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首折り男のため・・
(伊坂幸太郎)
図書館38(228)
38 |
タイトルは『首折り男のための協奏曲』といいます。「首折り男の周辺」、「濡れ衣の話」、「僕の舟」、「人間らしく」、「月曜日から逃げろ」、「相談役の話」そして「合コンの話」と連作短編集なのですが、つながっているようでつながっていないのです。それぞれが味があり面白く、よくマァこんな話を考えつくものだと思います。人間の首はこの収録されている物語の数と同じ7つの頸椎によって支えられているそうです。『争いは正義のためという名目で起こり、我が国民、我が民族を救うがためという大義名分の元に起こす国家の戦争。或る人にとっては薬でも、別の或る人にとっては毒となる。軽い気持ちから始まる苛めが、病気のように伝染して行き暴力に成長する。』 なかなかのものです。 |
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ハリー・クバート事件 上・下
(ジョエル・ディケール))
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スイスの若い作家がアメリカを舞台に書いたエンタテインメントの傑作です。”平凡な日常に隠された人間の浅ましさ”を軸に、二転三転する面白さ!1000ページにも及ぶ長編ですが、先が気になって一気に読ませます(特に下巻)。帯封に『徹夜の覚悟無しに読み始めないでください』とある。「デビュー作が大ヒットして一躍ベストセラー作家となったマーカスは第二作の執筆に行き詰まっていた。そんな時、頼りにしていた大学の恩師で作家のハリー・クバートが、少女殺害事件の容疑者となる。33年前に失踪した美少女ノラの白骨死体が彼の家の庭から発見されたのだ。マーカスは、師の無実を証明すべく事件について調べ始める」
次々に判明する新事実、どんでん返しに継ぐどんでん返し…。 |
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アンマーとぼくら
(有川浩)
図書館37(227)
36 |
この著者(女性)は3作目でしたが、これが一番好きです。アンマーとは沖縄言葉で”お母さん”、母と息子の絆を描いた物語です。「休暇で沖縄に帰ってきたリョウは、親孝行のため”かあさん”と3日間島内を観光する。一人目の”お母さん”はリョウが子どもの頃に亡くなり、再婚した父も逝ってしまった。観光を続けるうち、リョウは何かがおかしいことに気がつく・・・」 沖縄の地からの奇跡、心が温まります。また、読んでいる間ずっと、真っ青な海と、抜けるような青空の風景に包まれているような心地よい感覚になります。 ところで日本三大がっかりって知っていますか?
『高知のはりまや橋、札幌の時計台、沖縄の守礼門』 だそうです。全部行きましたが、なるほどそうか・・・。なっとく! |
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永い言い訳
(西川美和)
35 |
直木賞候補にもなった西川美和(つれづれ日記:8.27参照)の本です。もちろん映画にも(本木雅弘主演)なっています。著者が『愚かな人を徹底的に書くのは自分の課題。自分の持っている愚かしさをあますところなく、主人公にすり替えて書いていきました」 と、主人公に腹も立ちますがラストは涙します。『生前奥さんに向き合わず自分勝手にしていた夫が自分の居場所を見つけながらだんだんと奥さんに向き合う』という内容です。心理描写がすごく、リアリティーに溢れています。「生きているうちの努力が足りなく、時間には限りがあり、人は後悔する生き物だということを知りながら最も身近な人間に誠意を欠いてしまうのはどうしてだろう・・・」。四国遍路で考えたことと被さるところもありました。 |
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いなくなった私へ
(辻堂ゆめ)
34 |
2015年第13回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞受賞作、しかも著者(1992年生まれ)のデビュー長編です。「人気絶頂のミュージシャン・梨乃は渋谷のゴミ捨て場で目を覚ます、昨夜からの記憶もなく誰にも自分と認識されなくなっていた。さらに自身の自殺報道を目にした梨乃は自らの死の真相、そして蘇った理由を探りはじめるが・・・」。SFファンタジー系の特殊ミステリーという感じです、一気読みするくらい面白かった。著者が東大法学部在学中に書いたものだそうです、受賞コメントとして『読み終わった時に、心に温かいものが残るような作品を書いていきたい』と語っていますが、まさにその通り読み終わった感じがとてもよく爽やかです。肩の凝らない気楽に読める本です。秋の夜長にどうぞ! |
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世界!煩悩ワンダラー!
