CINEMA(2025)



(今年のランキングを下の方に掲載しています:クリックしてください
 
囁きの河

22(848)
「20年7月の熊本豪雨により壊滅的な被害を受けた人吉球磨。母の訃報を受け、22年振りに帰郷した孝之。町を離れて以来、会うことのなかった息子・文則は心を開こうとせず、幼馴染の宏一と雪子が営む旅館も半壊していた。孝之は水害で荒れ果てた田畑の開墾に乗り出し、水害を受けた土を耕すことに生きがいを感じるようになる。雪子も宏一を説得して、旅館再生に向けて進み始めていた。しかし、河とともに生きようとする人々に、さらなる試練が訪れる…。」。昨年2回にわたり人吉でオールロケをしたとのことで河の情景がすごくよく描かれている。町から人が離れざるを得ない状況や自然に対する人間の弱さなど、身に沁みた。(舞台挨拶の状況はここをclickしてください)
ルノワール

21(847)
『PLAN 75』の早川千絵監督の長編監督第2作、カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品された作品。1987年、東京郊外でのひと夏を舞台に、闘病中の父と仕事に追われる母と3人で暮らす、11歳の少女・フキの揺れ動く心情が描かれる。「フキは、父の病室を訪れたり、英会話教室に通ったり、時には超能力に興味を持ったりしながら、大人たちの事情を垣間見ていく。また、伝言ダイヤルで友人を作ろうとしたり、英会話教室で知り合った裕福な家庭を訪れたりすることで、様々な人間関係や社会に触れていく。」。物語の展開に詳細な説明はなく淡々と描かれていく中に胸にじわっとしみてくるものがある。11歳の感性ってこんなものなのかな?派手さはないがいい映画。
ミッション:インポッシブル
ファイナル・レコニング

20(846)
1996年の第1作から約30年、シリーズの第8作。前作の続編「人類を抹殺する威力を持つAI、"エンティティ"に対抗し得る唯一の武器を手に入れるため、イーサン・ハントとIMFの仲間たちが不可能に思えるミッションを続けている。イーサンが政府によって拘束される場面や。また、宿敵ガブリエルがイーサンに向けて放つ『お前の秘密も暴かれる』という台詞の通り、これまでほとんど語られてこなかったイーサンの過去が明かされる。前作の最後でイーサンが手にした”鍵”が導くものとは?世界中の人々の運命を掛けた闘いに挑んでいく。」トムクルーズの身体を張ったアクションは健在、今回は小型プロペラ機にしがみつく空中スタント、文句なしに楽しめるが前作の方がよかったか?
リー・ミラー
彼女の瞳が映す世界


19(845)
モデルから報道写真家へと転身した実在の女性リー・ミラーの人生を映画化。『タイタニック』のケイト・ウィンスレットが主演を務めている。「1938年フランス、第二次世界大戦の脅威が迫り、リーの日常生活が一変する。写真家としての仕事を得た彼女は、「LIFE」誌のジャーナリストのデイヴィッドとチームを組む。1945年従軍記者兼写真家としてアウシュビッツでの死体の放つ匂い、家畜用列車から溢れ出る死体など衝撃的な画像で次々とスクープを掴み、ヒトラーが自死した日、彼のアパートの浴室での自身を写した写真が戦争の終わりを告げる。」。ヒトラーが国民を巻き込んで戦争に突き進んだこと、今の時代とダブって、トランプが言っていることと全く変わらない。怖い!
JOIKA
美と狂気のバレリーナ


18(844)
2012年にアメリカ人女性として初めてボリショイ・バレエ団とソリスト契約を結んだジョイ・ウーマックの実話を基に、華やかなバレエ界の裏側で当時のダンサーたちが直面していた過酷な現実を描いている。「異文化の中で自らの可能性を信じて挑戦するジョイだが、教師から脅迫的なレッスンを受ける一方、ライバル同士の蹴落とし合い、家族からの心配や衝突。実力だけではトッププリマなることは無理と教えられ、そこに男に権力や金など常人には考えられない世界があった」。夢を追うことの困難さや異国での孤独、、一人の女性が限界を超えてでも進もうとする姿・・・。バレーの素晴らしさはもちろん、ストーリーそのものが観る者をグイグイと引っ張っていく面白さがある。
ゲッベルス
ヒトラーをプロデュースした男


17(843)
ヒトラーの腹心にして、プロパガンダを主導する宣伝大臣を務めたヨーゼフ・ゲッベルスの半生を描いた映画。「ゲッベルスは、当初平和を強調していたが、ユダヤ人排除や侵略戦争へと突き進んでいくヒトラーから激しく批判され、信頼を失ってしまう。自身の地位を回復するため反ユダヤ映画の製作や、大衆を煽動する演説、綿密に計画された戦勝パレードを次々と企画。国民の熱狂とヒトラーからの信頼を取り戻していく…」 ある評に『90年も昔の話として冷静に観ることはできない。今は新聞、テレビよりSNSの影響が強いが、報道が権力に抱き込まれて広報と化し、民衆が煽られて判断を狂わされる状況はまさに今と同じではないか』。そう、今の時代に見る価値のある映画。
アマチュア


