book(2024)

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佐渡絢爛
(赤神諒)

図書館79
(821)
81
本屋が選ぶ時代小説大賞2024に選ばれた作品。大学教授で法学士、弁護士という著者、初読み作家。佐渡金山をめぐる陰謀!面白いが前半はあまりに金山の話が詳しく長すぎてわかりにくかったが後半は俄然面白くなる。「時は元禄。金銀産出の激減に苦しむ佐渡で、立て続けに怪事件が起こった。御金蔵から消えた千両箱、36名が命を落とした落盤事故、能舞台で磔にされた斬死体、割戸から吊り下げられた遺体…。いずれの事件現場にも血まみれの能面『大癋見(おおべしみ)』が残されていた。」。よくこんなに佐渡金山のことを調べたもんだと感心、でも、佐渡銀山の知識が皆無だから、正直読み進めるのには時間がかかった。
赤と青とエスキース
(青山美智子)

図書館78
(820)
80
「メルボルンに留学中の女子大生・レイは、現地に住む日系人・ブーと恋に落ちる。彼らは“期間限定の恋人”として付き合い始めるが…(金魚とカワセミ)。額縁工房に勤める空知は、仕事を淡々とこなす毎日に迷いを感じていた。そんな時、『エスキース』というタイトルの絵に出会う…(東京タワーとアーツセンター)など、一枚の絵画をめぐる、五つの愛の物語。」。章ごとに違う登場人物が出てきて、最後につながって、そうだったのか~となり、スッキリ、ほっこり。さすが青山ワールド。『人生は一度しかないから思いっきり生きようって言うけど、それは怖い、一度しかないって思ったらやれない。それより人生は何度でもあるって、そう思うの、どこからでも、どんなふうにも新しく始めることができるって』。
当確師
(正義の御旗)

図書館77
(819)
79
国民が直接選べない自民党総裁選があった今、狐とたぬきの化かしあいの舞台裏がよくわかる。「当選確率99%を誇る選挙コンサルタント、聖達磨。総裁選が近づき、彼は新時代のリーダーと目される外相・本多さやかの参謀を務めることになり…。新たな首相を決めるための戦いが始まる」。そこに新聞記者や特捜の動きも絡ませ、面白く読めた。もちろん日本の首相を決める戦いとなるとアメリカや中国が暗躍しているのもよくわかる。『今どきの若者はすぐ諦め、最後はすべて社会のせいにして逃げてしまう。根気がなく、承認欲求ばかりが高い。他人の批判はするけど、自分から社会参画する気はない。そもそも政治になんて全く関心もない』 。そう、ご老体や、政治屋にこれ以上好き勝手させてはいけない。
少女マクベス
(降田天)
図書館76
(818)
78
演劇少女の青春群像ミステリー。「演劇女子学校の定期公演で、絶対的才能を持った設楽了は自らが手掛けたその舞台の幕間に奈落に落下して死亡する。劇作家をめざす結城さやかは、翌年入学してきた・藤代貴水に引きずられるような形で、了の死の真相とあるはずのもう一つの了の『マクベス』の脚本を探すことになる…。」マクベスをよく知っていたらなお面白かったかもと思わせる。いくつもの手掛かりがあったのに、いくつも伏線が張られていたのに・・、と犯人がわかるといつもこう思う。まだまだ読書力が足りjないというか丁寧にい読まないといけない。初読み作家だったが先が気になり一気にい読ませる力がある。いつか、ほかの作品も読んでみたい。
難問の多い料理店
(結城真一郎)

図書館75
(817)
77
6章構成、お決まりのフレーズだがバラバラだった各章が最終章でつながりを見せる。「ビーバーイーツ配達員として日銭を稼ぐ大学生、注文を受けて向かった怪しげなレストランで、オーナーシェフと出会う。オーナーは『お願いがあるんだけど報酬は1万円』と儲け話を提案してきた。多額の報酬を貰っているうちこの店は探偵業も担っているらしいと気づく。不自然な焼死体が出たアパート火災、空室に届き続ける置き配、謎の言葉を残して捕まった空き巣犯、なぜか指が二本欠損した状態の轢死体。オーナーは、どんな難問も華麗に解いてしまう。そして、配達員にこう伝えるのだ。『もし口外したら、命はない』と」。新しい感覚のミステリー、ちょっと凝りすぎているかな?終わり方がっきりしない。やっぱ東大卒!
私の馬
(川村元気)

図書館74
(816)
76
著者が『この本を書こうと思ったきっかけは、4年半前に、女性が10億円を横領して乗馬用の馬に注ぎ込んでしまったという事件を知ったこと』と言っている。人間よりも馬につながりを感じた女性の物語。「造船所で働く事務員、瀬戸口優子は一頭の元競走馬と運命の出会いを果たす。誰よりも“彼”と心を通わせる感覚を味わった優子は金と愛情のすべてを注ぎこんだが、行きついた奈落とは?」。馬との出逢いに寄って転落していく。お金も情熱も全てを注ぎ込む。何故そこまでのめり込んでしまうのか?実際にあった話をモチーフにしているがなかなか感情移入できなかった。SNSの濁流の中人を信じられない時代、こんな事件が起きても不思議ではないのかもj…。
続きと始まり
(柴崎友香)

図書館73
(815)
75
谷崎潤一郎賞受賞、芸術選奨文部科学大臣賞受賞作品。2020年3月から2022年3月まで、別々の場所で暮らす男女三人の日常がひと月おきに交互に語られていく。「30代後半の石原優子、一時期は東京のデザイン事務所に勤めていたが今は夫と7歳の娘、3歳の息子と滋賀県で暮らし仕事は衣料雑貨店でのパート。33歳の小坂圭太郎、妻と4歳の娘と東京で暮らし、料理人として居酒屋で働いている。同じく東京に住む46歳の柳本れい、フリーランスのカメラマンとして働く一方、知人のヘアメイクも手伝っている。」 3人の中に阪神・淡路大震災や東日本大震災の記憶、それに今のコロナ渦の生活を描きながらそれぞれの人生に入り込んでいくお話。心に刻まれる言葉がたくさん詰まった一冊。
フェイク・マッスル
(日野瑛太郎)

図書館72
(814)
74
第70回江戸川乱歩賞受賞作。「人気アイドルがたった3ヶ月でボディビル大会上位入賞する体に!ドーピングではと疑問の声が上がる中、真実を明らかにするため潜入取材を命じられ る週刊誌の記者。あの肉体は本物か偽物か・・・」。殺人事件は起きないミステリーで結構軽く読める。ただ、トリックと呼ばれるようなものはないので、少し物足りないがそれなりに面白かった。ボディビルの世界がこんなのだと始めて知った、薬を使ったか使わないことからユーザーナやチュラルといったよばれかたなど。本を読むと知らない世界を知ることも面白さの一つ。今回二作品が同時受賞している、『遊廓島心中譚』未発売だが出たら読んでみよう。
月の立つ林で
(青山美智子)

図書館71
(813)
73
『お探し物は図書室まで』などの青山美智子のハートフルな連続短編集。「長年勤めた病院を辞めた元看護師、売れないながらも夢を諦めきれない芸人、娘や妻との関係の変化に寂しさを抱える二輪自動車整備士、親から離れて早く自立したいと願う女子高生、仕事が順調になるにつれ家族とのバランスに悩むアクセサリー作家―」。ポッドキャストを通じ、月をテーマにちょっぴりロマンチックで、ゆるりとほっこりな話がいい、ポジティブになれる話を読みたい人はどうぞ!。『旧暦では、新月が一か月の始まりとされていました。月が始まる、月が立つ…つきたち、そこから、ついたちとなったそうです。』。
スピノザの診察室
(夏川草介)

図書館70
(812)
72
『神様のカルテ』の著者が“人の幸せ”をテーマにした物語。京都の街が舞台、個人病院で働く医師の生き方。「かつては大学病院で超人的な技術で内視鏡を操り、スポットライトを浴びていた主人公。幼い息子を残して亡くなった妹の死をきっかけに大学を離れ、全く別の道を歩んでいく。仕事の内容は変わっても、医師としての心意気は変わらない。患者や同僚にも頼りにされていく…。」。病気を治療することが医師の役目ではあるが、患者にも医師にも、生活背景や性格があるということ。ぐっと読ませる。『目の前の患者さんを治療するだけで精一杯です。それなのに、治らない病気を抱えていても、幸せに過ごせる人もいるなんて…・』。現役の医者が書く医療物は面白い。(スピノザとは哲学者)。
母親からの小包はなぜこんなにダサいのか
(原田ひ香)

図書館69
(811)
71
六つの短編、連作ハートフルストーリー!昭和、平成、令和ー、時代は変わっても家族から送られてくる小包の中身は変わらない。「業者から買った野菜を“実家から”と偽る女性、父が毎年受け取っていた小包の謎、そして母から届いた最後の荷物など・・・』。 お母さんの温かさが伝わってくる、親しい話しばかり。笑うよりしんみりと心が温かくなる。受け取る子供の側からみるとウザいかもしれないが、後になると送り主の愛情ががわかってくる。確かに母親は娘にヒートテックを送りがちだなと思わせる部分があり、自分の過去を振り返ってもそうだったと思うことがいくつか出てきた。初読み作家だったがハートフルなお話を読みたい人はどうぞ!
暗殺
(柴田哲孝)

