book(2025)



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予幻
(大沢在昌)

図書館26
(853)
27
『ボディガード・キリ シリーズ』第三弾!「フィクサー睦月からのキリへの依頼は、女子大生岡崎紅火の警護。なにやらこの女子大生理由ありとみえ、睦月がよこした女性ボディガード・弥生とキリがタッグを組んでも、紅火はさらわれてしまう。弥生と2人で紅火を捜すキリ。そこへ誘拐の容疑者が殺害され、公安の刑事が登場したり…」。ちょいと登場人物が多く“誰だったけ?”と思ったりもするが面白くて500ページを超える長編でも一気読み。謎の中国人やアメリカのスパイも絡んでドンパチ、『新宿鮫』とは趣の違うシリーズ。『信用ができないという点では政治家は極道よりタチが悪い。極道は少なくともメンツを大事にするが政治家は保身のためなら、官僚も極道も平気で利用し、切り捨てる。』
殺人現場は雲の上
(東野圭吾)

図書館26
(852)
26
“空”編。今回は軽いタッチの7つの短編からなる、1989年の作品。飛行機に搭乗する様々な人々が巻き込まれる事件を描いている。「新日本航空のスチュワーデスのA子(東大中退の美人)と太り気味で養成所では成績びりのB子の二人が、飛行機に搭乗した人物にかかわるいろんな事件を解決していく、その中で様々な人間関係や秘密が明らかになっていく」。今回も少し物足りない感じはするが今は大御所の著者、初期の頃からいろんなアイデアが満載だったんだなと想像がつく。二人の凸凹コンビのスチュワーデスのキャラが面白い。ユーモア笑推理小説、暇つぶしにはもってこい!
11文字の殺人
(東野圭吾)

図書館25
(851)
25
1987年著者の初期の作品、新聞に『東野圭吾がおくる“空”と“海”のミステリー』と紹介があった“海”編。「主人公の恋人が殺された。彼は生前、『誰かが命を狙っている』と漏らしていた。女流推理作家のあたしは、彼の自宅から大切な資料が盗まれたと気付き、彼が参加したクルーズ旅行のメンバーを調べる。しかしこれを皮切りに1年前の海難事故にまつわる連続殺人が起きる。」。タイトルの11文字は『無人島より殺意をこめて』と犯人からのメッセージ。映画化もされていたようで、昭和の時代では面白かったと思われる。携帯電話のない時代、こうだったんだろうな。初期作品で読みやすさは抜群だが、少し物足りなさを感じた。次は“空”編に挑戦。
ひとりでカラカサさしてゆく
(江國香織)

図書館24
(850)
24
久しぶりに読んだ江國香織、彼女らしい物語。「大晦日の夜、ホテルに集った80代三人の男女。若い頃からの仲である彼らは、酒を片手に尽きない思い出話に耽り、それから、猟銃で命を絶った…。まさか、一体、なぜ。突拍子もない死を突き付けられた子や孫、友人たちの日常や記憶が交ざり合い、故人の生涯も浮かび上がっていく。」。自殺した当人たちや彼らとかかわった人たちのいろんな暮らしぶりや思いが細かく描かれている。切なくもあり、そうだろうなとも思える。ただ、目まぐるしく視点が変わるため誰だったけと混乱し読みづらかった。アンデルセンがダークサイドの人だったとか(みにくいアヒルの子、人魚姫など)、また『雨降りお月さん』はお月さんがお嫁に行く歌だと思っていた?
偽装同盟
(佐々木譲)

図書館23
(849)
23
『帝国の弔砲』 『抵抗都市』に続く改変歴史警察小説。「日露戦争終結から12年たった大正6年。敗戦国の日本は外交権と軍事権を失い、ロシア軍の駐屯を許していた。3月、警視庁の新堂は連続強盗事件の容疑者を捕らえるが、身柄をロシアの日本統監府保安課に奪われてしまう。新たに女性殺害事件の捜査に投入された新堂だったがこちらにもロシア軍人の影が・・・。時を同じくして、ロシア首都での大規模な騒擾が伝えられる」。東京のど真ん中にロシアの統監府が置かれている(それに、クロパトキン通りやプーシキン通りなど読んでいて変な感じになってくる)、属国こなったらこんなことになるんだろうな。街並みや建物景観の説明が多過ぎて少しだれてしまった。
署長シンドローム
(今野 敏)

