郵政事業の民営化について
この結果、不採算なサービス・地域からの撤退は不可避 @経済力の弱い地域の切り捨て Aコストのかかる個人・小口利用者より、法人・大口利用者向けのサービスを重視(金利、手数料で優遇) B料金を減免した各種社会福祉的サービス(盲人・障害者用郵便物の料金減免等)の廃止 近年、欧米先進国では、金融ビッグバンの進展と共に小口利用者、低所得者の銀行利用の排除が問題化し、金融アクセスの顧客間格差、地域間格差是正のため、生活セーフティネットとしての郵便局の活用が見直されている。 注1)12558の全市町村の中で、539の町村には銀行等の民間金融機関は存在しない。 注2)ニュージーランドでは、民営化により郵便貯金取扱郵便局数は1244局(1987年)から237局(1995年)まで減少し、住民の不便が問題となり、2001年2月、国営銀行(郵便局へ委託)の復活が決定 注3)ブレア英首相の諮問に基づく内閣府特命チームのレポート(2000.6.28)では、「郵便局で基礎的な金融サービスを提供することで金融排除に取り組むべき」と提言。アメリカ2001年度予算教書では「低所得者の居住地域に設置されている郵便局舎等安全かつ便利な場所へのATM設置」を提案。
@について 諸外国の郵政事業は、@の理由で民営化された例(ニュージーランドが典型)が多い。 わが国の場合、戦後の混乱期を除き一貫して税金によることなく、独立採算を維持、日経新聞社の「家計の金融機関のイメージ」調査では、郵便局の方が民間よりも評価が高い、労働組合は昭和53年の闘争を最後に、以降一度も争議を起こしておらず、労働関係は良好、郵貯・簡保の経費率は、民間金融機関より良い等、@の論拠は該当しない。 注)郵便事業の赤字は、平成9年度の消費税率改定に際し、郵便料金を据え置いたことを契機とするが、赤字幅は年々縮小、経営努力により改善の見込み。 Aついて 信書の送達部分を除き、郵政事業の多くは、創業以来、民間の同種又は類似機関と競争下に置かれている。唯一の独占部門である信書の送達についても、新公社への移行時に民間参入に向け検討中。 Bについて 郵便については、郵便は信書部門への民間参入を検討中。 郵貯・簡保については、金利設定は民間追随を旨とし、もっぱら個人・小口利用者向けサービスであるところから、民業との競合が民間企業の経営を圧迫しているとの指摘は当を得ていない。 民間金融機関の預貯金に対する支払保証は、現在は全額、ペイオフ解禁後は郵貯と同等に元本1000万円までの元利に対し、預貯金保険機構を通じ手、事実上国が保証することになっている。 郵政事業は国営であるため、確かに法人税や固定資産税等は納めていないが、郵便では各種社会福祉的サービスについては、料金免除やコスト割れの低料金扱いにしていること、郵貯・簡保の扱うサービスの範囲は、コストのかかる小口商品に限られていること、さらに民間が立地していない不採算地域でも郵便局を設置することにより、ユニバーサルサービス提供のコストを負担していることなどから、競争条件については民間企業とはトータルとしてバランスはとれている。 注 1)郵貯・簡保はいずれも1000万円の利用限度額があるが、民間にはそのような制限はない。又、残高階層別に見ると500万円以下の預入者が全利用者の8割以上に及んでいる。 2)簡保の主力商品は短満期の貯蓄型商品(10年の養老保険)であり、かつ団体保険は扱っていないが、民保の主力商品は、長期の保障型商品、団体保険であるので、市場の棲み分けができている。 Cについて まず特殊法人への融資問題は、本来郵貯・簡保の責に帰すべきものではなく、財投制度の問題であるが、財投改革により、2001年4月以降、郵貯・簡保の資金は、原則市場運用となったことにより解消。 運用リスクからくる税負担の危険については、郵貯・簡保の運用は企業への貸し付けは行わず、国内債を中心とした市場運用に徹していることから、リスク管理手法の充実徹底により回避可能であること。 その他の市場経済への悪影響の懸念についても具体的な検証がないことから、この論拠についても該当しない。 注 1)資金運用の失敗による税負担の危険については、今日の銀行の不良債権処理のための公的資金の注入の実体からすると、民営化すれば、税負担の危険がなくなるとは、必ずしも言い切れない。 2)郵貯・簡保資金の運用は、予め運用計画(中長期ポートフォリオ、年度運用計画)を公表するなど、運用の透明性を確保し、かつ、バイ・アンド・ホールドを基本とすることにより、市場のかく乱を回避することとしている。 終わり |