図書館68
(810)
70
『下山事件 最後の証言』の著者が描く衝撃のサスペンス!元総理を撃ったのは本当に彼だったのか?「日本史上最長政権を築いた元総理が殺された。しかし、この事件では多くの疑問点が見逃されていた。致命傷となった銃弾が、現場から見つかっていない。被害者の体からは、容疑者が放ったのとは逆方向から撃たれた銃創が見つかった。そして、警察の現場検証は事件発生から5日後まで行われなかった。」 朝日新聞阪神襲撃事件、禁忌だった令和という年号それに東京オリンピック・・・、いろんな要素が絡む元総理の暗殺、とても面白く読んだが、統一教会の陰謀や右翼の怖さ。『すべての内閣は“神道”に名を借りた“右翼”に支配されてきた。その図式は現在も変わらない』。
標的走路
(大沢在昌)

図書館67
(809)
69
大沢在昌のデビュー作『佐久間公シリーズ』昭和55年に執筆された幻の長編小説。80年代の東京と軽井沢を舞台に巨大な陰謀に巻き込まれていくノンストップサスペンス。「法律事務所の失踪人調査人・佐久間公の乗る車に爆弾が仕掛けられていた。幸い難を逃れた公だが、犯人が誰だかわからない。そんななか、銀行の頭取令嬢の依頼で失踪した恋人を探してほしいと言われるが・・・」 スマホのない時代の話だが、かえってそれが緊迫感を生んで先が待ち遠しくて一気読み。大沢ハードボイルドの原点?と言われるが今の時代から見るとそんなにハードでもない、結構気軽の読める。40年前の作品なので著者が若くその後の作品からすると粗削りなのも仕方ない。
宙ごはん
(町田そのこ)

図書館66
(808)
68
『52ヘルツのクジラたち』の著者。人はそれぞれの痛みや苦しみを抱えながらも歩こうとしている・・・、再生と希望の物語。「生まれてすぐ叔母の風海に引き取られ育てられた宙(そら)。6歳になった時、母の花野と暮らすようになる。 理想の母親像とかけ離れた花野との暮らしの中で出会った人達や様々な(なかなかにヘビーな)出来事を通して成長していく宙」。 ちょっとこれはきついと気持ちが重くなるが、与えられた優しさは巡り、想いは引き継がれという救いの話でもある。『感情のままに哀しいことを言ったからって、それが本心とは限らない。本気で相手と向かい合っているから、疲れることもあるんだ』 『ひとの気持ちを軽視したら、いつか自分が軽視される。そういうものだろう』。
六月のぶりぶりぎっちょう
(万城目学)

図書館65
(807)
67
『八月の御所グラウンド』に続き京都と超常現象を組み合わせたシリーズ第2弾。“三月の局騒ぎ”と“六月のぶりぶりぎっちょう”の中編2つ。私的には“三月の…”の方がよかったかな。「三月の・・・:京都の女子大学生が暮らす女子寮には14回生?の“お局様”キヨなる人物が…。彼女は一体何者なのか? 謎に包まれたキヨと主人公の交流は淡く静かに続く。六月の…:京都を訪れた高校教師の滝川は、目覚めるとなぜか見知らぬ館で目覚め、起き抜けに銃殺死体を発見する。突然起きた密室殺人事件に巻き込まれた滝川は、本能寺の変の謎に挑んでしまう…」。一話は清少納言。二話は織田信長、明智光秀など、現代に蘇る(?)、本能寺で何故信長は死ななければならなかったかの謎に挑むお話 。
私の死体を探してください。
(星月渉)

図書館64
(806)
66
note創作大賞W受賞でテレビ東京でドラマ化されているとのことで読んだ。「ベストセラー作家・森林麻美がブログで自死をほのめかし『私の死体を探してください』という文章を残して消息を絶つ。担当編集者の池上は新作原稿を手に入れるため麻美を探すが、その後も作家のブログは更新を続け、様々な秘密が次々に暴露されていく。」 暴走する暴露ブログ、何のために?復讐か、破滅か、助けを求めているのか?物語の運びがうまく、読み始めると一気読み。ネットにさらされる怖さを逆手に取っている、さらに子供達が抱える問題(これは今の社会をしっかりとらえている)とがうまく絡んでいて、手軽に読める面白い作品だった。
刑事の枷
(堂場瞬一)

図書館63
(805)
65
身内を密告した嫌われ者×恐れ知らずの新米刑事の話。実際こんな刑事がいるのかな?と思いながら読んだが結構面白かった。「川崎中央署の新米刑事・村上翼は、人質事件をきっかけに傍若無人なベテラン刑事・影山康平に目をつけられ、強引に連れ回されるようになる。 署内の誰もが”裏切り者”と敬遠する影山が、実は10年前に起きた未解決の殺人事件を独自に捜査し続けていると知り、村上も事件解明へと乗り出すが、その矢先、新たな殺人事件が発生…」 少し、影山の秘密を引っ張りすぎた感じがして途中少しだれるが終わり方はよかった、人間臭い刑事ドラマって感じかな?警察の内輪を描いたものはやはり面白い!
リカバリー・カバヒコ
(青山美智子)

図書館62
(804)
64
やっぱりこの人の本は心優しい。引っ込み思案、自分の思いをだせない、自分はダメだと思っている人などに、勇気を与えてくれる。「人間の心はとても弱い、気がつけば悪い方へ流れてしまう。中学生の成績、ママ友との仲、OLの人間関係、足の遅い小学生、年老いた母と息子…。同じマンションに暮らす、そんな悩み弱みを持つ人達が公園にある古いアニマルライド、カバヒコに救いを求める。」 人は一歩踏み出すきっかけがあれば前に進んで行ける、公園に佇むカバヒコがそれを教えてくれる、と言うお話。『何が大事で必要か、そのつど選択しながら生きてるってことでしょう。何もかも全部はっきり見てやろうなんて、その方が傲慢ですよ。』。
銀河鉄道の夜
ほか2編
(宮沢賢治)

図書館61
(803)
63
ほか2編は『ざしき童子のはなし、グスコーブドリの伝記』、“グスコーブドリ・・・”は『風に立つ』に出たきたので始めて読んだ。何十年ぶりで読んだ“銀河鉄道”、こんなにも美しく哀しい話だったんだと、賢治のすごさを改めて思った。「“銀河”は気弱で孤独な少年ジョバンニと親友のカムパネルラが銀河鉄道で天の川に沿って南十字へと向かう銀河の旅。“”グスコープはイーハトーブの森に暮らすグスコーブドリは樵の息子。 飢饉で両親を失い、妹と生き別れ、工場に労働者として拾われるも火山噴火で工場が閉鎖するがのちに、クーボー大博士に出会い学問の道に入る。」と皆さんご存じのお話。じっく読めば読むほど奥が深い、児童文学ってこんな難しいのかな?よかったら読みなおしてください。
赤の呪縛
(堂場瞬一)

図書館60
(802)
62
『デビュー20周年の節目に、“父と子の相克”というテーマ挑んだ長編。警察官である息子と、政治家4である父。権力と血脈、信頼と裏切りに翻弄された男たちの物語…。』とあった。「銀座の高級クラブで放火事件が発生。オーナーと容疑者の女が命を失った。 警視庁捜査一課の刑事・滝上が、捜査を進めると、背後に政治家である父の存在が…。 かつて父を憎み、故郷を捨てた刑事は、過去と向き合うことに…。」 破滅するのは、父か、己か?今までにない刑事像で期待しながら読んだが何とも中途半端な幕切れで終わり消化不良だった。『政治家の悪事が発覚した時に、周辺の人間は一斉に口を閉ざす。あるいは自分で全ての罪を被ってしまう。刑務所に入ることになっても政治家を守る』。
九十八歳。戦いやまず日は暮れず
(佐藤愛子)
 61
2018年に紹介した『九十歳。何がめでたい』の続編。ラストに“みなさん、さようなら。ご機嫌よう。ご挨拶して罷ります”と、これが最後の本になるなかな?と思うがそうではない。愛子センセイがヘトヘトになりながら綴った、抱腹絶倒のエッセイ全21編(どこまでつづくヘトヘトぞ、今になってしみじみと、ブルンブルン体操、小さなマスク、マグロの気持ち、釈然としない話など)、よりパワフルになって面白い!『もしも大正生まれの老骨である私めが法改正するとしたら。“子供のしつけにはお尻を打つべし、それ以外はイカン”』 『聞かれて私は唸った。-別に老人が前向きに生きなければならないってことはないんじゃないの?もう前向きもヘッタクレもあるかいな」とても痛快!

