book(2024)

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トランパー
(今野敏)

図書館33
(775)
34
タイトルの『トランパー』とは貨物の有無により不定期に運航される船で運ばれる貨物のこと。従って取り込み詐欺などに利用されやすい。『ハマの用心棒』こと諸橋係長が活躍するシリーズ 「諸橋のところに県警本部の捜査二課のキャリアんの女性課長から取り込み詐欺のことで協力要請がきたのをきっかけに、捜査をしていた刑事が殺害されたあたりから話がどんどん広がり、本部の公安、二課、暴対果てには中国公安部、コンテナを利用した人身売買や麻薬密輸をとりしきる中国マフィアまで絡んでくる・・・。」このシリーズは好き、面白くて、とても読みやすい。『最近の警官たちを見ていると、心のバネが弱い気がする。苦悩やストレスは誰にも襲いかかる。それをはね返すのが心のバネだ』。
一夜の夢
照降町四季(四) (佐伯泰英)

図書館32
(774)
33
全4巻完結!「大火からの復興の要として照降町の人びとの支えとなっている周五郎だったが、小倉藩の派闘争いの中、実兄が暗殺される。藩の行く末と町での暮らしの間で揺れる周五郎、その周五郎がいずれ去ることを覚悟する佳乃・・・。」。『一夜の夢』タイトルから、ラストはこうなるだろうと予測はつくもののやはり切ない。著者のスタイルは物語の展開とか構成をたてて書き始めることはないそうで『居眠り磐音』シリーズみたいに50巻超えても完成してないものもあるが、本作は4巻で完結、時代小説初心者さんにもすすめやすいお話となっている。
梅花下駄
照降町四季(三
)
(佐伯泰英)
図書館31
(773)
32
己丑の大火のあった春先から季節は夏に…復興が加速するシリーズ第3弾。「復興を遂げ始めた照降町で鼻緒屋が新しく建て替えられ、梅花花魁に注文された三つ歯下駄に梅の花をデザインした絵も描いて納品。花魁は高下駄をたいそう気に入る。落籍され方々の手配りで照降町で道中をする中、周五郎の兄が身罷り実家から戻るように告げられる・・・。」。悩み、考えるも、思い切りの良い女たちの格好いい様が心地いい。出来上がった下駄を履いての照降町花魁道中に感動しグッときた。さぁ、周五郎は再び照降町に戻れるのか…波乱の最終巻へ。
己丑の大火
照降町四季(二)
(佐伯泰英)

図書館30
(772)
31
シリーズ第2弾、今回は『江戸の大火と復興』をバックに描かれる。「文政12年3月、神田佐久間町の材木置き場の奥で、消し忘れた小さな火がくすぶり始めていた。ついに『己丑の大火』が江戸を襲う。鼻緒挿げの女職人・佳乃と、その弟子の武家・周五郎は、すべてを焼き尽くそうとする火から、照降町を守るべく奮闘する。ご神木の梅の木が燃えようとしたその時、佳乃の決死の行動が、あきらめかけた町人たちを奮い立たせる! 」。家も焼け、父も病で亡くなってしまうが、佳乃は仕事を再開し、強く逞しく成長していく姿が頼もしい。周五郎や幸次郎との関係もやきもきさせるが、この先どうなるかも楽しみ。
初詣で
照降町四季(一)
(佐伯泰英)

図書館29
(771)
30
『居眠り磐音』の著者、久しぶりにこの人のものを読んだ。とても読みやすく面白い。江戸の女性職人が主人公の書下ろし新シリーズ〈照降町四季〉全4巻の第1巻「文政11年暮れ。男と駆け落ちした鼻緒屋の娘・佳乃が三年ぶりに照降町の実家に戻ってきた。父は病に伏し、見習いとして浪人の八頭司周五郎を受け入れていた。町の人びとの人情に触れ、佳乃は女職人として鼻緒挿げの腕を磨く決意をするが ・・・。 」 小君よいお話、心温まるやら、おっかなびっくりするやら楽しい 。先も気になるしすぐに2巻目を予約した。
逆ソクラテス
(伊坂幸太郎)
図書館28
(770)