(ジャスミンKYPKO)
33 |
映画のロケ地を回る旅のお話しですが、よくぞここまでハリウッド映画に惚れました! ロケ地を訪れるだけでなくそこで出演者になりきり(恥ずかしげも無く)シーンを再現するところが面白い、と言いながら私もマッシモ劇場では同じようなことをやった。ただ、マンガは読まない私には『CIPHER』
の話はよくわかりませんでした(スミマセン)。23歳の時のジャスミンが可愛い、お話しもこの時の怖い物知らずの冒険談(?)がいい。友達や妹それに子供ちゃんもいい経験なのか?何でこんなことに付き合わなければならないのか?などと思っているかもしれませんが、そんなはた迷惑など考えずに突き進むところが、さすが映画狂ですね。映画を観ない人には少しわかりにくいかも、でも深く考えなくても面白く読めます。 |
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ストロボ(真保裕一)
図書館36(226)32 |
『真保の隠れた名作。写真家を主人公にした連作で、フィルムを巻き戻すように人生を振り返る。第5章「遺影」から始まり、第一章「卒業写真」で終わる仕掛けだ。情感豊かな逆成長小説・青春小説であり、さりげない夫婦愛の小説としても見事』とある文芸評論家が書いていました。まさにその通り、読後感が何とも言えず爽やかでした。著者が書いているネタバレ”あとがき”で繋がりがよくわかります。「愛しあった女性カメラマンを失った40代。先輩たちと腕を競っていた30代。病床の少女の撮影で成長を遂げた20代。そして、学生時代と決別したあの日。夢を追いかけた季節が甦る・・・」
話の中に少しある種の謎が含まれていますが、その謎が解けたときに人の生き方がわかってきます。いいね~! |
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バラカ(桐野夏生)
図書館35(225)31 |
バラカ(薔薇香)と名付けられた一人の少女を中心に震災前・震災・震災後八年・・・、描かれるのは人間の欲望・悪意・憎悪そして愛と勇気。まさに桐野文学。東日本大震災で原発4基爆発、警戒区域は関東にまで及び、オリンピックは大阪開催
「ドバイの赤ん坊市場で買われて日本に来たバラカは、震災で養親と生き別れ警戒区域内で保護される。被曝した彼女は、反原発/推進両派の争いに巻込まれ、悪魔ような男に追われながらも、震災後を生き抜いてゆく」
”このままでいいの?という怒りが根底にある”と著者が語っています。『復興予算の使い道を覚えているか。みんな電力会社の赤字補填に使われたんだ。被災者を忘れオリンピックに浮かされたいる、日本人なんてそんな程度の国民なんだ』 |
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リボルバー・リリー
(長浦京)
図書館34(224)30 |
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トランプが・・・(町山智浩)
図書館33(223)29 |
タイトルは『トランプがローリングストーンズでやったきた 言霊USA201』です、著者はアメリカ在住の映画評論家。週刊文春に2015年3月~2016年3月まで連載されていたものです。内容は「いまアメリカで起きているおバカな出来事、日本では考えられないハチャメチャなニュースを、現地で流行ったスラング、失言、名言をもとに面白おかしく描いたもの」
映画などを絡ませた裏話が満載です。”病んだアメリカ”がよくわかります、セレブたちの様々な愚行の数々。これが世界最強の国家の現状なんでしょうか?本気でトランプ大統領もありえるかもしれないですよ。『現在のドイツ人はナチやヒトラーの戦争犯罪を全て認める。決して戦争を正当化しない。日本は、罪の意識から逃れられないから、正当化する』 |
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大きな鳥・・・(川上弘美)
図書館31(221)28 |
タイトルは『大きな鳥にさらわれないよう』です。あまり予備知識も無く読み始めたところ何とも不思議な気持ちになりました。ある人が『ファンタジーと思いきや、SFと思いきや、創世記のような物語です。人間の歴史がミニチュアチックに描かれています。人工知能が人間を超えたとき、新しい物語がはじまるのかもしれないと感じた一冊です』とコメントしていましたが、まさにその通りでした。「遠く遙かな未来、滅亡の危機に瀕した人類は、”母”のもと小さなグループに分かれて暮らしていた。異なるグループの人間が交雑したときに・・・」
個々の視点で描かれた各章は、それだけで読んでも面白いですが、読み進めるにつれ、どうやらすべては繫がっているらしいと気付いたときから面白くなります。すごいです! |
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大岩壁
(笹本稜平)
図書館30(220)27 |
パキスタン、ナンガ・パルバット。ヒマラヤ、8000メートル級の山で、多くの犠牲者を出し、”人食い山”の異名で恐れられてきた。「立原祐二、48歳。5年前に、3名のパーティで登攀に挑むも、頂上目前にして断念。しかも、自身の指だけでなく、大事な友人・倉本を失った。が、クライマー人生を締めくくるにあたって、生還した木塚とともに、魔の山に挑むことを決意する」
しかし、そこには兄の無念をはらさんとする倉本の弟、さらには冬期初登頂を目指すロシアのパーティが参入、予期せぬ出来事が・・・。果たして登頂できるか?自分も一緒に4800mの大岩壁を登っている気持ちになります。『人が生きる理由は損得だけの合理性だけを尺度には決められない。むしろ生きる理由を求める行為そのものが、山に登る理由だ』 |
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教場2
(長岡弘樹)
図書館29(219)26 |
昨年初めに紹介した『教場』の続編です。一作目の衝撃が大きかったせいか、妬みそねみの激しさ、怖さはやや控えめに感じられました。一作目も含め、こんな人格で警察官になんて思う人もでてくるけど、いるんでしょうね。全六話「創傷:医師の桐沢に銃創の治療を受けた過去がある南原が桐沢の手帳を盗んで退校させようとした。心眼:校内連続窃盗犯が筋トレ野郎で美人女警が触った物を盗んでいた。罰則:自分のしでかしたことを記憶が飛ぶ同期のせいにしたが・・。敬慕:負け知らずの容姿を広報投票で同期に負け心を改めたが・・。机上:下に見ていた同期が刑事の模擬現場で慧眼を発揮して自分の態度を改める。奉職:6年前に警察学校を辞めたが再び警官に・・、臆病を克服して卒業する」