← これは何?
霧をはらう
(雫井脩介)

図書館59
(801)
60
作家デビュー20周年、記念碑的傑作。“お母さんは死刑ですか、冤罪ですか?”「小児病棟で起きた点滴殺傷事件。4人の子供の点滴にインスリンが混入され、2人の幼い命が奪われた。物証がないまま逮捕されたのは、生き残った女児の母親。彼女は取り調べで自白するが、後に否認する。娘を懸命に支えていた母親は冷酷な殺人犯なのか?弁護士の伊豆原は勝算のない裁判に挑む・・・ 」 3人の弁護士たちの執念と思惑それに検事との闘い、ラストまで一気読み。日本の裁判の有罪率は99.9%、警察や検事が容疑をどう裏付けるかに執着していることが痛いほどわかる、こんなことが冤罪を生む一因になっているのだろうな。
完本
神坐す山の物語
(浅田次郎)

図書館58
(800)
59
2014年『神坐す山の物語』に続く、「奥多摩の、太古から神を祀ってきた霊山・御嶽(ミタケ)山。そこの神官屋敷は著者の実家である。少年だったころ、美しい伯母から聞かされた怪談めいた夜語り。怖いけれど、美しくも哀しく、どれも惹き込まれるものばかり」。神官の家に代々伝わる話を元に書かれた短編を編み直し、書き下ろし短編と本未収録作品を加えた完本。思議な世界に引き込まれる。『何も起こらなかったのは、とても幸せなことなのよ。それこそ神様に感謝しなくちゃ。いいね、何かを頂けるのはご利益じゃないのよ。何も起きないのがご利益』 『懺悔懺悔、六根清浄=懺悔は自分の犯した過ちを悔いて神様にお許しを乞うこと。六根清浄は、心と体が清らかになりますようにというお祈りの言葉なのよ』。
風に立つ
(柚月裕子)

図書館57
(799)
58
補導委託を引受けた父とそれに戸惑う息子と、問題ある少年を軸に物語が進む。「問題を起こし家裁に送られてきた少年を一定期間預かる補導委託を突然申し出た南部鉄器の職人父・孝雄。決して良い親子関係とは言えない父の思いもよらない行動に戸惑う息子・悟。納得のいかぬまま迎え入れることになった少年と工房で共に働き、同じ屋根の下で暮らすうちに、悟の心にも少しずつ変化が訪れてくる。』 親子や家族について考えさせられる、よかれと思うことが相手には負担になる。『人はいいことばかりではない、その逆もある。何が幸いで、何が不幸と思うかは人それぞれだ。ほかの人から見て辛い人生であっても本人がそう悪くないと思えばそれでいい。』 宮沢賢治の『グスコープドリの伝記』もキーワード。
オパールの炎
(桐野夏生)

図書館56
(798)
57
72年に『中絶禁止法に反対し、ピル解禁を要求する女性解放連合』を設立した榎美沙子がモデルの小説。「1999年に日本でピルが承認される約30年前に、ピル解禁と中絶の自由を訴える一人の女がいた。派手なパフォーマンスで一躍脚光を阿浴びるもその激しいやり口から『はしたない』『ただのおさがわせ女』などと奇異の目で見られ、やがて世間から忘れ去られてしまう・・・」。女の尊厳を踏みにじり、妊娠の自由すら与えない社会の暴力性は何故か受け入れられる。この矛盾と不均衡を鋭く突いた、世の理不尽を見つめ続けてきた著者ならでは…。『“産めよ増やせよ”と言う言葉があります。そのため当然のように国が女の身体と心を管理してきたのです』。

俺たちの箱根駅伝 上・下
(池井戸潤)


図書館54~55
(797)
55.56
箱根駅伝、公式な記録に残らないオープン参加の『学生連合チーム』を主役とし、中継するテレビ局の内側も描き上下巻で700ページを超えるのにアッと言う間に読み終えた。とにかく面白い。「明誠学院大学陸上競技部。箱根駅伝で連覇した過去もある名門も、既に今は昔。今年こそと奮闘するも、落選に落ち込む主将・青葉隼斗。しかし彼のみ『学生連合』に選抜され、箱根駅伝を走ることになる。明誠学院大学監督が監督経験のない甲斐に交代。しかも彼が学生連合の監督になり3位以上の目標を掲げる。寄せ集めの選手の彼らはは応えられるのか?公式順位がカウントされない学生連合。モチベーションは?ヤル気は?誇りは?一方中継担当は大日テレビ。総勢1,000人を超えるスタッフ。テレビマン達の闘いも今、号砲が鳴る。単なる中継とは違う苦悩、奮闘、そして・・・」。予選会で本戦出場が叶わなかった大学からたった1人選ばれた学生、率いる監督、コーチ、選ばれなかった学生。その家族、報じる大人たち。三浦しをんの『風が強く吹いている』も面白かったが、これは違う視点から描きさすが“池井戸潤”とうならせる。読みながら何度目頭が熱くなったことか。魅力的な人たちが紡ぎ出す人間ドラマ、最高だった。今まで、優勝争いに残るチームしか目がいかなかったが、次から見る視点が代わっ気がする。ただ、来年は「『学生連合』が結成されるのかな?
コンビニ兄弟3
(町田そのこ)

図書館53
(795)
54
シリーズ第三弾!テーマは“大人の恋。「①:〖推しが門司港を熱くする〗門司港に大好きなアイドルがやってきた!大ファンの中尾は駆けつけるが、彼には悩みがあるらしい。②:〖ハロー、フレンズ〗故郷を離れて暮らす若き主婦の新たなる一歩とは。③:〖華に嵐〗コンビニ兄弟の次男坊・ツギの心を激しく傷つけた魔性の女『偽装恋愛』を持ちかけてきた!」。今回はフェロモン店長不在のお話が三つ、特に第三話のツギにまつわる話がいい。門司港以外にも七城メロンドーム・別府・湯布院・和布刈なども出てきて嬉しくなる。このシリーズ現実的にはあり得ないことが多いが悪人が出てこないので心地よい。
任侠楽団
(今野敏)

図書館52
(794)
53
ヤクザが人と会社を立て直す『任侠』シリーズ第6弾(私は3作目)。「今度は公演間近のオーケストラ!ヤクザということがばれないように、コンサルティング会社の社員を装う代貸の日村。慣れないネクタイを絞めるだけでもうんざりなのに、楽団員同士のいざこざが頻発する。そんな中、指揮者が襲撃される事件が発生!そこに警視庁捜査一課からあの刑事がやってくる・・・」。相変わらず、肩がこらず楽しく読める。著者は音楽にも造詣が深いのか、または取材のたまものか、音楽に詳しくない私には『そんなものか』と勉強になった。こんな世直しヤクザがいたら面白いのに・・・。『物事はな、なるようにしかならねえんだ。あれこれ心配しても始まらねぇ』。
板上に咲く
(原田マハ)

図書館51
(793)
52
棟方志功の人生を妻・チヤの視点から描く。日本で版画がまだまだ認められていなかった時代、妻のチヤなくしは志功の成功はなかったかも・・・。「1924年、画家への憧れを胸に裸一貫で青森から上京した棟方志功。 しかし、絵を教えてくれる師もおらず、画材を買うお金もなく、弱視のせいでモデルの身体の線を捉えられない棟方は、展覧会に出品するも落選し続ける日々。 そんな彼が辿り着いたのが木版画だった。」。ほとんど棟方志功の事を知らなかったので、とても面白く読んだ。太陽の棟方をひまわりの奥さんが追い続けて行く、夫婦の愛の物語。やはり涙してしまう。『ようやく手に入れた穏やかな暮らし。創作の場。子供らの成長。ささやかな幸せ。戦争がそれらをやがて奪い去る気がしてならなかった』。
オリンピックを殺す日
(堂場瞬一)

図書館50
(792)
51
オリンピックに代わる“ザ・ゲーム”という名のバックに国や企業などしがらみのない世界的なスポーツ競技大会。「コロナ禍にもかかわらず、強引に開催された東京五輪の最中、大学教授が、『五輪は集金・分配システムに変化し、意義を失った』という言葉を残して、日本を去った。数年後、世界的企業が、新たなスポーツ大会“ザ・ゲーム”を企画している、という情報が…。」。東京オリンピックでも、あれほど非難したメディアや国民、いざ始まると何事もなかったように…。テレビの放映時間の都合で決められる試合時間、メダルを取るためのなりふり構わぬドーピング、不公平な判定…様々な問題があるが一切解決されない。こんなオリンピックに意味があるのか?犠牲になるのは選手。
八月の御所グラウンド
(万城目 学)

図書館49
(791)
50
第170回直木賞受賞作品。こんな物語は大好き、映画『フィールド・オブ・ドリームス』や浅田次郎の『地下鉄に乗って』などを思い出す。“女子全国高校駅伝”と謎の“草野球大会”を舞台にした2編。「・十二月の都大路上下ル:都大路にピンチランナーとして挑む、絶望的に方向音痴な女子高校生。・八月の御所グランド:借金のカタに、早朝の御所G(グラウンド)でたまひで杯に参加する羽目になった大学生。」駅伝と新撰組、草野球と沢村栄治の奇跡を呼ぶお話、舞台が京都だからか、さもありなん。じんわり優しく、少し切ない青春の愛しく、ほろ苦い味わい。『俺たち、ちゃんと生きてるか?』 温かい気持ちになる青春小説、お薦め!著者は京大法学部卒(初読み作家)。
婿どの相逢席
(西條奈加)

