book(2014)


最後のトリック
(深水黎一郎

図書館26
(141)

39
第36回メフィスト賞受賞作です。本を読んでいたはずの自分が、読み終わって「俺が犯人だったのか!」と納得させることができれば究極のトリックです。物語は「新聞連載のアイデアが浮かばずに苦しんでいたミステリ作家の”私”。そこへ香坂誠一と名乗る人物から手紙が舞い込む。私は『読者が犯人』という不可能トリックのアイデアを持っている。ついては、これを2億円で買って欲しい」と言うところから始まります。本格ミステリーかどうかは読んでみて判断してください。
この著者は初めてですが慶應義塾大学卒、ブルゴーニュ大学修士号、パリ大学DEA終了という経歴の持ち主です。
だから荒野
(桐野夏生)
図書館25
(140)

38
今回も女流作家です。今までの桐野作品と比べるとグッとおとなしい気がしますが、どこの家庭でもありそうな話、でもないか?「家族に顧みられない46歳の主婦。亭主にも息子達にも、気持ちをわかってもらえない日々、誕生日にさんざんけなされ、もう会うことはないでしょうと後先考えずに家を飛び出す。計画も何も考えずに車で出かけた挙句散々な目にも遭うが・・・」 桐野作品に出てくる人物は一見よさそうに見えるが、何か悪意を抱えている人が多いのはいつも通り。読みやすくどうなることかとハラハラしながら一気に読み終えます。
『あなたの使命はあなたが探すしかない。誰もが自分で探すのです。私はこの荒野にいることを選んだのですから』 TVドラマ化されます、鈴木京香主演でNHK・BSで1月11日から連続8回です。
放蕩記
(村山由佳)

図書館24
(139)

37
この著者の本は2005年の『天使の卵』以来です。帯に『 “母”という名の恐怖。“躾”という名の呪縛。逃れようともがいた放蕩の果てに向き合う、家族の歴史、母親の真実―。女とは、血のつながりとは…。村山由佳、衝撃の半自伝的小説』とありました。主人公は38歳で離婚歴のある女流作家・夏帆。自由奔放に暮らす中で・・・。だんだん見えてくる、母と娘の愛憎の物語。 ”どうして私は、母を愛せないのだろう”ともがく主人公に女性・男性それぞれ感じ方は違うかもしれません。読んでみてください、読み応えがあります。ただ性の部分については少し嫌悪感を感じました。女流作家の方がすさまじい物語を書くような気がします。
約束の海
(山崎豊子)

図書館23
(138)

36
2013年9月29日に著者が死亡したため、未完の絶筆となった本です。『戦争の時代に生きた私の、“書かなければならない” という使命感が、私を突き動かすのです』と著者。海上自衛隊潜水艦部隊の若き士官を襲う過酷な試練。その父は昭和十六年、真珠湾に出撃して・・・時代に翻弄され、時代に抗う、父子百年の物語。「この日本の海を、二度と戦場にしてはならぬ!」。話は国防をテーマに海上自衛隊、潜水艦乗組員の成長を背景に展開します、 『戦争をしないための武力』をテーマに書きたかったのだと思います。最後まで読むことができずに残念です、ただし、第二部三部の構想はある程度出来上がっていたので『山崎プロジェクト編集室』が校正したものから想像することはできます。(巻末に21ページにわたり『約束の海その後』として掲載)
ダブル・フォールト
(真保裕一)

図書館22
(137)

35
『真実を暴くことが大事』と思っている人には考えされられる本です。「初めて殺人事件の弁護を任された、イソ弁で新米弁護士の本條務。被告人の減刑を勝ち取ろうと、被害者の悪評を集め、法廷で次々と暴き出すのだが、被害者の娘からの叫び(”父は殺されたのよ”)に新米弁護士の葛藤が続く・・・」。依頼人を疑う気持ちを持ちながら弁護ができるのか・・・、ベテラン弁護士の法廷でのやり取りも見物です。正しいとはいったい何だろう?世の中、白と黒だけではないと言うことを思い知らされます。タイトルは『テニスなどでサーブを二回続けて失敗する』ことです、タイトルから内容が想像できますか? この著者のものは『灰色の北壁』以来でしたが読み応えがあります。
山女日記
(湊かなえ)

図書館21
(136)

