book(2013)


飛水
(髙樹のぶ子)

図書館41
(115)

52
講談社百周年記念書として2010年に刊行された本です。恋愛小説の名手が描く『時を超えて飛翔する愛の魂』と解説者が言っていますが、この年になっても深く心にしみました。舞台が『風の盆』の八尾の近く飛騨古川で、これも情緒たっぷりです。「知り合いの葬儀で出会った妻子ある男からの強引とも言える告白に心惹かれる、その不器用なほど真っ直ぐな人柄に、思いは募っていくが・・」 予期せぬ展開になっていきます、話が章に分かれていません、ここに作者の意図を感じました。昭和48年8月に起こった岐阜県の景勝地『飛水峡』付近で起きたバスの事故も絡みます。
オー!ファーザー
(伊坂幸太郎)

図書館40
(114)

51
著者第一期の最後の作品。2006年に新聞連載されたものですが、これが面白い!知らなかったけど岡田将生主演で映画化されているんですね、公開は2014年とか・・。
「一人息子に四人の父親?由紀夫を守る四銃士は、ギャンブル好きに女好き、博学卓識、スポーツ万能。個性溢れる父4人に囲まれて、高校生が遭遇する、事件、事件、事件・・・」 ファミリードラマ? (解説者も書いていますが)四人の父親から英才教育を受けると勉強ができ、イケメンで、女あしらいがうまく、スポーツもでき、博打やゲームにも強いという理想的な男になれる?楽しめる一遍です。『ガソリン生活も読みたい。
花衣ぬぐやまつわる・・・上・下
(田辺聖子)

50
文学の香りプンプンの評伝小説、女流文学賞を受賞した作品です。黛まどかさんが推薦してます。大正から昭和にかけて艶麗な句を残した女流俳人杉田久女の物語。俳句に全く無知な私、初め少し退屈しましたが、次第にのめり込んでいきます。『夫も子も捨てきれず、ノラにもユダにもなりきれず』世間からいい評判が無く、不遇のうちに亡くなります。しかし、著者は真実の久女を追い求めます。読みながら胸がが痛くなってきます。女性が認められなかったあの時代、自分の信念を貫き通すも高浜虚子ら『ホトトギス』からは除名される、生き様に感動を覚えます。今、小倉堺町公園と英彦山に久女の句碑があるそうでうす。
一の悲劇
(法月綸太郎)


49
初めて読みました、法月綸太郎(著者と名探偵は同名)もの。トリック破りに挑戦!まぁ、面白かったです。1991年に発表した誘拐ミステリーです。”誤認誘拐”から始まります「犯人からの指示で身代金の引き渡し役をする事になった私は、最後の最後でミスを犯し、身代金の受け渡しに失敗してしまう。『金の受け渡しに失敗した以上、息子の命はない」と言う犯人の言葉通』、子供は遺体となって発見される」 しかし、単純な誤認誘拐に見えるが、その裏には驚きの真犯人が・・・。というものです。綸太郎名探偵は中盤に少しと終盤の謎解き部分でしか出てきませんが、探偵の側から書くよりこの方が緊迫感があったのでしょう。
模倣の殺意
(中町信)


48
昭和46年に書かれたたもので、江戸川乱歩賞を取り損ねた長編ミステリーです。それが今になってブレイク!(三回タイトルも変わっています)。エラリー・クイーンばりの読者への挑戦もあります。すっかりだまされてしまいました。「推理作家の坂井正夫が自殺した。坂井と仕事上でもプライベートでも付き合いのあった編集者の中田秋子が自殺に疑問を持ち調査を始める。一方坂井と同人誌仲間のルポライター津久見伸助も週刊誌の依頼で事件を調べることに・・・」 これ以上書くとネタバレになりますから、やめますが頭の体操になります。是非挑戦してみてください。著者は2009年に亡くなっています。
色彩を持たない・・・
(村上春樹)

図書館39
(113)
47
村上春樹最新刊『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』です。「36歳になるサラリーマン建築技師・多崎つくるが、自分の結婚願望の転機をかねて高校から大学時代に壊した友人(男三人と女二人の五人グループ)との関係を修復しようとする」話ですが、そこにはいろいろと・・・。著者の過去の作品を知らなくても普通に読んで面白い小説です。少しネタバレになりますが『色彩を持たない』とは『個性という色合いを持たない凡庸な・・・』という意味です。表面的にはわかりやすい、しかし中途半端なストーリーというのはいつもの村上春樹?。読み終えると不思議な気持ちになる本でした。
幻想映画館
(堀川アサコ)


46
今回は彼岸と此岸の境界にある『ゲルマ電氣館』が舞台です、そこには人間死ぬ時に自分の過去を『走馬灯のように振り返る』ところから、四十九日前に映画『走馬灯』を観てあの世に行くというものです。今回の主人公(?)はお嬢さん育ちのため変におっとりしてしてズレた女子高校生スミレです、彼女がこの映画館にアルバイトとして働くことになります。彼女も前作のアズサ同様幽霊が見えるのです。ホラーやミステリーすべての要素を含んでいて、また笑えます。続編も出そうです。ところで『電氣館』は1907年頃から映画専門(洋画)の劇場として全国各地に生まれたもの、知ってましたか?
幻想郵便局
(堀川アサコ)