図書館48
(790)
49
料理が取り持つ情けと縁。くすっと笑って、ポロリと泣ける夫婦奮闘記!「小さな楊枝屋の四男・鈴之助は、相思相愛のお千瀬の生家である大店の仕出屋“逢見屋”へめでたく婿入り。誰もが羨む逆玉婚のはずだったが、祝言の翌日大女将から思いもよらない話を聞かされる...。」。何と婿入りした先は、代々女将が店を切り盛りし、婿どのは口出し無用、さぁどうする鈴之助。この著者のものは心に響くやさしさがある。後半ぐっと面白くなる。『夫婦でも親子でも、気持ちのかけ違いは実にたやすく起こり得る。誰よりも近くにいて、共に暮らすからこそ、諍いの種は無尽蔵にそこらに落ちていて尽きることがない。それを毎日、丹念に拾っていくのが家族を続けて行くため秘訣かもしれない』。
野火、奔る
(あさのあつこ)

図書館47
(789)
48
『弥勒シリーズ』第12弾!やはり面白かった。「同心・木暮信次郎と、元刺客の商人・遠野屋清之介、それに岡っ引きの伊佐治。遠野屋の荷物を乗せた船の行方が消え、先年の事件で八代屋から逃れ受け入れた娘おちやを、理不尽に取り戻そうとする騒動が起きる。遠野屋を襲う不穏な動きに、清之介と信二郎はどう絡んで行くのか・・・」。今回、新次郎の推理が冴える、相変わらずの3人だが読みだすと止まらない。ラストの“月は雲に吞み込まれたらしい”の表現、何ぃ、まだ話は続いていくのか?不穏な終わり方だった。早く続きが読みたい。著者は江戸の町や自然の移ろいの描写や人の心根を描くのが非常に上手い。累計110万部突破というから人気のほどが知れる。
日本人が知らない! 世界史の原理
(茂木誠/宇山卓栄)

図書館46
(788)
47
ユダヤとパレスチナ、ロシアとウクライナ、反日の起源、中国共産党、ケルトとアイヌ、アメリカという病・・・。古代から中世、近世、近代、現代に至る世界史の大きな流れとその背景、日本が辿ってきた道を説明している。しかし、徳川日本は世界有数の重武装中立国家だったために明治維新を乗り越えた、だから現代も重武装は必要、移民反対、反共、反ユダヤ(アメリカ民主党の支持者はユダヤ人)、『風と共に去りぬ』は奴隷制度が描かれているのでアメリカでは上映不可能など・・・。読むうちに著者二人のおそらく右寄りの考えが表に出てきて特にウクライナ・ロシア問題など納得のいかないところが多い。歴史の流れをつかむくらいの気持ちで読むと知らなかった部分も見えてくる。
対決
(月村了衛)

図書館45
(787)
46
“新聞記者 vs. 医大理事。一歩もひかぬ、二人の女。思いは同じ――後に続く女性のために“。この帯を見ただけで読書欲をそそられる。「新聞記者の檜葉菊乃は、統和医科大学が入試で女性の得点を意図的に下げているという情報を得た。医大を目指す女子学生や我が娘のため、菊乃は真相を突き止めようと取材を進める。菊乃は証言を求めて統和医大理事の神林晴海と接触するが、晴海は大学を守るため、不正入試の実態を認めようとしない。」。背景にあるのは今の社会に寝ずよくある差別(性差、セクハラ、パワハラ・・・)。ともに男性優位社会でここまで登り詰めるまで数々のハラスメントを受けてきた女性二人の戦い、どちらも応援したくなる。差別や偏見って無くならないのだろうな。
残像
(伊岡瞬)

図書館44
(786)
45
「浪人生の堀部一平は、バイト先で倒れた葛城に付き添い自宅アパートを訪れた。そこでは晴子、夏樹、多恵の年代もバラバラな女性3人と小学生の冬馬が共同生活を送っていた。女性3人には前科があるとわかる。一方、政治家の息子・吉井恭一は、歪んだ過去の写真が送られて脅迫されている。彼にも幼少期に辛い経験があった…。」。結果は心温まるサスペンスという感じだが、やはりクソ男(政治家の息子)が出てくる、これがどうしようもない(少年に対する性加害、女性に対する残虐性など)。『毎日流れるニュースは、この国がいかに不公平にできているかの証明ばかりだ。社会の一員としての自覚なんてものを若者に説教できる会社のお偉いさんや国会議員がいるのか』。
名探偵のままでいて
(小西 マサテル)

図書館43
(785)
44
2023年『このミステリーがすごい』大賞受賞!と言ってもミステリー部分がそんなに強くなく、読後感がスッキリとする物語。連作になっているものの話は全部つながっている。「かつて小学校の校長だった切れ者の祖父は、七十一歳となった現在、レビー小体型認知症を患い、介護を受けながら暮らしていた。しかし、孫娘の楓が身の回りで生じた謎について話して聞かせると、安楽椅子探偵さながら謎めいた事件を解決していく…。」。認知症を患った老人が探偵役と言うのがユニークで面白い。いたるところに伏線が張り巡らせているがするりと読むと見逃してしまう。著者は本作がデビュー作になる。
コンビニ兄弟2
(町田そのこ)

図書館42
(784)
43
もちろん、シリーズ第2弾、今回は三つのお話。「①失恋をして居心地の悪さに高校をサボった詩乃は、突然綺麗になった祖母と意外なところで出会う。②バイト店員・廣瀬太郎は自分のことを退屈な男だと思っているのに、キラキラ美少女がその日常を乱し始める。③どうして親友は去っていったんだろう。村井美月の直面する現実と勇気の一歩。」 どの話もしっかりと胸に落ちてくる。こんなコンビニ・町があったらいいなぁ~、門司港に行ってみたくなる。『人を好きになるっていいことよ。その時は相手だけやなくて、その人を好きな自分までも好きになれたらいいと思う。相手を大事にして、同じくらい自分を大事にする。大事な相手に見合う自分でいよう』。
コンビニ兄弟
(町田そのこ)
図書館41
(783)
42
前作と同じ著者。サブタイトルが―テンダネス門司港こがね村店―。「門司港にあるコンビニで働くパート店員の日々の楽しdみは、勤勉なのに老若男女を意図せず籠絡してしまう魔性のフェロモン店長・志波三彦を観察すること。なぜなら今日もまた…。」。友達グループの中で居場所を失う少女、親友に憧れる少年、漫画家になる夢を捨てきれない塾講師、密かに店長をネタにWeb漫画を投稿している従業員など、心温まる連作短編集。前作の「あなたは・・・」もそうだが、人の気持ちを察することの大切さを教えてくれる。『何を言われても平気。人の顔色を気にするより、もっと大事なことがあるんだ。あとであんなくだらないことのために大事なものを蔑ろにしたんだって後悔したくない。』。
あなたはここにいなくとも
(町田そのこ)

図書館40
(782)
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『人生の迷子たちへの贈り物!本当の自分を取り戻すための、やさしいレシピ』。北九州が舞台(著者は青春時代を小倉で過ごしている)5つの短編、おばあちゃんテーマ集。「・恋人に紹介できない家族・会社でのいじめによる対人恐怖・人間関係をリセットしたくなる衝動・わきまえていたはずだった不倫・ずっと側にいると思っていた幼馴染との別れ―」。どの話もやさしいおばあさんがたまらない。『頑張ったからって成果が出ないこともある。もちろん大変なことがたくさんあるでしょう。大丈夫、きっといつか何もかも穏やかに眺められる日が来る…』。 “正論がいつもいいとは限らない、上から目線、相手を傷つけていることもある”、そう相手の気持ちを思いやることの方がいかに大事か・・・。元気が出る本!
永田町のシンデレラ
(西川三郎)

図書館39
(781)
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『日本初の女性総理が、腐った政界をぶっ壊す!間違いだらけの日本政界に一石を投じる、傑作政治小説』とあった。日本の政治もこんな風に変わってっくれたらいいのになぁ~と思わせる。「キャスター出身の女性政治家・松嶋玲子。少子化対策担当大臣として奮闘するが、夫の敏腕トレーダー・圭とは不仲でほとんど会話がない。そんなある日、総理が倒れ、予期せず総裁選に出馬する羽目に…」 まったく今の政界そのままに、麻生や二階などどうしようもない爺さまたちから裏金問題まで魑魅魍魎の永田町の裏が描かれる。軽い軽いノリで書いているのでスイスイ読めて、爽快!現実の政界の現状を見れば夢物語に思えるけれど、エンタメとしては面白かった。続編があったら是非読んでみたい。
ただいま神様当番
(青山美智子)

図書館38
(780)
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“神様って、自分の心の中の声?”「坂下バス停、七時二十三分のバスに乗る5人。幸せの順番待ちに疲れたOL、弟にうんざりしている小学生の女の子、リア充と思われたい男子高校生、乱れた日本語に悩まされる外国人教師、部下が気に入らないワンマン社長。この5人、朝目を覚ますと手首から腕にかけて『神様当番』と太くて大きな文字が書かれていた。突如目の前に現れた神様を名乗るおじいさん、わしの願いをかなえてくれと言う」 。ムフフと笑ってほろりと泣ける、5つのあたたかい物語。あ~あ、私も悩んだとき後ろから背を押してくれるこんな神差が欲しい。この人のお話はいつも気持ちがホッコリとなる。
正欲
(朝井リョウ)