34
意外にも著者は20代から登山を始め、しばらく離れていたが、この本を書くために再開したとのこと。連作短編が7話「誰にも言えない『思い』を抱え、一歩一歩、山を登る女たちは、やがて自分なりの小さな光を見いだしていく。女性の心理を丁寧に描いています」 今までの山岳小説と違い遭難や命がけで山に登ろうという小説ではありません、山に登ったことのある人はもちろん、登ったことのない人もお読みください。登場する女性は山ガールとは言えない30代~40代が中心、彼女たちは山ガールの登り方に頭にきたり、自分の生き方に自信を失ったりしながら、その先にある素晴らしい景色・たどり着いた先にあるものが見たくて登るのです。各章毎の主人公が少しずつリンクしているのも面白い。読み終えた後には確実に心が洗われ、前を向いて生きるのっていいなと思える本です!
土漠の花
(月村了衛)

図書館20
(135)

33
著者はエンタメ冒険小説と言っています、一気読みの本でした。まるで映画を観ているかのような展開です、自衛官が主人公ですが決して賛美しているわけではありません。今世界中でキナ臭いことが起きていますが、資源に群がる大国のエゴがあの地域をこんなことにしたんだと言うこともよくわかります。「東アフリカのジブチと、ソマリアとの国境地帯に墜落したヘリの捜索・救助に向かった陸上自衛隊第1空挺団の部隊がソマリアの抗争に巻き込まれる。隊員らは逃れてきた氏族長の娘を守りながら、ジブチの基地を目指して逃避行を続ける、全滅の危機に陥入りながら・・」 いざという時に自衛隊は本当に戦えるのか? 集団的自衛権問題を想起させますが閣議決定をした時にはすでに脱稿していたそうです。また戦闘に巻き込まれた事実を国・自衛隊が隠蔽する手法も現実にありそうで怖い!
神座(かみいま)す山の物語
(浅田次郎)


32
奥多摩にある御嶽山(みたけさん)にある神官屋敷そこで起きた怪談めいた七つの夜語り 『常ならざる者や存在とともにあった山の中の神社宿坊での話。闇が身近で、日常生活の苦労やSMボンバー病気や死が目に見えてほかの人とともに共有されていた時代。寝物語に語られた祖父母・曾祖母が関係する話は・・・』 浅田ワールドにはまります。
『似たものどうしが一緒になれば幸せになれるって、あんたは言ってくれたけど、あたしはそうは思っていなかった。不幸が倍になると思った。この子が生まれれば、きっと不幸は三倍だ。だからあんたは一人で幸せになってください。三つの不幸より一つの幸せの方が、ずっといいに決まっている』 不思議な上に切ないです。
オレたち花のバブル組
(池井戸潤)

31
テレビ原作本、続けて読みました、とにかく痛快です。モヤモヤ気分が吹き飛びます(この二作がドラマ化されたようです)。今度は「半沢直樹に押しつけられた頭取命令、それは巨額損失を出した老舗ホテルの再建。銀行内部の見えざる暗躍、金融庁の”最強の検査官”との対決…」 上司だろうが人事部だろうが関係ない曲がったことは認めない、自分のプライドでがしがし突き進んでいけたらい一緒になればいですね。ホントに面白かった! 『いい加減に流すだけの仕事ほどつまらないものはない、そのつまらない仕事に人生を費やすだけの意味があるのか』 『目の前の人事一つで全てが決まるわけではなく人生というものは結局のところ自分で切り拓くものである』 ”やられたら倍返しだ”とやってみたい!。
オレたちバブル入行組
(池井戸潤)

30
話題のドラマ『半沢直樹』シリーズ原作(テレビは観てい ない)!「バブル期に大手銀行に入行し、今は大阪西支店融資課長の半沢直樹。支店長の命令で無理に融資の承認を取り付けた会社が倒産した。すべての責任を半沢に押しつけようと暗躍する支店長。四面楚歌の半沢・・・」 これが第1作目で2004年に刊行されています。 著者と同じような経歴の半沢の活躍、現実とフィクションを取り混ぜた痛快さに次々とページを繰ってしまいます。特に権力を笠に着た理不尽さに我慢ならない性格の私には面白くてたまりません。また自分がこのような行動がとれなかったこともありなおのこと・・、多くの視聴者・読者が同じようなことを感じているのでしょう。『人事は常に公平とは限らない、出世するものが必ずしも仕事のできる人間ではない』 どこの世界も一緒!
闇に香る嘘
(下村敦史)

