cinema(2017)

ノクターナル・アニマルズ

44(597)
ノクターナル・アニマルズとは『夜の獣(けもの)』と言う意味だそうです。“タランティーノの姿をしたヒッチコック”と評されていますが、熊本の映画評論家園村昌弘さんも『まるでヒッチコックを見ているようだ』と語っていた。「アートディーラーとして成功を収めているものの、夫との関係がうまくいかないスーザン。ある日、そんな彼女のもとに、元夫のエドワードから謎めいた小説の原稿が送られてくる・・・」 オープニングには驚かされました。監督のトム・フォードはファッションデザイナーなのにこんな映画も撮れます、どんなセンスをしているのでしょうか?ジェイク・ギレンホールが小説の中と現実の元夫を演じているところがミソなんでしょう。
密偵

43(596)
1920年代、日本統治時代の朝鮮半島。独立運動“義烈団”と彼らを追う日本警察との攻防を描いたサスペンスアクション。「主人公イ・ジョンチュルは朝鮮人でありながら日本の警察に所属、国の独立など夢だと諦め、権力側についた売国奴。彼は義烈団のリーダーであるキム・ウジンに接近していく」 二重スパイとして実在していた人物だそうです。上海から京城(現・ソウル)に向かう列車のシーンは最高でした(これだけでも見る価値があり)。よその国に侵略すると言うことが、いかに悲劇を生んでいるかよく分かります。面白かった~ぁ!最初から最後まで緊迫感が切れず、ドキドキしながら観ました。
女神の見えざる手

42(595)
ラストは背中がぞくぞくするくらいに興奮しました。政治を影で動かす戦略のプロ(ロビイスト)の知られざる実態に迫った社会派サスペンス。今の日本にも政界・経済界に巣くうネズミを退治してくれるミス・スローンがいないかな?「真っ赤なルージュで一流ブランドとハイヒールに身を包み、大手ロビー会社で花形ロビイストとして辣腕をふるうスローンが、銃の所持を支持する仕事を断り、銃規制派の小さな会社に移籍する」 ここから壮絶な闘いが始まることに。勝つためには手段を選ばない彼女が見物、すべてが計算されていたなんて・・・。スカッとしたい人はぜひ!
婚約者の友人

41(594)
ヴェネツィア国際映画祭(パウラ・ベーアがマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞)、セザール賞11部門ノミネート等、評価の高い映画がフランスからやって来ました。第1次世界大戦後のドイツを舞台にミステリーと恋愛ドラマが交差。フランソワ・オゾン監督がモノクロとカラーを織り交ぜた美しい映像が見事です。「戦死した婚約者の墓に花を添える男!婚約者の友人と名乗る彼の正体は?・・・」 この映画を観て強く感じたことは『相手を傷つけたくなくて、嘘をついてしまうこともある。嘘をつくということじゃなくても、真実を告げずに黙するということ』 すごく切ないです。モノクロの世界に哀愁が漂う素晴らしい映画です。
ブレードランナー 2049

40
(593)
1982年公開の前作(この時は2019年が舞台)から30年後の2049年の話です。しっかりと前作の続きになっています。今から観る人は前作を復習しておいた方がいいかもしれません、感想としては前作の方が刺激が強く面白かったような気がします。「ライアン・ゴズリング扮する“ブレードランナ ー”(捜査官)は、ある重大な秘密に辿り着き、その真相を知るためハリソン・フォード演じるかつてのブレードランナー、デッカードの行方を追うことに」 間違いなく続編が出るでしょう、レプリカント(人造人間)製造会社の社長との決着も着いていないし、レプリカントが人類に対して反乱を起こそうとしているところで終わるのです。
戦争のはらわた
(デジタルリマスター版)
39
(592)
1977年に制作され、今回公開40周年を記念したデジタルリマスター版です。監督はバイオレンス映画の巨匠とも言われたサム・ペキンパー、代表作に“ワイルドバンチ”や“わらの犬”などがある。監督唯一の戦争映画、当時スローモーション撮影が衝撃を与えました(以降、最近の映画でも銃撃シーンなので使われている)。出演はジェームズ・コバーン、マクシミリアン・シェル、センタ・バーガーなど、とても懐かしいです。「ドイツの敗色が見え始めた1943年、ロシア戦線。ドイツ軍の一中隊を舞台に、人間味ある伍長と冷徹な中隊長との確執、最高の名誉とされた“鉄十字章”をめぐる愚かな人間の闘い・・・」 。ドイツ軍の兵隊が主人公の第二次大戦映画は珍しいですが、主人公はナチも、ヒトラーも嫌っている。世界支配をもくろんだナチスによる戦争の非生産的なばかばかしさを描いています。
ドリーム