面白いです。 |
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Nのために(湊かなえ)
図書館28(218)25 |
著者のデビュー後に書かれた(『告白』のあとプロ作家になってからの一作目)ということになるそうです。2014年にテレビドラマ化されています、知りませんでした。著者はイヤミス(人間の悪意など負の部分を扱う小説)に分類される作品が多いが、これは少しひと味違った作品になっています。とは言え心に潜むものをえぐり出すのは得意ですね。「超高層マンションの一室で、そこに住む夫妻の変死体が発見された。現場に居合わせたのは、20代の4人の男女。みんなの証言は一致しているが、10年後それぞれの語りで真実を明らかにしていく。なぜ夫妻は死んだのか?それぞれが想いを寄せるNとは誰なのか?」切なさに満ちた展開です。少し想いがわかりにくい部分もありますが、じっくり読み込むとなるほど・・・。 |
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つまを・・
(青山文平)
図書館27(217)24 |
タイトルは「つまをめとらば」、154回直木賞受賞作、表題作のほか全6篇の短編集です。戦国の世から太平の江戸へ時代が移り、剣の技を持って生きていた武士はたちは己の生き様を変えざるを得なくなります。拠り所を失い生きたかを模索する男と、そんな男に関わる女達の物語です。タイトルから想像する『妻を
めとらば 才たけて みめ美わしく・・・』とはちょいと違って、無様な男に対したくましい女たちの姿です。「あらかたの男は、根拠があって自信を抱く。根拠を失えば、自信も失う。けれど、女の自信は、根拠を求めない。女は根拠なしに、自信を持つことができる」
女の強さ、しぶとさ、嫌な面など描かれていて男はたじたじするばかりです。読みやすい短編集で、簡潔で気持ちよく読み進められました。 |
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職業としての小説家
(村上春樹)
図書館26(216)
23 |
『自分が小説を書くことについて、こうして小説家として小説を書き続けている状況について、何かを書いておきたい』という著者の気持をまとめた自伝的エッセイです。評に”小説を書こうとしている人はもちろん、生き方を模索している人に総合的なヒントと励ましを与えてくれる”とありましたが、私は後者の方に意味を強く感じました。「芥川賞、ノーベル賞など、時に作家の周辺をいたずらに騒がせてきた”文学賞”の存在について、どう考えているのか。なぜ、どのような形で、ある時から日本を出て、いかなる試行錯誤と悪戦苦闘を経ながら、世界へ向かう道を歩みはじめたのか。<3.11>を経たこの国のどこに、問題があると見ているのか」など興味はつきません。『僕は60年代末のいわゆる反乱の時代をくぐり抜けた世代に属し”体制に取り込まれたくない”という意識は強かったと思います。それより、何よりも精神的に自由でありたかった』
と、おこがましいですが、何か私(達世代?)にもこのような精神があるような気がします。また、毎日著者はランニングをするなかで『今日はけっこう体がきついな。走りたくないなと思うときでも”これは僕の人生にとって、とにかくやらなくちゃならないことなんだと自分に言い聞かせて理屈抜きで走った』
とも、この気持ちよくわかります。最後に『原発・・ひとつの国を滅ぼすような危険性(チェルノブイリはソ連を崩壊)をはらんだシステムが営利企業によって運営されるとき身の毛のよだつようなリスクが生まれるのです。国土を汚し、自然をねじ曲げ、国民の身体を損ない、国家の信用を失墜させ、多くの人々から固有の生活環境を奪ってします。それが実際に福島で起きたのです』
と。 |
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二十一歳の父
(曾野綾子)
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昭和38年刊行、今から50年以上前に読んだ本です。私の青春のバイブルとしての1冊です(あとの2冊は、『アンナ・カレーニナ』と『長い坂』(昨年紹介))。何回読んでも、この純粋さには心を打たれます。エリート一家の家風に合わない次男坊が、盲目の娘と学生結婚する話です、友達の視点、親の視点から社会や家族との関わりを描いています。50年経っても人の考え方は変わらないものですね。 『世の中に、大きな志をたてて南の方に行く鵬(の鳥)ばかりいても、しょうがないでしょう。僕はすぐ地面に投げ出される蜩か学鳩(コバト)だったんだよ』
と主人公が最後に・・・。夢を追うのも必要だがしっかりと足下を見て生きよという風に20歳の頃の私は感じたものでした。この本を読むと50年前の自分が見える気がします。 |
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女性外交官・・・
(麻生幾)
図書館25(215)
21 |
タイトルは『女性外交官・ロシア特命担当 SARA』です。この著者( 本名非公開の覆面作家)のものは二作目です”日本とロシア、中国、そして北朝鮮。綿密な取材に基いて、国家の思惑と外交官の本質を暴いたインテリジェンス・ミステリー”。前半の(200ページまでくらい)描写にやや辟易しますが、あとはジャンジャン進みます。「
ロシア・ウラジオストクで外交官の夫が突然、姿を消した。同じく外交官である妻・雪村沙羅(SARA)は、単身現地に乗り込み、必死に夫を探し続けるが、いくつもの謎に行く手を阻まれ・・・」
外務省という役所の怖さ(人間関係も含め)、それにロシア、北朝鮮と、世界の裏舞台では何がどう動いているのか?前に読んだ『外事警察』でも思いましたが、私たちの知らないこところで、想像を絶することが起きているのですね・・・。 |
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尖閣ゲーム