図書館19
(134)
29
今年の江戸川乱歩賞を受賞した作品で、選評もベタ褒めです。「中国残留孤児として帰国した“兄”は偽物ではないかと、と言う疑問を抱いた視覚障害者の主人公が手探りな捜査を始めるや、不穏な出来事が彼の身辺で次々と起きる・・」 視覚障害者が語り手と言うだけあってサスペンスの盛り上がりがすごい(ネタバレ注意)、アッという結末が待っている。中国残留孤児の問題にも理解がいきます『残留孤児は日本に四度棄てられた、敗戦時に棄てられ、国交断絶時に棄てられ、国交回復時に棄てられ、そして帰国後に棄てられた』 ミステリーとしても優れているが中国残留孤児の問題で日本政府が何をしたかがよくわかります。私たちはあまりにも知らなさすぎる・・・。
赤毛のアン
(モンゴメリ ・村岡花子訳)

28
朝ドラ「花子とアン」を観て、また読みたくなりました。ご存知のお話「手違いから、グリン・ゲイブルスの老兄妹に引き取られた孤児アンが、夢のように美しいプリンスエドワード島で少女から乙女へと成長した姿を描いています」。初版は昭和27年です。何年経っても色あせない、アンの清らかさが胸を打つのでしょう、読んでいて幸せな気持ちになります、村岡花子さんの訳もいいのでしょう。  心に残るセリフから 『一人の人間がする間違いには限りがあるに違いないわ、だからあたしだってし尽くしてしまえば、おしまいよ。そう思うときが楽になるわ』 『自分の未来は真っ直ぐに思えたわ、ところが今曲がり角に来たのよ。曲がり角の先には素敵なよいところがあると思うわ』
つむじ風食堂の夜
(吉田篤弘)

27
『遅れてきた大人のファンタジー』というコピーで映画化されているのは全く知りませんでした。 「月舟町にあるどこか妙に懐かしい雰囲気のつむじ風食堂は、常連客でにぎわっている。雨降りの研究をしている「私」はある晩その食堂で、帽子店を営む桜田さんに"二重空間移動装置"という名前の万歩計を売りつけられる。その様子を、売れない舞台女優の奈々津さんは、あきれ顔で眺めていた・・」話はとても静かで哲学的な雰囲気が漂っていて、読んでよかったと思う不思議な本(内容も)です。 『ワニは涙を流さないということ、そこから転じて”ワニの涙”という言葉は”虚構”を意味する』って知ってましたか?
タルト・タタンの夢
(近藤史恵)


26
かぁ~るい、かぁ~るい、連作短編集です。
「フレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マルへようこそ。絶品料理の数々と極上のミステリをどうぞ! 客たちの巻き込まれた不思議な事件や不可解な出来事。その謎を解くのは、シェフ三舟」。と言ったもので、ビブリア古書堂を思い出すようなお話しですが、これはフランス料理から推理していきます。七つのお話しが出てきます。フランス料理に疎い私は例えば『タルト・タタン』と言っても想像がつきません、それでも読んでいくうちに何となくわかってくると言うようなものです。肩のこらない本を読みたいと思う方には打ってつけです。
白い声上・下
(伊集院静)

図書館18
(133)

25
『約束の橋でめぐり逢った二人は、一路、サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指し星の巡礼路を歩み始めるが...。伊集院静が描く、究極の恋愛小説』とありました。
「自堕落な日々を送る作家の野嶋に、次々と女性がとりこになっていく。その一人が清純な牧野玲奈。神を憎む野嶋と敬虔なカソリック信者の両極端の2人が巡り合い、すれ違い、そして絡まり合い、純粋な愛を紡いでいく」 上巻では今一ですが下巻の野嶋と玲奈のスペイン逃避行の場面になると、吸い寄せられていきます。サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指し、星の巡礼街路を行く2人の姿には、ここを実際に歩いた私はもちろん、歩いていなくても引きつけらると思います。
静かな爆弾
(吉田修一)

図書館17
(132)

24
吉田修一に惹かれてまた読みました。耳の不自由な女と男のラブストーリー。静かな中でないと気づかないこと、どんな中でもうまく伝えられないこと…、 伝えることって難しい。 音のしない恋愛小説です。「テレビ局に勤める早川俊平はある日公園で耳の不自由な女性と出会う。取材で人の声を集める俊平と、音のない世界で暮らす彼女。やがて恋に落ちる二人だが・・・」 静かに淡々とすすんでいく中にいろんなことを考えされられます。
「『
あなたは耳が聞こえるけど、それは気にしない』って言われたことある?』私たち、いつもそう言われるのよ。『あなたは耳が不自由だけど、私はそれを気にしません』って」彼女の想いわかりますか?
銀行総務特命
(池井戸潤)