38
(591)

人種差別が横行していた1960年代初頭のアメリカで、初の有人宇宙飛行計画を陰で支えたNASAの黒人女性スタッフの知られざる功績を描く伝記ドラマです。原題のHidden Figuresは“表に出ない人”とでも言うのでしょうか?「白人男性ばかりのオフィス環境、そこで働く彼女たちは黒人であるというだけで理不尽な境遇に立たされるが、それでもひたむきに夢を追い続け、やがてNASAの歴史的な偉業に携わることとなる・・・」 今では考えられないびっくりするような差別(トイレも別、ミーティング出席も許されない、バスも後ろの席) の中で自分を貫き通していく。嫌悪感よりも希望がみなぎる内容になっています。
猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)
37
(590)
“猿の惑星”新シリーズ三作目です。人類とシーザーたち猿(エイプ)の最終決戦が描かれています。「猿と人類の全面戦争が始まってから2年が経ち、シーザーが率いる猿の群れは、森の奥深くのとりでに姿を隠していた。ある日、奇襲によってシーザーの妻と息子の命が奪われる。シーザーは復讐する旅へと出ていく・・・」 猿と人間の闘い、それに人間同士の闘い、人間は愚かです。だから地球上から消えていく運命にあるのです。“猿の惑星”シリーズは9作品(旧シリーズ5本、リメイク板1本、新シリーズ3本)です。今回、ラストは1968年の最初の“猿の惑星”のストーリーに繋がるように作られているようです。
アウトレイジ
最終章


36
(589)
北野武監督・脚本・主演で裏社会に生きる男たちの抗争を壮絶に描いたバイオレンス映画「アウトレイジ」シリーズの最終作(前作は観ていません)。 今回は哀愁漂うラストに・・・。面白かった~、『花菱会(日本最大の暴力団)が愚かな策によって自滅していくという流れは、世襲議員が多い国会や、破綻する年金制度、腐敗した官僚機構、醜い政治的駆け引きなどを抱え込んでいる社会の姿を思い浮かべずにはおれないはずである』との評がありました。銃撃シーンなども見応えがあります。西田敏行の存在感はすごい!ヴェネツィア国際映画祭のクロージング作品にもなっているそうです。
エル ELLE

35
(588)
エロティックサスペンス!ヒロインを演じるイザベル・ユペールは64歳、とても思えません。好みの分かれる映画だと思いますが、私は結構好きでした。怖いくらいにすごい女とダメな男たち・・・「ミシェルは、ある日、自宅で覆面男に襲われる。何事もなかったように普通通りの生活を送ろうとするが、襲われたときの記憶がフラッシュバックするようになっていく。犯人が身近にいることに気づいた彼女は一人でその正体を突き止めようとするが、自分自身に潜んでいた欲望や衝動に突き動かされて、思わぬ行動に出る・・・」。何とマァ、怖いですね!因みにタイトル『ELLE』の意味は、フランス語で“彼女”を意味します。
ダンケルク