(青木 俊)
図書館24(214)
20 |
現実が先か、小説が先か、沖縄が独立!著者は元テレビ東京、報道局、香港支局長、北京支局長を経て独立した人です。それだけに何となく真実みを感じます。「事件の発端となったのは、尖閣諸島の魚釣島。 主人公の姉は、そこでの特殊任務のために無残な死を遂げ、”羅漢”という冊封使が書いたという500年前の記録が、謎として残される。姉はなぜ死んだのか?そして、沖縄本島各地で、不明のテロが始まる。オスプレイの撃墜、沖縄県警幹部の射殺、米軍兵の妻と米軍将校の暗殺・・」 "沖縄独立"を正面に据えた近未来小説です。現実に、沖縄に対する国の動きを見ていると、こんなことが起こりえるかもと思います。沖縄はいつの時代も見捨てられてきているのですね。中国の思惑、アメリカの動き、それに対し日本政府は何をするのか・・・。エンタメに仕上がっています、面白い! |
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ブラック・ヴィーナス
(城山真一)
図書館23(213)
19 |
第14回『このミス』大賞受賞。「メガバンクに就職したが、その内情に失望して三年で退職した良太。彼は、零細企業を営む兄の金策の過程で、“黒女神”と異名をとる女性(二礼茜)と知り合う。茜は目的のためなら手段を選ばない株取引のエキスパートで、依頼人が本当に大切に思っているものと引き換えに大金をもたらす。良太は茜の助手を務めることとなった…。」
経済に強くなくてもわかりやすく面白いです、株を題材にしていますがそれが新鮮でなかなかいいエンターテインメントになっています。こんな女神がいたらいいなぁ~!この著者は初めてでした、2015年にデビューの44歳(金沢大学法学部卒)の新人、今後が楽しみです。『銀行が地域を支え、人を助けるなんて幻想に過ぎないと悟った。晴れの日には傘を貸すが、雨のに日は傘を貸さない』
利益追求なら、そうですよね。 |
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去年の冬・・・
(中村文則)
図書館22(212)
18 |
”去年の冬きみと別れ”というタイトルです。『人間の内面を深く掘り下げていく純文学の装丁しながらも、ミステリーの要素が多分に含まれている』 とありましたが、まさにその通り。この著者のものは2作目でした、なかなか一筋縄にはいきません。「ライターの”僕”は、ある猟奇殺人事件の被告に面会に行く。彼は、二人の女性を殺した容疑で逮捕され、死刑判決を受けていた。調べを進めるほど、事件の異様さにのみ込まれていく”僕”。そもそも、彼はなぜ事件を起こしたのか?それは本当に殺人だったのか?」
こんな風に話は進みますが、読み進むにつれて、エッ、何なの?と混乱もしますが、ラストは何となくわかってきます。ただ『M・Mへ そしてJ・I に捧ぐ』の意味が読み返してみても分からない、誰か教えて! 善とは何なのか?悪とは?この人の本は2回読むとしっかり理解できそう! |
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悲嘆の門 下
図書館32(222)
17-2
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(3月末に上を読んでからだいぶ経ったので少し内容を忘れていましたが読むにつれ段々思い出して来るものです) 終章はハリウッド映画を観ているような異界の闘いが続きます、現代ミステリーからゲームの世界へ?著者の頭の中はどうなっているのでしょうね。あれよあれよという間に引き込まれますが、好き嫌いが分かれそうな内容です。「現実の連続殺人事件を追っているのに『実在する世界』と『存在するが実在しない世界』の不思議な行き来、ホントに連続殺人事件なのか・・・。主人公達の運命やいかに?」
宮部ワールドを知り尽くしている人には面白いと思います。あまり書くとネタバレになります、興味ある方は読んでください。ただし、普通のミステリーではありませんので、そこは期待しないように! |
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悲嘆の門 上
(宮部みゆき)
図書館19(209)
17-1 |
『ネットに溢れる殺人者の噂を追う大学生・孝太郎。“動くガーゴイル像”の謎に憑かれる元刑事・都築。人の心に渇望が満ちる時、姿を現すものは?』 不思議世界です、上巻だけでは全貌は見えませんが、引き込まれます。「主人公はネット監視会社でサイバー・パトロールのアルバイトをする大学生。サイバー・パトロールとは、ネット上に存在する犯罪に結びつきそうな書き込みを発見する仕事、大学生活に熱が入らなかった彼はこのアルバイトにやりがいを感じ始めていた。そんなある日、死体の一部を切り取る殺人事件が次々と発生。さらに・・・』
ファンタジー・ミステリー小説です。『たった一度しかない、限られた人生。理不尽だという意味においてのみ、万人に平等に訪れる死。その恐怖に打ち勝ち、喪失の悲しみを乗り越えて生きていくために、人間は物語(希望・喜び)を生み出した』(下巻へ続く) |
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ガラパゴス 下
図書館21(211)
16-2 |
『産業振興政策の偽り、非正規雇用の実態…現実社会の実相を赤裸々に描き出す』 と、下巻に入りますますひどい実態が明らかになる。読んでいていたたまれなくなります、事件の背景には大企業と人材派遣会社による隠蔽工作が・・・果たして突き破れるのか?帯に『平成版蟹工船!』
と記されています、搾取され、部品のようにこき使われ、人間らしい生活を送れない世界はまぎれもない現実!。殺された青年の最後の言葉〈貧乏の鎖は、俺で最後にしろ〉、
著者が続編は「書くつもりですが、次はまた4年後かも。このテンションではなかなか書けません」 と言っています。『この国の首相は”世界でいちばん企業が活躍しやすい国を作る”とぶち上げた。しかし勇ましスローガンは一皮むけば”世界で一番労働者がこき使われる国となる”』
『エコ家電、エコカーの減税は一時的なモルヒネ』 |
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ガラパゴス 上
(相場英雄)
図書館18(208)