29
この著者にしては珍しく少年・少女を主人公にしたお話(本屋大賞ノミネート、柴田錬三郎賞受賞作)。「“逆ソクラテス”:逆転劇なるか?カンニングから始まったその作戦は、クラスメイトを巻き込み、思いもよらぬ結末を迎える。“スロウではない”:足の速さだけが正義ではない? 運動音痴の少年は、運動会のリレー選手にくじ引きで選ばれてしまうが・・・。“アンスポーツマンライク”:最後のミニバス大会。5人は、あと一歩のところで、“敵”に負けてしまった。アンハッピー。でも、戦いはまだ続いているかも。ほか、“非オプティマス”“逆ワシントン”」 短編全5編、まるで重松清を思い起こす。『昔のソクラテスさんも言っている。自分は何も知らない、ってことを知っているだけ、自分はマシだ』。
いつもの木曜日
(青山美智子)

図書館27
(769)

28
イヤミスの後は心温まるお話。「『木曜日にはココアを』に繋がる温かな物語。その12編の物語に登場したワタル、朝美、えな、泰子、理沙、美佐子、優、ラルフ、シンディ、アツコ、メアリー、そしてマコ。これは彼、彼女たちがあの日に出会う前の物語。」 イラストも素敵、かわいい大人の絵本と言った感じ。この人の本は何て温かいんだろう、元気をもらえる本。『あっという間の人生は、思い通りになんかならないけど・・・。身を固くして戦闘態勢に入るんじゃなくて、心をやわらかくしてどんと構える。そういう強さが私は欲しい。』 『青信号は「進め」じゃなくて、「進むことができる」』 “木曜日には・・”の後に読むといい。
人間標本
(湊かなえ)

図書館26
(768)

27
イヤミスの女王、15周年記念書下ろし作品。イヤァ~おぞましいというか、江戸川乱歩の『人間椅子』を上回る不気味さとの評もあった。「画家の父のようにはなれず、蝶に魅せられ学者として大成した史朗。蝶の標本だけでは物足りず、美少年を標本にして詳細をネット小説にして写真とともにアップ。最後の被害者は息子という猟奇的犯行。いや、息子を庇ったのか・・・」 話は二転三転し後半から、そうきたか.という感じで面白くなる。『子どもの幸せを考えて、という“幸せ”の基準も親としての大義名分をかかげた自分の押しつけだと気づきもせず・・・』。タイトルからして不気味、たっぷり嫌な気持ちになるが何故か惹きつけられる。
グレイラットの殺人
(M・W・クレイヴン)

図書館25
(767)
26
文庫本で700ページを超える長さ、しかも翻訳物。長いので話が広がりすぎて当初わかりにくかったが進むにつれて了解。「貸金庫を襲った強盗団が、身元不明の遺体と鼠の置物を残して姿を消した。三年後、サミット開催が迫るなか要人を搬送するヘリコプター会社の社長が殺される。テロを警戒した政府はポーに事件の捜査を命じるが、MI5の妨害で捜査は遅々として進まない。天才分析官ティリーが発見したデータのおかげで犯人を追いつめたかに見えたが…」。“刑事ワシントン・ポーシリーズ”第4作ということだったがこのシリーズ初読み。よく練られている。『戦争屋と化した政治家たち、他人の命を使い捨てにする政治家たち・・・。悲惨な形での人命の損失に思いを巡らせた』 これがキーポイント。
台北アセット
(今野敏)

図書館24
(766)
25
公安外事・倉島警部補シリーズ第7作。「公安部外事一課の倉島は、台湾の警察から研修の講師を依頼され、ゼロの研修から戻った後輩の西本と台北に向かった。 そこで倉島は、サイバー攻撃を受けた日本企業の現地法人から捜査を要請されるが、その会社のシステム担当者が殺害され、日本人役員に疑いの目が向けられる。」 何となく生ぬるい、ストーリーは、やや単調であり、更に犯人は中盤から予想の範囲内であり醍醐味に欠けた。倉島も外国で仕事をする時のもどかしさ感じたのだろうスピード感がなかった。『現在の日本の平和は、戦後アメリカによってもたらされただけだと見る向きもある。国民は骨抜きにされ、政治に無関心になり、それ故に極めて危うい平和なのだと』。
まいまいつぶろ
(村木嵐)