16(842)
戦闘や暗殺については素人のCIA職員の男が、殺された妻の復讐に乗り出す姿を描いたアクションサスペンス。「ある日、無差別テロ事件で妻を失ったことで、彼の人生は様変わりする。テロリストへの復讐を決意したチャーリーは、特殊任務の訓練を受けるが、教官であるヘンダーソンに『お前に人は殺せない』と諭されてしまう。組織の協力も得られない中、チャーリーは彼ならではの方法でテロリストたちを追い詰めていくが、事件の裏には驚くべき陰謀が潜んでいた。」。I Q170の分析官が考えた復讐とは?派手さはないが、ハラハラしながらも淡々と進んでいく感じ、ただストーリーとしての深さが今ひとつだった。
エミリア・ペレス

15(841)
アカデミー賞で作品賞など12部門13ノミネートされたが、主演のカルラ・ソフィア・ガスコン(トランスジェンダー俳優)が過去に人種差別やイスラム嫌悪、共演者へのアンチ発言を繰り返していたことにが明らかになり、本命と言われながら受賞を逃し公の場から姿を消した。 「弁護士リタは、麻薬カルテルのボス、マニタスから『女性としての新たな人生を用意してほしい』という依頼を受ける。リタの計画により、マニタスは姿を消すことに成功。数年後、ロンドンでリタの前に現れたのは、新しい存在として生きるエミリア・ペレスだった。」。過去と現在、罪と救済、愛と憎しみを絡めた女たちの人生。スペイン語のミュージカル・クライム映画だが、ミュージカル仕立てはいらなかった。
少年と犬

14(840)
2011年bookで紹介した直木賞受賞作が原作。「震災から半年後の宮城県仙台市。職を失った青年・和正は、震災で飼い主を亡くした犬の多聞と出会う。聡明な多聞は和正とその家族にとって大切な存在となるが、多聞は常に西の方角を気にしていた。やがて家族を助けるため危険な仕事に手を染めた和正は事件に巻き込まれ、その混乱の中で多聞は姿を消してしまう。時が流れ…」。原作の複数のエピソードをもとに、オリジナル要素を加えさらにファンタジー的な部分もあったりするのだが、犬がどうして西へ向かうかが弱かった。ただ、原作を忘れてあらたな映画としてみれば面白い。こんなワンちゃんがいたらいいだろうな~!
教皇選挙

13(839)
アカデミー賞で脚本賞を受賞した作品、(ローマ教皇選挙をコンクラーベと言う)。「舞台はバチカン、急逝したローマ教皇の後継者を決めるため、世界中から枢機卿が集結する。約14億人のカトリックの頂点に立つのは誰か?投票権を持つ108人のうち、野心を抱くのはリベラルな改革派と保守派、反動的な伝統主義者らだ。仕切り役である主席枢機卿のローレンスは自らの進行に揺らぎを感じているためか頼りない感じが・・・。しかし、水面下の協議は陰謀や裏切りへと発展し、ついにはむき出しの権力闘争となる・・・。」。サスペンス仕立てで語られる物語にグイグイと引き込まれていく。結論は“まっすぐな心は強い”ということ。『アノーラ』より、こちらがよかった。
フライト・リスク

12(838)
メル・ギブソン9年ぶりの監督、アラスカを舞台に上空10000フィートの航空機で繰り広げられる命を懸けた騙し合いの物語。「現場復帰したばかりのハリス(女性)保安官補は、重要参考人ウィンストンを、アラスカからニューヨークまで輸送する機密任務に就く。ベテランパイロットのダリルは、陽気な会話でハリスの緊張をほぐしていく。ダリルのお陰で順風満帆な航行になるかに思えた。一方、後部座席のウィンストンが、足元に落ちていたパイロットライセンス証を⾒ると、そこには今目の前に座るパイロットとは全くの別人が写し出されていた」。小型セスナの中でのたった3人によるワンシチュエーションなのに全く飽きの来ないスリリングで緊張感はあった。まあまあの面白さ!
ステラ/
ヒトラーにユダヤ人同胞を売った女