16-1 |
派遣労働者の生き地獄をあぶり出す!『ハイブリッドカーは、本当にエコカーなのか?日本の家電メーカーはなぜ凋落したのか?そして、大企業にとって、非正規雇用労働者は部品と同じなのか?ガラパゴス化した現代日本の矛盾をえぐり出す』 と・・。話は「団地の一室で、自殺に偽装して殺害された青年。彼は遠く離れた故郷・沖縄を離れ日本中を転々とする派遣労働者だった・・・」 ”震える牛”(2012book紹介)の警視庁捜査一課・田川信一が再び腐敗に切り込込んでいく。新聞・TVでは報道されないタブーに挑戦!『企業にとって人材派遣は社会保険など固定費のかからない都合の良い調整弁です』
『日本は先進国で唯一車の燃費表示が宛てにならない国』 『1985年規制緩和によって、悪法<労働者派遣法>が施行され1999年派遣が自由化、過酷な労働を強いられるようになった』
(下巻へ) |
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Aではない君と
(薬丸岳)
図書館17(207)
15 |
少年犯罪(殺人)を加害者の親の立場で描いた小説。我が子が人を殺したとしても、救いたい、生きていてほしいと思う親心は痛いほどわかります。こんなに胸を打たれた本は久し振りです。吉川英治文学新人賞受賞
「勤務中の吉永のもとに警察がやってきた。元妻が引き取った息子の翼が、死体遺棄容疑で逮捕された。しかし翼は弁護士に何も話さない。吉永は少年が罪を犯した場合、保護者自らが弁護士に代わり話を聞ける『付添人制度』を知る。なぜ何も話さないのか。本当に犯人なのか。自分のせいなのか。」
少年犯罪が起きた場合、親は何をしていたんだ、周囲はなぜ気づかなかったんだ、学校はどう責任をとるんだと、考えがちです。少年犯罪ってどこか遠い世界の話? 大事なのはしっかりと寄り添って生きていくことと思います(自分にできる?)。すべての人に読んでほしい本です。 |
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紙の月
(角田光代)
図書館16(206)
14 |
1973年製作の映画”ペーパームーン”ではありません。これは『実際に起きた男を繋ぎ止めておくために起こしたいくつかの横領事件』をモデルにした話ですが、その女たちの”貢ぐ”という行為に著者が違和感を憶えたのが、執筆するきっかけになったそうです。「契約社員・梅澤梨花(41歳)が約一億円を横領。
自分にあまり興味を抱かない会社員の夫と安定した生活を送っていた、正義感の強い平凡な主婦。年下の大学生・光太と出会ったことから、金銭感覚と日常が少しずつ少しずつ歪んでいき、『私には、ほしいものは、みな手に入る』と思いはじめる・・」。TVドラマ化(原田知世)、映画化(宮沢りえ)されています。どちらも観ていませんTVは連続五回のドラマですが2時間の映画では無理とと思います。思ったより重厚な話で同級生の女達の生き方も考えさせられるものがあります。 |
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鍵の掛かった男
(有栖川有栖)
図書館15(205)13
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初めて読んだ有栖川有栖(かおヤンは学生時代から読んでいたそうですが・・)。今回読んだのは20年以上も続いている『火村英生シリーズ』 。著者と同じ名前の小説家と犯罪社会学者・火村英生が活躍する本格的なミステリ。「大阪の小さなホテルで男が死んだ。警察は自殺と断定したが、それを不満に思った女流作家から、ミステリー作家・有栖川有栖と犯罪心理学者・火村英生のもとに真相究明の依頼が舞い込む。まさに”鍵の掛かった”としか言えないほど死んだ男についての手がかりはほとんどなかった
。男は、本当に自殺だったのか、それとも他殺だったのか。『死人に口なし』。死の真相と、彼の人生の謎に迫る・・・」 。500ページを超える長さで、最初話がなかなか進展しない(真相を探るための過程が丁寧に描かれていています)ので少ししんどいですが、段々はまってはきます。 |
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君の膵臓をたべたい
(住野よる)
図書館14(204)12 |
セカチューみたいな青春恋愛ものと思い、気乗りしませんでしたがタイトルに惹かれ読んでみました。そのような部分もありますが、一人の人間の成長物語とも言えます。
『病院で拾った1冊の文庫本。タイトルは"共病文庫"。それはクラスメイトである山内桜良が綴っていた、秘密の日記帳だった。そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくばくもないと書かれていた・・・」
若い人は、物語の流れから感動する部分も多いのではと思います。もっとも、いい歳の私でもラストは涙・涙でした。時にはピュアな話もいいですね。著者のプロフィールは公開されていません、本作がデビュー作で本屋大賞にノもミネート。デビュー作と言っても台詞回しなどとてもよくかけていると思います
『昔の人は、悪いところがあると他の動物のその部分を食べれば病気が治るって信じられていたらしい』 。 |
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ラプラスの魔女
(東野圭吾)
図書館13(203)11 |
『作家デビュー30周年記念作品、空想科学ミステリー!価値観をくつがえされる衝撃』とありましたが、私には物語の奥深さが感じられずに消化不良という感じでした(好みは分かれると思いますが)。話は「若い女性のボディーガードを依頼された元警官、行動を共にするにつれ彼女には不思議な《力》が備わっているのではと、疑いはじめる。同じ頃、遠く離れた2つの温泉地で硫化水素による死亡事故が起きていた。検証に赴いた地球化学の研究者は、双方の現場で若い娘を目撃する」SF的な展開で進んでいきます。 ”ラプラスの悪魔”とは?1700年代の科学者ラプラスは”法則に当てはめるだけで未来は予知出来る”と豪語した。その科学礼賛思想にカトリックは驚異を抱き、ネガティブキャンペーンが構築され、科学至上主義を揶揄して言われるようになったそうです。 |
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ヒクイドリ 警察庁図書館