45
この郵便局は『黄泉と現世との通路に当たる』場所にあるのです』 イヤァ~、何とも面白いです。「履歴書の特技欄に『探し物』と書いた就職浪人中のアズサに、名指しで郵便局のアルバイト求人が来た。低い山の山頂にある登天(とうてん)郵便局・・・そこは死んだ人が行く郵便局。功徳通帳の交付や記帳、逝去挨拶状の受け取りなど・・。更に殺された真理子さんの犯人捜し?」 ホラーでありファンタジー、怖くもあり夢のようでもあり、こんな郵便局で働きたいなぁ~という気持ちにもなります。この話と地続きの『幻想映画館』というのも出ています。もちろん、続けて読んでいます。
終末のフール
(伊坂幸太郎)

図書館38
(112)

44
8年後に小惑星が地球に衝突して人類が滅亡するという情報が発表され、その5年後を舞台にした八つのお話が展開します。そう、3年後は確実に死ぬとなった人々がどう生きるか?2009年に観た『フイッシュストーリー』も小惑星が衝突する話でしたが、そこから人間の生と死を考えるというのもこの著者らしいですね。「惑星衝突の発表後、虐殺・強奪・暴力・自殺、等々、荒れ狂った人間達、残り3年ほどになり、世界がある種の落ち着きを見せた頃の話・・、家族の再生、新しい生への希望、過去の恨み、人間はどこへ向かうのか?」 どの話もいいが、障害を持つ子の父親が『最近すげえ幸せだ』と語る話、わかる気がします。
しのぶセンセにサヨナラ
(東野圭吾)

図書館37
(111)

43
今から20年前の1993年に出されたもので、シリーズ最後ですが始めて読みました。ほんわか気分で読めます。「休職中の教師、竹内しのぶ。秘書としてスカウトされた会社で社員の死亡事故が発生。自殺にしては不自然だが、他殺としたら密室殺人。かつての教え子たちと再び探偵ごっこを繰り広げるしのぶは・・・」 六つのお話が出てきて結構笑わせます。『ブルーマーダー』の刑事と違って能天気な刑事がおもしろい!
著者があと書きで『登場人物同様に自分も成長し変わったから書けないって』と言っているところから”しのぶセンセにサヨナラ”というタイトルになったようです。
ブルーマーダー
(誉田哲也)

図書館36
(110)

42
2009年に紹介した『ストロベリーナイト』の姫川玲子が活躍するシリーズです。竹内結子主演で映画化されるほど人気になっているようです。結構ハードですが今回の方が目を背けずにすみました。「『ブルーマーダー』とは青い殺人者?時代の変遷と共に警察の捜査方法や組織形態も変容された時に一人の男が切り捨てられた。男は7年後池袋の街に戻ってきた,信念を持ったモンスターとなって‥‥」 犯罪組織(暴力団、半グレ、中国マフィア)を憎みながらも・・・、ホントの敵はどこに? 姫川の強さの秘密『あたしは強くない。ただ、その命を以て生きることの尊さを教えてくれた人達に報いたいだけ』
正義のセ・2/3
(阿川佐和子)

図書館
凜々子検事の続き第2段・3段です。第2「強姦事件を担当した凜々子、同期が不倫から退官、父の浮気疑惑、恋愛、仕事、生き方に迷いを生じ、強姦事件に対してミスを犯してしまう・・」第3「親友に裏切られ、さらには自分の仕事のミスが妹の破談を招くなど、自己嫌悪に陥ってしまう・・」 。話の中で出てきます『朝日は、”よし、頑張るぞ”。夕日は”太陽が地の果てに落ちてしまっても、必ずまた登ってくるって希望が持てる”」 と、あなたは朝日と夕日とどちらが好きですか? 読みながら著者の思い入れがしっかりと伝わってきます。働くニッポン女性の涙と笑いの物語でした。(女性はもちろん男性も読んで欲しいです)
欠落
(今野敏)

図書館35
(109)

41
シリーズだったのか・・、前作(「同期」2012年紹介)を読んでるのに・・・。「春の人事異動で、同期の女性警官がSITに配属されたと思えば、人質立てこもり事件発生。女性警官は身代わりとなるも犯人は警察の監視網をかいくぐり人質とともに逃亡・・」 前作同様公安が関わり面白い展開にどんどん引き込まれていきます。特に中国国家安全部(その中に、対外保防偵察局と呼ばれ、外国に対する諜報活動、国外にいる反体制分子などの監視などを行う組織)の話など。現実を考えても納得してしまいます。
シリーズ化されるのでは?。サクっと読める本でした。
星のかけら
(重松清)


40
この本は『小学六年生』に連載されたものに改稿を加えた文庫オリジナルです、大人が読んでも充分に感動します。”生きる、死ぬ”ってことの意味に触れながら子供達が少しずつ大人になっていくお話です。しかもファンタジー仕立てなので読みやすい「いじめにあっている小六のユウキは星のかけらを探しに行った夜不思議な女の子フミちゃんに出会う。中学生になってからだんだん学校に行けなくなったタカヒロ、いじめの首謀者ヤノ、しっかり者のエリカ、優等生のマサヤ、それぞれの生…もとに戻すことができるだろうか?陰険ないじめを止めさせることができるのか?」 この著者の本は読後感が最高です。
歓喜の仔 上・下
(天童荒太)

