郵政事業を巡る論議について

                                               松井 浩

昨今の新聞・テレビで、郵政事業を巡り一部識者の論議がかまびすしいところだが、その中のいくつかの主張について考え方を述べさせていただきたい。

第一の主張は、「郵便(信書)の独占は不当、独占を撤廃すべき」というもの。これについては、信書送達を完全自由化すれば、都市でクリームスキミングを発生させ、ユニバーサルサービスが崩壊する懸念がある。諸外国でも、信書の独占を基本としつつ、民間事業者の参入できる範囲は限定されている。

第二の主張は、「郵貯は肥大化して民業を圧迫している」というもの。個人金融資産に占める郵貯のシェアは、近年二割程度で安定的に推移しており、肥大化との批判は当たらない。

第三の主張は、「郵貯は、諸税、預金保険料は免除されており、競争条件がイコールフッティングとなっていない」というもの。郵貯は国営事業として、不採算地域にも店舗配置の義務を負っており、また、小口預金に限定されている等の制約があるため、郵貯と民間金融機関はトータルとしてバランスがとれていることを指摘したい。

第四の主張は、「郵貯の存在が、不要な特殊法人(財投機関)を温存させている」というもの。これについては、財投改革が行われ、郵貯は平成十三年度四月から全額自主運用に移行し、財投機関は、財投債や財投機関債で市場から資金を調達することになったこと、また、特殊法人改革は特殊法人の役割自体を見直すことが重要だということを指摘しておきたい。

第五の主張は、「郵貯は全額自主運用する能力がない」というもの。郵貯は昭和六十二年度から自主運用を行っており、安定した運用実績を確保してきた。そして、平成四年度以降今日に至るまで、郵貯の自主運用の運用利回り実績は、民間生保や全国銀行ベースの運用利回りに比べ、一貫して高く、効率がよいのである。

第六の主張は、「株式市場に資金が流用しないのは、郵貯が資金を吸収するから」というもの。株価の低迷は、景気回復への不安や株式持合の解消売りに対する懸念が市場関係者にある等の影響が大きいと考えられる。

最後に、民営化・規制緩和でかつて話題となったニュージーランドの最近の動きを紹介しておきたい。ニュージーランドのポストバンクは1989年の民営化後、オーストラリアの銀行に売却され、その結果、支店が1244から237までに減少し、また外資系銀行の手数料が値上げされた。このため国民の不満が高まり、政府は本年二月、再び郵便局に金融サービスを提供させる決定を行っているのである。
                                 (終)