図書館37
(779)
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柴田錬三郎賞受賞作、映画化もされている。"多様性を尊重する時代"に生きづらさを感じる人たちの物語。「息子が不登校になった検事・啓喜。初めての恋に気づいた女子大生・八重子。ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。あるきっかけでそれぞれの人生が重なり合う。」。 映画は見ていないがこの複雑な心の動きを脚本家はどう描いたのだろう?今の世の中、大多数の人が考えられる多様性は認められていくが、少数の人の性的指向などは考えられてないとうのが主題となっているが、私にはスッキリをこないものもあった。『多様性とは、都合よく使える美しい言葉ではない。自分の想像力の限界を突きつけられる言葉のはずだ。時に吐き気を催し、時には眼を瞑りたくなるほど・・・』。
大義: 横浜みなとみらい署暴対係
(今野敏)
図書館36
(778)
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俺たちの所轄で暴力は許さない!“ハマの用心棒”こと諸橋と、部下の活躍を描くスピ いまのンオフ集。七つの短編からなる。「『タマ取り』神野が同い年位の謎の男に命を狙われているという話が勘違いで終わる『 謹慎』 諸橋城島が勘違いし互いを庇いあって証言を控えたために起こった誤解。『やせ我慢』は浜崎の成長譚『内通』は薬売人に捜査情報が漏れていてみなとみらい署が疑われたが現行犯逮捕で事が収まり本部からの内通で決着『大義』本部長が神野に関心を寄せる『表裏』ジャーナリストの増井がヤクザの五十田に絡められ脅される『心技体』は倉持が主人公。」 係長以下の部下はそれぞれ癖がある人物だが今回はそれらの人物から見たこの係の活躍を書いている。いつも通り手軽に読める。


半暮刻
(月村了衛)



図書館35
(777)
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施設育ちの元不良と有名私大に通うエリート。同じ半グレのもとで出会った2人を通じて“日本社会の歪みが見えてくる。ヤクザ、半グレ、エリート、巨大企業、政府…日本にとっての真の正義とは何だ…。「施設で育った翔太は、会員制バー“カタラ”のホストとなる。女性を騙して貢がせ借金塗れにして風俗に落とす半グレそこで翔太は大学生の海斗と出会い、共に売上げトップテンへと昇り詰めるが、カタラの悪事が暴かれ二人は失職。翔太は懲役3年。一方執行猶予判決の凱斗は大手広告代理店に入社し頭角を現すが…」。半グレの暴力事件、東京オリンピックにまつわる癒着や談合、大手広告代理店の女性社員の自殺など実際にあった事件を取り混ぜながら本物の悪を描く社会派小説、すごく読み応えがあった。あまりにも現実とマッチングしていて今の社会に腹が立ってきた。今年の一押し
『政財界は言うに及ばず暗い影の部分にまで根を伸ばす人脈が巨大企業を築く礎となる』
『改憲こそが日本のために正しい選択だという思想を国民に植え付ける。与党はそのた めにありったけの税金を回してくれるだろう』
『マスコミや市民団体がかぎつけたとしても公文書も役所が勝手に黒塗りで出してくれます。下っ端の役人はよっぽど塗り絵が好きなんでしょうね』
『総理や政治家どんなスキャンダルを起こそうと、大衆はすぐに忘れてしまう。むしろ意図しているんだな、そうでなきゃ日本人は記憶障害か何かだよ』。
N
(道尾秀介)
図書館34
(776)
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六つの章からなるが読む順番は自由。 はじめに、それぞれの章の冒頭部分だけが書かれている。 読みたいと思った章を選び、そのページに移動して読むというもの。(各章ごとに逆さまに印刷されている)。「・“魔法の鼻を持つ犬”とともに教え子の秘密を探る理科教師。 ・“死んでくれない?”鳥がしゃべった言葉の謎を解く高校生。 ・定年を迎えた英語教師だけが知る、少女を殺害した真犯人。 ・殺した恋人の遺体を消し去ってくれた、正体不明の侵入者。 ・ターミナルケアを通じて、生まれて初めて奇跡を見た看護師。 ・殺人事件の真実を掴むべく、ペット探偵を尾行する女性刑事。」それぞれの話に少しずつ関係した人物が出てくるが時系列に整理できたらなお面白いと思われる。よく考えつくものだ。
トランパー
(今野敏)

図書館33
(775)
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タイトルの『トランパー』とは貨物の有無により不定期に運航される船で運ばれる貨物のこと。従って取り込み詐欺などに利用されやすい。『ハマの用心棒』こと諸橋係長が活躍するシリーズ 「諸橋のところに県警本部の捜査二課のキャリアんの女性課長から取り込み詐欺のことで協力要請がきたのをきっかけに、捜査をしていた刑事が殺害されたあたりから話がどんどん広がり、本部の公安、二課、暴対果てには中国公安部、コンテナを利用した人身売買や麻薬密輸をとりしきる中国マフィアまで絡んでくる・・・。」このシリーズは好き、面白くて、とても読みやすい。『最近の警官たちを見ていると、心のバネが弱い気がする。苦悩やストレスは誰にも襲いかかる。それをはね返すのが心のバネだ』。
一夜の夢
照降町四季(四) (佐伯泰英)

図書館32
(774)
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全4巻完結!「大火からの復興の要として照降町の人びとの支えとなっている周五郎だったが、小倉藩の派闘争いの中、実兄が暗殺される。藩の行く末と町での暮らしの間で揺れる周五郎、その周五郎がいずれ去ることを覚悟する佳乃・・・。」。『一夜の夢』タイトルから、ラストはこうなるだろうと予測はつくもののやはり切ない。著者のスタイルは物語の展開とか構成をたてて書き始めることはないそうで『居眠り磐音』シリーズみたいに50巻超えても完成してないものもあるが、本作は4巻で完結、時代小説初心者さんにもすすめやすいお話となっている。
梅花下駄
照降町四季(三
)
(佐伯泰英)
図書館31
(773)
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己丑の大火のあった春先から季節は夏に…復興が加速するシリーズ第3弾。「復興を遂げ始めた照降町で鼻緒屋が新しく建て替えられ、梅花花魁に注文された三つ歯下駄に梅の花をデザインした絵も描いて納品。花魁は高下駄をたいそう気に入る。落籍され方々の手配りで照降町で道中をする中、周五郎の兄が身罷り実家から戻るように告げられる・・・。」。悩み、考えるも、思い切りの良い女たちの格好いい様が心地いい。出来上がった下駄を履いての照降町花魁道中に感動しグッときた。さぁ、周五郎は再び照降町に戻れるのか…波乱の最終巻へ。
己丑の大火
照降町四季(二)
(佐伯泰英)

図書館30
(772)
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シリーズ第2弾、今回は『江戸の大火と復興』をバックに描かれる。「文政12年3月、神田佐久間町の材木置き場の奥で、消し忘れた小さな火がくすぶり始めていた。ついに『己丑の大火』が江戸を襲う。鼻緒挿げの女職人・佳乃と、その弟子の武家・周五郎は、すべてを焼き尽くそうとする火から、照降町を守るべく奮闘する。ご神木の梅の木が燃えようとしたその時、佳乃の決死の行動が、あきらめかけた町人たちを奮い立たせる! 」。家も焼け、父も病で亡くなってしまうが、佳乃は仕事を再開し、強く逞しく成長していく姿が頼もしい。周五郎や幸次郎との関係もやきもきさせるが、この先どうなるかも楽しみ。
初詣で
照降町四季(一)
(佐伯泰英)

図書館29
(771)
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『居眠り磐音』の著者、久しぶりにこの人のものを読んだ。とても読みやすく面白い。江戸の女性職人が主人公の書下ろし新シリーズ〈照降町四季〉全4巻の第1巻「文政11年暮れ。男と駆け落ちした鼻緒屋の娘・佳乃が三年ぶりに照降町の実家に戻ってきた。父は病に伏し、見習いとして浪人の八頭司周五郎を受け入れていた。町の人びとの人情に触れ、佳乃は女職人として鼻緒挿げの腕を磨く決意をするが ・・・。 」 小君よいお話、心温まるやら、おっかなびっくりするやら楽しい 。先も気になるしすぐに2巻目を予約した。
逆ソクラテス
(伊坂幸太郎)
図書館28
(770)

29
この著者にしては珍しく少年・少女を主人公にしたお話(本屋大賞ノミネート、柴田錬三郎賞受賞作)。「“逆ソクラテス”:逆転劇なるか?カンニングから始まったその作戦は、クラスメイトを巻き込み、思いもよらぬ結末を迎える。“スロウではない”:足の速さだけが正義ではない? 運動音痴の少年は、運動会のリレー選手にくじ引きで選ばれてしまうが・・・。“アンスポーツマンライク”:最後のミニバス大会。5人は、あと一歩のところで、“敵”に負けてしまった。アンハッピー。でも、戦いはまだ続いているかも。ほか、“非オプティマス”“逆ワシントン”」 短編全5編、まるで重松清を思い起こす。『昔のソクラテスさんも言っている。自分は何も知らない、ってことを知っているだけ、自分はマシだ』。
いつもの木曜日
(青山美智子)

図書館27
(769)