図書館34
(108)

39
著者が25歳の時、初めて書いた短編小説がこの本の基になったとのこと、名作『永遠の仔』より先に芽を出していたのです。「父は突然消え、母は心に傷を負って植物状態になった。残された三兄妹は、誰も知らない犯罪に手を染める道を選らんだ。救いは、遠い国の戦地で生きる心の友。愛も夢も奪われた。残されたものは、生きのびる意志だけだった」
明るい話とは言えませんが、人間の本質を突いた読み応えのある本です。
『読み終わった時に読んだ人の頭の上で、あるいは胸の奥で”歓喜の歌”が鳴り響くようなものにする』と著者が言って書いたそうです。そのとおりでした。
正義のセ・1
(阿川佐和子)

図書館33
(107)
38
「東京下町の豆腐屋に生まれた凜々子はまっすぐに育ち、やがて検事となる。法と情の間で揺れてしまうような難事件、恋人とのすれ違い、同僚の不倫スキャンダル・・・」 山と谷ばかりの日々にも負けない凜々子の成長物語です。素直にスッキリと読めて読後感だがすごくいいです。ところで検事が付けてるバッジ、『秋霜烈日』の意味を知っていますか?”秋の冷たい霜や夏の激しい日差しのように厳しい状態を表す言葉で、検事の戒めに使われる。検事は刑罰や志操に極めて厳しく、かつ厳かにあれ”ということ。現実の検事さんはどうでしょうか? ヒロインを応援したくなるお話です。
新参者
(東野圭吾)


37

加賀恭一郎シリーズの8作目、“このミステリーがすごい!(2010年)” “ミステリーベスト10(2009年)”でダブル1位に輝いた作品です。舞台は日本橋・人形町。江戸の匂いも残るこの町の一角のマンションで発見された、ひとり暮らしの40代女性の絞殺死体。彼女の身に、何が起きていたのか。着任したばかりの刑事・加賀恭一郎は、事件の謎を解き明かすため、未知の土地を歩き回る・・・」 一つの事件を追いながら、『そばにいる人々の姿も描かざるをえなくなった』と作者が言っていますが、なかなか面白い話の進め方です。私としてはガリレオシリーズの湯川より、こちらの加賀の方が好きです。

ビブリア古書堂の事件手帖4
(三上延)

図書館32
(105)
36
第四巻です。今度は今までと違い長編です、江戸川乱歩にまつわる話で10年前に家出をした母が現れて本を巡る壮絶な戦いも見物です。「江戸川乱歩の膨大なコレクションを財産としてを受け継いだある人物から、そのコレクションを譲る代わりに精巧な金庫を開けて欲しいという依頼がくる。金庫の謎には乱歩作品を取り巻く数奇な人生が絡んでいた・・・、そんな時栞子の母が姿を現す」 このシリーズには、いつも感心させられますが一冊の本から見えるいろんな人生、ヒロインのシャーロック・ホームズばりの推理には頭が下がります。本好き、推理好きにはたまらないシリーズです。まだまだ続くようです、期待しましょう。
夢を売る男
(百田尚樹)

図書館31
(104)

35
出版業界を皮肉りまくった作品。「主人公の勤める丸栄社は、コンテストや新聞広告で作家に憧れる素人から原稿を集め、駄作と知りながら著者本人に費用を負担させて本を出版している・・」。出版や作家に興味のある素人をカモにする悪徳出版社が舞台です。 文芸大賞の裏事情なんか『そうだったのか!』と納得してしまいます。ところで、日本で読書をする人たちはどれくらいと思いますか?何と(漫画や雑誌を含めても)全体の12%しか本を読んでないという。一日の平均読書時間は13分だそうです。それと、世界のブログで一番多く使われている言語は日本語、日本人は世界で一番自己表現したい民族ということ。
るり姉
(椰月美智子)

図書館30
(103)

34
2009年本の雑誌エンターテイメントベスト10の第一位! 『るり姉ことるり子の姪である十代の三姉妹、そして姉と夫の5人の視点で、るり姉とのエピソードが書かれています』。自由奔放なるり姉がみんなに愛されているのが伝わってくる、とても温かい物語。人の想いというものが心にしみます。”るり姉にかかれば、魚は空を飛ぶし、モグラは日光浴をするのだ。カマキリは洋服を着て帽子をかぶって歩いているし、像は屋根に寝そべっておなかを出している” 解説者が『なんだろう、この匂い。やわらかくて、花のようで、星のようで、懐かしくて、そのくせ新しくて、ときどきつんとくる、すごくいい匂い』と書いています。
エイジ
(重松清)

図書館29
(102)

33
平成11年に刊行されて、山本周五郎賞をもらっているのに読んでいませんでした(重松ファンとしてはうかつ)。「東京近郊のニュータウンに住む中学2年生のエイジ(高橋栄司)の日常生活を通し、連続通り魔を実行した同級生、挫折したバスケットボール、好きな女の子、元親友への想い」をリアルに描いています。最近中学生を主人公にした本が多いですが、14歳というこの多感な時代に自分は何を思い、何をしていたか、あまり思い出せませんが・・・。本書はこの年頃の子供の心の動きがよく出ています。
宮部みゆき、奥田英朗、重松清と読んでくると作家の感じ方というのも面白いものです。
銀河鉄道の彼方に
(高橋源一郎)

