一度は世界のどこかでウイルス騒動が起きるのかな?と思ったりします。
真夏の方程式
(東野圭吾)

図書館15
(36)
ガリレオシリーズ第六弾です。「美しい海を誇る町・玻璃ヶ浦で発見された男の変死体。当初単純な事故と思われたものが、やがて16年前のある事件との関係が浮かび上がってくる・・・」といったもので、一気に気軽に読めます。『物事を両立させたいというのなら、双方について同等の知識と経験を有している必要がある。一方を重視するだけで十分だというのは傲慢だ。相手の仕事や考え方をリスペクトしてこそ、両立の道が開けてくる』 環境保護の話からこういうシーンが出てきますが、私たちが普段陥っているのでは?と考えさせられます。この人の本はやっぱり面白いですね。
靖国への帰還
(内田康夫)


探偵浅見光彦は登場しません。60ページくらいまでは軽くて何を言いたいのだろうと思いながら読みましたが、そのあと俄然面白くなります。タイムスリップものは大好きなのですが、やはりラストは切ないです。「物語は、主人公の中尉が昭和19年5月26日厚木飛行場からB29爆撃機を撃墜するため戦闘機月光で飛び立ち、戦闘しているうち被弾し、激痛が走るなか異常な風景のなかに突入してゆきます。そして、現在にタイムスリップしていくのです・・・」 テーマは靖国問題です、私も同様な考えで共感するところ大です。『大東亜戦争をどのように考え、どのように戦おうとしたのか』 戦争犯罪とは何なのか?
夢違
(恩田陸)


図書館14
(35)

もし他人の夢を可視化できたら…というお話、抜群に魅力的なホラー(的要素いっぱい)。
「夢を映像として記録し、デジタル化した『夢札』。夢を解析する『夢判断』を職業とする主人公は亡くなったはずの女の影に悩まされている。そんな時奇妙な依頼を受ける。全国の小学校で、集団白昼夢が起こっているというのだ。子供たちの悪夢に潜んでいるものとは?」第146回直木賞候補にもなっています。「夢」という誰にとっても身近なテーマだけに、主人公の恐怖やハラハラも他人ごとではないというか、最後まで一気にめました!
この人の本は4冊目でしたが、時には現実離れしたものも面白いです。
春から夏、やがて冬
(歌野晶午)


図書館13
(34)
心にズシーンと響く本です。2004年(紹介)に『葉桜の季節に君を想うということ』で衝撃を受けましたが今回も「ラスト5ページに世界の反転」とありました。それは読む人の感じ方でしょが、やっぱり衝撃を受けます。「スーパーの保安責任者の男と、店で万引きを働いたDVの被害に遭っている女。偶然出会った2人は、驚くべき因縁で結ばれていた!?」あまり書くとネタばれになりますが、なんともやるせないラストに呆然とします『何で?何で?』と
『子供に詭弁を操られようと、ふてくさられようと、口をきいてもらえず目を合わせてもらえなくても・・・、親としての一番の責務は我が子の命を守ることだ』この人の本は面白い!
弁護士探偵物語
(法坂一広)

図書館12
(33)
2012『このミス大賞』を受賞しています。母親と1歳の女の子の殺害容疑で逮捕された男の国選弁護士を引き受ける語り手が主人公です。作者は現役弁護士です、裁判や検察への批判は、どうしても書いておきたいことなのでしょう。興味深く読みました。「弁護士資格を一時停止させられていた弁護士。裁判は終わったものの、その原因となった事件にはまだ何かが潜んでいた…。ハードボイルドな酔いどれ弁護士、過去の事件に再び挑む!」といったものです。医療ミスを利用した大病院の犯罪、面白いテーマですが主人公が減らず口をたたたきまくるのには読んでいた閉口します(まじめにやれ!という感じ)。

Happy Box
(伊坂幸太郎・中山智幸他)