図書館23
(765)
24
日本歴史時代作家協会賞、本屋が選ぶ時代小説大賞受賞。直木賞候補作品。当今貴重な『清く正しく美しい』小説。「徳川吉宗公の嫡男。身体に麻痺を抱え、口がまわらず、誰にも言葉が届かず。尿漏れの跡が残るため、まいまいつぶろ(カタツムリ)と呼ばれ蔑まれてきた第九代将軍・家重と 彼の言葉を解する唯一無二の家臣・大岡忠光。 主従を越え、心から信頼し合う二人・・」。 九代将軍家重が不遇の生まれとは知らなかった。家重を取り囲む人々も魅力的で優しい気持ちが伝わってくる。『もう一度生まれても、私はこの身体でよい。忠光に会えるのならば』。初読み作家だったが著者は京大法学部卒、司馬遼太郎家で家事手伝いとなり、後に司馬婦人の個人秘書を務めている。
夜果つるところ
(恩田陸)

図書館22
(764)
23
昨年紹介した『鈍色幻視行』の核となる小説。“本格的にメタフィクションをやってみたい”という著者渾身の挑戦だとか・・。ちょっとおどろおどろしく、あまりお薦めはできないが面白い。「昭和初期の山間の遊廓“墜月荘”で、三人の母と共に暮らすビィちゃん。墜月荘に現れる男達、着流しの作家笹野、背広の子爵、軍服に羽織った蜘蛛の巣の着物をまとい踊る久我原。そして、カーキ色の癖の強い軍人達。ついに革命が起きる・・・」 癖耽美的で怪奇的な恩田ワールドの世界が描かれる。何故?何故?と思いながら読むが、ラストで全てが分かるわけでもない、ちょっと不思議な小説。『鈍色幻視行』をもう一回読むといいかもしれないが、その気力が無い。
あなたが誰かを殺した
(東野圭吾)

図書館21
(763)
22
ミステリーど真ん中、加賀恭一郎シリーズ(最新作)。とても面白いが少し詰め込みすぎた感じがした。「閑静な別荘地で5人が死亡、1人が怪我を負う殺傷事件が起きた。犯人は自首したが事件の詳細は一切語らず、業を煮やした遺族らは自分たちで事件を検証することに。事件で夫を亡くした鷲尾春那は、職場の先輩の紹介で、休暇中の加賀恭一郎を伴い検証会に参加する―」 。人間の汚い所がどこまでも交差していて、結末にはびっくり。加賀には絶対に嘘は通用しない、そうですこんな刑事(探偵)がいたらいいのに・・・。『悪事に手を染め、私腹を肥やしながらも罪に問われず、のうのうと生きている奴がいる』 まさか、安部派幹部では?とつい思ってしまった。
アリアドネの声
(井上真偽)

図書館20
(762)

21
光も音も届かない絶対的迷宮、生還不能まで残り6時間。「少年の頃、海の事故で兄を失った高木春生は、災害救助用のドローン〈アリアドネ〉の開発に関わっていた。ドローン特区にも指定されている地下シティの式典に参加中、巨大地震に見舞われた彼は、アリアドネを使って地下深くに孤立した被災者を救出することに。しかし、救出される女性は、見えない、聞こえない、話せないの3つの障害を抱えている…。」 ヘレン・ケラーと同じ障害を持った人をどうして地上からドローンを使って助け出せるのか?一気読み。最後のドンデン返しでスッと心が晴れる。『人って目や耳だけで、周りを把握しているんじゃないんです。このへん、普通の人にはわかってもらえないかんかくだとおもいますが・・・』。
月曜日の抹茶カフェ
(青山美智子)