図書館28
(101)

32

著者は現在NHKラジオ『すっぴん』のパーソナリティをつとめています。これは宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』をモチーフにした小説です。「宇宙飛行士だったジョバンニの父が”あまのがわのまっくろなあな”という謎の言葉を残して宇宙船から失踪。ジョバンニは父を探すために銀河鉄道に乗り、時空を超えた旅に出る」死とは、宇宙とは、いま見えている世界は夢なのではないのか?など、あらゆる問いがちりばめられていますが、結論はありません。読んでいて(563ページ)、頭が混乱しそうになりますが不思議な読後感が残ります。挿話の一つ『宇宙でいちばん孤独な男』の話が胸を締め付けられるくらいに寂しくなります。

彼女は存在しない
(浦賀和宏)

図書館27
(100)

31
まんまとやられました、最終章・ラスト20ページで完全にひっくり返る。驚愕のラストです、映画には出来ないだろうなぁ~、この著者のものを初めて読みました。少しサイコがかっていますが虐待と多重人格、重いテーマのミステリーです。「平凡だが幸せな生活を謳歌していた香奈子の日常は、恋人・貴治がある日突然、何者かに殺されたのを契機に狂い始める…。同じ頃妹の度重なる異常行動を目撃し、多重人格の疑いを強めていた根本。次々と発生する凄惨な事件innが香奈子と根本を結びつけていく・・・」 初めは淡々と・・そのうちはまります。多重人格ものはしっかりと目を開けて読まないとだまされます。
沈黙の町で
(奥田英朗)

図書館26
(99)

30
『空中ブランコ』などで知られる奥田英朗の原作で、この作者の物を2年ぶりくらいに読みました。『ソロモンの偽証』を思い出します、「中学の部室近くで呉服屋の独り息子が墜落死を遂げる。いじめによる自殺か殺人か。北関東の小さな街を中学生の持つ闇が覆う。執拗に追い続ける警察、そ初めてこのして少しづつ明らかになる真実。容疑をかけられ逮捕・補導された子供を持つ親の苦悩と犠牲者の親・・・」シリアスな話の展開です。『子供には残虐性が誰しもあって、長じるにつれ徐々に消えていくものではないか。中学生にはその性質が残っているんだよな。ひどいいじめは中学生が一番だ』と、なんか大変な時代です。
がまんしなくていい
(鎌田實)

図書館25
(98)
29
第1章 がまんしなくていい。副交感神経を働かせた人の勝ち(手術台の上で「下町の太陽」を歌うほか) 第2章 幸せホルモン、セロトニンをたっぷり出す人は生き方上手(90歳の人気ブロガーほか) 第3章 心を操る脳内物質で人生を変える 第4章 思いやりホルモン、オキシトシンがみんなを幸せにする 5章 カマタ流・がまんしない健康法(がんに負けない心と行動ほか)など幸せに生きるための技が満載です。いつも通りグッときたりしながら一気に読み終えます。『我を張って生きることをがんばるという』 ですよね!
人生を豊かに過ごしたい方は是非お読みください。。
ソロモンの偽証
第二部
第三部
(宮部みゆき)

図書館
構想15年、連載9年、全三部で2100ページを超えます(三部作だから番号は付きません)。「二部(決意):保身に身を窶す教師たちに見切りをつけ、一人の女子生徒が立ち上がった。校舎を覆う悪意の雲を拭い去り、隠された真実を暴くため、学校内裁判を開廷」 「三部(法廷):5日間にわたる裁判が始まった。亡くなった生徒の家族、警察、不明だった告発状の差出人をはじめとする様々な証人が登場し、事件の謎の解明は二転三転」と続きます。ラストまで息がつけけません、学校はじめいろんな問題を提起させてくれます。『ソロモン王というのは、神託を受けて人を裁くことを許された人物』という意味。
冬牙の人
(大沢在昌)

図書館24
(97)

28
『新宿鮫』とはひと味違った警察ものです。「殺人事件の捜査中の事故がもとで先輩刑事を亡くし、その責を負って警察を辞めた牧しずりは、先輩の息子・岬人と出会う。彼がもたらしたのは解決したはずの事件に関わる新情報だった・・・。次々と消息を絶つ関係者、事件を掘り返したくない警察。味方も武器も持たないしずりは、事件の真相に辿り着くことが出来るのか・・・」 一気に読んでしまいました。元刑事をヒロインに追えばおうほど謎が深まる展開に引き込まれます。余談ですがヒロインの名前が”しずり”といいます、これは『木の枝に積もった雪が落ちる』のを言うそうです。久々の大沢面白かったです。
冷血
上・下
(高村薫)

図書館23
(96)

27
『マークスの山』や『レディージョーカー』より文体が硬く、読むのに時間かかりましたが重厚な感じです。いろいろ調べてみるとトルーマンカポーティーの『冷血』と関連しているのがわかります。話は「静かな住宅街で歯科医の一家四人が惨殺される。犯人は携帯の裏求人サイトで知り合った前科を持つ若者二人。第1章「事件」は、被害者の一人である女子中学生と二人の犯人の視点を通じて事件までの1週間。第2章「警察」は、事件の後、クリスマスイブの遺体発見から始まる。第3章「個々の生、または死」は、全編が取り調べ、供述書、録音などの記録を合田雄一郎が読んで事件を考える」という構成。読んでみては?