図書館16
(131)

23
銀行内で起きた不祥事を解明していく『総務特命』を描いた短編集です。ずいぶん前に図書館に申し込んでいました。主人公が代わってTV化されているようです。「帝都銀行で唯一、行内の不祥事処理を任された指宿修平。顧客名簿流出、現役行員のAV出演疑惑、幹部の裏金づくりなど、スキャンダルに事欠かない伏魔殿を指宿は奔走する。腐敗した組織が・・・」 結構面白いです。著者が銀行勤務の経験があるのでホントかな?と思ってしまいます。また、半沢直樹シリーズも書いていたのですね。刑事が銀行員に『根っからの善人を悪事に追い立てた方が百倍悪い』 と言うところがありますが、お金のためなら何でもあり?の銀行。
怒り 上・下
(吉田修一)

図書館15
(130)

22
『悪人』から7年、また素晴らしい物語に出会えました。犯人探しのみミステリーではなく、周囲の人間達の苦しみや悩みの方に力点が置かれています、特に下巻になると一気読みです。「逃走中のある殺人事件の犯人を捜す刑事と、犯人ではないかと疑われる3人の青年とその周囲の人たち。信じたいのに自分の心から疑いの気持ちが消えない・・・」 大切な人を信じることの難しさがテーマです。読み応えがあり、胸にグッときます。
人間の弱いところをこれでもかって言うくらい突きつけられる、著者の力量には圧倒されます。おすすめの一冊です。
図書館戦争
(有川浩)

図書館14
(129)

21
本を読む自由を奪われたら? 公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締まる法律メディア良化法が制定、これに対し検閲自体が違憲であるとして図書館の自由法が成立した。 「メディア良化法が成立して30年。高校時代に出会って、助けてもらった図書隊員を追い、行き過ぎた検閲から本を守るための組織・図書隊に入隊した一人の女子。不器用ながらもその情熱が認められ図書特殊部隊に配属される・・」著者が単行本あとがきで『こんな世の中になったらイヤだなー』と書いていたのが文庫本あとがきの時は『うっかり気を抜いていると怖い法案や条例が通過しそうになっている』と ホント怖い世の中なりました。
血の轍
(相場英雄)

図書館13
(128)


20
『震える舌』(2012年book)に続きこの人ものは2冊目でしたが、すごく面白かった。
事件を詳らかにしたい刑事部と、闇に葬り去りたい公安部の熾烈な攻防戦と、それに翻弄される二人の男の物語。一気に読み切ってしまいます 「元刑事が絞殺された、警視庁捜査一課の兎沢は国家を揺るがす大事件の真相に元刑事が辿り着いていたという糸口をつかむが、邪魔が入る、所轄時代の先輩・公安部の志水・・」 何と言っても刑事部と公安部との争いが見物です。実際、国のためという名目で何でもありの公安という組織が怖い、現実もこんなんだろうか? WOWOWでドラマ化されたが残念ながら観ていません。
名もなき毒
(宮部みゆき)


19
吉川英治文学賞を受賞。TVドラマ化されているとは知りませんでしたけど・・・。
シリーズ第2作目、テーマは『この世には何故悪意が存在するのかを問うもの』とありました。人間の自分勝手な思い込みなど(「乱反射」にも通じる)根底にあるのは毒です、怖い!「無差別と思われる連続毒殺事件が注目を集める中、大企業の広報室に雇われた女性はたちの悪いトラブルメーカーだった。主人公は経歴詐称とクレーマーぶりに振り回される・・・」2つの話が微妙に絡みながら進みます。『私たちはいつも、この世の毒など考えないようにして生きている。日々を安らかに過ごすにはそれしかほかに術がない』と
乱反射
(貫井徳郎)


18
第63回推理作家協会賞を受賞しています。「一人の幼児がある事故に巻き込まれて死亡する」不特定多数の人間の、ほんのちょっとした悪意が積み重なって起こった事件。 『自分だけなら大丈夫』『一度だけ』そんな一人一人のエゴが悲劇を呼んでいきます。
物語はマイナス44章から始まり、事故発生の経緯が描かれ、発生を経て改めて第1章からという書き方です。帯に『深くて、重くて、悲しい、だが圧倒的に面白い』とありましたが、このどうしようもない理不尽さに読んでいて悲しくなります。
人間って、つくづく身勝手な生き物だなと思います。 分厚い本だけど引き込まれました。
カミーノ
魂の旅路
(シャーリー・マクレーン)

