book(2021)

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真夏の雷管
(佐々木譲)

図書館7(501)
8
北海道警シリーズ第八弾!久しぶりに読みました。JR.北海道の保線記録改ざん事件で首になった元組合活動家と、母に見捨てられた鉄道好きの少年との出会いから始まる悲しい物語。「小さな園芸店の裏口が破られ、窃盗目的の侵入があった。盗まれたのは肥料、爆薬の原料にもなる硝酸アンモニウム。同じ頃、模型店で精密工具を万引きした小学生男子が補導される。2つの事件の関連がわかるにつれ、思わぬ方向へ・・・」 物語の終盤、時間との勝負になっていくところはまるで映画を見ているようで、うまいですね。JRを首になった者が再就職する際、就職会社への照会に対しJR側がすごい悪意ある意見を述べるなど、人が再生しようとしても、どうしようもない現実も見えてくる。ちょいと涙腺が緩むいい小説でした。
夜ふかしの本棚(中村文則他)
図書館6(500)
7

朝井リョウ/円城塔/窪美澄/佐川光晴/中村文則/山崎ナオコーラ 。6人の作家が心を震わせた五十九冊を紹介したエッセー集。読んだ本も何冊か入っていたが、“これは”と思うのが十数冊ありました。そのうち読んでみようと思う。作家の個性もわかり面白かった。沖縄に移住した俵万智の歌 『「オレがマリオなんだよ」島に来て息子はゲーム機にふれなくなりぬ』 なんかわかりますね。山崎ナオコーラ「私は将来のために読書をすることや、未来に役立てるために勉強をすることが嫌いだ。今を楽しく生きるために学ぶのだ」 それと私の大好きな中村文則 「現在の日本の流れは非常に危険だと思っている。作家として、書くべきことは書かねばならないという思いもあった。どんな戦争にも、裏には必ず利権があることは言うまでもない」 等々・・。

アンダークラス
(相場英雄)

図書館6(500)
6
“震える牛”“ガラパゴス”に続く田川信一シリーズ第三弾、今回はアンダークラス(技能実習生、非正規雇用など下層階級)の犠牲で成り立っている社会の闇をあぶり出していく社会派ミステリー。「老人施設で働く外国人実習生のベトナム人女性が末期がんに苦しむ老女の自殺を幇助した容疑で逮捕される。捜査に加わった田川は検視写真『手』に疑問を抱く。捜査は能代から神戸、東京へ。そして捜査線上に世界の流通業界の覇者として君臨するIT企業があがる」 コロナ禍の今、大もうけしているAmazonなどがモデルと思わせる、この世界の仕組みがよくわかる、日本という国も下層国に向かっているという現実も・・・。「何をしてもこの国は何も変わらん。役人やら社長、政治家ばっかりええ思いして、ウチらたいな下層民は一生働いても歯車のまま死ぬ』 。
俺はエージェント(大沢在昌)
図書館5(499)
5
『新宿鮫』の著者がこんな軽いものを・・・、2017年に刊行されたのに今の世の中を見ています。「ある居酒屋にかかってきた一本の電話、それは23年ぶりに復活した、あるエージェント組織の極秘ミッションだった。主人公はスパイ小説好きのフリーター青年・村井。元凄腕エージェントだったという常連客の白川老人と行動することになり、敵対する組織の殺し屋たちに命を狙われるはめに・・・」 最後はしっかりと巨悪組織の陰謀を追いつめるていく。思わぬ展開にあれよあれよという間に引き込まれます。世の中の正義とは?『地球全土が原始共産主義にでもならない限り、経済原理から逃れられる国はひとつもない。戦争は必ず起こる、戦争こそが停滞した経済を活性化させる、最大の手段だからだ。国家が利益を求める限り、行き着くところは戦争しかない』 と。
百舌落とし
(逢坂剛)