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(587)
クリストファー・ノーラン監督・脚本・製作による戦争映画です。「ドイツ軍のフランス侵攻の1940年5月24日から6月4日に起きた約33万5千のダンケルクからの脱出劇(ダイナモ作戦)」を描いています。いわゆる戦争映画は賛美派、戦争反対派を描いているのに別れるが、そのどちらでもないのを目指したのでしょう。戦闘シーンでは悲惨な戦争体験、民間人の救助によるシーンでは希望を描くと言った今までと違った戦争映画になっています。ヤマ場というか緊張度合いが薄いので、どんな見方をするかによって賛否別れるでしょう。私には、一つの奇跡として、『諦めない気持ち』を教えてくれたいい映画でした。
ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦
33
原題は『エンスラポイド』(ある暗殺の作戦のコードネーム)です。第2次世界大戦下の史実を基に、ナチス高官ラインハルト・ハイドリヒをチェコ人のレジスタンスが暗殺する話しです。後半銃撃戦もすごいですがハラハラドキドキの連続です(ラストシーンが無声になることにより哀しさが伝わってきます)。この映画が描きたかったのは、母国のために覚悟を決めた人々の思いだったのでしょう。ナチの報復は凄まじく、ハイドリヒ1人の報復で5000人が犠牲になったといいます。悲劇に胸が痛くなりますがナチス敗北後、戦後チェコスロバキアの復活へとつながるのです。邦題は少し生ぬるい気がします。
少女ファニーと運命の旅

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『1943年、ナチスドイツの脅威はヨーロッパに広がり、フランスもその支配下に。13歳のユダヤ人の少女ファニーは幼い二人の妹と共に、協力者たちが運営する児童施設に匿われていた.。しかし、密告者によって存在が暴かれ、ドイツ兵の厳しい取り締まりをくぐり抜け、子どもたち9人でスイスを目指すことに・・・』 実話から生まれたお話しです。戦争、人種差別と、段々人間の心が病んでいきます。そんな中、善意ある大人に助けられながら“諦めない”ファニーの行動に胸を打たれます。最後まで気が抜けず、下手なミステリーよりはるかに緊張を強いられます。感動の物語です。
残像


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『灰とダイヤモンド』『鉄の男』などポーランドの巨匠、アンジェイ・ワイダ監督の遺作です(昨年90才で亡くなった)。アートシアターに通っていた青春時代、その時に強烈な印象が残った『灰とダイヤモンド』 。今回もレジスタンスのシンボルとされる画家の実話に基づいたドラマです「1945年、ポーランド。前衛画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキは、全体主義に従うことを拒んだことから、大学で教授職の退任に追い込まれ、芸術家としての名声も、尊厳も踏みにじられていく・・・、けれども彼は芸術に希望を失うことはなかった」。レジスタンスを貫いた監督の遺言とも言える作品です。不確かな今の時代に観てもらいたいです。
幼な子われらに生まれ

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『映画評論家がこぞって絶賛している日本映画がある』と聞く前に、原作が大好きな重松清だから絶対に観に行くと決めていました。21年前に書かれているのに現代に通じる“家族”を描いています。「再婚した中年サラリーマンの信は、2人目の妻・奈苗とその子供たちと、平凡でも幸せな家庭を築こうと努力していた。だが、奈苗の妊娠をきっかけに実の父親に会いたいと言いだした長女が反抗的な態度を取り始め、父親としての信の存在を否定する・・・」 主人公に浅野忠信、その妻を田中麗奈が演じるほか、宮藤官九郎、寺島しのぶらが共演、家族とは?重松清だから子供がしっかりと鍵になっています。やっぱりいいです!
ザ・マミー 呪われた砂漠の王女

29
“Myummy”とは“ミイラと”いう意味です。となればこの映画はホラー?アクション? 調べてみると原作は、「ハムナプトラ」でもリブートされた1932年のホラー映画『ミイラ再生』だそうです。前半と後半は少し趣が違いますが、トム・クルーズが相変わらず格好良く暴れますので良しとしましょう。「古代エジプトの王女アマネットは次期女王になる約束を裏切られた怒りから闇に堕ち、生きたまま石棺に封印されてしまう。それから2000年後、中東の戦闘地帯で石棺が発見される・・・」ところから始まります。王女アマネットおどろおどろしさは見物です。ラッセル・クロウがジキル博士役をやっています。『ダーク・ユニバース』の第1作目です。
ヒトラーへの285枚の葉書