図書館19
(761)

20
『木曜日にはココアを』の続編!マーブルカフェを交差していく人たちの12の物語、“思わぬ出会いから人生はもっと豊かになる” 「マーブル・カフェが定休日の月曜日に、1度だけ“抹茶カフェ”が開かれた。そこを訪れた客に、提供された一杯の抹茶と和菓子からはじまる。ツイていない携帯ショップ店員と愛想のない茶問屋の若旦那、妻を怒らせてしまった夫とランジェリーショップのデザイナー兼店主、恋人に別れを告げたばかりのシンガーと実家の祖母と折り合いが悪い紙芝居師など・・」 。 この著者の素敵なあったか世界をゆっくり堪能した。「思い出って流れゆく時間を留めておくピンのようなものかもしれませんね。だけど留める場所はそれぞれだから、ピンの位置がちょっとずれたりもするんです』。読後感最高!
黄色い家
(川上未映子)

図書館18
(760)

19
タイトルは何となく優しそう、ところが“ノンストップ・ノワール小説!人はなぜ、金に狂い、罪を犯すのか”。600ページの長さ、読むのにちょっしんどかったが心にずしりと落ちてくる本。「15歳の夏、親もとを出て『黄色い家』に集った少女たちは、生きていくためにカード犯罪の出し子というシノギに手を染める。危ういバランスで成り立っていた共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解していく」。金、というか黄色に固執してどんどん狂っていく人間、登場人物全員苦しい。『金は権力で、貧乏は暴力だよ』 格差社会の矛盾に切り込んでいて、ぐいぐい引かれる。『幸せな人間っていうのはいるんだよ。でもそれは金があるから、仕事があるから幸せなんじゃないよ。あいつらは考えないから幸せなんだよ』。
リラの花咲くけものみち
(藤岡陽子)

図書館17
(759)
18
自らの人生を変えてゆく少女の姿を描いた物語 「家庭環境に悩み心に傷を負った聡里は、祖母とペットに支えられて獣医師を目指し、北海道の獣医学大学へ進学、自らの居場所を見つけていく・・・」 主人公がたくさんの人たちに助けられ励まされ成長する姿が丁寧に描かれていて、すごくいい。久しぶりに読んだ王道をいく成長物語。獣医の仕事がこんなにい大変な仕事だとは思わなかった。また、獣医は犬・猫を治療するという印象が強かったが、大動物という牛や馬の出産、治療という世界も知った。素敵な花言葉がたくさん、『ハリエンジュ:頼られる人、クリスマスローズ:私を忘れないで、白いガーベラ:希望、白樺:あなたを待っています』。“不幸中の幸いをみつける”おばあちゃんの生き方が素晴らしい。
木曜日にはココアを
(青山美智子)

図書館16
(758)
17
2017年の本。マーブルカフェから始まる心地いい連作。「僕が働いている喫茶店。必ず木曜日にきて、いつも同じ席で手紙を書く女性がいる。そして、頼むのは、決まってココア。僕は、その女性を“ココアさん”と密かに呼んでいる。ある木曜日。ココアさんはいつものようにやってきたのだが、どこか様子が違い…」 12の短編からなるチェーンストーリー、ほっこり心が温かくなりホットココアを飲みたくなる。 『子供の中で仕事をしたかった。まっすぐな道を教えたかった。正しさが疎まれる、そんな大人達の群れにいるのがしんどかった』 『正しい謙虚さというのは正しい自信だし、本当のやさしさは本当のたくましさじゃないかしら』。素敵なココアを飲みにきください!
じい散歩
妻の反乱

(藤野千夜)
図書館15
(757)

