ついに私もモバイラー

小柳 麻里子

 

Eメールの送受信用のモバイルカードを買いに行きました。
 「モバイルカード」って知っている?
 一見ちょっと厚いテレホンカードのようですが、これ、携帯電話の一種だそうですう。
 パソコンにこのカードを差し込むと、あ〜ら不思議、電話線につながなくとも、メールの送受信が可能になると言うのですから、スゴイ。
 しかも、INS回線だから、接続スピードが速い。と言うことは、電話料が安くて済む。
 てなことを、今時のワカモノの代表のような金髪山アラシ頭の甥ごから聞いたのですから、キカイ音痴の私でも、ちょっとココロが動くじゃないですか。
 だって、そうであれば、使える地域は限られるようですですが、ノートブックパソコンさえあれば、喫茶店でメールを送ったり、受け取ったりできます。自慢じゃないけれど、メールできる携帯電話を持っていないんです。私。
 甥ご曰く、「おばさん、個人で買うんじゃなくてサ、法人名義にしようとすると、とっても面倒みたいだよ。何だかいろいろ書類が必要で大変だったと、バイト先の社長が言ってた」と驚かされたので、前もって、どんな書類が必要なのかを調べようと、カードの販売元である○○ポケット会社のサービスセンターに問い合わせました。
流石、大手の通信会社。サービスセンターの担当者は、親切にも、必要書類の一覧表をFAXで送ってくれました。
 ふむふむふむ。
 読めば、実在の会社であることを証明できるものが必要だとの説明。例として、会社の登記簿謄本・印鑑証明・納税証明書又は法人宛の公共料金や税金などの請求書や領収書及び社印だとありました。
 残念。手許にある謄本と印鑑証明は昨年の秋に発行されたもの。期限切れで使えません。
 机の中を引っかき回して、会社宛に来ているはずの公的料金書類を捜しました。
 出てきました!社会保険事務所から来ていた先月分の社会保険料の請求書(督促状ではナイ)とその領収書。
 やれやれ、これで、混み合う法務局まで足を運ばなくても済みます。
 おまけに、法人名義のクレジットカードがあれば、銀行引き落としの手続きをせずに簡単に発行してくれるとか。
 ほいほい。
 こういう新しいキカイは、若者の集まる街で売っているに違いない・・・。ありました。渋谷の駅前にカードの販売店が。
 ラッキーなことに、お客は私ひとり。これなら、書類は揃っているし、手続きも早く済みそう・・・。
 カウンターにいた若いお嬢さんに声をかけました。
 「あのー、モバイルカードとやらを買いたいのですが」
 「それではこちらの申込用紙に、お客様のお名前とご住所を」
 出されたのは、個人用の申し込み用紙。
 「いえ、法人名義で購入したいのですが」

 彼女、ちょっと慌てて、後ろの棚からなにやら一枚の紙を取り出して来ると「えーっと、それでは、こちらに記載してある書類が必要です」には、必要書類として、登記簿謄本・納税証明書・会社実印の印鑑証明書・会社の実印・会社名義の銀行口座番号・銀行の届出印・申込者の社員証又は会社名が入っている健康保険証、とあります。

「いえ、あの、ここに書いてある書類は持っていませんが、電話でお宅のサービスセンターの方に、税金などの公的料金の請求書や領収書でも良いと言われていますけど」
 「でも、この紙には、そう書いてありませんからお渡しできませんけど」とお嬢さん、おばさんにはしごくつれない。
 きゃー。
 「でも、サービスセンターの方がこんなFAXをくださっているのですけど」
 「でも、私の紙には書いてありませんから」と、彼女、あくまでも自分の持っている紙にこだわります。「えーと、それじゃぁ。悪いけど私の持ってきた書類でもいいかどうか、確かめてもらえませんか?」
 彼女、仕方なさそうに後ろを向いて、電話をかけ始めました。
 何度もかけ直しているところを見ると、先方はお話し中なのか、応答がないのか・・・。
 一向に、こちらを向いてくれる様子もありません。
 「どうですか?」という、しびれを切らした私の呼びかけにも、“まだまだ”といった感じで手を振るだけです。
 十分もそのまま待ったでしょうか。
 このままでは、ラチが開かない・・・と判断した私。その場で、自分の携帯電話で、もう一度サービスセンターにかけました。
 こちらはすぐにつながりました。
 趣旨を言うと、事前に電話で問い合わせたときと同じ答え。
 「はい、お客様の会社宛に来ているもので、住所と会社名が記載されて入れば、社会保険料の請求書でも領収書でも結構です」
 「そうですか・・・。申し訳ないのですが、実は今、御社の販売店に来ています。今おしゃったことを、こちらのお嬢さんに言っていただけません?」
 電話を替わろうとする私に、このお嬢さん、キッとなって「申し訳ないのですが、お客さま。私たち、その電話に出ることができないんです」・・・・・・・。
 どうも、よくわからん。
 結局何を言っても通じないのでアキラめました。
 その足で、隣の△△カメラへ。
 応対に出た若い男の子。ものの見事に、持参した領収書と法人のクレジットカードで手続きをし、めでたく私はモバイルカードを手に入れることができました。
 さっきの販売店での対応は、いったい何だったのだろう?
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 郵便局では、局によって、必要書類が違ったり、対応にバラツキがあるなんてこと、ゼーッタイに無いのにぃ・・・。 

終わり