図書館22
(848)
22
「『隠蔽捜査』でおなじみの竜崎が大森署を去り、後任として、美貌のキャリア女性署長・藍本小百合がやってきた。ある日、管轄内の羽田沖海上にて、武器と麻薬の密輸取引が行われるという知らせが入るー、テロの可能性も否定できない、事件が事件を呼ぶ国際的な事件に隣の所轄や警視庁、さらには厚労省に海上保安庁まで乗り出してきて…。新署長の手腕や、如何に?」。軽い軽いノリで笑いながらアッという間に読んだ。超美人の発言で男どもが転がされる展開がとても面白い、男がいかに美人に弱いか、こんな署長がいたらいいだろうな。『外国人ギャングの問題は、難民政策、移民政策の不備が生み出したとも言えるるのだが、その背景には古来日本人が持つ差別意識がある』。
希望のゆくえ
(寺地はるな)

図書館21
(847)
21
『著者は人間の心の奥にあるものをむきだしにする作家だ』と解説にあったがあまりにも人の心の闇を描いていている感じがして登場人物たちに感情移入ができなかった。「誰からも愛された弟には、誰も知らない秘密があった。突然姿を消した弟、希望(のぞむ)。行方を追う兄の誠実(まさみ)は、関係者の語る姿を通し弟の持つ複数の顔を知る。本当の希望はどこにいるのか。記憶を辿るうち、誠実もまた目をそらしてきた感情と向き合うこととなる…。」。内容の濃い物語だが私には何だかしっくりこなかった。『自分で自分のことを分かる人などいないのではないか。絶えず自分のことを見ないふりをして生きてきて、他人から見える自分に寄り添うのは苦しい。寄り添わなければなお怖い』。
三千円の使いかた
(原田ひ香)

図書館20
(846)
20
お金にまつわる“節約”家族小説。「就職して理想の一人暮らしをはじめた美帆(貯金三十万)。結婚前は証券会社勤務だった姉・真帆(貯金六百万)。習い事に熱心で向上心の高い母・智子(貯金百万弱)。そして夫の遺産一千万円を持っている祖母・琴子。御厨家の女性たちは人生の節目とピンチを乗り越えるため、お金をどう貯めて、どう使うのか?」。女性はこんなにも日々の生活に一生懸命なのに男たちは切実感がない。いろいろ考えさせらることがたくさん。『人生はどうにもならないことがたくさん、例えば年齢、病気、性別、時間・・。お金や節約は、人が幸せになるためのもの。それが目的になったらいけない」。結論は“人と比べないこと、自分の人生には自分で責任を取ること”。
刑事弁護人
(薬丸 岳)

図書館19
(845)
19
500ページを超える長編なのに、全く飽きさせない。この著者は3冊目だがズシリと心に響く。「ある事情から刑事弁護に使命感を抱く持月凛子が当番弁護士に指名されたのは、埼玉県警の現役女性警察官・垂水涼香が起こしたホスト殺人事件。凛子は同じ事務所の西と弁護にあ たるが、加害者に虚偽の供述をされた挙げ句の果て、弁護士解任を通告されてしまう。一方、西は事件の真相に辿りつつあった。」。徹底的な取材の元に書かれたというだけあって司法制度の問題も浮き彫りにされる、今の日本で司法が7正しく行われているのか? 『被疑者や被告人には弁護人以外に誰も味方はいない、罪を犯すまでに追い詰められた人のほとんどは信頼を寄せられる家族や知人はいない、だから・・。』。
あきらめません!
(垣谷美雨

図書館18
(844)

18
この本は世の中の全議員、市議も県議も国会議員も、みんなに読んでほしい。「定年を迎え、悠々自適なセカンドライフを送るつもりだった郁子は、突如、夫の実家に移住ことに…。気持ちを切り替え、田舎暮らしを楽しもうとしていた矢先、なぜか市議会議員に立候補することに!」。今の世の中仕方がないと思っている人、選挙に興味ない人に喝を入れる一冊!それにしても前近代的なジーサン達には心底辟易する(この著者の本にはよく登場する)、自分も気をつけなくては。特に女性が読むと納得することばかり、ぜひお読みください。漫画のような展開ながら気分がスカッとする。『一人では何もできないが、一人でも始めなければいけない』。“後家楽”という言葉を知っていますか?
ひまわり
(新川帆立)