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フランス・ドイツ・イギリスの合作映画。 ペンと葉書を武器にナチス政権に抵抗した夫婦の実話を基に、ドイツ人作家ハンス・ファラダがゲシュタポの文書記録から終戦直後に書き上げた遺作の小説“ベルリンに一人死す”を映画化したものです。「1940年、ベルリンで暮らす労働者階級の夫婦のもとに、最愛の息子が戦死したとの報せが届く。夫婦で悲しみに暮れていたある日、夫はヒトラーに対する批判を綴ったポストカードを、密かに街中に置き、ささやかな抵抗を示していく・・・」 時の政権に対する命をかけた行動が胸を打ちます。最初から最後まで息の抜けない緊迫感がすごい。エマ・トンプソンがGoodです。
怪物はささやく

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英文学の最高傑作をアメリカ・スペインの合作で映画化したもので、ゴヤ賞を最多9部門受賞しています。怪物と少年の“魂の契約”を巡るストーリーです 「母親が癌におかされた13歳の少年・コナーは、孤独な日々を送っていた。そんな折、真夜中を過ぎると“真実を語れ”と木の姿をした怪物(声:リーアム・ニーソン)が現れるようになる・・・」 善悪では割り切れない人間の本質、真実の意外な姿を悟らせる、愛と許しと真実の物語。エンディングで母から息子への愛情に包まれた意外な真実が、温かい余韻を残してくれます。シガニー・ウィーバーが何とおばあさん役です(調べたら1949年生まれでした、納得!)
赤毛のアン

26
2000年に公開された『アンの結婚』から17年ぶりの映画化です。もちろん原作は1908年(明治41年)モンゴメリーによって発表されたものです。そして、原作者の孫娘ケイト・マクドナルド・バトラーが製作総指揮しています。今回母国カナダで実写映画化、なんといってもプリンス・エドワード島の季節の移り変わりが美しい映像によって画面一杯にひろがっています。話しは今更紹介する必要はないと思います。アンがグリン・ゲイブルスの一員となっていくまでを1時間半で描いていますが少し短すぎて物足りない気がします。マリラ役のサラ・ボッツフォードがいい、もちろんマーティン・シーンもいい味を出しています。
セールスマン

25
第69回カンヌ国際映画祭で男優賞と脚本賞を受賞、第89回アカデミー賞で外国語映画賞を受賞したイランの映画です。この作品は、トランプの大統領令でアカデミー賞に関係者が出席できなくなるという不遇を受けた(主演女優のタラネ・アリシュスティはアカデミー賞をボイコット)映画です。話しは「“セールスマンの死”の舞台の主役を演じる役者夫婦エマッドとラナ。ある晩、エマッドが帰宅すると、妻が何者かにレイプされている。しかし、妻は全く真相について語ってくれず、エマッドは自力で犯人捜しを始めるが…」 男尊女卑の世界、また人を信じることの大切さを教えてくれます。アーサー・ミラーの『セールスマンの死』との関連は?
ハクソー・リッジ

24
“ハクソー・リッジ”とは沖縄戦で激戦地となった断崖絶壁のことです。この映画はアカデミー賞で編集賞と録音賞の2部門を受賞(作品賞などにもノミネート)していますが作品賞に値するほどいい映画です。実話が元になっていて、衛生兵として一晩で75名の日米の負傷兵を救い、武器を持たない兵士としてアメリカ史上初の名誉勲章を受けたデズモンド・ドスの半生をメル・ギブソンが映画化したものです。戦争の愚かさ、悲惨さが戦闘シーンの中にイヤと言うほど感じられます。戦争という名の人殺し・・・。憲法改正をして戦争をする国を作ろうとしている政治家たちにぜひ見てもらいたいです、もちろん世界の指導者たちにも・・・。
ジョン・ウィック チャプター2