16
『じい散歩』の続編。「前作からさらに歳を重ね、夫婦あわせて180歳を超えた新平と英子。3人の独身中年息子たちは相変わらずで、自宅介護が必要になった母親の面倒を見る気配もない。老老介護の束の間の息抜きは、趣味の散歩や食べ歩きだが、留守番している妻への土産も忘れない。老夫婦の道のりは・・・」。可笑しいながらもどこか身につまされる。それにしてもこの3人の息子達、どうにかならなものか・・・、現実がこんなだったらたまらない。と思うが、家族で懸命に生きてきた結果が今なのだと受け入れる生き方は、やはり素晴らしい。果たして妻の“反乱”とは?
食堂かたつむり
(小川糸)

図書館14
(756)

15
本作がデビュー作で、“小川糸の原点”とあったが、料理に疎い私には(所々気持ち悪い場面もあったりして)今一だった優しさには満ちているのですが・・・。「都会で同棲相手にひどい別れ方をされ、そのショックで声まで失くした倫子が 田舎の実家の敷地内で、“食堂かたつむり”を開き1日1組のお客をとる、しかも決まったメニューもない。 わけありの母親に対して、いい感情は持っていなかったけど、 最後は 母の愛情を感じる・・・」 いろんな料理を作るシーンがわんさか、美味しそうではあるが・・・。『人間生きるには食べなくちゃならない。しゃべれなくても料理ができれば稼げる、いや、誰かを幸せにできる。』 と、そんなお話。文庫版には番外編が掲載されていたが、これはいらなかった。
秋麗
東京湾臨海署安積班
(今野敏)

図書館13
(755)
14
「歳を取って誰からも相手にされなくなった孤独な老人が特殊詐欺事件を起こし、それがもとで殺され青海三丁目付近の海上で発見された。遺体が見つかる前日に彼と一緒にいた釣り仲間の2人に安積警部補が話を聞きに行くと、ふたりとも何かに怯えた様子で…」 とても気楽に読める警察小説、今回悪い刑事は出てこない。『自分が誰からも必要とされなくなる。それでも毅然としていられるかどう…。それが怖い』 “老い”も大きなテーマの一つになっている。一人の刑事が言う『秋は美しい季節だ。だから、人生の秋だってきっと美しい』 こんな風に生きたぁ~い!。
自転しながら公転する
(山本文緒)

図書館12
(754)

13
本作は2020年に刊行され『中央公論文芸賞』に決まっていたが著者は贈賞式前に58歳で亡くなった。「母の看病のため実家に戻ってきた32歳の都(みやこ)。アウトレットモールのアパレルで契約社員として働きながら、寿司職人の貫一と付き合いはじめるが、彼との結婚は見えない。職場は頼りない店長、上司のセクハラと問題だらけ。母の具合は一進一退・・・。」 とても内容のあるいい話なのだが、揺れ動く女心、煮え切らない男の気持など、登場人物に感情移入ができなかった。単行本化にあたりプロローグとエピローグが書き加えられていたが、果たして必要だったか? 『幸せにならなきゃって思い詰めると、ちょっとの不幸が許せなくなる。少しくらい不幸でいい。思い通りにはならない物よ』。

お探し物は図書室まで
(青山美智子)



図書館11
(753)

12
暖かくて優しいハートフルなお話。「探し物は、本ですか? 仕事ですか? 人生ですか?人生に悩む人々が、ふとしたきっかけで訪れた小さな図書室。彼らの背中を、不愛想だけど聞き上手な司書さんが、思いもよらない本のセレクトと可愛い付録で、後押ししてくれる」 内容はそれぞれに悩みや葛藤を抱い5人が司書の小町さんと会話をする中で自分の思いを打ち明けていく・・。
しかし、探し物を見つけるのはあくまでも自分。人生に迷ったときに背中を押してくれる本。
5つの短編で構成されているがところどころに登場人物同士の繋がりがあるのも面白い。
『お金も時間も勇気も無い。その“ない”を目標にするのです、お金を用意すること、時間を作ること、勇気を持つことを』
『人生で一番頑張ったのは生まれた時、その後あの時ほど辛いことはない、あんなすごいことに耐えられたんだから』
『計画や予定が狂うことを不運とか失敗って思わなくていいの、そうやって変わっていくのよ、自分も人生も』
『私たちは大きなことから小さなことまで“どんなに努力しても、思い通りにはできないこと”に囲まれて生きています』
『前ばかり見ていると視野が狭くなるの、だから行きづまって悩んだ時見方を変えて肩の力を抜いて、横を向いて』
『12個入りの箱にのある饅頭を10個食べたら2個は残り物?、後の2個も最初に食べたものと何も違わないのよ』。
キラキラ共和国
(小川糸)


