「郵政事業公社化研究会」地方公聴会での意見概要

 

総務省の「郵政事業の公社化に関する研究会」が十月に開催した地方公聴会での意見概要が明らかになった。
 なお、「郵政公社」の基本的枠組みは、@独立採算のもと自立的・弾力な経営を可能とすること、A事前管理から事後評価に転換(予算について毎年度の国会の議決を要しないこと、中期経営計画の策定およびこれに基づく業績評価の実施)、B企業会計原則の導入、経営情報の公開の徹底、C職員の身分は国家公務員、というもので、これは中央省庁改革基本法に規定されている。公聴会の意見発言概要は次のとおりである。

     第一回 名古屋(13.10.18)

     国営でなくなることにより、利益を失うのは過疎地だけだなく、都市部も不便になるおそれがある。例えば、地方都市でも、郵便局以外の全国的な金融機関がない状況にある。

     信書の秘密や安全確実な配達は全国規模の公社のみで保障される。分割すべきでない。

     市町村合併の進む中、郵便局におけるワンストップ行政の充実と拡大が必要である。

     全国津々浦々で均一的なサービスが受けられる現行形態を堅持すべである。

     行政は弱者を救済するのが第一である。郵便局も住民に安心と信頼を与える役割を発揮できる。

     不採算のために、郵便局の削減や集配サービスを低下させることは絶対反対である。

     ひまわりサービスなどの高齢者に対するサービス等を充実すべきである。

     公社化後に再度民営化論を持ち出して、利用者に戸惑いを生じさせるべきではない。

     可能な限り透明性を確保し、経営が国民によくわかるようにすることが必要である。

     国営企業と民間企業が互いに弱点を補完し合う形で共存共栄すべきである。

     特定局長制度を廃止して、高コスト構造を改善すべきである。

     郵貯、簡保の資金源は巨大である公社の下で、簡保は二分割、郵貯は八分割すべきである。

     第二回 仙台(13.10.19)

     民営化ありきが先行している。全国の郵便局が切り捨てられることがないか心配である。

     地域のセーフティネットの拠点として、郵便局を活用することを検討すべきである。

     官から民への流れについては、「官」と「民」の二分法は時代遅れである。非営利の非民、非官さらにはボランティアの参加による第三の公益企業体を考えるべきである。

     地元では、NTTの窓口は盛岡市に吸収され、JRも大部分が無人化された。民営化されれば、郵便局も廃止・縮小されるのではと心配される。

     高齢者への声かけも喜ばれている。利益優先では、こうしたサービスは無理である。

     郵便局がなくなれば、ますます、過疎化、高齢化に拍車がかかる。

     災害時等有事にも、地方の生活では郵便局に依存するところが大である。

     行政機関のコンビニを目指すべきである。

     第三回 熊本(13.10.22)

     不況と金融機関の失敗の中で、安定感を持ちえたのは、郵貯、簡保の存在が大きい。

     民間が税金を使い、不良債権の処理にあえいでいる中で、民間の手法の方がよいとする根拠がどこにあるか。国民に明示すべきである。

     競争原理の導入で、過疎地は誰が保障するのか。そういう議論が欠落している。

     民間の社員教育の良い点を積極的に取り入れて、職員の意識改革を図る必要がある。

     公共性と採算性を両立するためには、経営責任者に適切な人物を得ることが重要である。

     郵便局でほとんどの用件が済む現在の仕組みは大変便利である。三事業一体であるべきだ。

     離島では、郵便局がなければ生活が成り立たない。公社化で過疎地や離島の郵便局が廃止されないかと心配である。

     郵便事業への民間参入は全国展開できる事業者に限るべきである。

     郵便事業への民間参入は、ユニバーサルサービスを確保しつつ、諸外国の先例も参考に早急に実施すべきである。

     資金運用はシンクタンクや民間専門家の活用により、徹底したリスク管理をすべきである。

                              おわり