図書館17
(843)

17
33歳で事故に遭い、首から下が動かなくなった身で弁護士を目指すことを決意した女性の奮闘を描く。「突然の事故で頸髄損傷を負うひまり。復職のため壮絶なリハビリを始めるが障壁だらけ…。元の職場に復帰が叶わず、司法試験を受けるべくロースクールへ通うひまりが、家族やヘルパーのヒカル、同じ司法試験を目指す美咲、幼馴染みのレオと共に『前例のない』ことに立ち向かう…」。リハビリの様子が詳細に描いてありこんなに大変なこと何だと認識させられた。実際にモデルになった弁護士の人はいるようだが、これは全くのフィクション、重い話しながら落ち込まずに読める。ラストは涙!すごく元気がでる本。自分の手で頭を掻けるだけでも幸せです。
迷惑な終活
(内館牧子)

図書館16
(842)

16
『終わった人』『すぐ死ぬんだから』などの“高齢者小説“第5弾!「年金暮らしの原夫妻(75歳、71歳)。妻の礼子はいわゆる終活に熱心だが、夫の英太は『生きているうちに死の準備はしない』という主義だ。そんな英太があるきっかけから終活をしようと思い立つ。それは家族や他人のためではなく、自分の人生にケリをつけること。彼は周囲にあきれられながらも高校時代の純愛の相手に会うため動き始める。やがて、この終活が思わぬ事態を引き起こしていく…。」。さすが、高齢者シリーズ、著者が1948年生まれということもあり、なかなかよくわかっている。“終活”って必要かな?(後に迷惑かけに程度でいいのかも…)『終活を避けるのは、生活に“死”を入れたくない。死について考えたくない』。
ドヴォルザークに染まるころ
(町田そのこ)

図書館15
(841)

15
遠き山に日は落ちて…。廃校が決まった田舎町の小さな小学校。町をあげての最後の秋祭りが行われる。その小学校に関わった人達の5つの話。「小学生のとき、担任の先生と町の外からやって来た男が駆け落ちしたのを忘れられない主婦。東京でバツイチ子持ちの恋人との関係に寂しさを覚える看護師。認知症の義母に夫とのセックスレスの悩みを打ち明ける管理栄養士。父と離婚した母が迎えに来て、まもなく転校することになる小六の女の子。発達障害のある娘を一人で育てるシングルマザー。」。地方の閉塞感や自分勝手な男たちの間でそれぞれの人生を自分らしく懸命に生きる女性たち。冒頭、衝撃の一文から始まるが、最後はドヴォルザークの家路が聞こえてくるようで郷愁を誘う。
人魚が逃げた
(青山美智子)

図書館14
(840)

14
アンデルセンの『人魚姫』の王子が銀座に現れた?メルヘンの世界と現実の世界が織り混ざった心温まる五つのお話。『5人の男女が“人生の節目”を迎えていた。12歳年上の女性と交際中の元タレントの会社員、娘と買い物中の主婦、絵の蒐集にのめり込みすぎるあまり妻に離婚されたコレクターの老人、文学賞の選考結果を待つ作家、高級クラブでママとして働くホステス。」。著者の得意とするストーリー展開、やっぱりいいね~!『苦しいことがあると、どうして神はこんな試練を与えるのだと憤る。神の創作シナリオで人生を動かされていると思っていたほうが、きっと納得がいくのです』 『人と人を繋ぐのは結局、愛とか恋より、信頼と敬意なのよ』。どんなに親しくても言葉がしっかりと伝わることが大切。

原爆裁判
アメリカの大罪を裁いた三淵嘉子
(山我浩)


図書館13
(839)