はだしのゲン
(中沢啓治)
全10巻



図書館22
(95)


26
この名作をようやく読みました。物語は「広島に住む国民学校2年生の中岡元(ゲン)が主人公、1945年8月に投下された原爆で父、姉、弟の3人を亡くしながらも、たくましく生きる姿」を描いています。終戦後約30年後に連載が始まり、それから70年近く経った今でも時の権力者・政治家は相も変わらないものだと思います。    漫画ですがその中から
・許せません戦争を起こし原爆をおとし地獄の使者の手先になった日本人もアメリカ人も
・また戦争を喜ぶ流れがおきて治安維持法みたいな法律をつくられ完全に逃げられないようにされ人間がただの戦争をする道具にされるんだから
・いつも戦争を起こそうとするくわだてを破ってみんなで声を張り上げ反対して防ぐのよ・・・国のためだと言って戦争をしてかげでもうけるやつがいるんじゃけん
・国のためじゃ天皇陛下のためじゃと言って兵器を作ってもうける死の商人にだまされ・・
・自分の努力を忘れて悪いことはみんな他人と世の中の生にして責任をとらん卑怯者
・戦争と原爆のためにわしらや多くのものが苦しみでうめいとるのにこんな戦争を喜ぶ奴が政治を動かしている
どうです、全く今日本が進んでいる危うい方向と同じだと思いませんか?
(因みに全集「平和マンガ作品集」は1冊2740円します、図書館で借りてんでください)
海賊とよばれた男
上・下
(百田尚樹)

図書館21
(94)

25
「本屋大賞」受賞!出光興産の創業者である出光佐三をモデルとした感動の歴史経済小説です。「20世紀の産業を興し、人を狂わせ、戦争の火種となった石油。敗戦後、日本の石油エネルギーを牛耳ったのは、巨大国際石油資本のメジャーたちだった・・・。その石油を武器に変えて世界と闘った男・佐三」の話”日章丸事件”を背景にイギリス、アメリカが絡むイラクの石油争奪戦・・。『現、何故イランが欧米相手に戦っているのか』が今頃わかった気がします。いつの時代も資源(金)のあるとことには人間の欲望が渦巻いているものです。しかし、この主人公は『儲け』ではなく『人間の尊厳』を大切に生きた人だった。
シャーロック・ホームズ 傑作選
(コナン・ドイル)
24
図書館の本が途切れたので、昔買っていた懐かしいホームズものを久し振りに読み謎解きを楽しみました。初期のもので有名な6編が収められています。まだ、宿敵『モリアーティ教授』は登場しませんがホームズ推理の基本的な路線が確立されたと言われる話です。
ホームズの観察と推理を堪能させてくれます、最近の映画『シャーロック』にがっかりでしたが、やはり本物はいいですね。6編の中でも特に『赤毛同盟』と『まだらの紐』がいいです、それと『ボヘミア王家のスキャンダル』はホームズの深謀が一人の女性の機知によって破れ去るところが還って痛快です。時には私の推理が勝つこともありました。
星の旅人
(黛まどか)


23
2008年に一度読んでいます、誰かに貸したままで行方不明になっていましたが今度文庫本になったのでまた買いました。あの感動を再びと思い『サンティアゴ巡礼路の歩き方』も一緒に再読、やっぱり歩きたい。前回読んだときは『すごいなぁ~』という感想でしたが、今回はもっといろんな出来ことがぐっと身にしみてきました。巡礼の途中で戦車に出会い恐怖を感じる場面が出てきますがそれを外国の人は平和ボケと笑います、著者は『人を殺す兵器を見て何も感じないのは戦争ボケとは言えないだろうかならば私は平和ボケであることを誇りにしよう』と 1ヶ月半800kを超える旅はいろんなことを教えてくれるようです。
サンティアゴ巡礼路の歩き方(南川三治郎)
図書館20
(93)

22
『NPO法人 日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会』監修のガイドブックです。2007年に『星の巡礼』を読んで是非この道を歩きたいと思って早6年、まだ踏ん切っていません。その当時このような本もなかったのですが、ずいぶんとブームにはなっているようです。
来年には歩きたいです、今度はしっかりと足腰を据えて準備しようと思います。体力はもちろんのこと歩く道、スペインのこと、文化、言葉等々気が遠くなりますが・・・これを目標に頑張ります。この本は、写真入りの説明の他『巡礼体験』 『旅の手引き』など、ノウハウも教えてくれます。
ナミヤ雑貨店の奇跡
(東野圭吾)

図書館19
(92)

