book(2025)



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パンとペンの事件簿
(柳 広司)

図書館9
(835)
9
境利彦と彼の作った売文社を舞台に、さまざまな謎を解いたり秘密作戦を決行したりという連作短編。「やくざもんに襲われて気を失っている“ぼく”を救ってくれたのが堺利彦や大杉栄に荒畑寒村たち。それがきっかけで売文社に居候することになった、”ぼく”の視線で描かれる当時の社会主義たちの人たち。」 ほかに小口みち子、山崎今朝弥など実在の人物が登場し、読んでると彼らが掲げる社会主義は至極当たり前のことなのに、なぜ弾圧されないといけなかったのかと、今にも通じる理不尽さに腹が立つ。『金儲けのためなら平気で人殺しの武器を作り、それを売り、若い人たちを戦場に送って殺し合いをさせて、新たに戦争を始めることさえ辞さない。すべて金儲けのためだ』。
テスカトリポカ
(佐藤究)

図書館8
(834)
8
暴力の嵐に臓器売買が絡まる目を背けたくなる物語、これが直木賞と山本周五郎賞を受賞している.。「メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人のバルミロは、対立組織との抗争の果てに海外に逃走、潜伏先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会う。二人は新たな臓器ビジネスを実現させるため日本へと向かう・・・」 宮部みゆきが『麻薬という呪いと、血と生贄を求める古代の神々。想像を絶する激しい暴力の果てに現れる血肉を備えた神の姿。登場人物ほぼ全員悪党なのに、奇妙な愛嬌とユーモアがあって、恐ろしいのに魅力的だ』 と言っているが、私には苦痛に満ちた展開で、途中で何回かやめようと思ったが、ただ結末が気になりやめられなかった。う~ん、二回目も同じ感想。
ツミデミック
(一穂ミチ)

図書館7
(833)
7
新型コロナウイルス感染症のパンデミックを背景に、罪とパンデミック(ツミデミック)を掛け合わせた言葉で、コロナ禍の日常で起こったさまざまな『罪』をテーマに六つのお話。「違う羽の鳥:中学の時に電車に飛び込んだ同級生が大学生になった優斗の前にあらわれた。 ロマンス:デリバリーのハンサム配達員を求めて破滅していく主婦。 憐光:15年前の豪雨に流されて死んだ女子高生の幽霊。特別縁故者:コロナで職を失った料理人、近所の老人との交わりで人生が好転。祝福の歌:女子高校生の娘の妊娠。さざなみドライブ:自殺志願者達のドライブ。」。など緊急事態宣言の中、ちょいと怖い話。未知のウイルスも怖いが一番怖いのはやっぱり人間。
QJKJQ
(佐藤究)

図書館6
(832)
6
朝日新聞文芸欄に『純文学から転身 大逆転』と、江戸川乱歩賞受賞作ということで読んだ。選考委員の湊かなえが高い評価をつけながらも“こういう作品があまり好きではない”と書いていたが私も同じ感想。「猟奇殺人鬼一家の長女として育った17歳の亜李亜。一家は秘密を共有しながらひっそりと暮らしていたが、ある日、兄の惨殺死体を発見してしまう。直後に母も姿を消し、亜李亜は父と取り残されて…。」。著者が“j残酷だけど陰惨でない描写を心がけ”といっているが、やはりどうも…。謎が精神分析と脳科学の視点から解き明かされるというのには興味をひかれたがわかりにくかった。『武力行使が許されるのは国の仕事についている人間だけなのさ。警察官、機動隊、自衛隊、特殊部隊…」。
90前後で、女性はこう変わる
(樋口恵子)
(下重暁子)

図書館5
(831)
5
92歳の樋口恵子さんと、88歳の下重暁子さんの心と体の変化についての対談集。男性が読んでも納得!「『運動をして筋肉を落とさないようにするほうがいい』わかっていても、簡単にできないのが人間です。『何もないところで、ふゎ~っと転ぶ。転倒適齢期をいかに生き抜く?和式トイレで立ち上がれない!『老いるショック』は75歳。女性は75歳が老いの分かれ目」などなど。『75歳を境に衰えを感じて外出を控えたりと行動の範囲を狭くした人は急速に元気がなくなっていく』『どうでもいいことに怒らない。そしてたいていのことは許す。バカな喧嘩は売られても買わない。』『住み慣れた場所から離れ、友人も知人もいない場所に引っ越すのは負担が大きく、場合によっては老人性うつのきっかけにもなる』。
光のしるべ
えにし屋春秋