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相変わらずのガンaction、観ていてワクワクします。話しは前作(2014年公開)の復讐劇の数日後から始まる、折角引退したのに「平穏な生活を送りたいジョンは、イタリアン・マフィアのサンティーノからの殺しの依頼を断るが、それにより自宅を爆破されてしまう。ジョンは復讐を開始するが・・・」 よくもまぁ、ジャンジャン人が殺されます。懐かしの俳優フランコ・ネロ(1941年生まれ)がコンチネンタルローマのオーナー役で出ています、『俗荒野の用心棒』を思い出します。また、“マトリックスシリーズ”のローレンス・フィッシュバーンも出ていて楽しめます。ラストから見るとまだ続くのでしょうね、この後ジョンはどうなるか心配です。
マンチェスター・バイ・ザ・シー

22
ケイシー・アフレックが家族の悲劇をきっかけに心を閉ざした主人公を演じ、アカデミー主演男優賞を受賞した映画です、この映画は他に脚本賞も受賞しています。話しは「ボストンでアパートの便利屋として働くリーは、突然の兄の死をきっかけに故郷マンチェスターバイ・ザ・シーに戻ってきた。兄の遺言で16歳の甥パトリックの後見人となったリーは、二度と戻ることはないと思っていたこの町で、過去の悲劇と向き合うことになる」 胸にじーんとしみ、心を引きつけられる映画です。また、音楽と風景描写が素晴らしい。なお、マット・デイモンがプロデューサーを務めています。
家族はつらいよ2

21
前作は2016年3月、今回は喜劇度がアップしています激戦地。「前作から数年後、新たな騒動が・・・。周造はマイカーでの外出をささやかな楽しみにしていたが、車に凹み傷が目立ち始めたことから高齢者の危険運転を心配した家族は、周造から運転免許を返上させようと画策する。しかし、頑固オヤジの周造を説得するイヤな役回りを互いになすりつけ合う家族たち・・・」 日常の中に誰もが納得するものを、うま~く笑いの中に描いています。高齢者問題もちょっぴり感じながら寅さんの世界をしばし味わってきました。かなり笑います!山田洋次監督健在です。
パトリオット・デイ

20
2016年のアメリカ映画。 2013年に発生したボストンマラソン爆弾テロ事件の事件発生からわずか102時間で犯人逮捕に至った顛末を描いています。「13年4月15日、 “愛国者の日(パトリオット・デイ)”に毎年開催されるボストンマラソン。50万人の観衆で会場が埋め尽くされる中、大規模な爆発が発生。ボストン警察は事態を把握できないまま、必死の救護活動を行なう。そんな中、現場に到着したFBI捜査官は、事件をテロと断定・・・」 。テロで亡くなった人たちや、足を失った人たち、走る様子など、テロの恐ろしさがよく分かる。今も世界でこのようなことが起きているかと思うと胸が痛みます。愛と勇気をもらう映画です。



19
河瀬直美監督の切ないラブストーリー、2017年カンヌ国際映画祭にノミネート!一人の女性が、視力を失いゆく天才カメラマンとの出会いを通して変化していく様を描いています。「視覚障がい者のための“映画の音声ガイド”の制作に従事している美佐子は、弱視のカメラマン・雅哉と出会う。無愛想な態度に反感を覚える美佐子だったが、彼が撮影した夕日の写真に感動。視力を失っていく彼を見つめるうち美佐子の中の何かが変わりはじめる」 この監督の特徴ですが、話がたんたんと流れていく中に人の心変化がしっかりと読み取れます。大切なものを失った者たちが最後に人生の光を見いだしていきます。
追憶


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『鉄道員(ぽっぽや)』『あ・うん』などを手掛けた監督・降旗康男と撮影・木村大作(『剱岳・点の記)が久し振りタッグを組み、岡田准一を主演に迎えたヒューマンサスペンス!『あなたへ』以来の降旗監督でしたが、やはりこの監督のものは見応えがあります。「 幼少期を共に過ごした少年たち3人が一つの殺人事件をきっかけに、刑事、被害者、容疑者という形で25年ぶりに再会。それぞれが家庭を持ち、歩んできた人生が再び交錯し、封印したはずの忌まわしい過去と対峙することになる・・・」 富山、能登半島を舞台に木村大作のカメラも素晴らしく、どこか懐かしさを感じる素晴らしい日本映画です。
午後8時の訪問者