図書館4(498)
4
スタートから33年、ついにMOZUシリーズ完結、ですが、ラストは切なく権力に対する無力感が漂う。「元民政党の大物議員が両瞼を縫い合わされた上で殺されるという怪事件で幕を開ける。被害者は頸部を千枚通しで一突きされ、現場には例の百舌の羽が・・・、あの伝説の殺人鬼、百舌の手口だだった」 前2作からの続編として読むとよくわかる。今回、防経済を衛省の大学の研究機関への予算増額と学術会議が絡んだり、自然破壊(核廃棄物の処理や地球温暖化など自然破壊の問題など身近な出来事も上がってきます。それに人工知能技術の国際争奪戦へと展開し、研究資金の流れや武器も日用にも使われる技術から転用される危うさなどの現実も見せてくれます。『悪は滅ぶことなく、百舌は何度も蘇ると』いうのが作者の言いたいことなのか・・・
墓標なき街
(逢坂剛)

図書館3(497)
3
百舌シリーズ第6弾(前作から3年後の2015年刊行)。『鵟の巣』の続編といった感じ。鉄鋼会社の武器輸出三原則違反疑惑に端を発し、政界の暗闇や過去のいくつかの百舌事件がからんでゆく「百舌事件についての記事執筆を依頼された記者の残間。一方では武器輸出に関わる商社と政権の癒着が起きていた。点と点を繋ぐ大杉や美希の前に再び百舌が現れる・・・」 今回、大杉の娘が登場少し物語に変化を与えるが3作目までのハードさはない。が、最後までぐいぐい引っ張られるのはいつも通りです。武器三原則に反発する武器メーカー、集団的自衛権の行使を狙う国会議員たちが三原則撤廃をもくろんでいることや、“防衛装備移転三原則”などと名称を変えてまでなし崩しに武器の輸出入を認めさせようとする暗躍等興味深く読めます。
ノスリの巣(逢坂剛)
図書館2(496)
2
百舌シリーズ第5弾(前作から4年後)、今回百舌が生まれ変わったということではない 「途方もなくみだらで美しい女。警視庁美人刑事を巡る怪しい噂。特別捜査官・倉木美希と私立探偵・大杉良太が調査に乗り出した時、標的も牙をむく! 今、暴かれる百舌を超える闇の正体・・・」。この公安シリーズは、政治権力による警察支配を目的とした陰謀との闘い。だが、倉木尚武に続いて津城警視正が死んだあと、2人だけでの闘いには限界があったのか、今までのシリーズに比べると、あっけなく終わったという感じ。でも、ハードボイルドで面白いのはそのまま。『諸悪の根源は、警察を権力維持の装置として利用する政治家と、それにすり寄るキャリアの警察官だ。割を食うのは使い捨てにされる底辺にいる叩き上げの警察官です』と。
十字架のカルテ(知念 実希人)
図書館1(495)
1
精神鑑定医の話で、連作短編集だが読み応えがある。「心神喪失者は罰せられない。刑法第39条。ならばその十字架は誰が背負うのか。精神鑑定医と若き精神科医が探る5つの事件と心の闇。心神喪失か心神耗弱か詐病か。究極の心理戦により明らかになる本当の理由」 鑑定にも簡易鑑定と本鑑定があるなんて知らなかった。私は今まで、責任能力があってもなくても犯罪は犯罪でしょう、という派ですが現実にはこんなことがあるんだろうなと考えさせられた。『無罪や不起訴になった触法精神障害者は多くの場合、措置入院になっていた。その後は医療サイドに丸投げだ。その後のことを司法は関知してこなかった。退院させるか社会復帰させるのか、判断は治療に当たる医療者に一任されている』 と。

2021年book ランキング 
 1 位 アンダークラス
 2 位 真夏の雷管
 3 位 百舌シリーズ
(5)ノスリの巣
 (6)墓標なき街 (7)百舌落とし
 4 位 俺はエージェント
 5 位 十字架のカルテ
ランク外 夜ふかしの本棚

                         ※はノンフィクションです。