13
昭和30年代、被爆者が国に訴訟を提起し、原爆投下の違法性が初めて争われた“原爆裁判”。昭和38(1963年)年12月7日、東京地方裁判所は原爆投下を国際法違反と判断した…。本著は何故アメリカは原子爆弾を日本に投下したのか(まさか、実際人の住んでいるところに落としてその被害状況を見たかった?)と、朝ドラ『虎に翼』のモデルになった三淵嘉子を半生を描いている。「第1章 死の商人と呼ばれた男、第2章 原爆が投下された日、第3章 放射線との戦い、第4章 アメリカはお友達?だが、第5章 女性弁護士三淵嘉子の誕生、第6章 家庭裁判所の母、第7章 原爆裁判、第8章 三淵嘉子の終わりなき戦い、『原爆裁判』判決文』。」 読むと、あの当時、いかにアメリという国が日本(日本人)をいかに見下していたかよくわかる(最も今でもアメリカに全くものを言えないのはあの時代から進歩していないのだけど…)。戦争終結に原爆投下は意味がなかったことがわかる。
・トルーマンは『けだものと接するときにはそれをけだものとしてあつかわなければなりません』 『神は土くれで白人を造り、泥で黒人を造り、残ったものを投げたらそれが黄色人種になった』そして『私はジャップが嫌い』と言っている。
最後に『原子爆弾が広島・長崎に落とされから間もなく80年になろうとしています。その間、アメリカは、その責任を一切背負うとせず、戦争犯罪である原爆投下の実態を覆い隠す捏造を行ってきました。』 にもかかわらず、日本政府は核兵器禁止条約に参加もせずにむしろ核兵器依存を深めている。
わたしの知る花
(町田そのこ)

図書館12
(838)
12
『52ヘルツのクジラたち』の町田そのこ新作。“どんなにすれ違っても、”取り返しがつかなくても、不器用で、愚かで、弱くても。そこには、ずっと、愛しかない”とコピーにあった。「犯罪者だと町で噂されていた老人が、孤独死した。部屋に残っていたのは、彼が手ずから咲かせた綺麗な“花”―。生前知り合っていた女子高生・安珠は、彼のことを調べるうちに、意外な過去を知ることになる。」。謎めいた老人をさぐるうちに愛おしい人生が見えてくる。親の言うことは聞いて当然、自分の思い通りにならない時代それでも模索しながら精一杯生きる。時代が変わって、個人が尊重される時代になっても家族の関係は様々…。始め少し入りにくかったがラストは涙!。
水車小屋のネネ
(津村記久子)

図書館11
(837)
11
日だまりのような温かい家族小説。優しい人と人のつながりに心がほっこりした気持ちでに包まれた”とあった。「身勝手な母親から逃れ、姉妹で生きることに決めた18歳の理佐と8歳の律。たどり着いた町で出会った、水車小屋で暮らすししゃべる鳥<ネネ>に見守られ、人生が変転…。姉妹二人が40年にわたり過ごしてきた心の奇跡。」。物語は1981年から10年刻みで進んでいくが、全体的に少し長すぎた。しゃべる鳥は“ヨウム”、すごい長寿の鳥で賢い、知らなかった。人の優しさが身に染みる一冊。『誰かに親切にしなきゃ、人生は長くて退屈なものですよ』と。
小鳥とリムジン
(小川糸)

図書館10
(836)
10
著者が『思わず道で転んでしまった時、下を向いて絶望するか、上を向いて希望を探すか、それで人生は、大きく違ってくるのではないでしょうか?』と言っている。人との出会いや日常がいとおしくなる感動作とあった。「苦しい環境下の中で、人を信頼することをあきらめ、自分の人生すらもあきらめていた主人公・小鳥。父親と名乗る人物やお弁当屋の店主との出逢いによって、“人と向き合うこと”に一歩踏み出していく…」。多様性を語っているが自然と心に入ってくる。読むにつれて感情移入していき、これ以上小鳥から大切な人を奪わないで欲しいと願いながら読んでいた。『怒りとか悲しみとか不満とかって、確実に内臓に蓄積されるんだよ。そしていつか、深刻な病となった体に現れるんだ』。
パンとペンの事件簿
(柳 広司)