21
今年、初めて読んだ圭吾はSFファンタジー連作集でした。この著者にもタイムスリップを扱った作品が何点かあるようですが本作は感動を呼ぶ素晴らしいものでした。「悩み相談お任せください――。時空を超えて交わされる、温かな手紙交換。過去と現在が鮮やかに繋がったとき、すべての真実が明らかになる。 第一章 回答は牛乳箱。第二章 夜更けにハーモニカを第三章 シビックで朝まで第四章 黙祷はビートルズで第五章 空の上から祈り」 ハートウォーミングストーリーです。心温まるラストシーンで幕を閉じるという何とも心地よいお話、お薦めの一冊です。
聞く力
(阿川佐和子)

図書館18
(91)
20
ミリオンセラーになった本です、図書館でようやく借りました。著者が数多くの対談やリポートでの中で感じた心を開く35のヒントを中心に『人の話を聞く』ことが面白く語られています。その中から『男の酒は女のお喋りほど楽しいものではない』 『ただ聞くこと、それが相手の心を開く鍵なのです』 『人と話すときには目の高さを合わせる』 『人の話はそれぞれです。無口であろうと多弁であろうと、語り方が下手でも上手でも、ほんの些細な一言のなかに、聞く者の心に響く言葉が必ずひそんでいるものです。でも、それが決して立派な話である必要はない』 など、自分の言いたいことを言わずにすまない私は猛反省!
一路・上下
(浅田次郎)

図書館17
(90)
19
久し振りの浅田次郎です。中山道を舞台に、参勤交代の悲喜こもごもを描いた長篇で幕末のある藩士の参勤交代を、面白可笑しく描いたお江戸ロードロードムービーのような話です。「父の不慮の死を受けて、突然御供頭として参勤の差配をすることになった小野寺一路。その名のとおり一路に生きる十九歳の青年は、二百年以上前の家伝『行軍録』を手がかりに、古式に則った行列を仕立て、江戸へ出立するが・・、お家騒動も絡み・・」 ある評に『組織に生きる人間の心理、人を動かす力をも考えさせる。それでいてひたすら面白い。笑いあり、涙ありのサービス精神にあふれた作品だ』とありました、その通りです。
ソロモンの偽証第一部
(宮部みゆき)

図書館16
(89)

18
第一部(事件)だけで単行本740ページもあります、すごく長いけれど面白い。第二部以下はしばらく待たないと図書館の順番がきません。
著者5年ぶりの現代ミステリーです、「クリスマスの朝、雪の校庭に急降下した14歳、しかし、彼の死を悼む声は小さかった。だが、悪意のある風評、目撃者を名乗る匿名の告白状、マスコミの過激な報道、嫉妬による異常行動、そして犠牲者が一人・二人と増えていく。”死体は何をもくろんだのか?”」多彩な登場人物と次から次に繰り出される物語に、宮部ワールドにはまってしまいます。次が待ち遠しい。
64(ロクヨン)
(横山秀夫)

図書館15
(88)

17
昭和64年は、たった7日間しかなかったのです、タイトルはその時に起きた誘拐殺人事件を指す符丁です。単行本で650ページにも及ぶ長編ですが一気に読ませます、面白~い!「昭和64年に起きたD県警史上最悪の誘拐殺人事件をめぐり、時候まであと1年という14年後に刑事部と警務部が全面戦争に突入。狭間に落ちた広報官・三上は己の信を問われる・・」 よくもまぁ、こんな話を考えつくものだと、うなってしまいます。実際かどうかはわかりませんがキャリア対地方の戦いがすごく面白いです。公務員の世界はどこも同じ?この著者の警察小説は一筋縄ではいかない。
カラマーゾフの妹
(高野史緒)

図書館14
(87)

16
びっくり!約130年前のドストエフスキーの未完の小説『カラマーゾフの兄弟』の続編なのです。しかも、原作者が書こうとした13年後を舞台にしています。これが昨年『江戸川乱歩賞』を受賞。荒唐無稽といえるがどうか、私としては面白かった。「カラマーゾフ事件から13年後、次兄イワンが未解決事件課の特別捜査官となって、真相を探るために帰省するところから始まる。しかも、多重人格者・・・」。著者の挑戦に脱帽、それと原典を読んでいないと理解できないのではと思えますが、選考委員の一人東野圭吾が『原典を読んでいないが読んだ人と同じような感想を持った』と言っています。挑戦してみてください。
生存者ゼロ
(安生正)

図書館13
(86)
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イヤー面白かった!2013年『このミス』大賞受賞作です。話は「根室の海上石油基地でパンデミックとおぼしき大量死事件が発生、その対策に追われる自衛隊員にアフリカで家族を失った失意の天才的疫学者や美人生物学者を絡めたミディカルサスペンス・・、しかし思いもしない結末へ』といったものですが、読み進めていると東日本大震災の時のパニックを思い起こします。政治家の近視眼、目の前の国会対応、ホントの危機管理が出来ない。「何もかもが後手に回り、結果として内政、外交、あらゆる問題が収拾できなくなった。素人が国を司るとこういうことになる・・・」 今の政治そのものです。
SOSの猿
(伊坂幸太郎)

図書館12
(85)

14
ある評論家が『また妙な小説を書いたものだな』と言っていますが、まさにその通り純文学かエンタメか?といった感じです。文庫本化するときにはかなり読みやすくなったそうです。別々のような二つの話が実は関係していて、『私の話』と『猿の話』が出てきます。「私(次郎)は家電量販店で働いている30代の男で、エクソシストとして悪魔払いの副業もしている、人の発するSOSの信号に敏感。もう一つは正体不明の語り手による『因果関係』の話」です。キーワードは”猿” ”孫悟空” ”エクソシスト”、興味のある方は読んでみてください。読みこなせるかな?感想を聞きたいものです。
ビブリア古書堂の事件手帖3
(三上延)
図書館11
(84)