編集者がkochanの『幸』の付く作家5人(他に山本幸久、真梨幸子、小路幸也)を集めて幸せのアンソロジーをつくろう」という企画から始まったそうです。中の一人、中山智幸は私の甥っ子(義さんの長男)です。伊坂幸太郎はじめなかなか味わいある話が語られています。ここではもちろん智幸の『ふりだしにすすむ』を紹介します、話の始まりは少しSF調でちょっと混乱しますがラストはしっかりと幸せを感じます。二回読んだら納得でした。感想レビューで『一番素晴らしかったのが中山智幸さん。心の奥深くまでしみ込む感動。嬉しい出会い』 というのがありました。身内としては嬉しいレビューです!
君は嘘つき・・・
(浅田次郎)


図書館11
(32)
タイトルは『君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい』と小学生時代に担任教師に言われたという言葉からとってあります。過去20年の間に書かれた、単行本未収録のエッセイを主に集めたもので、『鉄道員』 『天国までの100マイル』 『椿山課長の七日間』 『一刀斎夢録』など、書くきっかけと裏話、自分の生い立ちや作家として一本立ちしていく姿が書かれています。時にはグッときながら面白く読めます。『一刀斎夢録』の項では西南戦争(せごどんのじゅねんゆっさ)が、明治維新を終わらせたと書いています。西郷の人となりも鋭い観察をしています。表舞台より裏にいた人を書いている理由もわかります。
ハックルベリー・フィンの冒険 上・下

(マーク・トウェイン)


昨年の「嵐が丘」に続き『よみたい古典』(朝日新聞)で紹介されていました。今から127年前(1885年)アメリカで出版されています、世界文学のベストテンに入る小説です。よく知られている「トム・ソーヤの冒険」の続編としてかかれたものですが今では本書こそが『アメリカ文学の源泉』とたたえられているそうです。「南北戦争前のアメリカ、母を亡くし、アルコール中毒の父親からは暴力を受けるハックが、養子にとられ、ミス・ワトソンからキリスト教教育でしぼられるところから始まり・・・。窮屈な生活と父親の暴力から飛び出し、逃亡奴隷のジムと協力してミシシッピー河を下っていく中でいろんなことを経験していく」 アメリカの自然、文明、人種差別など多くの問題がこの本と現代とつながっている気がします。『大人の社会を宗教や道徳という色めがねをかけていない浮浪児ハックが現実社会をありのままに観察している』 という評もありました。
ハックが『正しいことをしたって、まちがったことをしたって、同じことだ。人間の良心ていうわからずやが出しゃばって、なんでも人のことを責めやがるんだ。もし人間の良心と同じわからずやの野良犬がいたら、毒をもって殺してやりてえくらいだ』と言う。また、『ミス・ワトソンの説く天国には行きたくないと』いうハック。読めば読むほど味がでます。
緑の毒
(桐野夏生)


図書館10
(31)
人間の心の中に潜む邪悪な心を描かせたらピカ1?桐野ワールド満載です。「『川辺クリニック』の院長・川辺は、勤務医の妻・カオルとの仲がうまくいっていない。カオルが勤務先の医師と不倫関係にあるのだ。ある夜、玉木の姿を目撃した川辺は、嫉妬と邪心から、1人暮らしの女性の部屋に侵入し・・・」 ネタばれになるからこれ以上書きません。この人の本は『OUT』以来時々読んでいますがやはりすごいです。それと医者にも階級(ヒエラルヒー)があるという下り『研究者は、医者ヒエラルヒーの頂点に立つ、市中病院の医者は我こそが臨床医の中枢という誇り、開業医は金と自由』 だそうです、面白い!
密売人
(佐々木譲)

図書館9
(30)
登場人物の佐伯宏一、小島百合、津久井卓、新宮昌樹に覚えがあり、『?』と思ったところ『笑う警官』(2011年bookで紹介)がシリーズものになっていたのです。これはシリーズ5作目とか。映画化(1作目)やテレビ化(4作目)されており、人気が伺えます。
「10月下旬の北海道で、ほぼ同時期に3つの死体が発見、3カ所で起こった殺人と小島の話から、次に自分の協力者(エス)が殺人の狙いになると直感した佐伯宏一警部補は、一人、裏捜査を始めるのだが…。」相変わらず、リアルな警察組織や濃密な人間ドラマが描かれており楽しめます。
警官の条件
(佐々木譲)