図書館4
(830)

4
縁を商いとする者と頼る者の光と影を描く<えにし屋春秋>シリーズ第2作。「身寄りのない子どもたちと暮らす孤児・信太。物乞い稼業で糊口をしのぐ毎日だ。だが、どうしても実入りのなかった日、信太は一緒に物乞いをするおみきさんに連れられ、〈えにし屋〉を訪ねる。信太たちを出迎えたのは、お初という妖しくも美しい女。一方同じ頃、三十路を過ぎと見える、やけに疲れ果てた夫婦もお初を訪ねていた。」。やはり面白かった、色々な嘘や商家の嫁の立場、まさかのたくさんの裏切りそして親子の愛情といろんな思惑が絡んで読み始めたらやめられない。第一作目でお初の正体が明かされるので、読んでいない人は一話から読んだ方がいい。
坂の中のまち
(中島京子)

図書館3
(829)

3
文豪ひしめく坂だらけの町の不思議な恋のお話。「坂中真智は大学進学を期に富山から上京する。下宿先は祖母の親友である志桜里さん(彼女には重大な秘密があった)の家。坂にやたらと詳しい志桜里さんからレクチャーを受け、憑依型文学青年のエイフクさんと歩き回り、幽霊?に会ったり、不思議な夢を見たり、面白い体験に出くわす。」。“江戸川乱歩『D坂殺人の別解?”“遠藤周作『沈黙』の切支丹屋敷に埋まる骨が語ること”“安部公房『鞄』を再現する男との邂逅”“夏目漱石『こころ』みたいな三角関係”など文京区の坂を舞台に語られる六つのお話についついのめりこんでしまう。読みやすくほんわかなる本。坂がたくさん出てるので地図があったらいいのに…。
リハーサル
(五十嵐貴久)
図書館2
(828)

2
“こんな話を書く人の神経を疑う、主人公の危機管理意識の低さは異常だ、あんな女がいるはずない。”と、ある読者が言っていたがまさにその通り読まなければよかったと思う話(一種のホラー小説)、それでもラストが気になり読んでしまった。「花山病院の副院長・大矢は、簡単なオペでのミスを新任の看護婦・リカに指摘され、“隠蔽"してしまう。それ以来、リカの異様な付き纏いに悩まされる。一方、病院内では婦長の転落を始め陰惨な事故・事件が続発そして、大矢の美しき婚約者・真由美が消えた。」。『肉体の衰えがある種の被害妄想に転化し、危害を加えられるのではないかと・・・。その怯えが怒りに変わるというのは高齢者にはある。』など、後味のいい本ではなかった。
罪名、一万年愛す
(吉田修一)
図書館1
(827)

1
残された昭和の名作映画『砂の器』『飢餓海峡』『人間の証明』が謎解きの一つのヒントになる。「探偵・遠刈田蘭平は富豪一族の三代目・梅田豊大から時価35億円の宝石“一万年愛す”の捜索を依頼される。創業者・梅田壮吾の米寿の祝いのため、蘭平は長崎の句九十九島の孤島を訪れることに…。」。奇想天外な話ではあるが、上野駅で暮らしていた戦争孤児たちの回想シーンは胸が締め付けられる。ミステリーの要素を持った家族愛の物語という感じ?『悪人』や『路(ルウ』を書いた著書者とは思えないが後半は俄然面白くなる。 タイトルの『一万年愛す』というルビーが大切な役割を担っている。

2025年book ランキング 
 1 位 坂の中のまち
 2 位 パンとペンの事件簿
 3 位 ツミデミック
 4 位 光のしるべ/えにし屋春秋
 5 位 罪名、一万年愛す
 6 位 テスカトリポカ
 7 位 QJKJQ
 8 位 リハーサル
ランク外 ※90前後で、女性はこう変わる

                              ※はノンフィクション、エッセーまたは過去の名作です。