17
著者はハリウッド女優で、自分の霊的な探求についての本も出していますが、今回は1994年にサンティアゴ巡礼路を歩いた体験を本にしたものです。ブラジル公演中に届いた一つの手紙そこには『カミーノ巡礼をすべき』と書かれていた。60歳を過ぎ精神的な成長を求めて旅立ちます。足にマメを作ったり、新聞記者に追いかけられたり、道に迷ったり、毎日25k以上歩きながら人生の意味を問う巡礼の旅、壮絶なものがあります。
こんなだったら怖い? でも20年前だから・・今は大丈夫でしょう、私たちも頑張るぞ~!
ラスト近くの『レムリアとアトランティス』の想像の話はついていけないものもありました。
天切り松4
(浅田次郎)

図書館12
(127)
16
シリーズ第5巻を先に読んでしまいましたが、これは第4巻「時は流れ、時代は昭和へ目細の安吉の周りに人が次第に集ってくるのは何の因果か。寅弥が軍隊にいた頃の部下の娘、志乃。親分が親分なら、その子分も義理人情に厚いことこの上ない。列車で女衒に虐げられていた少女を買い戻し、お礼を言われたら”礼ならお天道さんにいいな”なんと気持ちがイイではないか・・・」 さて、この4巻では天切り松の名付け親が登場します、何と東郷平八郎!五つの話が語られますが、日輪の刺客 惜別の譜 王妃のワルツは史実に基づいた話かと思われます。やっぱり格好いい!
天切り松5
(浅田次郎)

図書館11
(126)

15
シリーズ第5巻は『ライムライト』です。ご存じ大泥棒天切り松が語る「人間が人間らしく精一杯に生きていた時代に、自分に関わり合った忘れぬ人達の物語」です。今回も五つの話が出てきます。どの話も胸にグッときます。その中から『男は誰もお国なんて信じちゃいない・・・。赤紙1枚で放り出されて、それ行けやれ行けでお陀仏だからな。そんなお国をどう信じりゃいいんだ』 『ばかばかしいのは肝がくくれずに生きているか死んでいるかよくわかれねえ人生だ。もっとも世の中あらかたはその手合いだがの』  こんなにも人間らしく格好いい登場人物達、爪の垢でももらいたいものです。
高校入試
(湊かなえ)
図書館10
(125)

14
テレビドラマ化されているとは知らずに読みましたが、元々ドラマ化が決まっていて書かれたものらしいです。手法としてはこの著者らしいですが、登場人物の多さと、語り手がぐるぐると変わる展開に、最初は相関図なしではついていけませんでした。後半はぐいぐい進みますが、ラストはちょいと納得できません・・・。 「地元名門進学校の入試を舞台に、過去の受験での採点ミスを巡る因縁が復讐という形で学校や教師、同窓会長、親を翻弄する話」です。実際にこんなことが起きていたら大変でしょう・・・。人間の愚かさやエゴが前面に出てさすが湊かなえです。
禁断の魔術
(東野圭吾)

図書館9
(124)

13
今回はガリレオシリーズ8作目、初の書き下ろしということで期待しました。四つのエピソーご大泥棒ド(「透視す(みすかす)」「曲球る(まがる)」「念波る(おくる)」「猛射つ(うつ)」)が語られますが、最後を除いてやや期待外れでした。全体的に難しくなく重量も無くて、ライトな感じというところか・・。最後の”猛射”とは「湯川の教え子古芝が、湯川が教えたレールガンにより殺人を計画する。すべては敵討ちに起因していた・・、ここに湯川の苦悩が始まる。さあ・どうなる?」  『地雷は核兵器と並んで、科学者が作った最低最悪の代物である。いかなることがあっても科学技術によって人間の生命を脅かすことは許されない』 そのとおり!
夢幻花
(東野圭吾)

図書館8
(123)