11(837)
ナチスの密告者となったユダヤ人女性の実話をもとに描いた映画。「1940年、ベルリン。ユダヤ人である18歳のステラはアメリカでジャズシンガーになることを夢見ていた。戦争が激化し、ユダヤ人への圧力が強まる中、その夢は儚く消えていく。3年後偽造パスポートを作るロルフと出会い恋に落ちる。しかし、ゲシュタポに逮捕されアウシュビッツへの移送を逃れるためゲシュタポにユダヤ人の逮捕に協力するようになる…。終戦後同胞を密告していたことで裁判にかけられる」。ステラは被害者か?加害者か?第2次世界大戦から80年後の今、また同じことが起きようとしているのでは?同じ過ちが起きないよう願うばかり。(画面の動きが激しく、少し酔ってしまった)
ANORA
アノーラ


10(836)
アカデミー賞で“作品賞”等5部門を制した。21世紀のアンチ・シンデレラストーリー。ただ、ヌード・性的シーンが多いためR18指定。「ヒロインはニューヨークの貧しいセックスワーカー。ロシアの富豪のボンクラ御曹司と勢いで結婚するが、夫は母親の反対に遭って腰砕けに。彼女は徒手空拳で闘いに臨む。」コミカルな中に意志の強さや哀愁までも漂わせオスカーを手にしている。最近、欧州の国際映画祭での受賞がアカデミー賞に直結する傾向が顕著になったとのこと、本作も『カンヌ国際映画祭』で最高賞のパルムドールを取っている。こんな評があった『ハリウッドには“風と共に去りぬ “や”ゴッドファーザー” “タイタニック”を作る体力も知力も残っていないのだろうか』と。
名もなき者
A COMPLETE UNKNOWN


9(835)
歌手として初めてノーベル文学賞を受賞したボブ・ディランの若い日を描いた伝記ドラマ。「1961年、フォークギターだけを手に、きらめきを掴むためにニューヨークへ降り立った青年、ボブ・ディラン。恋人、音楽上のパートナー、才能を認める先輩と出会い、激動の時代に呼応する中で、彼の歌は大きな注目を集めていく。次第に“フォーク界のプリンス”などと祭り上げられるボブ。しかし、彼の才能と魂は、次第に違和感を感じていく。」。最初からラストまで彼とジョーン・バエズの歌う歌が素晴らしい。歌詞をじっくり読むと、ノーベル文学賞を受賞したのもうなずける。あの時代に訴えたものが、現代社会でも解決されないどころか逆に悪くなっているような気がしてきた。
レッド・サン

8(834)
1971年製作、チャールズ・ブロンソン、三船敏郎、アラン・ドロンの三大スターの共演が話題になった映画。今回、4Kデジタルリマスター版で蘇った。「1870年、アメリカにやってきた日本の親善大使一行が、アウトロー集団に天皇から米大統領に贈られる刀を奪われてしまい、これを奪還するために仲間に裏切られたガンマンとサムライの二人組が追跡する…」。50年以上経っても色褪せない、懐かしさいっぱいで観た。悪役のアランドロンはやはりいい男、ブロンソンは渋い、最近こんな俳優はみませんね。今のアクションからすると物足りないかもしれないが三船のチャンバラもなかなか良かった。
室町無頼

7(833)
日本史上初めて武士階級として一揆を起こした室町時代の人物・蓮田兵衛の戦いを描く。戦争というテーマに向き合っていた大林監督から『このバトンを君に渡すよ』と言われた入江悠監督の作品。「応仁の乱前夜の京。大飢饉と疫病が発生、加茂川べりには死体が放置され、人身売買や奴隷労働が横行、格差社会となっていた。自由人の蓮田兵衛は、密かに倒幕と世直しを画策し、立ち上がる時をねらっていた。手下となった才蔵をはじめ、兵衛のもとに集った無頼たちは巨大な権力に向けて暴動を仕掛けるが…」。監督が『社会からはじかれた人たちを描き観客にもその“苦み”を抱えてほしい』と言っている、何時の時代も同じだが、この映画のようなエネルギーが今欲しい。
アプレンティス ドナルド・トランプの創り方

6(832)
成功を夢見る20代のトランプが、伝説の弁護士に導かれて驚くべき変身を遂げ、トップへと成りあがるまでの道のりを描く。「1970年代から1980年代を舞台に、気弱で繊細だった20代の青年実業家ドナルド・トランプがマッカーシズムで悪名を馳せた弁護士ロイ・コーンと出会い、一流の実業家へと育て上げられた末に、コーンの想像を超える怪物へと変貌を遂げていく・・・」。すべてが事実とは思わないが、今のトランプを見るとなるほどと思えるエピソードがたくさん。もともとそんな人間だったとは思うが怪物へと成長?していく過程が興味深い。とにかく勝つことにこだわり勝者になればなんでも思い通り、黒を白と言ってすべてを思い通りにする。こんな世界は怖い!