28
イヤミスの後は心温まるお話。「『木曜日にはココアを』に繋がる温かな物語。その12編の物語に登場したワタル、朝美、えな、泰子、理沙、美佐子、優、ラルフ、シンディ、アツコ、メアリー、そしてマコ。これは彼、彼女たちがあの日に出会う前の物語。」 イラストも素敵、かわいい大人の絵本と言った感じ。この人の本は何て温かいんだろう、元気をもらえる本。『あっという間の人生は、思い通りになんかならないけど・・・。身を固くして戦闘態勢に入るんじゃなくて、心をやわらかくしてどんと構える。そういう強さが私は欲しい。』 『青信号は「進め」じゃなくて、「進むことができる」』 “木曜日には・・”の後に読むといい。
人間標本
(湊かなえ)

図書館26
(768)

27
イヤミスの女王、15周年記念書下ろし作品。イヤァ~おぞましいというか、江戸川乱歩の『人間椅子』を上回る不気味さとの評もあった。「画家の父のようにはなれず、蝶に魅せられ学者として大成した史朗。蝶の標本だけでは物足りず、美少年を標本にして詳細をネット小説にして写真とともにアップ。最後の被害者は息子という猟奇的犯行。いや、息子を庇ったのか・・・」 話は二転三転し後半から、そうきたか.という感じで面白くなる。『子どもの幸せを考えて、という“幸せ”の基準も親としての大義名分をかかげた自分の押しつけだと気づきもせず・・・』。タイトルからして不気味、たっぷり嫌な気持ちになるが何故か惹きつけられる。
グレイラットの殺人
(M・W・クレイヴン)

図書館25
(767)
26
文庫本で700ページを超える長さ、しかも翻訳物。長いので話が広がりすぎて当初わかりにくかったが進むにつれて了解。「貸金庫を襲った強盗団が、身元不明の遺体と鼠の置物を残して姿を消した。三年後、サミット開催が迫るなか要人を搬送するヘリコプター会社の社長が殺される。テロを警戒した政府はポーに事件の捜査を命じるが、MI5の妨害で捜査は遅々として進まない。天才分析官ティリーが発見したデータのおかげで犯人を追いつめたかに見えたが…」。“刑事ワシントン・ポーシリーズ”第4作ということだったがこのシリーズ初読み。よく練られている。『戦争屋と化した政治家たち、他人の命を使い捨てにする政治家たち・・・。悲惨な形での人命の損失に思いを巡らせた』 これがキーポイント。
台北アセット
(今野敏)

図書館24
(766)
25
公安外事・倉島警部補シリーズ第7作。「公安部外事一課の倉島は、台湾の警察から研修の講師を依頼され、ゼロの研修から戻った後輩の西本と台北に向かった。 そこで倉島は、サイバー攻撃を受けた日本企業の現地法人から捜査を要請されるが、その会社のシステム担当者が殺害され、日本人役員に疑いの目が向けられる。」 何となく生ぬるい、ストーリーは、やや単調であり、更に犯人は中盤から予想の範囲内であり醍醐味に欠けた。倉島も外国で仕事をする時のもどかしさ感じたのだろうスピード感がなかった。『現在の日本の平和は、戦後アメリカによってもたらされただけだと見る向きもある。国民は骨抜きにされ、政治に無関心になり、それ故に極めて危うい平和なのだと』。
まいまいつぶろ
(村木嵐)

図書館23
(765)
24
日本歴史時代作家協会賞、本屋が選ぶ時代小説大賞受賞。直木賞候補作品。当今貴重な『清く正しく美しい』小説。「徳川吉宗公の嫡男。身体に麻痺を抱え、口がまわらず、誰にも言葉が届かず。尿漏れの跡が残るため、まいまいつぶろ(カタツムリ)と呼ばれ蔑まれてきた第九代将軍・家重と 彼の言葉を解する唯一無二の家臣・大岡忠光。 主従を越え、心から信頼し合う二人・・」。 九代将軍家重が不遇の生まれとは知らなかった。家重を取り囲む人々も魅力的で優しい気持ちが伝わってくる。『もう一度生まれても、私はこの身体でよい。忠光に会えるのならば』。初読み作家だったが著者は京大法学部卒、司馬遼太郎家で家事手伝いとなり、後に司馬婦人の個人秘書を務めている。
夜果つるところ
(恩田陸)

図書館22
(764)
23
昨年紹介した『鈍色幻視行』の核となる小説。“本格的にメタフィクションをやってみたい”という著者渾身の挑戦だとか・・。ちょっとおどろおどろしく、あまりお薦めはできないが面白い。「昭和初期の山間の遊廓“墜月荘”で、三人の母と共に暮らすビィちゃん。墜月荘に現れる男達、着流しの作家笹野、背広の子爵、軍服に羽織った蜘蛛の巣の着物をまとい踊る久我原。そして、カーキ色の癖の強い軍人達。ついに革命が起きる・・・」 癖耽美的で怪奇的な恩田ワールドの世界が描かれる。何故?何故?と思いながら読むが、ラストで全てが分かるわけでもない、ちょっと不思議な小説。『鈍色幻視行』をもう一回読むといいかもしれないが、その気力が無い。
あなたが誰かを殺した
(東野圭吾)

図書館21
(763)
22
ミステリーど真ん中、加賀恭一郎シリーズ(最新作)。とても面白いが少し詰め込みすぎた感じがした。「閑静な別荘地で5人が死亡、1人が怪我を負う殺傷事件が起きた。犯人は自首したが事件の詳細は一切語らず、業を煮やした遺族らは自分たちで事件を検証することに。事件で夫を亡くした鷲尾春那は、職場の先輩の紹介で、休暇中の加賀恭一郎を伴い検証会に参加する―」 。人間の汚い所がどこまでも交差していて、結末にはびっくり。加賀には絶対に嘘は通用しない、そうですこんな刑事(探偵)がいたらいいのに・・・。『悪事に手を染め、私腹を肥やしながらも罪に問われず、のうのうと生きている奴がいる』 まさか、安部派幹部では?とつい思ってしまった。
アリアドネの声
(井上真偽)

図書館20
(762)

21
光も音も届かない絶対的迷宮、生還不能まで残り6時間。「少年の頃、海の事故で兄を失った高木春生は、災害救助用のドローン〈アリアドネ〉の開発に関わっていた。ドローン特区にも指定されている地下シティの式典に参加中、巨大地震に見舞われた彼は、アリアドネを使って地下深くに孤立した被災者を救出することに。しかし、救出される女性は、見えない、聞こえない、話せないの3つの障害を抱えている…。」 ヘレン・ケラーと同じ障害を持った人をどうして地上からドローンを使って助け出せるのか?一気読み。最後のドンデン返しでスッと心が晴れる。『人って目や耳だけで、周りを把握しているんじゃないんです。このへん、普通の人にはわかってもらえないかんかくだとおもいますが・・・』。
月曜日の抹茶カフェ
(青山美智子)

図書館19
(761)

20
『木曜日にはココアを』の続編!マーブルカフェを交差していく人たちの12の物語、“思わぬ出会いから人生はもっと豊かになる” 「マーブル・カフェが定休日の月曜日に、1度だけ“抹茶カフェ”が開かれた。そこを訪れた客に、提供された一杯の抹茶と和菓子からはじまる。ツイていない携帯ショップ店員と愛想のない茶問屋の若旦那、妻を怒らせてしまった夫とランジェリーショップのデザイナー兼店主、恋人に別れを告げたばかりのシンガーと実家の祖母と折り合いが悪い紙芝居師など・・」 。 この著者の素敵なあったか世界をゆっくり堪能した。「思い出って流れゆく時間を留めておくピンのようなものかもしれませんね。だけど留める場所はそれぞれだから、ピンの位置がちょっとずれたりもするんです』。読後感最高!
黄色い家
(川上未映子)

図書館18
(760)

19
タイトルは何となく優しそう、ところが“ノンストップ・ノワール小説!人はなぜ、金に狂い、罪を犯すのか”。600ページの長さ、読むのにちょっしんどかったが心にずしりと落ちてくる本。「15歳の夏、親もとを出て『黄色い家』に集った少女たちは、生きていくためにカード犯罪の出し子というシノギに手を染める。危ういバランスで成り立っていた共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解していく」。金、というか黄色に固執してどんどん狂っていく人間、登場人物全員苦しい。『金は権力で、貧乏は暴力だよ』 格差社会の矛盾に切り込んでいて、ぐいぐい引かれる。『幸せな人間っていうのはいるんだよ。でもそれは金があるから、仕事があるから幸せなんじゃないよ。あいつらは考えないから幸せなんだよ』。
リラの花咲くけものみち
(藤岡陽子)

図書館17
(759)
18
自らの人生を変えてゆく少女の姿を描いた物語 「家庭環境に悩み心に傷を負った聡里は、祖母とペットに支えられて獣医師を目指し、北海道の獣医学大学へ進学、自らの居場所を見つけていく・・・」 主人公がたくさんの人たちに助けられ励まされ成長する姿が丁寧に描かれていて、すごくいい。久しぶりに読んだ王道をいく成長物語。獣医の仕事がこんなにい大変な仕事だとは思わなかった。また、獣医は犬・猫を治療するという印象が強かったが、大動物という牛や馬の出産、治療という世界も知った。素敵な花言葉がたくさん、『ハリエンジュ:頼られる人、クリスマスローズ:私を忘れないで、白いガーベラ:希望、白樺:あなたを待っています』。“不幸中の幸いをみつける”おばあちゃんの生き方が素晴らしい。
木曜日にはココアを
(青山美智子)