図書館8
(29)
2010年bookで紹介した『警官の血』から9年後の話です。「警察は組織暴力部門の充実のため警察を(もちろん卑劣な組織がしくんだ罠により)辞めさせられた加賀谷を復職させた。安城和也率いるチームは、致命的な失策を招いてしまう」といったところから始まります。警視庁の闇を飲んだ加賀谷、彼を部下として告発した安城。再会した二人が出会うものは・・・。前作ほどの深みはありませんが読み応えがあります。前作から引き続いた二人の葛藤が見物です。ネタ晴れになりますので控えますが500ページを超えても、一気に読んでしまう面白さがあります。現代の闇が迫ってきます。
不正侵入

(笹本稜平)


マル暴の刑事が『ハイテク組織犯罪特別捜査室』に突然配置転換を命じられることから始まります。「刑事・秋川は、自殺とされた旧友の死に不振を覚える。また、彼の妻も謎の失踪を遂げる。独自の捜査を始めた秋川の前に立ちはだかる巨悪(検察、総会屋、暴力団、政治家・・)、それに4年前の殺人事件が絡み・・・」  コンピュータ技術も駆使しながら真相に迫っていきますがラストは何となく切ないです。『組織にとって正義とは、しょせん組織を守ることでしかない。組織に属する者は誰であれ一人の人間である前に一個の歯車なのだ・・』 敵が大きすぎる! 刑事モノが好きな方には、お薦めできる一冊です。
暴雪圏
(佐々木譲)


図書館7
(28)
「駐在警官・川久保篤シリーズ」の第2作目(1作目は読んでいませんが)。川久保が志茂別駐在所に赴任して2年目の冬の物語です。今の日本列島みたいに読んでいるだけで身も心も凍りそうな湿った重い雪が吹き荒れる暴風雪の中事件は起こります。「最大瞬間風速32メートル。十勝平野が十年ぶりの超大型爆弾低気圧に覆われた日、帯広近郊の町・志茂別で、暴力団組長宅襲撃犯、不倫の清算を決意した人妻、冴えない人生の終着点で職場の金を持ち出すサラリーマンなど…。それぞれの事情を隠した逃亡者たちが辿りついたペンションで何が・・・」 犯人も警察も動けない自然の猛威!面白いです。
江田島殺人事件
(内田康夫)


図書館6
(27)
1988年刊行された本で浅野光彦シリーズ25作目です。何で今頃古い本を?実は内田康夫フェアを本屋でやっていて面白そうでした。「江田島の主峰・古鷹山が炎上し、短剣を腹部に突きたてた不審な焼死体が発見された。そして10年━━。帝国海軍の象徴・東郷元帥の盗まれた短剣の行方を追って浅見光彦が江田島へ・・・」
『経済産業界発展のために・・・。肥大した軍備は戦争に勝つという目的から逸脱して武器を生産するという目的のためひたすら武器を生産する。だが、生産された武器は使わなければどうなる・・・使うためには戦争?』 防衛庁を巻き込んだミステリーが面白い!
カンター教授のジレンマ
(カール・ジェラッシ)


図書館5
(26)
亜紀ちゃん博士の分野に身近なサイエンス小説、読みました。全く初めての分野でしたが面白かったです。わからない単語もありましたが・・・。『訳者あとがき』より、「ノーベル賞を巡る様々な人間的葛藤が繰り広げられる・・・”ノーベル賞サスペンス”とでもなるのだろう」と書いています。著者は 『経口避妊薬・ピル』の生みの親として知られる科学者です。びっくりするのは科学という分野においても、データ調整が行われているという事実と、特許申請と同じで誰が先に論文を発表したか、などすごく興味深く読み観ました。
亜紀ちゃんも大変な世界で頑張っているのですね。
絆回廊・新宿鮫Ⅹ
(大沢在昌)