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ベルギー出身の巨匠・ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟が監督した、ヒューマン・サスペンス。「ある日の夜、診療受付時間を過ぎた診療所のドアベルが鳴るが、若き女医のジェニーはドアを開けなかった。しかし翌日、身元不明の少女の遺体が診療所近くで見つかり、その少女が助けを求める姿が診療所の監視カメラに収められていた・・・」 ドアを開ければ彼女の命を救えたのではないかという贖罪の意識にとらわれたジェニーは必死に少女の身元を探索する。関わった人々の人生にも影響を与えることに。少年犯罪、失業、育児放棄、貧困、差別など深刻な社会問題を描いてきた監督ならではの傑作です!
ワイルド・スピード ICE BREAK

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シリーズ第8作目、何でも今回ははシリーズ最終章となる三部作の一作目とか・・・。シリーズ全作見ているわけではありませんが本作が一番面白かったような気がします。この映画は続編毎に評価が上がっています。何と言っても車好きには見逃せません。前作で敵役だったジェイソン・ステイサムがどんな役割で出てくるでしょう?やっぱ彼は格好いい!お話しは「史上最悪の敵との激しい戦いを終え、固い絆で結ばれた"ファミリー"は束の間の日常を味わっていた。しかし、ドミニクのまさかの裏切りにより、ファミリーは崩壊の危機に直面・・・」 荒唐無稽なシーンの数々を大いに楽しみました。
美女と野獣

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「魔女に呪いをかけられ、醜い野獣の姿に変えられてしまったひとりの王子。魔女が残していった一輪のバラの花びらがすべて散るまでに”真実の愛”を見つけなければ、永遠に人間に戻れなくなってしまう。希望をなくし失意の日々を送っていた野獣と城の住人たちの前に、美しい町娘ベルが現れる・・・」 アニメでおなじみの話を実写化、懐かしい香りのする映画に仕上がっています。『ハリーポッター』のエマ・ワトソンが美しく成長しています(王子役は「ダウントン・アビー」のダン・スティーブンス)。最後に素顔を現すヴォイスアクターたちの顔ぶれの凄さにもびっくり!肩の凝らない映画です。
シャボン玉

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2008年にbookで紹介した好きな小説の映画化です。話しは「親の愛を知らずに育った若者が、誤って人を刺し逃亡中に助けた老婆の家に居座るようになり、彼女をはじめ村の人々とふれ合ううちに生きる意味を見いだしていく」という原作を忠実になぞっています。何と言っても市原悦子がいい、それと林遣都の表情が少しずつ変わっていくのが見物です。また、椎葉村を始め宮崎の田園風景が心を和ませてくれます。『景色とか料理とか空気感とか日本の素晴らしさが詰まった作品』とのレビューがありました。bookのコーナーと併せてお読みください。
ジャッキー ファーストレディ 最後の使命
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『レオン』の少女役でデビュー、『ブラック・スワン』でアカデミー賞主演女優賞を獲得したナタリー・ポートマンがジャクリーン・ケネディを演じています。ケネディ暗殺から葬儀までの緊迫した4日間を描いたもので「目の前で夫を暗殺されたジャッキーは、怒りと衝撃に震えいていたが、悲しんでいる時間はなかった。エアフォースワンの機中で大統領に就任した副大統領を目の当たりにして、ケネディの名前と功績が過去のものになりつつあることに気付き、最後の使命として身を投じていく」 歴史の裏話としてとても面白いです。ナタリーの演技とメーキャップが素晴らしい!
キングコング:髑髏島の巨神

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キングコングは1933年に誕生しています、ゴジラは1954年ですからコングの方が先輩なのです。その後何回も映画化されていますが、今回の最新作は映画技術の発達を実感させられます。「島に潜入した調査隊が正体不明の巨大生物と遭遇し、壮絶な死闘を繰り広げる・・・」 キングコングを神話上の謎の島に君臨する巨大な神として描いているのはもちろんです。それにあらゆる巨大生物が登場、息つく暇もありません。バトルシーンや獣や怪物の気持ち悪さに少し参った(4DXは無理)。時代(様子)は変わってもコングの心根は変わりません、嬉しくもありますがやはり切ないですね!
アイ・イン・ザ・スカイ