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第三巻です、やはり面白いです(TVにもなっていますね)。今回ヒロインと母親との謎に満ちた過去も少しずつあきらかになっていきますが、まだまだ謎は続くようです。三冊の本にまつわる話(『たんぽぽ娘』 『チェブラーシュカとなかまたち』(童話) 『春と修羅』(宮沢賢治))が出てきますが、今年宮沢賢治没後80年ということでNHKで特集の番組を観ていたので、興味深く読みました。それと、読んでみたくなるのが『たんぽぽ娘』です、いい話です。前にも書きましたが、一冊の本をテーマによく面白い話が出来るものと感心します。TVの出来もなかなかいいですよ。是非手に取ってみてください。
われらが背きし者
(ジョン・ル・カレ)

図書館10
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著者は『寒い国から帰ったスパイ』映画『サーカス』の原作等で知られたイギリス諜報部にも所属したことのある人物です。「カリブ海の朝7時、試合が始まった。一度きりの豪奢なバカンスがロシアン・マフィアを巻き込んだ疑惑と欲望の渦巻く取引の場に! 恋人は何を知っているのか、このゲームに身を投げ出す価値はどこにあるのか? 政治と金、愛と信頼を賭けた壮大なフェア・プレイ・・・」の帯に惹かれました。日本の小説と違い最初回りくどい感じがしますが、読み進むうちにはまっていきます。映画にしたら面白いだろうなと思ったら2014年に映画化も予定されているそうです。極上のエンターテインメント!
PK
(伊坂幸太郎)

図書館9
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何ともまぁ~、不思議な話です。中編が三編語られますが少しずつつながりがあります。
誰か、解説してくれ~って感じです、何回か繰り返しページをめくります。それほど、面白さと、不思議さと、ち密さが混在している話だと思います。「第一話『PK』は主義や信念を試される話、第二話『超人』jは過ちを認めることからはじまるという話、第三話『「密使』は現在(未来)の不幸な出来事を変えるために過去に密使が派遣される話」となっていますが、よくもまぁ、こんな話を思いつくものです。この話は東日本大震災の前に書かれたものらしいですが、発表は2012年です。著者は東北大出身です。
とんび
(重松清)

図書館8
(81)

10
またまた泣けました。TVドラマ化されているとは知りませんでした、ずいぶん前に図書館に申し込んでいたのです「28歳のヤスは、待望の長男アキラが誕生し、生涯最高の喜びに浸っていた。愛妻、美佐子と、我が子の成長を見守り、幸せを噛みしめる日々。それは、幼い頃に親と離別したヤスにとって、ようやく手に入れた”家族”のぬくもりだった。しかし、その幸福は、突然の悲劇によって打ち砕かれてしまう・・・」。不器用に戸惑い、悩みながら、それでも我が子の幸せ第一に考え、息子を育てる父親の、喜びと哀しみ。愚直なまでの生き方が身にしみます。幸せな気持ちになります。
小さいおうち
(中島京子)


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第143回(2010年上半期)直木賞受賞、今度山田洋次監督が映画化するそうです。
話は昭和10年代から戦後の昭和が、女中タキの回想の形で語られます。じんわりと心に不思議な余韻が残ります、こういうお話は大好きです。「昭和初期、女中奉公に出たタキは赤い屋根のモダンな家、そこの若く美しい奥様時子を慕う。だが、平和な日々にやがて密かな恋愛事件が・・、そして戦争の影も濃くなってくる」 ものすごく情感のあるこの小説を山田監督がどんな映画に仕上げるか見物です。この著者のものは初めて読みました、父も母も仏文学者、姉はエッセイストといった家系です。
残り全部バケーション
(伊坂幸太郎)

図書館7
(80)
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五編からなる連作小説集です、軽~いタッチで面白く読ませてくれます。「夫の浮気が原因で離婚する夫婦と、その一人娘。ひょんなことから”家族解散前の思い出”として岡田と名乗る男とドライブすることに・・・(第一章)」ほか、裏の世界で生きる溝口と岡田のコンビを主人公に人生に起きる『小さな奇跡』を描いています。第五章の「飛んでも8分」(とんでもハップン?)が笑えて、そして”さぁ~すが”という結末でなかなか面白いです。
2008年から2012年までに書かれたものをまとめたものですが、うまくつながっています。お薦めの一冊です。
せんせい。
(重松清)

図書館6
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今年最初に紹介した『LongLong ago』の前に書かれたものです。今回は教師を主人公又は脇役としたお話が六つ語られています。『教師と生徒』というテーマですがどれも心にじんとしみます。「僕の人生はまだ止まっていないか?、授業そっちのけで夢を追いかけた先生、一人の生徒を嫌った先生、厳しくすることでしか教え子に向き合えなかった先生、そしてそんな先生に反発した生徒たち・・・大人になればきっとわかる」。この中に『泣くな赤鬼』という厳しい先生と退学した生徒の話が出てきます、これが涙涙なのです。作者が『一番身近な大人が先生、それを幸せなことだと思っている。・・・』と
雨の日には車をみがいて
(五木寛之)