(古野まほろ)
図書館12(202)10 |
東大法学部卒リヨン大学法学部修士課程などを経て警察庁Ⅰ種警察官として採用、最後は警察大学校主任教授で退官という経歴を持つ著者が書いた本だけあって、ホントの部分もあるのだろうなと思いながら読みました。ただ、最初はルビやカタカナの多さや警察用語満載で取っつきにく戸惑ったが、これがこの人の文章の特徴何だろうなと思い、読み進めるうちにはまってしまいます。「交番連続放火事件が発生、放火の裏には、警察官同士の恋愛が関係していた。犯人を追う県警。タレコミにより、犯人が警察官でスパイマスターの手先だと知ったエリート機関。特命を抱えた警視庁長官直轄の秘密警察、通称・警視庁図書館。三者がそれぞれの思惑で、事件の捜査に乗り出す・・・」
これが映像だったらこんなに謎に満ちた展開には成らないでしょう、活字だと顔が見えないところの面白さがあります。現実にこんな組織があるのでしょうね。”ヒクイドリ”とは『世界一危険な鳥』だそうです。 |
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冬の光
(篠田節子)
図書館11(201)
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「企業戦士として家庭人として恵まれた人生を送ったひとりの男が、四国遍路を終えた帰路、冬の海に消えます。父の足跡を辿り四国にきた娘が見たものとは?
裏切られた家族の苦しみ、男女の深遠、高度成長期の男の矜持と虚無感、そして、四国遍路路のリアルな豊かさ・・・」読むほどに細部に引き込まれると担当編集者のコメントもあります。小池真理子も『作家の怜悧な観察眼が描ききった、万華鏡のような物語』と言っていますが、まさにその通りです。中でも読む人の心を波立たせるのは紘子の生き方(バリケードの中の20代から還暦を超えるまで、平和なことこの上ない40年の間に、世間の風向きは、激しく変わっていった。その中でなぜ紘子は常に逆風に身をさらすような生き方しかできなかったのか・・・)ではないのでしょう。 遍路の『「同行二人』も意味深いものがあります。最後の冬の光の切なさ、人間の一生の切なさが身にしみます。良い本に出会えました。 |
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日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか
(矢部宏治)
図書館10
(200)
8
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『安保村』とは「日米安保推進派」の利益共同体のこと、『原子力村』とまったく同じで財界や官僚、学会や大手マスコミが一体となって、推進派にとって都合のよい情報だけを広め、反対派の意見は弾圧する言論カルテルとして機能しているのです。 ①なぜ、日本の首相は絶対に公約を守れないのか?②なぜ、人類史上最悪の原発事故を起こした日本は、今また再稼働に踏み切ろうとしているのか?③なぜイラクから戦後8年で撤退した米軍が、2014年の今、沖縄で新たな基地を建設し始めているのか?不思議に思いますよね。 秘密を解くカギは、「昭和天皇」「日本国憲法」「国連憲章」の3つです。具体的事例から:沖縄で米軍機はアメリカ人の家の上は危ないから飛ばないけれども、日本人の家の上は平気で低空飛行をする=知ってましたか? アメリカでは法律によりアメリカ人の家の上を低空飛行することは厳重に規制されているのです。しかし日本国民には適用がない(日本国はこれを放置している)=日本人への人権侵害。鳩山政権が9ヶ月で失脚、この裏には国策捜査で小沢一郎を陥れた、それは普天間基地の県外または国外への移設問題だったのです。沖縄の地上基地は18%、上空は100%米軍に支配されているのです。しかし実は、地上も事故等が起きたときには治外法権で日本の警察や関係者は立ち入ることが出来ません(日米地位協定=これに対しては日本の憲法は機能しません。憲法を含む国内法より条約が上位にあるのです)。それは砂川事件の判決(田中耕太郎最高裁長官による『高度な政治問題については憲法判断をしない』)に端を発しています。今でもこの判決が生きていて最終体には最高裁に訴えても敗訴するわけです。次に原発事故、沖縄の米軍ヘリ墜落事故やオスプレイの配備についても『安全性が確保さtれた』として平然と訓練を続けます、それと同じで、こんな大災害が起きてもだれ一人責任を問われた人がいないということ、警察は何故東電への捜査に入らないのでしょう?正当な保証もないままお茶を濁す、『被害者は仮設住宅、加害者にはボーナス』
原発を止められない犯人は原発の再稼働によって利益を得る勢力なのか?福島の事故以来ドイツやイタリアは脱原発を決めたのです。何故、日本国民は最悪の事故を起こした自民党の責任を問わずに翌年の選挙で大勝させてしまったのか?安保条約の下では、日本政府の了解無しに米軍機を使うことが出来るのです、それは第二次世界大戦後のアメリカと日本、昭和天皇との関係それに国連憲章(いまだに日本に対して敵国条項が適用されている)。日本を押さえるために軍備を持たせず(憲法9条2項)、また、アメリカが西太平洋を掌握するため日本を植民地化し、それが70年経つ今でも続いているのです。色々みると憂鬱になりますが、しかし 『首相になった人間が、必ず公約と反対のことをする。全て社会保障にあてますと約束して増税し、大企業減税を行う。お金がもったいないから、子供の被爆に見て見ぬ振りをする。人類史上最悪の原発事故の責任を誰もとらず、何の反省もなく再稼働しようとする。首相の独断で勝手に憲法の解釈を変える。そんな国がこれ以上続いていくはずがありません』
まさにその通りと思いますが、一番悪いのは何の問題意識も持たない私たち国民かもしれません。結びとして『「安保村』の歴史と構造を知り、1945年の時点にもどったつもりで、もう一度周辺諸国との関係改善をやり直すこと。そして米軍基地と憲法九条二項、国連憲章(敵国条項)の問題を、ひとつの問題としてとらえ、同時に解決できるような状況をつくりだすこと。それは過去70年のあいだにドイツが歩んだ道に比べれば、はるかに楽な道となるはずです』
と書いています。今の日本の政治家(それに国民)に出来るでしょうか?