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世界一安全な戦場とは? 『戦地から遠く離れた会議室でドローンが映し出す映像を見ながら戦争に加担する人々の葛藤を描き、現代の戦争の闇を浮き彫りにした軍事サスペンス』 全米のメディアが大絶賛とあったので観ましたが衝撃を受けました!テロリストに殺されるかもしれない多くの人を救うか、目の前にいる一人の少女を救うか・・・。今、世界中で起こっている戦争は、遠く離れた会議室で行われているのです。多くの命のためには犠牲はやむを得ないと考える軍人、法律論を振りかざす役人、言い訳を考える政治家、それぞれの思惑の中で・・、正義とモラルを問う強烈なラストへ。
The NET 網に囚われた男

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『事故で北朝鮮と韓国の国境を越えたために理不尽な運命にさらされる漁師の姿を通し、弱者が犠牲となる現代社会の闇をあぶり出した社会派ヒューマンドラマ』 とあれば絶対に観たくなります。監督は『嘆きのピエタ』でヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞した鬼才キム・ギドクです。鮮半島を舞台に、スパイ容疑を掛けられた男の翻弄される姿・・・。南北分断の悲劇が生んだ民族の深い悲しみ、思わず涙します。脱北させたい南側の意向や捜査官の北に対する(個人的)恨み、それに北の腐った国家主義、いつも被害者は普通に生きようとする人々なのです。秀作です!
ラ・ラ・ランド

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アカデミー賞で監督賞、エマ・ストーンの主演女優賞など6部門を受賞しました。見終わって映画館を出るときステップを踏みたくります、この感じは1961年の映画 『West Side Story』 を思い出しました(高校生の時観た)、ジョージ・チャキリス、ナタリー・ウッドが素敵だったのです。そうです、この映画は「売れない女優とジャズピアニストの恋を、往年の名作ミュージカル映画を彷彿させるロマンチックな歌とダンスで描いている」のです。ラストが何とも切ない・・・。『ラ・ラ・ランド』とは”ロサンゼルス”と”現実から遊離した精神状態”という意味があるそうですが、このことからも何となく話しが見えてきます。音楽とダンス、すごいです!
アイヒマンを追え!

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田原総一郎が『ドイツは敗戦後、ナチの犯罪を直ちに認め、深く反省したのか。実は、そうではなかったのだ。それには、長い時間が必要だった』と語っています。第2次世界大戦後、海外へと逃亡したナチスの戦犯アドルフ・アイヒマンの捕獲作戦を実現(1960年拘束)へと導いたドイツ人の検事長フリッツ・バウアーがいかにしてアイヒマンを発見し、追い詰めていったのかを描いています。正義を貫こうとするバウアーを妨害するのは、当時、国家の要職に紛れ込んでいたナチスの残党たち・・・。スパイ&歴史実録物が大好きな人は是非観てください、きっと、満足します。我が国はどうでしょう?イツ映画賞六部門受賞!
ドクター・ストレンジ

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80年近い歴史をもつマーベル・コミック、そのマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)に連なる一作です。シャーロックなどでおなじみのベネディクト・カンバーバッチがストレンジを演じます。映画酔いするかもしれないので2Dで観たたのですが、とにかく映像がすごい、『インセプション』の何倍もの町並みのゆがみです。でも、ストーリー的には今一でこの手の映画はこうだろうなと思いました。観て、ウヮーすごかった!で終わります。「事故で両手が思うように動かせなくなった天才外科医が、腕力やテクノロジーに依存しない魔術師になっていく」というお話し。頭をスカッとさせたいかはどうぞ!
沈黙 サイレンス