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五木寛之がこんなに車大好き人間であるとは、それもヨーロッパ車。九つの話がすべて車と女性が主人公です、『シムカ、アルファ・ロメオ、ボルボ、BMW、シトローエン、ジャグヮー、メルツェデス・ベンツ、ポルシェ、サーブ』 しかも著者が「じつに楽しみながら書いた。おそらくこれまでに書いたどの小説よりも楽しめたと思う」と言っています。北欧がお気に入りで2台出てきますが、私は何といってもBMWです。『BMWとは、バイエリッシェ・モトーレン・ヴェルケの頭文字からとったもので、エンブレムのシンボルマークは飛行機のエンジンメーカーとして出発したBMW社が、青空とプロペラの回転をデザイン化したもの」なのです。
夜行観覧車
(湊かなえ)

図書館5
(78)
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人間の表に見えない本質が残酷なまでに描かれています。読んでいて救われないの?と気分が憂鬱になりますが、これがテレビドラマ化されているのですね、知らずに読みました。「父親が被害者で母親が加害者--。高級住宅地に住むエリート一家で起きたセンセーショナルな事件。遺されたこどもたちは、どのように生きていくのか。その家族と向かいに住む家族の視点から、事件の動機と真相が明らかになる」といったものです。
いつもながら、この人の話はそれぞれの立場から話を進めるという手法ですが、これが怖いです。世の中きれい事だけ並べても一皮むけばこんなもなんでしょう。
女ざかり
(丸谷才一)

図書館4
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読んでいる途中で、『あれっ、これは映画になったのでは?』と思い調べてみたら吉永小百合主演、大林宣彦監督で映画化されていました。「ヒロインは45歳、新聞社の論説委員。書いた社説がもとで政府から圧力がかかり、論説委員を追われそうになる、恋人の大学教授、友人、家族を総動員して反撃に出るが。はたして・・・」 話に、贈与論は出てくる天皇論は出てくる、事件のもととなった産児制限や妊娠中絶の問など、いろいろと楽しませてくれます。文章も旧仮名づかいのような文体で書かれていて“文学ぅ~”て感じがして好感が持てます。今から20年前に書かれていますが、なかなかのものでした。
本屋さんで・・
(三浦しをん)

図書館3
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『本屋さんで待ちあわせ』というタイトルで、口を開けば本と漫画の話ばかりという三浦しをんの書評集です。本から漫画そしてBLものまですごい読書欲、”はじめに”に書いています「どうしてこんなに本や漫画が大好きなのか。読まずにいられないのか。たまには自分が怖くなる。他にするべきことがあるだろ、掃除とか洗顔とか、ダイエットとか」と。構成は、一章と五章は新聞雑誌等に掲載された書評、二章と三章は読売新聞(読書委員の時)に掲載されたもの、四章は何故か『東海道四谷怪談』についての書評となっています。ジャンルを問わず90の書評と紹介、読んでみてください。ガイドブックとして役に立ちます。
水のかたち
上・下
(宮本輝)

図書館2
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50歳になり『卵巣の定年』を迎えようとする平凡な主婦・志乃子を主人公に、その日常に起きた出来事や人間関係を丁寧に描いた長編小説です。「志乃子は、東京の下町に夫と子供たちと共に暮らす主婦、そんな彼女がある日閉店するという近所の古い喫茶店の女主人から、年代物の文机と茶碗、手文庫を貰い受けることに。その茶碗に3000万円の価値があることが後で判明したり、手文庫には戦後北朝鮮から大変な苦難を越えて脱出した人物の手記が入っていたりと、志乃子の人生に思いがけない変化が生じ始める」この人の本は2001年に『焚火の終わりに』にを読んで以来でしたが、優しく包み込む暖かさがあります。奇跡ともいえるような出会いの中を話は進んでいきます。また、実話を組み込んだ話(1946年に北朝鮮から38度線を越える壮絶な脱出)等も興味深いです。 『経済苦、病苦、人間関係における苦労、それが出てきたとき、人は鋼になるチャンスが訪れたんだ』 『自分を自分以上のものに見せようとはせず、自分以下のものに見せようともしない、というのは至難の業だ。人間はすぐにうぬぼれる。絶えず嫉妬する。他人の幸福や成功をねたんだり、そねんだりする。自分を周りからいい人だと思われようとする』
LongLong ago
(重松清)

図書館1
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この人の本は、何故にこんなにも心にしみるのでしょう、今回は六つの話が語られます。誰もが過ごした少年少女時代、それから10~20年後に振り返った時に起きた小さな奇跡。「転校するまで誇り高かった女王様、親戚中から嫌われていたおじさん、先天性の症候群を持って生まれたお人好しのユウちゃん、大人になって思い出す初恋の相手・・・」子供の頃のちくりと胸の痛くなる思い出。『過ぎたことにくよくよしたり、納得のいかない思いに包まれたりするたびに早く大人になりたいと思っていた』 『幸せに運の善し悪しなんて関係ないわよ、ラッキーとハッピーは違うんだから』 気持ちが素直になりす。