12
『ムゲンバナとは夢幻の花、追い求めると身を滅ぼす』 著者が『こんなに時間をかけ考えた作品は他にない』と言ってます。いきなりの通り魔殺人から始まり、それから時代が経過して・・ 少年の淡い恋物語・・そして不可解な自殺と・・どんどん引き込まれていきます。「独り暮らしの老人が殺された。第一発見者は孫娘の梨乃。彼女は祖父の死後、庭から消えた黄色い花のことが気にかかり、ブログにアップする。接触してきたのが、警察庁の蒲生要介。その弟・蒼太と知り合った梨乃は、蒼太と共に、事件の真相と黄色い花の謎解明に向けて動き出す。西荻窪署の刑事・早瀬も事件の謎を追っている」 面白い!
木暮写眞館上・下
(宮部みゆき)

図書館7
(122)
11
もしも想いが写真に写ったら?宮部みゆき原作の新感覚ヒューマンミステリー!木暮写眞館を舞台に四つの話が語られながら感動の結末へ・・・。上下2巻です、初めの方は何となくだれてしまうのですが謎が解明される第4話になると俄然面白くなります。約1年前にNHKでドラマ化されているとは知りませんでした。「高校生の英一の両親は、念願のマイホームを購入する。その家は、もと写眞館だった築33年の怖ろしく古い家だった”木暮写眞館”の看板をそのままにしていたため、ある日心霊写真が持ち込まれる。英一は、その謎解きに乗り出すが・・」 ほろ苦く切ない青春の1ページです。
青い鳥
(重松清)


10
いつもながらこの著者の優しい目には心が和みます。著者が『初めてヒーローの登場する物語を書きました』と言っていますが、どんな人(先生)でしょう?「授業よりももっと大切なものがあると『いじめの加害者になった生徒、父親の自殺に苦しむ生徒、家庭を知らずに育った生徒・・・』など、先生は正しいことを教えるために先生になったんじゃない、大切なことを教えたいんだ」 子供一人一人が持った孤独・悩み・どうしようもない気持ち、大人がどこまで向き合えているんでしょうね。ところで、日本中、どこの学校の黒板も西の壁にあると知っていましたか?理由は、よ~く考えてみてください。
村上ラヂオ
(村上春樹)


9
つれづれなるままに手に取った本です、なぁ~んちゃって、『anan』に一年にわたり掲載された50のエッセーを集めた本で平成13年に刊行されたものです。
気楽に気楽に読めます、ホノボノと過ごしたい人にいい?。そんな感じです。「スーツの話、柿ピーの話、優雅なレストランでの大惨事、理想的な体重計の話など」一つの話に二枚の版画(大橋歩:平凡パンチの表紙を描いていた人)がついていて、これもなかなかいい。『人間というのはたぶん何かがあって急にすとんと死ぬんじゃなくて、少しずついろんなものを積み重ねながら死んでいくものなんだね』 こんな心境になれたらいいなぁ~。
インフェルノ 上・下
(ダン・ブラウン)


8
ダン・ブラウンの新作、『ダ・ヴィンチ・コート』『ロスト・シンボル』に続いて三作目です(『天使と悪魔』は映画で観た)。やっぱり面白い、単行本で上下2巻ですがあっという間に読み終えました。舞台はフィレンツェ、ヴェネツィアからイスタンブールです。訪れた町が舞台ですから面白くないはずがありません。今回は「人類が人口爆発のせいで滅亡するという説を唱えるある科学者。大災害か何かが起こって世界の人口が激減しない限り、あと百年も生きのびられないだろう、そこにし組まれた遺伝子操作による計画が・・・」 WHOやある組織が絡み『ダンテの神曲』が暗号を解く鍵に、ラングドンと若き女医が奔走、二転三転します。
遺産
(笹本稜平)

図書館6
(121)
7
著者は2001年に紹介した『時の渚』のミステリーから、警察もの、山岳ものそして今度は海です。「水中考古学を専攻する興田真佐人は、四百年前、祖先・正五郎とともに沈んだスペイン船『・アレグリア』号を、太平洋のど真ん中の海底で発見した。スペイン人実業家アントニオと引き揚げの計画を練る真佐人の前に、世界一のトレジャーハンティング会社のCEOジェイク・ハドソンが立ちはだかる。恩師の田野倉教授、同期の片岡亞希の協力を得て、真佐人の“魂の遺産”獲得のための闘いが始まる・・」 壮大なロマンの物語です『「もう逃げないことに決めたんだ。夢も希望もこの手で掴みとる』 いいですね~!
風の中のマリア
(百田尚樹)