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今から約50年前に原作を読んだのに、今でも鮮明に憶えています。これがマーティン・スコセッシ監督により(28年がかりで)映画化されました。「人格者であるはずなのに裏切り者の烙印を押された師匠を慕い、情熱に突き動かされてやってきたのに、信者たちの苦境に一筋の救いの光も見出せない神父。キリスト教弾圧の極東の島国で、本当に彼ら自身が命を賭す意味はあるのか?」 何故神はこんなにも苦しんでいる人を救わないのか?と言っても宗教論を語る難解な映画ではありません。あまりにも厳しい現実を前に聖職者、人間はどう生きるべきかを問いかけた人間ドラマです。今の時代にこそ見てもらいたい!
MERU/ メルー

5
難攻不落の「世界一の壁」と呼ばれるヒマラヤ・メルー峰シャークスフィン登頂の模様を捉えたドキュメンタリー。世界有数のトップクライマーであり山岳カメラマンのジミー・チェンが監督、撮影しています。北インド高度6500mにそびえるこの山は、連続する障害壁などから多くのクライマーにとって悪夢の山とされていた。これに挑み続ける3人のクライマー、でも単なる山岳映画ではありません。過去や葛藤を乗り越え、過酷な大自然に向かう姿が、人間の絶えなき挑戦心を呼び起こしてくれます。また、家族や友人たちのメッセージからもうかがえる、彼らの不屈の精神力。生きる勇気をもらいます!
この世界の片隅に

4
第2次世界大戦下の広島・呉を舞台に、大切なものを失いながらも前向きに生きようとするヒロインと、彼女を取り巻く人々の日常を描いています。原作は『夕凪の街 桜の国」などで知られる、こうの史代のコミックです。「18歳のすずさんに、突然縁談がもちあがる。良いも悪いも決められないまま話は進み、1944(昭和19)年2月、すずさんは呉へとお嫁にやって来る・・・。見知らぬ土地で、海軍勤務の文官・北條周作の妻となったすずさんの日々が始まった」 "この映画が見たい"と言う声が生んだ、100年先に伝えたい珠玉のアニメーションに仕上がっています。是非ご覧ください!
ガール・オン・ザ・トレイン
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ポーラ・ホーキンズの小説を基にしたミステリー。通勤電車の窓から人妻の不倫現場を目撃したのを機に、殺人事件に巻き込まれる女性の姿を追う』 という心理サスペンス映画です。女の強さを感じた衝撃の結末です。『ボーダーライン』でFBI捜査官をしたエミリー・ブラントがアル中の離婚歴のあるさえないヒロインを演じていますが、これが謎を解く鍵になり、話しを面白くさせます。それぞれ秘密を抱えたアラサー女性3人の独白で物語が進行し、恋愛、結婚、出産に不倫やDVが絡んでくるという結構ドロドロの内容ですが、よくまとまった映画になっています。
手紙は憶えている
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クリストファー・プラマー(「サウンド・オブ・ミュージック」トラップ大佐役 88歳)が家族を殺したナチスへの復讐の旅に出る男を演じたサスペンス映画。「最愛の妻の死も覚えていられないほど、もの忘れがひどくなった90歳のゼブ。ある日、ゼブは友人のマックスから1通の手紙を託される。2人はナチスの兵士に大切な家族を殺された、アウシュビッツ収容所の生存者だった。手紙にはナチスの兵士に関する情報が記されていた」 ここから復讐の旅が始まるのですが、ラストは大どんでん返しの凄い映画でした (ラストは絶対にバラしてはなりません)。戦争の傷跡は何年経とうが消えないということでしょう。
海賊と呼ばれた男
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2013年bookで紹介したのの映画化です。出光興産創業者の出光佐三をモデルにしたといわれる主人公・国岡鐵造を岡田が演じ、吉岡秀隆、染谷将太、綾瀬はるか、堤真一ら豪華キャストが共演しています。長編小説を2時間半にまとめるので少し端折るところがあっても仕方ありませんが、よくまとまっていると思います。国岡はどんな困難ことがあっても社員の首を切ることもなく、ラジオ修理などあらゆる業種に仕事を見出して店員たちを鼓舞し、復興に向かって突き進んでいく。この精神が会社を社員を強くしていったのだと思います。戦争に負けた日本を権力や外国メジャーを相手に臆することなく突き進む姿勢に拍手です。