最後にオリバー・ストーン監督の言葉『日本は素晴らしいが、大戦後の70年を見て、みずから本当に何かを成し遂げようとした政治家や首相を私はただの一人も知らない』 と。 |
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新カラマーゾフの兄弟・下(亀山郁夫)
図書館9(199)
7-2 |
上下合わせて1433ページ!『カラマーゾフの兄弟』を読んでいない人でも後半に中学生にあらすじを話す部分があり、結構理解できると思います。”新”が付いていてもドストエフスキー同様に、正面から信仰を問うていることもあり、所々未消化になった部分もありました。1995年という年は阪神大震災とオウムにと激震が走った年なです。バブルがはじけ、アメリカの一極支配が強化され、インターネットが国境を越え始めた時代でもあったのです。混沌とした時代、人間の心に何が・・・、救いを何に求めるのか?神か悪魔か?『自分の悲しみや幸せには神経質になる一方で、他人の悲しみや幸せにはにはまるで無感覚で共感できない人間が多くなりました。そのような人間を人間と呼ぶ資格はありません』 著者が言っています『1995年以降、父はアメリカになったんですよね。アメリカ以外に、父はどこにもいなくなった。現在の中東やEU内で起こっている混乱は、その意味で、巨大な父殺しともいえる』と。 |
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新カラマーゾフの兄弟・上(亀山郁夫)
図書館8(198)7-2 |
著者はロシア文学者の亀山郁夫(前東京外語大学長)。ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』(未完)を、1995年の日本に舞台を置き換えています。登場人物は原作と同じ父と三人の兄弟(+一人)、カラマーゾフ家にあたるのが黒木家(黒き家の兄弟)。カラマーゾフには黒く塗られたと言う意味があるそうです。父殺しの謎を解くというのも同じ。『アメリカの傀儡でしかない日本の父親はもはや殺すに値しないが、世界の厳父たらんとするアメリカに牙をむく者たちこそがアリョーシャの末裔にふさわしのかもしれない』という評がありました。 『インターネットは世界を崩壊に導くでしょう。精神的に。それは人間が知ってはならない世界を知ることが出来るようになるからです。為政者が独裁者としてふるまわざるを得なくなるかも・・・。神は不要になります』
と現代の黙示録!原作本は2010年book(下巻へ続く) |
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桜ほうさら
(宮部みゆき)
図書館7(197)
6 |
2014年1月にNHKでドラマ化されているとは知りませんでした。『ほうさら』とは”いろいろあって大変だ”という意味の”ささらほうさら”からきています。「主人公は、22歳の古橋笙之介。父が賄賂を受け取った疑いをかけられて自刃。兄が蟄居の身となったため、江戸へやって来た笙之介は、真相を探るために、深川の富勘長屋に住み、写本の仕事で生計をたてながら事件の究明にあたる。父の自刃には藩の御家騒動がからんでいた」 人生の切なさ、ほろ苦さ、そして長屋の人々の温かさが心に沁みる物語です。宮部ワールド、こんな話は大好きです。『人が生きるということは見たものを心に止めてゆくことの積み重ねであり、心もそれで育っていく』
『人には、大きな口を叩かず一途に生きる道がある。忠義というものは声高に語るだけのものではない、権勢をつかむことだけが、人の誉ではない』 |
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モナドの領域
(筒井康隆)
図書館6(196)
5 |
『時をかける少女』の筒井康隆の本です。「河川敷で発見された片腕はバラバラ事件の発端と思われた。美貌の警部、不穏なベーカリー、老教授の奇矯な振舞い、錯綜する捜査…」という展開。宗教と神、人間を結ぶ繋がりとは?それにキリスト教国やイスラム教国と違う日本の宗教観とのギャップなど、何ともわかりやすいのかわかりにくいのか・・・不思議な本です。『世界中の人間が自分たちと同じものに祈ることを願って戦争をする。自分たちと同じ神を信じるのでなければ、お前達もお前達の神も死んでしまえと殺しあいをする。ところがこの国は今はほとんど無宗教の国だからそんなことはない。もともと八百万の神のいる多神教の国だし、仏教もあればキリスト教もありオウム真理教まであったとうほぼ無宗教に等しい・・』
出だしはミステリーのようですがSFなのです。(モナドとは?) |
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望郷
(湊かなえ)
図書館5(195)
4 |
日本推理作家協会賞(短編部門)受賞作『海の星』を含む六篇が収録されています。「架空の島白綱島(著者は因島出身) が舞台、ここで生まれた人たちの過去と今を描く。島での出来事や思いは暗く、辛いものでそれぞれの心に影を落としていたけれど、大人になった今、隠されていた真相を知った時、救われたり家族の存在や大切な事に気づくことが出来る」と言った話、どれも胸にしみます。北村薫が”ほとんど名人の技である”と言っています。 『十月十日待ちわびて産まれた赤ん坊に、願いを込めて名前をつけ、夫婦、家族みんなで喜び合い、希望を託し広い世界に送り出す。・・・人間もそれぞれの人生を歩む。海が荒れることもあるように、人生にも嵐が訪れることはある。送り出した者は助け船を出せることもあるが、全ての航路に寄り添うことは出来ない』