図書館16
(758)
17
2017年の本。マーブルカフェから始まる心地いい連作。「僕が働いている喫茶店。必ず木曜日にきて、いつも同じ席で手紙を書く女性がいる。そして、頼むのは、決まってココア。僕は、その女性を“ココアさん”と密かに呼んでいる。ある木曜日。ココアさんはいつものようにやってきたのだが、どこか様子が違い…」 12の短編からなるチェーンストーリー、ほっこり心が温かくなりホットココアを飲みたくなる。 『子供の中で仕事をしたかった。まっすぐな道を教えたかった。正しさが疎まれる、そんな大人達の群れにいるのがしんどかった』 『正しい謙虚さというのは正しい自信だし、本当のやさしさは本当のたくましさじゃないかしら』。素敵なココアを飲みにきください!
じい散歩
妻の反乱

(藤野千夜)
図書館15
(757)

16
『じい散歩』の続編。「前作からさらに歳を重ね、夫婦あわせて180歳を超えた新平と英子。3人の独身中年息子たちは相変わらずで、自宅介護が必要になった母親の面倒を見る気配もない。老老介護の束の間の息抜きは、趣味の散歩や食べ歩きだが、留守番している妻への土産も忘れない。老夫婦の道のりは・・・」。可笑しいながらもどこか身につまされる。それにしてもこの3人の息子達、どうにかならなものか・・・、現実がこんなだったらたまらない。と思うが、家族で懸命に生きてきた結果が今なのだと受け入れる生き方は、やはり素晴らしい。果たして妻の“反乱”とは?
食堂かたつむり
(小川糸)

図書館14
(756)

15
本作がデビュー作で、“小川糸の原点”とあったが、料理に疎い私には(所々気持ち悪い場面もあったりして)今一だった優しさには満ちているのですが・・・。「都会で同棲相手にひどい別れ方をされ、そのショックで声まで失くした倫子が 田舎の実家の敷地内で、“食堂かたつむり”を開き1日1組のお客をとる、しかも決まったメニューもない。 わけありの母親に対して、いい感情は持っていなかったけど、 最後は 母の愛情を感じる・・・」 いろんな料理を作るシーンがわんさか、美味しそうではあるが・・・。『人間生きるには食べなくちゃならない。しゃべれなくても料理ができれば稼げる、いや、誰かを幸せにできる。』 と、そんなお話。文庫版には番外編が掲載されていたが、これはいらなかった。
秋麗
東京湾臨海署安積班
(今野敏)

図書館13
(755)
14
「歳を取って誰からも相手にされなくなった孤独な老人が特殊詐欺事件を起こし、それがもとで殺され青海三丁目付近の海上で発見された。遺体が見つかる前日に彼と一緒にいた釣り仲間の2人に安積警部補が話を聞きに行くと、ふたりとも何かに怯えた様子で…」 とても気楽に読める警察小説、今回悪い刑事は出てこない。『自分が誰からも必要とされなくなる。それでも毅然としていられるかどう…。それが怖い』 “老い”も大きなテーマの一つになっている。一人の刑事が言う『秋は美しい季節だ。だから、人生の秋だってきっと美しい』 こんな風に生きたぁ~い!。
自転しながら公転する
(山本文緒)

図書館12
(754)

13
本作は2020年に刊行され『中央公論文芸賞』に決まっていたが著者は贈賞式前に58歳で亡くなった。「母の看病のため実家に戻ってきた32歳の都(みやこ)。アウトレットモールのアパレルで契約社員として働きながら、寿司職人の貫一と付き合いはじめるが、彼との結婚は見えない。職場は頼りない店長、上司のセクハラと問題だらけ。母の具合は一進一退・・・。」 とても内容のあるいい話なのだが、揺れ動く女心、煮え切らない男の気持など、登場人物に感情移入ができなかった。単行本化にあたりプロローグとエピローグが書き加えられていたが、果たして必要だったか? 『幸せにならなきゃって思い詰めると、ちょっとの不幸が許せなくなる。少しくらい不幸でいい。思い通りにはならない物よ』。

お探し物は図書室まで
(青山美智子)



図書館11
(753)

12
暖かくて優しいハートフルなお話。「探し物は、本ですか? 仕事ですか? 人生ですか?人生に悩む人々が、ふとしたきっかけで訪れた小さな図書室。彼らの背中を、不愛想だけど聞き上手な司書さんが、思いもよらない本のセレクトと可愛い付録で、後押ししてくれる」 内容はそれぞれに悩みや葛藤を抱い5人が司書の小町さんと会話をする中で自分の思いを打ち明けていく・・。
しかし、探し物を見つけるのはあくまでも自分。人生に迷ったときに背中を押してくれる本。
5つの短編で構成されているがところどころに登場人物同士の繋がりがあるのも面白い。
『お金も時間も勇気も無い。その“ない”を目標にするのです、お金を用意すること、時間を作ること、勇気を持つことを』
『人生で一番頑張ったのは生まれた時、その後あの時ほど辛いことはない、あんなすごいことに耐えられたんだから』
『計画や予定が狂うことを不運とか失敗って思わなくていいの、そうやって変わっていくのよ、自分も人生も』
『私たちは大きなことから小さなことまで“どんなに努力しても、思い通りにはできないこと”に囲まれて生きています』
『前ばかり見ていると視野が狭くなるの、だから行きづまって悩んだ時見方を変えて肩の力を抜いて、横を向いて』
『12個入りの箱にのある饅頭を10個食べたら2個は残り物?、後の2個も最初に食べたものと何も違わないのよ』。
キラキラ共和国
(小川糸)


図書館10
(752)

11
鎌倉を舞台にした代書屋の物語 『ツバキ文具店』 の続編。「文具店は、今日も大繁盛です。バーバラ夫人も、QPちゃんも、守景さんも、みんな元気です。みなさんのご来店をお待ちいたしております。店主・鳩子―亡くなった夫からの詫び状、川端康成からの葉書き、大切な人への最後の手紙…」 前作に劣らずハートフルなお話し。これを読むと優しい気持ちになり、また文字や手紙に対する思いが一段と募る。『私は世の中から郵便ポストがなくなることが怖い。誰も手紙を書かなくなったら、郵便ポストだって撤去されてしまうかもしれない。携帯電話の普及によって、公衆電話が数を減らしていったみたいに』 そう、大事な気持を伝えたいときはメールではなく手書きの文字だよな~!としみじみと感じた。
架空通貨
(池井戸潤)


図書館9
(751)

10
2000年に刊行された、著者2作目の長編小説で江戸川乱歩賞受賞作。20年以上前の作品ゆえの時代感、物語ゆえの大仰さは感じるが面白い。ただ、私の知識不足でお金の流れや登場人物の思惑が難し過ぎた。「女子高生・麻紀の父が経営する会社が破綻した―。かつて商社マンだった社会科教師の辛島は、その真相を確かめるべく麻紀とともに動き出した。やがて、2人がたどり着いたのは、“円”以上に力を持った闇のカネによって、人や企業、銀行までもが支配された街だった。」 金融に造詣が深ければ数倍は楽しめると思う。『金のために生き、裏切り、殺され、恨みを抱く。金を中心とした価値観、経済観念が人々の心に深く根付いてしまっている現代社会の歪みがある』 と、どうしたらいいのだろう?
地図と拳
(小川哲)


図書館8
(750)

9
日露戦争前夜から第2次大戦までの半世紀、満洲の都市で繰り広げられる知略と殺戮。歴史×空想小説。「日本からの密偵に帯同し、通訳として満洲に渡った細川。ロシアの鉄道網拡大のために派遣された神父クラスニコフ。叔父にだまされ不毛の土地へと移住した孫悟空。地図に描かれた存在しない島を探し、海を渡った須野…」満州国の歴史を始まりから終わりまでみていくと、結局、満州国とはなんだったのか、日本人は満州に何を求めたのか? 625ページもの長さ重さを挫折せずに(途中で中断しても)完走できたのは面白かったから・・。『昭和15年、戦争への道を避けられなかった時点で、日本は不治の病にかかり治療はできない。戦争が始まっていないが、始まる前から終わっていた』
ツバキ文具店
(小川糸)


図書館7
(749)

8
『ライオンのおやつ』より、3年ほど前に書かれた本でNHKでドラマ化されている。“ライオン・・・”同様優しさにあふれた物語。「鎌倉で代書屋を営む鳩子の元に、いろんな依頼が舞い込む。祝儀袋の名前書き、離婚の報告、絶縁状、借金のお断りの手紙まで・・、文字に関すること何でも承り〼。亡き祖母の想いにも気づいていく。」郵政という職場で仕事をしてきたのに“手紙”や“文字”に対してこんな思いを抱いたことはなかった。・弔意で墨の色を薄くするのは何故?・手紙に関する面倒な決まり事はたいてい出だしと終わりに集中する。・1月7日は七草爪?など・・。『人生って本当にままならないものです、私は何一つなしえなかた 人生なんてあっという間です 本当に、一瞬なのです』。
虚ろな十字架
(東野圭吾)


図書館6
(748)