図書館4
(25)
新宿鮫が、5年ぶりに帰ってきました。シリーズ第10作となります。今まで3冊読んでいますが、おなじみの登場人物が出てきて懐かしい思いで読みました。
「ある男が刑務所から出たばかりで、警察官に昔の借りを返そうと、拳銃の入手を図る。そこへ、暴力団と正体不明の秘密組織(最近、世間を騒がした中国 残留孤児の2、3世を中心とした違法グループ)さらに公安関係の団体が絡み、凄絶な闘争が繰り広げられる。その渦の中に、一人超然と立ちはだかる鮫島。また、鮫島の上司で、ただ一人の理解者でもある桃井、そして恋人の晶との関係にも暗雲が漂ってくる・・」
 やっぱり面白い!
下町ロケット
(池井戸潤)


図書館3
(24)
2011年上半期、直木賞を受賞した本でTVドラマ化されています(観ていません)。面白くて読み始めたら止まらないという感じです。「大田区の町工場が取得した最先端特許をめぐる、中小企業vs大企業の熱い戦い!かつて研究者としてロケット開発に携わっていた佃航平は、打ち上げ失敗の責任を取って研究者の道を辞し、いまは親の跡を継いで従業員200人の小さな会社、佃製作所を経営していた。下請けいじめ、資金繰り難・・・」夢を実現するために困難に立ち向かう者達の感動の話です。『仕事とは一階には飯を食うための現実、それだけでは窮屈だから二回には夢を持つ、そんな人生を生きたい』
虚像 上・下
(高杉良)




図書館2
(23)
『不撓不屈』 『金融腐食列島Ⅱ』などbookで紹介していますが平成大不況をよそに「大泉内閣に食い込み、規制緩和の旗振り役となったノンバンクの帝王。男はいかに政商にのし上がり、なぜ表舞台から消えたのか?紳士然たる風貌に隠された非情、恫喝、肥大する欲望。投資ファンドとの癒着、平井金融相と仕組んだ出来レース、そして経営破綻の危機…」。巨利の構図を射抜く経済小説の金字塔!とありますが、何と下巻の中頃から日本郵政の『かんぽの宿』売却の裏側、いかにして竹中平蔵が郵政を食い物にしていったかが描かれています。物語の中では大泉、竹井、北山(西川のこと)などとなっていますがすべて実在の人物です。市場経済原理主義の虚像の中、規制改革、規制緩和を主張しながら利益を貪る自由主義体制、拝金主義。ただ儲けだけのために突っ走った当時の指導者達、あほなメディア。読んでいると腹が立ってきます。『竹井は、大泉総理の退任に歩調を合わせるように任期を4年も残して参議院銀を辞職した。国民を愚弄するにもほどがある。大泉退任で威を借るべき虎がいなくなった上、違法行為がバレたため辞任やむなしとしたのが真相だろう』 『かんぽの宿入札は、入札側の要請に日本郵政が応えたもので公平な入札とはほど遠いものだった』  経済語がわからなくても面白い!
プリズム
(百田尚樹)


図書館1
(22)
『永遠のゼロ』の著者の今度は哀しくミステリアスな恋愛の話です。「世田谷の古い洋館に家庭教師として通うことになった聡子。ある日聡子の前に屋敷の離れに住む謎の青年が現れる。青年は攻撃的であったり、女たらしであったり、紳士的であったり激しく変化する。青年の態度に困惑しながらも惹かれていく聡子、しかし、彼には秘密が・・・」
ネタばれになりますが、乖離性同一性障害(多重人格)のお話です。子供の頃の記憶から、この病気を引き起こすこともあるなどよく調べてあります。私は恋愛小説として読むより別な意味で面白く読みました。(この作者は書くたびにテーマが違います)。