感動の書でした! |
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サラバ・下
図書館20(210)
3-2 |
3ヶ月おいて下巻を読むことになりました。さすが、直木賞受賞作、上巻では今一感情移入できませんでしたが下巻になると上巻のつけが回ってきたみたいに一気に読ませます。『自分のことは自分で決める。他人に決めさせない。信じるものを見つけ、幹を作る』 ハチャメチャだった姉と母、人には色んな生き方があるのです。「大学生になった歩は自我を持ち自由に暮らしていくが、どんどん周りの環境や自分の見た目も変わって、どん底へ。 そこから・・・」
『”サラバ!”とは、主人公が、それまで歩んできた自らの人生に決別し、新しい自己を見い出すための言葉なのかもしれない。昨日までの自分に別れを告げ、明日からの新しい自分を生きていく』 とありましたがまさにその通りだと思います。歩を通して生き方を教えてもらった気がします。 |
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サラバ・上
(西加奈子)
図書館4(194)
3-1
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作家生活10周年記念作品。「1977年5月主人公の歩は父親の赴任先のイランで生まれイラン革命のあと、大阪に住み小学生になり、又エジプトへ向かう。母親らしいとは言えない母親と家族思いの父親。奇怪な行動で周囲をかき乱す姉を反面教師に目立つ事を嫌い一歩引いた立場で空気の様に自己主張はしない、そして高校生になった」
30年余の人生を描いた大河小説だそうですが上巻は高校生までです。エジプトには『IBM』と言う言葉がある”I”はインシャアッラー(神の思し召しのままに)”M”はブラグ(明日やる)、”M”はマレーシ(気にするな)エジプトをよく表しています。だから世界一ビジネスがしにくい国?一方、日本はスーパで『小さく切られたネギのパック』レトルトに書かれた『ここからお開けください』
このままでは日本人の手は退化し、脳みそは小さくなるのでは・・・。(下巻へ続く) |
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誘爆
(堂場瞬一)
図書館3(193)
2 |
この著者の本は2冊目でした。前回の『暗転』とは違い刑事ものでシリーズ3作目です(前の2作は読んでいません)。新米刑事を主人公にしたもので、その成長をみるのも面白いです
「丸の内のオフィス街で爆破事件が発生。現場の物流企業で事情聴取を行った一之瀬は、企業脅迫事件と直感する。昇進前の功名心から事件担当を名乗り出ると、教育係の藤島からは一人でやれ、と突き放されてしまった。管内で新たに殺人事件も起き…」
さあ、新米刑事どうする?先輩刑事の藤島がなかなか良いです、どんな職場でもいい上司や先輩に恵まれるかで、その後の成長が変わりますね。もちろん、本人の考えや態度が一番ですけど。警察官ものは好きでいろんな作家のものを読んでいますが、これはひと味違った面白さがあります。 |
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運命の花びら・下
(森村誠一)
図書館2(192)
1-2
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忠臣蔵に引き裂かれた愛が阪神淡路大震災、オウム真理教による社会攻撃そしてアメリカ同時多発テロ9.11~東日本大震災に至る300余年に渡る運命の愛が結実します。上下巻、764ページと長いです、しかも一気に読んで登場人物を頭の中にに入れておかないと下巻でわかりにくくなります(相関図が欲しい)。
よくもまぁ、300年にわたる時代の大きな事件を背景に描いたものです、しかも一つ一つの事件が丁寧に扱われています。また、作者の人生が投影されているとも言われています。生まれ育った埼玉県熊谷市での理不尽な空襲の記憶、学生時代から馴染んだ登山の思い出、サラリーマンの悲哀を痛感したホテルなど、作家デビューまでの経験が生きています。中でも、穂高など山を舞台に繰り広げられる出合いは素敵です。 |
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運命の花びら・上
(森村誠一)
図書館1(191)
1-1 |
『森村誠一・作家生活50周年記念作品』となっています。”今もっとも求められているのはこの作品に代表されるような日本人の良心が噴出する物語である”と内田康夫が言っています。赤穂浪士討ち入り事件から新撰組、二二六事件、ミッドウェー海戦(特攻隊)、安保闘争、阪神淡路大震災、オウム真理教事件と時代の節目に、引き裂かれた恋人の末裔たちが幾度も巡り会う姿を描いた大河ロマンです。出会いと別れを繰り返す恋人たち
「赤穂浪士・前原伊助は、吉良家の奥女中・千尋と許されざる恋に落ちてしまうが、吉良邸への討ち入りは予定通り決行される。討ち入りの夜、再会した2人は声なき声を交わして別れた。”いつの日か、自分たちの末裔が後の世に出会って、実らざる恋を達成するだろう”と・・・」
時代時代に生きた若者たちの生き様が胸を打ちます。(下巻へ続く) |