図書館9
(835)
9
境利彦と彼の作った売文社を舞台に、さまざまな謎を解いたり秘密作戦を決行したりという連作短編。「やくざもんに襲われて気を失っている“ぼく”を救ってくれたのが堺利彦や大杉栄に荒畑寒村たち。それがきっかけで売文社に居候することになった、”ぼく”の視線で描かれる当時の社会主義たちの人たち。」 ほかに小口みち子、山崎今朝弥など実在の人物が登場し、読んでると彼らが掲げる社会主義は至極当たり前のことなのに、なぜ弾圧されないといけなかったのかと、今にも通じる理不尽さに腹が立つ。『金儲けのためなら平気で人殺しの武器を作り、それを売り、若い人たちを戦場に送って殺し合いをさせて、新たに戦争を始めることさえ辞さない。すべて金儲けのためだ』。
テスカトリポカ
(佐藤究)

図書館8
(834)
8
暴力の嵐に臓器売買が絡まる目を背けたくなる物語、これが直木賞と山本周五郎賞を受賞している.。「メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人のバルミロは、対立組織との抗争の果てに海外に逃走、潜伏先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会う。二人は新たな臓器ビジネスを実現させるため日本へと向かう・・・」 宮部みゆきが『麻薬という呪いと、血と生贄を求める古代の神々。想像を絶する激しい暴力の果てに現れる血肉を備えた神の姿。登場人物ほぼ全員悪党なのに、奇妙な愛嬌とユーモアがあって、恐ろしいのに魅力的だ』 と言っているが、私には苦痛に満ちた展開で、途中で何回かやめようと思ったが、ただ結末が気になりやめられなかった。う~ん、二回目も同じ感想。
ツミデミック
(一穂ミチ)

図書館7
(833)
7
新型コロナウイルス感染症のパンデミックを背景に、罪とパンデミック(ツミデミック)を掛け合わせた言葉で、コロナ禍の日常で起こったさまざまな『罪』をテーマに六つのお話。「違う羽の鳥:中学の時に電車に飛び込んだ同級生が大学生になった優斗の前にあらわれた。 ロマンス:デリバリーのハンサム配達員を求めて破滅していく主婦。 憐光:15年前の豪雨に流されて死んだ女子高生の幽霊。特別縁故者:コロナで職を失った料理人、近所の老人との交わりで人生が好転。祝福の歌:女子高校生の娘の妊娠。さざなみドライブ:自殺志願者達のドライブ。」。など緊急事態宣言の中、ちょいと怖い話。未知のウイルスも怖いが一番怖いのはやっぱり人間。
QJKJQ
(佐藤究)

図書館6
(832)
6
朝日新聞文芸欄に『純文学から転身 大逆転』と、江戸川乱歩賞受賞作ということで読んだ。選考委員の湊かなえが高い評価をつけながらも“こういう作品があまり好きではない”と書いていたが私も同じ感想。「猟奇殺人鬼一家の長女として育った17歳の亜李亜。一家は秘密を共有しながらひっそりと暮らしていたが、ある日、兄の惨殺死体を発見してしまう。直後に母も姿を消し、亜李亜は父と取り残されて…。」。著者が“j残酷だけど陰惨でない描写を心がけ”といっているが、やはりどうも…。謎が精神分析と脳科学の視点から解き明かされるというのには興味をひかれたがわかりにくかった。『武力行使が許されるのは国の仕事についている人間だけなのさ。警察官、機動隊、自衛隊、特殊部隊…」。
90前後で、女性はこう変わる
(樋口恵子)
(下重暁子)

図書館5
(831)
5
92歳の樋口恵子さんと、88歳の下重暁子さんの心と体の変化についての対談集。男性が読んでも納得!「『運動をして筋肉を落とさないようにするほうがいい』わかっていても、簡単にできないのが人間です。『何もないところで、ふゎ~っと転ぶ。転倒適齢期をいかに生き抜く?和式トイレで立ち上がれない!『老いるショック』は75歳。女性は75歳が老いの分かれ目」などなど。『75歳を境に衰えを感じて外出を控えたりと行動の範囲を狭くした人は急速に元気がなくなっていく』『どうでもいいことに怒らない。そしてたいていのことは許す。バカな喧嘩は売られても買わない。』『住み慣れた場所から離れ、友人も知人もいない場所に引っ越すのは負担が大きく、場合によっては老人性うつのきっかけにもなる』。
光のしるべ
えにし屋春秋

図書館4
(830)