図書館10
(752)

11
鎌倉を舞台にした代書屋の物語 『ツバキ文具店』 の続編。「文具店は、今日も大繁盛です。バーバラ夫人も、QPちゃんも、守景さんも、みんな元気です。みなさんのご来店をお待ちいたしております。店主・鳩子―亡くなった夫からの詫び状、川端康成からの葉書き、大切な人への最後の手紙…」 前作に劣らずハートフルなお話し。これを読むと優しい気持ちになり、また文字や手紙に対する思いが一段と募る。『私は世の中から郵便ポストがなくなることが怖い。誰も手紙を書かなくなったら、郵便ポストだって撤去されてしまうかもしれない。携帯電話の普及によって、公衆電話が数を減らしていったみたいに』 そう、大事な気持を伝えたいときはメールではなく手書きの文字だよな~!としみじみと感じた。
架空通貨
(池井戸潤)


図書館9
(751)

10
2000年に刊行された、著者2作目の長編小説で江戸川乱歩賞受賞作。20年以上前の作品ゆえの時代感、物語ゆえの大仰さは感じるが面白い。ただ、私の知識不足でお金の流れや登場人物の思惑が難し過ぎた。「女子高生・麻紀の父が経営する会社が破綻した―。かつて商社マンだった社会科教師の辛島は、その真相を確かめるべく麻紀とともに動き出した。やがて、2人がたどり着いたのは、“円”以上に力を持った闇のカネによって、人や企業、銀行までもが支配された街だった。」 金融に造詣が深ければ数倍は楽しめると思う。『金のために生き、裏切り、殺され、恨みを抱く。金を中心とした価値観、経済観念が人々の心に深く根付いてしまっている現代社会の歪みがある』 と、どうしたらいいのだろう?
地図と拳
(小川哲)


図書館8
(750)

9
日露戦争前夜から第2次大戦までの半世紀、満洲の都市で繰り広げられる知略と殺戮。歴史×空想小説。「日本からの密偵に帯同し、通訳として満洲に渡った細川。ロシアの鉄道網拡大のために派遣された神父クラスニコフ。叔父にだまされ不毛の土地へと移住した孫悟空。地図に描かれた存在しない島を探し、海を渡った須野…」満州国の歴史を始まりから終わりまでみていくと、結局、満州国とはなんだったのか、日本人は満州に何を求めたのか? 625ページもの長さ重さを挫折せずに(途中で中断しても)完走できたのは面白かったから・・。『昭和15年、戦争への道を避けられなかった時点で、日本は不治の病にかかり治療はできない。戦争が始まっていないが、始まる前から終わっていた』
ツバキ文具店
(小川糸)


図書館7
(749)

8
『ライオンのおやつ』より、3年ほど前に書かれた本でNHKでドラマ化されている。“ライオン・・・”同様優しさにあふれた物語。「鎌倉で代書屋を営む鳩子の元に、いろんな依頼が舞い込む。祝儀袋の名前書き、離婚の報告、絶縁状、借金のお断りの手紙まで・・、文字に関すること何でも承り〼。亡き祖母の想いにも気づいていく。」郵政という職場で仕事をしてきたのに“手紙”や“文字”に対してこんな思いを抱いたことはなかった。・弔意で墨の色を薄くするのは何故?・手紙に関する面倒な決まり事はたいてい出だしと終わりに集中する。・1月7日は七草爪?など・・。『人生って本当にままならないものです、私は何一つなしえなかた 人生なんてあっという間です 本当に、一瞬なのです』。
虚ろな十字架
(東野圭吾)


図書館6
(748)