5(831)
東京国際映画祭で作品賞、監督賞、主演男優賞の3冠に輝いた作品。長塚京三主演でモノクロ映画。「渡辺儀助、77 歳。大学教授の職を辞して 10 年―妻には先立たれ一人暮らし。料理は自分でつくり、晩酌を楽しみ、時には友人と酒を飲み交わす生活。預貯金が後何年持つか、すなわち自身が後何年生きられるかを計算しながら、来るべき日に向かって日常は完璧に平和に過ぎていく。遺言も書いた、もうやり残したことはない。だがそんなある日、パソコン の画面に『敵がやって来る』と不穏なメッセージが流れてくる。」その後の展開は夢なのか妄想なのか?じっくり観て欲しい。“敵”は一人暮らしの老人が抱える“漠然とした不安、又は中年男性心のうちにある?
ビーキーパー

4(830)
ジェイソン・ステイサム主演のアクション映画 「養蜂家(ビーキーパー)として隠遁生活を送る男アダム・クレイ。ある日、彼の恩人である善良な老婦人がフィッシング詐欺に遭って全財産をだまし取られ、絶望のあまり自ら命を絶ってしまう。怒りに燃えるクレイは、社会の害悪を排除するべく立ちあがる…。」。詐欺集団に全財産をだまし取られた恩人の 復讐のため、そして世界の秩序を守るため容赦なく死の果てまで追いかける..。なんも考えずに楽しめて気分がスカッとした。こんなヒーローがいてくれたら最高なのに。振込詐欺のコールセンターが出てくるが、そこの連中は悪いことをしていると思っていないところが怖い!
お坊さまと鉄砲

3(829)
「2006年。長年にわたり国民に愛されてきた国王が退位し、民主化へと転換を図ることが決まったブータンで初めて行われる選挙。村の徳の高いお坊さまが言いました。『次の満月までに銃を2丁用意せよ』若いお坊さまは銃を探しに山を下りて行く。時を同じくして、アメリカからアンティークの銃コレクターが“幻の銃”を探しにやって来て、村全体を巻き込んでの騒動へ・・・」。一切殺生をしないブータンの人々、そこに何故銃が必要なのか?ラストに納得。『変わりゆく世界で、変わらないもの』人の幸せとは何か?を私たちに問うている、素晴らしい映画。発展のために人々が不幸になるのは本末転倒ではと考える。考えさせられて笑わせられて満足!
劇場版
ドクターX


2(828)
テレビでシリーズ化された米倉涼子主演の医療ドラマ『ドクターX 外科医・大門未知子』のシリーズ完結編となる劇場版。このシリーズは好きだったので観にいった。「大門未知子は、某国の大統領を救うため、日本を離れていた。その頃、神津比呂人が新病院長に就任した東帝大学病院では、合理化が進み、医師や看護師が解雇されていた。同僚の森本に呼び戻された未知子は、比呂人と意気投合するが…」。テレビより刺激度が強い分、面白い。いつも思う、こんな医者がいたらいいのに…って。西田敏行は相変わらずうまくて、亡くなったのがホントに惜しい。エンドロールで、今までのドクターXの出演者の映像が出てくるのは懐かしかった。
太陽と桃の歌

1(827)
スペイン・カタルーニャ地方を舞台にした自然と人間の問題を描くヒューマンドラマ。「カタルーニャで、三世代に渡る大家族で桃農園を営むソレ家。例年通り収穫を迎えようとした時、地主から夏の終わりに土地を明け渡すよう迫られる。桃の木を伐採して、代わりにソーラーパネルを敷き詰めるというのだ。父親は激怒するが、妻と妹夫婦はパネルの管理をすれば“楽に稼げる”という囁きに心を動かされていく。それぞれに危機に対処しようとする家族、大きな亀裂が入ったまま、最後の収穫が始まる。」。無垢な子供たちと果樹園で働く大人たちの日常が淡々と描かれる姿が何ともほほえましい。ベルリン国際映画祭金熊賞受賞作。

2025年cinema  ランキング 
 1 位 教皇選挙
 2 位 リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界
 3 位 JOIKA 美と狂気のバレリーナ
 4 位 名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN
 5 位 お坊さまと鉄砲
 6 位 囁きの河
 7 位 ルノワール
 8 位 少年と犬
 9 位 ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング 
10 位 ビーキーパー
11 位 ゲッベルス  ヒトラーをプロデュースした男 
12 位 ANORA アノーラ
13 位 アマチュア
14 位 エミリア・ペレス
15 位 フライト・リスク
16 位 室町無頼
17 位 アプレンティス ドナルド・トランプの創り方
18 位 ステラ ヒトラーにユダヤ人同胞を売った女
19 位
20 位 劇場版 ドクターX
21 位 太陽と桃の歌
   レッド・サン
※はデジタル・リマスター版として再上映されたものでランキングから外しています。
 同様にネット配信やDVDで観たものやドキュメンタリーも外しています。