4
縁を商いとする者と頼る者の光と影を描く<えにし屋春秋>シリーズ第2作。「身寄りのない子どもたちと暮らす孤児・信太。物乞い稼業で糊口をしのぐ毎日だ。だが、どうしても実入りのなかった日、信太は一緒に物乞いをするおみきさんに連れられ、〈えにし屋〉を訪ねる。信太たちを出迎えたのは、お初という妖しくも美しい女。一方同じ頃、三十路を過ぎと見える、やけに疲れ果てた夫婦もお初を訪ねていた。」。やはり面白かった、色々な嘘や商家の嫁の立場、まさかのたくさんの裏切りそして親子の愛情といろんな思惑が絡んで読み始めたらやめられない。第一作目でお初の正体が明かされるので、読んでいない人は一話から読んだ方がいい。
坂の中のまち
(中島京子)

図書館3
(829)

3
文豪ひしめく坂だらけの町の不思議な恋のお話。「坂中真智は大学進学を期に富山から上京する。下宿先は祖母の親友である志桜里さん(彼女には重大な秘密があった)の家。坂にやたらと詳しい志桜里さんからレクチャーを受け、憑依型文学青年のエイフクさんと歩き回り、幽霊?に会ったり、不思議な夢を見たり、面白い体験に出くわす。」。“江戸川乱歩『D坂殺人の別解?”“遠藤周作『沈黙』の切支丹屋敷に埋まる骨が語ること”“安部公房『鞄』を再現する男との邂逅”“夏目漱石『こころ』みたいな三角関係”など文京区の坂を舞台に語られる六つのお話についついのめりこんでしまう。読みやすくほんわかなる本。坂がたくさん出てるので地図があったらいいのに…。
リハーサル
(五十嵐貴久)
図書館2
(828)

2
“こんな話を書く人の神経を疑う、主人公の危機管理意識の低さは異常だ、あんな女がいるはずない。”と、ある読者が言っていたがまさにその通り読まなければよかったと思う話(一種のホラー小説)、それでもラストが気になり読んでしまった。「花山病院の副院長・大矢は、簡単なオペでのミスを新任の看護婦・リカに指摘され、“隠蔽"してしまう。それ以来、リカの異様な付き纏いに悩まされる。一方、病院内では婦長の転落を始め陰惨な事故・事件が続発そして、大矢の美しき婚約者・真由美が消えた。」。『肉体の衰えがある種の被害妄想に転化し、危害を加えられるのではないかと・・・。その怯えが怒りに変わるというのは高齢者にはある。』など、後味のいい本ではなかった。
罪名、一万年愛す
(吉田修一)
図書館1
(827)

1
残された昭和の名作映画『砂の器』『飢餓海峡』『人間の証明』が謎解きの一つのヒントになる。「探偵・遠刈田蘭平は富豪一族の三代目・梅田豊大から時価35億円の宝石“一万年愛す”の捜索を依頼される。創業者・梅田壮吾の米寿の祝いのため、蘭平は長崎の句九十九島の孤島を訪れることに…。」。奇想天外な話ではあるが、上野駅で暮らしていた戦争孤児たちの回想シーンは胸が締め付けられる。ミステリーの要素を持った家族愛の物語という感じ?『悪人』や『路(ルウ』を書いた著書者とは思えないが後半は俄然面白くなる。 タイトルの『一万年愛す』というルビーが大切な役割を担っている。

2025年book ランキング 
 1 位 刑事弁護人
 2 位 坂の中のまち
 3 位 ひまわり
 4 位 小鳥とリムジン
 5 位 パンとペンの事件簿
 6 位 ドヴォルザークに染まるころ
 7 位 予幻
 8 位   水車小屋のネネ
 9 位 わたしの知る花
10 位 三千円の使いかた
11 位 迷惑な終活
12 位 偽装同盟
13 位 署長シンドローム
14 位 あきらめません!
15 位 ひとりでカラカサさしてゆく
16 位 人魚が逃げた
17 位 ツミデミック
18 位 光のしるべ/えにし屋春秋
19 位 希望のゆくえ
20 位 殺人現場は雲の上
21 位 11文字の殺人
22 位 罪名、一万年愛す
23 位 テスカトリポカ
24 位 QJKJQ
25 位 リハーサル

ランク外 原爆裁判 アメリカの大罪を裁いた三淵嘉子
※90前後で、女性はこう変わる

                              ※はノンフィクション、エッセーまたは過去の名作です。