7
2014年刊行され数々の賞を取っている。「中原夫妻は一人娘を殺害した犯人に死刑判決が出た後、離婚した。数年後、今度は元妻小夜子が刺殺されるが、すぐに犯人・町村が出頭する。中原は、死刑を望む小夜子の両親の相談に乗るうち、彼女が犯罪被害者遺族の立場から死刑廃止反対を訴えていたと知る。一方、町村の娘婿である仁科史也は、離婚して町村たちと縁を切るよう母親から迫られていた。」 死刑制度は被害者を救うのか?人を殺めたことに対する裁きとは何が正しいのか?罪を償うというのは、誰に対して償っているのか? 壮大なテーマ、ただのミステリーではなく死刑制度を深く考えさせられる内容ニ圧倒された。東野作品ではベスト5に入ると思う。
コロナと潜水服
(奥田英朗)


図書館5
(747)

6
不思議な話に、頭をかしげたり笑ったり泣いたり、5編からなる短編集。「『海の家』ある理由で家を出た小説家が、葉山の古民家に一時避難。生活を満喫するも、そこで出会ったのは―『ファイトクラブ』早期退職の勧告に応じず、追い出し部屋に追いやられた男性が、新たに始めたこととは―『占い師』人気プロ野球選手と付き合うフリー女性アナウンサー。恋愛相談に訪れた先でのアドバイスとは―『コロナと潜水服』5歳の息子には、新型コロナウイルスが感知できる?パパがとった究極の対応策とは―『パンダに乗って』ずっと欲しかった古いイタリア車を手に入れ乗り出すと、不思議なことが次々に起こって―」 ファンタジックなものとは知らずに手に取ったが面白くて一気読みだった。
じい散歩
(藤野千夜)


5
「夫婦あわせて、もうすぐ180歳。中年となった3人の息子たちは、全員独身―。明石家の主、新平は散歩が趣味の健啖家。妻は、散歩先での夫の浮気をしつこく疑っている。長男は高校中退後、ずっと引きこもり。次男はしっかり者の、自称・長女。末っ子は事業に失敗して借金まみれ。」 妻は認知症か?それでも人生は続いていく。そんな一家の日常をユーモラスに温かなまなざしで綴った家族の物語。『この年になってどうにか動けるのは毎日欠かさず歩いているからだった。一日休めば次の日は億劫になり、やがて何もしなくなる』 そうですね、同感。『てくてく歩くのだ。難題だらけの現実から逃げるためではなく、たぶん自らの生きているこの世界を、現実を、味わうために』との感想もあった。
思い出の屑籠
(佐藤愛子)


図書館4
(746)

4
97歳で、執筆活動をやめていた著者が100歳を前に思い出すままに書き溜めていたことを本にした。「著者が生まれてから小学校時代まで、両親、姉、時折姿を現す4人の異母兄、乳母、お手伝い、書生や居候、という大家族に囲まれた、甲子園に近い兵庫・西畑の時代を、思い出すままに綴る」 お手伝いさんや書生さんもいるという昔の文筆家の家庭が面白く描かれている。泣き虫、よく出来た姉の陰になりパッとしない次女キャラの愛子さん、そこら辺にいる女の子。それにしても2歳の頃のことをよく覚えていて凄いと思った。『おやすみなさーい』に『おう』と答えるお父ちゃん、それが幸せだったと。何気ない日常が一番の幸せなのかもしれない。字が大きくとても読みやすい。
冬の狩人
(大沢在昌)


図書館3
(745)

3
シリーズものとは知らなかった(このシリーズは未読)。最近の『新宿鮫』シリーズより展開が早くて面白かった。「3年前にH県で発生した冬湖浪事件の唯一の生き残りで逃走中の阿部佳奈から突然の連絡が入る、出頭するが警視庁の佐江という刑事の付添が条件だった。そこから佐江とH県警の川村、そして阿部佳奈の3人による過去の事件を絡めた謎解き、それを阻止する殺し屋との戦いが始まる・・・。」 この著者の刑事は違法捜査スレスレで捜査を進めていくところにも面白さがある。裏の社会の怖さもしっかりと分かる、それと権力の中にあっても権力に屈しないところに胸がスカッとする。他の『狩人シーリズ』も読んでみたくなった。
アミュレット・ホテル
(方丈貴恵)