7
2014年刊行され数々の賞を取っている。「中原夫妻は一人娘を殺害した犯人に死刑判決が出た後、離婚した。数年後、今度は元妻小夜子が刺殺されるが、すぐに犯人・町村が出頭する。中原は、死刑を望む小夜子の両親の相談に乗るうち、彼女が犯罪被害者遺族の立場から死刑廃止反対を訴えていたと知る。一方、町村の娘婿である仁科史也は、離婚して町村たちと縁を切るよう母親から迫られていた。」 死刑制度は被害者を救うのか?人を殺めたことに対する裁きとは何が正しいのか?罪を償うというのは、誰に対して償っているのか? 壮大なテーマ、ただのミステリーではなく死刑制度を深く考えさせられる内容ニ圧倒された。東野作品ではベスト5に入ると思う。
コロナと潜水服
(奥田英朗)


図書館5
(747)

6
不思議な話に、頭をかしげたり笑ったり泣いたり、5編からなる短編集。「『海の家』ある理由で家を出た小説家が、葉山の古民家に一時避難。生活を満喫するも、そこで出会ったのは―『ファイトクラブ』早期退職の勧告に応じず、追い出し部屋に追いやられた男性が、新たに始めたこととは―『占い師』人気プロ野球選手と付き合うフリー女性アナウンサー。恋愛相談に訪れた先でのアドバイスとは―『コロナと潜水服』5歳の息子には、新型コロナウイルスが感知できる?パパがとった究極の対応策とは―『パンダに乗って』ずっと欲しかった古いイタリア車を手に入れ乗り出すと、不思議なことが次々に起こって―」 ファンタジックなものとは知らずに手に取ったが面白くて一気読みだった。
じい散歩
(藤野千夜)


5
「夫婦あわせて、もうすぐ180歳。中年となった3人の息子たちは、全員独身―。明石家の主、新平は散歩が趣味の健啖家。妻は、散歩先での夫の浮気をしつこく疑っている。長男は高校中退後、ずっと引きこもり。次男はしっかり者の、自称・長女。末っ子は事業に失敗して借金まみれ。」 妻は認知症か?それでも人生は続いていく。そんな一家の日常をユーモラスに温かなまなざしで綴った家族の物語。『この年になってどうにか動けるのは毎日欠かさず歩いているからだった。一日休めば次の日は億劫になり、やがて何もしなくなる』 そうですね、同感。『てくてく歩くのだ。難題だらけの現実から逃げるためではなく、たぶん自らの生きているこの世界を、現実を、味わうために』との感想もあった。
思い出の屑籠
(佐藤愛子)


図書館4
(746)

4
97歳で、執筆活動をやめていた著者が100歳を前に思い出すままに書き溜めていたことを本にした。「著者が生まれてから小学校時代まで、両親、姉、時折姿を現す4人の異母兄、乳母、お手伝い、書生や居候、という大家族に囲まれた、甲子園に近い兵庫・西畑の時代を、思い出すままに綴る」 お手伝いさんや書生さんもいるという昔の文筆家の家庭が面白く描かれている。泣き虫、よく出来た姉の陰になりパッとしない次女キャラの愛子さん、そこら辺にいる女の子。それにしても2歳の頃のことをよく覚えていて凄いと思った。『おやすみなさーい』に『おう』と答えるお父ちゃん、それが幸せだったと。何気ない日常が一番の幸せなのかもしれない。字が大きくとても読みやすい。
冬の狩人
(大沢在昌)


図書館3
(745)

3
シリーズものとは知らなかった(このシリーズは未読)。最近の『新宿鮫』シリーズより展開が早くて面白かった。「3年前にH県で発生した冬湖浪事件の唯一の生き残りで逃走中の阿部佳奈から突然の連絡が入る、出頭するが警視庁の佐江という刑事の付添が条件だった。そこから佐江とH県警の川村、そして阿部佳奈の3人による過去の事件を絡めた謎解き、それを阻止する殺し屋との戦いが始まる・・・。」 この著者の刑事は違法捜査スレスレで捜査を進めていくところにも面白さがある。裏の社会の怖さもしっかりと分かる、それと権力の中にあっても権力に屈しないところに胸がスカッとする。他の『狩人シーリズ』も読んでみたくなった。
アミュレット・ホテル
(方丈貴恵)

図書館2
(744)

2
殺し屋、詐欺師、窃盗グループの皆様…犯罪者御用達ホテルにようこそ! 犯罪者専門の会員制ホテル、そこで起こる事件の連作短編ミステリ。「このホテルでは二つのルール(①ホテルに損害を与えない②ホテルで傷害殺人を起こさない)さえ守れば、どんなサービスも受けられる。とは言え、そこは犯罪者の集まり、禁忌は度々破られる。そこで活躍するのがホテル探偵・桐生。警察に通報できない事件をその場で解決する」 発想は面白いが『映画“ジョン・ウィック”のコンチネンタルホテル』にヒントを得たのではと思わせる。著者は本格ミステリ界の新鋭として注目されているようだが、前作同様少し凝り過ぎな感じもするが現代はこんなのが受けるのかな?私はやはり松本清張風なのがいい。



窓ぎわのトットちゃん
(黒柳徹子)

図書館1
(743)

1
42年ぶりに出た続編!続編を書こうと思ったのはなぜなのか?黒柳さんは『クライナの問題で子どもたちはどうしているのだろうと思ったとき、戦争のときに子どもだった自分はどうだったか思い出しました。子どもにとって戦争の何が一番嫌かと言うと、自由ではない、何をやってもいけないということだと思います。当時の戦争を思い出すのも嫌でしたが、そのことを考えて続編を書こうと思いました』と語っている。トットちゃんが青森に疎開してから、音楽学校を卒業してNHKの専属女優になり、ニューヨークに留学するまでの日々が綴られいる。特に苦境に陥った時でもトットママの活躍はすごい。優しさの中に元気をもらう素晴らしい本。
・戦いに行く人たちを『バンザーイー』なんて言って見送るべきではなかった。無責任だった、そのことが背負わなければならない『戦争責任』なのだと知った。
・優しい人間になるには教養を身につけなくてはならないし、そのためには本を読むことが大切だと考えるようになった。
・『死ぬまで病気をしない方法はありますか?』 『方法は一つだけ、自分の好きなことをやって生きていくこと。それは遊んでいなさいということではなく、自分から進んでやりたいと思う仕事だけをやってくださいという意味です。そうすれば病気になりません。いやだな、いやだなと思っているといやだながたまって病気なるのです』
・2022年の『徹子の部屋』で来年はどんな年になるかタモリに訪ねたら『日本は新しい戦前になるんじゃないか』 と。

2024年book ランキング 
 1 位 俺たちの箱根駅伝 (上・下)
 2 位 板上に咲く
 3 位 暗殺
 4 位 八月の御所グラウンド
 5 位 半暮刻
 6 位 対決
 7 位 お探し物は図書室まで
 8 位 赤と青とエスキース
 9 位 続 窓際のトットちゃん
10  風に立つ
11 位 当確師 正義の御旗
12 位 六月のぶりぶりぎっちょう
13 位 霧をはらう
14 位 リカバリー・カバヒコ
15 位 続きと始まり
16 位 スピノザの診察室
17 位 完本 神坐す山の物語
18 位 宙ごはん
19 位 オリンピックを殺す日
20 位 キラキラ共和国
21 位 野火、奔る(弥勒シリーズ12)
22 位 ツバキ文具店
23 位 少女マクベス
24 位 母親からの小包はなぜこんなにダサいのか
25 位 オパールの炎
26 位 まいまいつぶろ
27 位 佐渡絢爛
28 位 難問の多い料理店
29 位 逆ソクラテス
30 位 フェイク・マッスル
31 位 コンビニ兄弟=テンダネス門司港こがね村店(1) コンビニ兄弟(2)  コンビニ兄弟(3)
32 位 婿どの相逢席
33 位 あなたはここにいなくとも
34 位 月の立つ林で
35 位 木曜日にはココアを
36 位 月曜日の抹茶カフェ
37 位 ただいま神様当番
38 位 いつもの木曜日
39 位 初詣で 照降町四季(一)  己丑の大火 照降町四季(二)  梅花下駄 照降町四季(三) 一夜の夢照降町四季(四)
40 位 私の死体を探してください。
41 位
42 位 トランパー
43 位 グレイラットの殺人
44 位 黄色い家
45 位 残像
46 位 リラの花咲くけものみち
47 位 私の馬
48 位 刑事の枷
49 位 任侠楽団
50 位 あなたが誰かを殺した
51 位 アリアドネの声
52 位 永田町のシンデレラ
53 位 地図と拳
54 位 名探偵のままでいて
55 位 虚ろな十字架
56 位 自転しながら公転する
57 位 じい散歩
58 位 じい散歩 妻の反乱
59 位 赤の呪縛
60 位 標的走路
61 位 正欲
62 位 大義: 横浜みなとみらい署暴対係
63 位 冬の狩人
64 位 コロナと潜水服
65 位 人間標本
66 位 台北アセット
67 位 夜果つるところ
68 位 秋麗 東京湾臨海署安積班
69 位 食堂かたつむり
70 位 架空通貨
71 位 アミュレット・ホテル
ランク外 ※銀河鉄道の夜、ざしき童子のはなし、グスコーブドリの伝記
※九十八歳。戦いやまず日は暮れず

※思い出の屑籠
※日本人が知らない! 世界史の原理

                              ※はノンフィクション、エッセーまたは過去の名作です。