図書館5
(120)
6
オオスズメバチのワーカー(働き蜂)の一生の話です。ワーカーは卵からかえって羽化するまで約30日かかるが成虫になると三週間生き延びるのは一割にも満たない、最長に生きても30日あまりです。「命はたった30日。戦うことに迷っている暇なんてない。ここはオオスズメバチの帝国。晩夏、隆盛を極めた帝国に生まれた戦士、マリア。幼い妹たちと『偉大なる母(女王蜂)』のため、恋もせず、子も産まず、命を燃やして戦い続ける。ある日出逢ったオスバチから告げられた自らの宿命。永遠に続くと思われた帝国に影が射し始める」 切ない話です。よくもまぁ、調べたものです。
クローズアップ
(今野敏)

図書館4
(119)
5
『スクープシリーズ』第三弾(第2弾『ヘッドライン』を2011年に紹介)です。相変わらず軽い乗りでスイスイと読んでしまいます。「六本木の公園で週刊誌のライターの刺殺死体が発見された。報道番組の記者・布施と捜査一課の刑事・黒田は別の観点から事件に迫っていく・・・」 政治、報道のあり方、警察の動きなど見どころ満載。肩がこらずに面白いです。『政治家は二言目には政局より政策論で勝負をしたいなどと言うが、実際は政局と選挙のことしか頭にない』 『多くの政治家がスキャンダルで失脚しているが、それらの多くは敵対勢力のネガティブキャンペーンだ』 など、そのとおりですね。
世の中…
(浅田次郎)

図書館3
(118)

4
タイトルは『世の中それほど不公平じゃない』(人生相談)です。これが面白い!
・『割れがめを見ず』:割ったかめには一瞥もくれなかった。・上手くいかないことを自分以外のもののせいにしない。上手くいかないのはすべて自分のせい。・原発は24基だからね、明らかに電力を生み出す以外の目的で作られたと言うこと。・今の中国には余裕がない、二つの相反するイデオロギーを抱えてストレスが表に出る限界ぎりぎりの所まで来ている。反日感情は自国に対する不満。・自国の領土問題を『うんざり』だと言い切ってしまうのは世界中で日本人だけ。主権国家にとっての『領土』は最優先の重要課題。など・・。
カミーノ!
(森知子)


3
『女ひとりスペイン巡礼、900キロ徒歩の旅』と副題があります。37歳の著者が ”夫に捨てられ旅に出ます!”と言ってスペインへ・・・。歩くのは私達の計画と同じフランス人の道、ただサンティアゴ・デ・コンポステーラより更に90キロ先のフィステーラ岬まで44日間かけて歩いているのです。巡礼出発前々夜からラストまで毎日の出来事、歩いた距離などすべてがとっても面白く書いてあります。(笑いながら一気に読みました)
歩く人はもちろん、歩かない人も是非読んでください。苦しいこと、きついこと、情けないことなど・・・、それを乗り越えたときに何が待っているのでしょう?。
黒書院の六兵衛 上・下(浅田次郎)
図書館2
(117)

2
最近の浅田次郎は時代物が多いような気がしますが、これもなかなかものです。一言で言うと「将軍を身近に守って江戸城につめるという相当に高い役職を金の力で買った六兵衛という成り上がりの武士が、明治維新によって江戸城が徳川から天長に引き渡される短い日々を・・・」勝海舟、西郷隆盛、桂小五郎など、幕末お主人公達を絡ませ話は進みます。これがミステリー仕立てでぐいぐい引っ張られます。幕末という時代に侍が忘れた武士道がここに生きています。やはり、ラストは切ないです。
それにしても、こんな話をよく思いつくものです(モデルがある?)。
東京プリズン
(赤坂真理)

図書館1
(116)

1
戦争を忘れても、戦後は終わらない・・16歳のマリが挑んだ現代の「東京裁判」を描き、朝日、毎日、産経各紙で、“文学史的”事件と話題騒然! 毎日出版文化賞、司馬遼太郎賞、紫式部文学賞を受賞、また「今年最高の本」第一位に輝いたというすごい本です。
「3・11の地震が起こった今を経験する主人公が、過去の15歳の時に渡米して経験したことを振り返るかたちで、自分、娘の時の自分、母親が現実と夢を通して縦横に時空を超えて自由に行き来しながら語る幻想的な小説」です。天皇の戦争責任・存在意義、神の存在、9条の問題等読みにくいけど読んで良かったと思える一冊でした。