図書館2
(744)

2
殺し屋、詐欺師、窃盗グループの皆様…犯罪者御用達ホテルにようこそ! 犯罪者専門の会員制ホテル、そこで起こる事件の連作短編ミステリ。「このホテルでは二つのルール(①ホテルに損害を与えない②ホテルで傷害殺人を起こさない)さえ守れば、どんなサービスも受けられる。とは言え、そこは犯罪者の集まり、禁忌は度々破られる。そこで活躍するのがホテル探偵・桐生。警察に通報できない事件をその場で解決する」 発想は面白いが『映画“ジョン・ウィック”のコンチネンタルホテル』にヒントを得たのではと思わせる。著者は本格ミステリ界の新鋭として注目されているようだが、前作同様少し凝り過ぎな感じもするが現代はこんなのが受けるのかな?私はやはり松本清張風なのがいい。



窓ぎわのトットちゃん
(黒柳徹子)

図書館1
(743)

1
42年ぶりに出た続編!続編を書こうと思ったのはなぜなのか?黒柳さんは『クライナの問題で子どもたちはどうしているのだろうと思ったとき、戦争のときに子どもだった自分はどうだったか思い出しました。子どもにとって戦争の何が一番嫌かと言うと、自由ではない、何をやってもいけないということだと思います。当時の戦争を思い出すのも嫌でしたが、そのことを考えて続編を書こうと思いました』と語っている。トットちゃんが青森に疎開してから、音楽学校を卒業してNHKの専属女優になり、ニューヨークに留学するまでの日々が綴られいる。特に苦境に陥った時でもトットママの活躍はすごい。優しさの中に元気をもらう素晴らしい本。
・戦いに行く人たちを『バンザーイー』なんて言って見送るべきではなかった。無責任だった、そのことが背負わなければならない『戦争責任』なのだと知った。
・優しい人間になるには教養を身につけなくてはならないし、そのためには本を読むことが大切だと考えるようになった。
・『死ぬまで病気をしない方法はありますか?』 『方法は一つだけ、自分の好きなことをやって生きていくこと。それは遊んでいなさいということではなく、自分から進んでやりたいと思う仕事だけをやってくださいという意味です。そうすれば病気になりません。いやだな、いやだなと思っているといやだながたまって病気なるのです』
・2022年の『徹子の部屋』で来年はどんな年になるかタモリに訪ねたら『日本は新しい戦前になるんじゃないか』 と。

2024年book ランキング 
 1 位 お探し物は図書室まで
 2 位 続 窓際のトットちゃん
 3 位 キラキラ共和国
 4 位 ツバキ文具店
 5 位 まいまいつぶろ
 6 位 逆ソクラテス
 7 位 木曜日にはココアを
 8 位 月曜日の抹茶カフェ
 9 位 いつもの木曜日
10 位 初詣で 照降町四季(一)  己丑の大火 照降町四季(二)  梅花下駄 照降町四季(三) 一夜の夢照降町四季(四)
11 位 トランパー
12 位 グレイラットの殺人
13 位 黄色い家
14 位 リラの花咲くけものみち
15 位 あなたが誰かを殺した
16 位 アリアドネの声
17 位 地図と拳
18 位 虚ろな十字架
19 位 自転しながら公転する
20 位 じい散歩
21 位 じい散歩 妻の反乱
22 位 冬の狩人
23 位 コロナと潜水服
24 位 人間標本
25 位 台北アセット
26 位 夜果つるところ
27 位 秋麗 東京湾臨海署安積班
28 位 食堂かたつむり
29 位 架空通貨
30 位 アミュレット・ホテル
ランク外 思い出の屑籠

                              ※はノンフィクション、またはエッセーです。